バスとインターフェース
経営情報システム 第5回
「いつも使っている通勤や通学の道があるじゃないですか。もし片側3車線もあるような大きな道路が、急に1車線だけの細い道になっちゃったら、どうなると思いますか?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、コンピューター内部のデータの通り道であるバスとブリッジ、周辺機器とつなぐインターフェースのシリアル・パラレル・無線の3つの伝送方式と、各規格の特徴、パラレルからシリアルへ主役が交代した理由をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
3車線が1車線になったら、速くなる?
動画は、毎日通る通勤・通学の道の話から始まります。「もし片側3車線の大きな道路が、急に1車線だけの細い道になったら、どうなると思いますか」。聞き手は「あっという間に大渋滞が起きて、車が全く進まなくなる」と答えます。車線が多いほど一度にたくさんの車を運べる。これは物理的な大原則です。
ところが動画によれば、コンピューターのデータを運ぶ道では、あえて1本に絞ったほうが圧倒的なスピードで運べるという、不思議な逆転現象が起きているといいます。このページでは、バスとブリッジ、インターフェースの3つの伝送方式、パラレルからシリアルへの主役交代、無線の混信までを、動画の流れにそって整理します。動画のミッションは、規格名の暗記ではなく、「なぜその仕組みになったのか」を理由と一緒に理解することです。
バス:コンピューター内部のデータの通り道
コンピューターの内部では、CPUやメモリーなどのさまざまな部品が、絶えずデータをやり取りしています。この内部の機器をつなぎ、データをやり取りするためのデータ伝送路をバスといいます。乗り物のバスと同じ言葉で、動画は「コンピューター内部に張り巡らされた、目に見えない専用の道路網」とたとえます。
代表的な規格として動画が挙げるのは、PCI(ペリフェラルコンポーネントインターコネクト)と、その後継規格のPCI Expressです。マザーボードという基板の上を走る主要な幹線道路で、データという車が、この道路を使って各部品の間を猛スピードで行き来しているイメージです。
(補足:IPA(情報処理推進機構)の基本情報技術者試験シラバス(Ver.9.2)は、バスを「コンピュータ内部でデータをやり取りするための伝送路」とし、内部バス(CPU内部バス)・外部バス・拡張バスなどの分類を挙げています。PCIは32ビット幅などのパラレル方式、PCI Expressはシリアル方式のバスです。このあと出てくる「パラレルからシリアルへ」という交代は、内部のバスでも起きています。)
ブリッジ:速度の違うバスをつなぐ変換役
バスにつながる部品は、処理の速度も規格も部品ごとに違います。超高速で計算するCPUと、人が手で打ち込むキーボードの入力では、スピードが桁違いです。聞き手は「一般道しか走れない遅い車と、高速道路を飛ばすスポーツカーが同じ道路に入り混じっている状態では、大事故になりませんか」とたとえます。
動画の答えは、こうです。規格が異なるバスをそのまま直結すれば、情報の渋滞や衝突が起きてしまう。そこで、異なる規格のバス同士の間に、ブリッジという専用の変換用の回路を挟む設計になっています。ブリッジを通すことで、データの形や流れる速度が適切に変換され、異なる規格のバス同士が安全につながります。聞き手のたとえでは、一般道と高速道路をつなぐインターチェンジや、速度制限を調整する料金所です。
ブリッジがあるおかげで、事故が起きないわけですね。
そうです。間に入ってクッションというか、翻訳機のような役割を果たしてくれるので、スピードが全く違う部品同士でも、情報をスムーズに渡し合えます。
(補足:PCIでは、つなぐデバイスが増えたときも、PCIバス同士をつなぐブリッジでバスセグメントを広げます。)
インターフェース:外の周辺機器とつなぐ規格
バスが内部の道路網なら、コンピューターの外に出るときはどうなるのでしょうか。コンピューター本体と、マウス・プリンター・外付けハードディスクなどの周辺機器をつなぐための規格や仕様を、インターフェースといいます。ここから、冒頭の車線の話につながります。
