OSSライセンスとコピーレフト
経営情報システム 第13回
「あなたが中小企業診断士として、ある企業のIT導入を支援しているとします」。動画はこんな想像から始まります。このページでは動画の流れにそって、OSSと著作権の関係、LAMPなどの代表例、コピーレフトの考え方、GNU GPLとMITライセンスの違い、そしてオープンデータやフリーウェアとの違いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「無料のソフト」に飛びつくと、何が起きるのか
「あなたが中小企業診断士として、ある企業のIT導入を支援しているとします」。動画は、こんな想像から始まります。その企業は数千万円の予算と数か月をかけて、画期的なシステムを開発しました。ところが開発コストを少しでも抑えるために、エンジニアがインターネット上で見つけた無料のソフトウェア部品を、システムの中核に組み込んでいたのです。
システムは無事にリリースされ、大ヒット。ところが数か月後、突然、法的な警告状が届きます。「あなたが開発したシステムの独自のソースコードを、すべて世界に向けて無償で公開しなさい」。動画は、これを「ルールの解釈を間違えた企業が、本当に陥る罠」だと言います。コスト削減は企業にとって至上命題ですが、「無料」という言葉だけに飛びつくと、企業の中核となる知的財産を根底から揺るがしかねない、という話です。
そこで今回のテーマがOSS(オープンソースソフトウェア)です。動画のミッションは、OSSを単なる無料のソフトとして暗記するのではなく、背後にある権利の考え方とライセンスの仕組みを、論理的に理解することでした。流れは次のとおりです。
- OSSとは何か:著作権は放棄されていない
- 代表例とLAMP
- ライセンスが範囲を決める:コピーレフトという考え方
- GNU GPLとMITライセンスの違い
- 混同しやすい用語:オープンデータ、フリーウェア
(補足:冒頭の悪夢の話は、動画の言い方のままだと正確でない部分があります。どこが違うのかは、GPLの話のあとの補足で整理します。)
OSSとは:権利を手放したのではなく、ルール付きで公開したもの
動画はまず、OSSを「無償で利用でき、ソースコードが公開されているソフトウェア」だと確認します。ソースコードは、ソフトウェアを動かすための設計図にあたります。それが誰にでも見られる状態になっている、という説明です。ここで聞き手が、気になる疑問をぶつけます。
無償で公開されているということは、作った人は、もう自分のものだという権利、つまり著作権