動画は、インターフェースの伝送方式を大きく3つに分けます。
- シリアル伝送:1本の線を使って、信号を直列に送る。
- パラレル伝送:複数の線を使って、信号を並列に送る。複数車線のイメージ。
- 無線通信:物理的な線を使わない。
なぜパラレルは主役になれなかったのか
聞き手はここが「一番の謎」だと言います。複数車線のパラレルのほうが圧倒的に速いはずなのに、いまのUSBもHDMIもシリアルばかりではないか、と。
動画の答えは、かつてはパラレルが主役だった、というものです。多くのデータを一度に並行して送れるので、昔はパラレルのほうが効率的でした。ところが、データの転送を極限まで高めようとしたとき、パラレルは致命的な弱点を抱えます。それが、データの同期を取る際の制約です。
複数の線で並列にデータを送る場合、送り出した複数のデータが、受け取り側で全く同時に到着しないと、1つのまとまったデータとして認識できません。ところが速度を極限まで上げていくと、ケーブル内のごくわずかな電気的な抵抗の違いなどで、線ごとのデータの到着タイミングにミクロのずれが生じ始めます。聞き手は、運動会で何十人かでやるムカデ競争にたとえます。人数(車線)が多ければパワーはあるけれど、全員の歩調をピタリと合わせるのが難しく、結局は全速力で走れない、というわけです。
同期をとるのが困難になった結果、パラレルはこれ以上、速度を上げられなくなりました。そこで技術者たちは、発想を転換します。複数の線で足並みをそろえるのが無理なら、いっそ線を1本だけにして、同期を気にする必要をなくそう。その代わり、その1本の線のスピードを限界まで引き上げればいい。これが、1本の線で信号を直列に送るシリアル伝送です。
一見すると1本道で非効率に見えるのに、同期の制約がないからこそ、パラレルを凌駕する速さを出せるようになった。聞き手はこれを技術の逆転現象と呼び、動画は、現在はシリアルのほうが高速化しやすく、主力になりつつあると説明します。
パラレルは一度にたくさん送れるのに、なぜ高速化が難しいんでしたっけ。
同期の制約です。線ごとに到着のタイミングがずれると、1つのデータとして認識できません。「一度に多く送れるが、同期の制約から高速化が困難」という因果関係を押さえてください。
次の表は、線ごとの到着のずれが1周期の何割になるかの計算です(動画にない、このページの設例で、ずれは仮に0.3ナノ秒とした理論上の数字です)。
| 動作の速さ | 1周期の長さ | 0.3ナノ秒のずれの割合 |
|---|---|---|
| 100MHz | 10ナノ秒 | 3% |
| 1GHz | 1ナノ秒 | 30% |
| 3GHz | 約0.33ナノ秒 | 90% |
同じずれでも、速くするほど1周期に占める割合が大きくなり、隣のデータと混ざってしまう。これがパラレルの壁のイメージです。
(補足:資料によると、PCIは32ビット幅・33MHzで帯域幅は132MB/s(4バイト×33)。PCI Expressの最初の世代(1.1)は、1レーンあたり2.5Gbpsで、実効は片方向250MB/s(2.5Gbps×8/10÷8)と、1レーンでPCIの約1.9倍です。なお、シリアルの規格は常に1本とは限らず、PCI Expressはレーンをx1〜x32のように束ねて速度を上げ、DisplayPortも4レーンを使う仕様があります。)
かつての主役:パラレル伝送の3規格
かつて主役だったパラレル伝送には、どんな規格があったのか。動画は「歴史の記録として」、次の3つを整理します。
| 規格 | 主な用途 | 動画が挙げた特徴 |
|---|---|---|
| SCSI (スカジー) | 主にスト | 複数の機器を連結できる |
| パラレル (IDE) | 内蔵ドライブ | マスター |
| セント (IEEE 1284) | 周辺機器の接続(プリン | 広く普及した |
SCSIは「スモールコンピューターシステムインターフェイス」の略です。パラレルATAの「マスタースレーブ構成」は、主従関係を決めて、データのやり取りを管理する方式だと動画は説明します。動画は、こうした名前を見たら「複数車線で同期に苦労した、旧世代のパラレル伝送だな」と見分けられるようにしておくのがポイントだ、と言います。
(補足:パラレルATAは、もとの名前がAT Attachmentで、IDEはIntegrated Drive Electronicsの略です。マスタースレーブは、1本のケーブルを2台で共有するとき、一方をマスター、他方をスレーブに指定する仕組みです。パラレルSCSIは8ビット幅で8台、16ビット幅で16台まで接続できます(コンピューター側が1つ使うので、周辺機器は7台・15台)。セントロニクスは、もとはセントロニクス社がプリンター用に開発し、のちにIEEE 1284として標準化されました。)
現代の主役:用途ごとに分かれたシリアル伝送
聞き手は、シリアルの規格が多すぎて混乱しそうだ、全部USBに統一すればすっきりするのに、と言います。動画の答えは、こうです。すべてをUSBで統一できれば理想的だが、周辺機器ごとに特化すべき要件が全く異なるため、専用の規格が必要だった。
ハードディスクに大量のデータを保存するときと、ディスプレイに高画質の映像を遅延なく映し出すときでは、求められるものが違うんですね。
そうです。データの流れ方や、求められる安定性が全然違います。一口に一本道のシリアル伝送といっても、荷物を運ぶトラック専用道路と、人を運ぶ新幹線の線路くらい、目的によって道幅やルールが違う、というわけです。
動画が挙げるシリアルの規格を、用途と接続の形でまとめると、次の表のとおりです。
| 規格 | 用途(動画の説明) | 接続の形 |
|---|---|---|
| USB | 汎用。スマホからマウスまで | ハブで多数の機器をつなぐ |
| IEEE 1394 | 映像機器などに特化 | 数珠つなぎ(ハブ不要) |
| シリアル | 内蔵スト | 1対1 |
| eSATA | 外付けHDDなど(シリアルATAの発展系) | 1対1 |
| DVI | 映像出力端子 | ― |
| HDMI | 映像と音を一緒に送れる | ― |
| Display | ディスプレイの接続 | デイジー |
IEEE 1394の「数珠つなぎ」は、機器Aから機器B、機器Bから機器Cへと直線的に連結する方式で、USBのようにハブを中心にタコ足配線するのとは違います。DisplayPortについて動画は、パソコンからモニター1へ、そこからモニター2へとつなげるので、本体から2本のケーブルを引っ張らなくてよく、デスク周りがすっきりする、と説明します。ただし動画は条件を述べておらず、実際につなげられるかは機器やモニターの対応によります(条件の詳細は、このページでは確認していません)。シリアルATAは、ストレージに確実なデータのやり取りが求められるため、1対1の接続です。名前が似ていて、内蔵用がシリアルATA、外付け用がeSATAです。
動画のまとめは、「ハブで広げたい」「1対1で確実に送りたい」「数珠つなぎにしたい」といった周辺機器ごとの明確な目的があり、それぞれに最適なシリアルの道が作られてきた、というものです。規格の目的と接続方式をセットで理解しておくと、知識が立体的に定着する、と動画は言います。
(補足:IEEE 1394は、リピータハブを使ってツリー状に接続することもでき、接続は63台までの規格です。動画の「ハブがいらない」は、数珠つなぎにする場合の話です。HDMIは、映像規格DVIをもとに音声の伝送などを加えた規格です。DisplayPortはVESAが策定した規格で、複数のディスプレイをつなぐマルチストリーム転送(MST)は、2009年12月のVersion 1.2で加わりました。動画のデイジーチェーン接続がこのMSTにあたるのか、どの機器・モニターなら可能なのかは、このページでは確認できていません。)
無線通信:ケーブルをなくした代わりに
ここまではケーブルのあるインターフェースの話でした。3つ目の伝送方式は、ケーブルそのものをなくした無線通信で、動画は代表的なものを2つ挙げます。
- Bluetooth:2.4GHz帯の電波を利用し、マウスやキーボードなどのワイヤレス接続に使われる。
- IrDA:赤外線を利用する。聞き手は、昔のガラケーのデータ送信などで使われた赤外線だと話します。
今はBluetoothが主流です。ワイヤレスイヤホンやワイヤレスマウスはケーブルがなくて快適ですが、無線ならではの難点もあります。それが混信のリスクです。
動画の説明はこうです。Bluetoothが利用している2.4GHz帯という周波数帯は、非常に便利なので、他の無線規格でも広く使われています。さらに、一部の生活家電もこの周波数帯の電波を発していて、代表的なのが電子レンジです。パソコンでBluetoothのマウスを使っているすぐ横で、特定の生活家電を動かすと、目に見えない空中で電波同士がぶつかる。同じ空間に同じ周波数帯の電波が飛び交うと、データの伝送が妨げられるリスクが常にあります。
聞き手は、ケーブルの制約から解放された代わりに、空間における電波の渋滞という新しい問題が起きている、とまとめます。動画も、課題を解決する技術が普及するとまた別の限界が見える、データ伝送の歴史はその連続だ、と受けます。
(補足:Bluetooth SIGの資料では、Bluetoothは2.4GHz帯の免許不要のISM(産業・科学・医療)バンドを使います。ISMバンドはもともと電子レンジなどの高周波利用機器のための帯域で、この帯域の通信機器は、そうした機器からの電波干渉を受け入れる前提です。無線LAN(Wi-Fi)も同じ帯域を共用するため、Bluetoothと干渉することがあります。電子レンジの影響の程度は、動画も述べていません。)
(補足:動画では、聞き手がIrDAを「テレビのリモコンなどで使われている赤外線」と受けますが、家電のリモコンの赤外線通信は、各社が独自に定めた仕様で、IrDAとは別のものです。IrDAは、赤外線通信を規格化した団体(Infrared Data Association)と、その規格の名前で、通信距離はおおむね30cm〜1m程度とされます。)
試験の注目点(動画が押さえるよう促していた点)
動画の整理(出題を保証するものではありません)
- 動画では、バスは内部のデータ伝送路で、規格の違うバスの間にはブリッジが入る、と説明しています。
- 動画では、インターフェースの伝送方式をシリアル・パラレル・無線の3つに分け、パラレルは「一度に多く送れるが、同期の制約から高速化が困難」という因果関係を押さえるよう促しています。
- 動画では、SCSI・パラレルATA(IDE)・セントロニクス(IEEE 1284)を見たら旧世代のパラレルと見分けるのがポイントだとし、シリアルの規格は目的と接続方式(ハブ、数珠つなぎ、1対1)をセットで理解するよう促しています。
- 動画では、無線通信の課題を、同じ周波数帯の電波がぶつかる混信としています。
(補足:IPAの基本情報技術者試験シラバス(Ver.9.2)の「入出力インタフェース」の用語例には、USB・HDMI・DisplayPort・シリアルATA・Bluetooth・IrDAなどが、接続形態の用語例には、スター接続・ハブ・デイジーチェーン接続・ツリー接続などが挙がっています。SCSIなどの旧規格は載っていません。診断士試験の範囲を決める資料ではないので、参考です。)
まとめ
この回のポイント(動画の流れにそって)
- バスは内部のデータの通り道。規格の違うバスの間には、ブリッジが入る。
- インターフェースの伝送方式は、シリアル・パラレル・無線の3つ。
- かつての主役パラレルは、線ごとの到着がずれて同期が取れず、高速化が難しくなった。そこで、1本の線を速くするシリアルが主力になった。
- シリアルの規格は、ハブ(USB)、数珠つなぎ(IEEE 1394・DisplayPort)、1対1(シリアルATA)など、目的ごとに作られた。
- 無線は、ケーブルをなくした代わりに、電波がぶつかる混信のリスクがある。
動画は最後に、データがさらに爆発的に増えて空中が混信でパンクしたら、未来は物理的なケーブルで直接つなぐ「究極のシリアル伝送」へ回帰するかもしれない、と問いかけます(動画の思考実験であり、事実ではありません)。
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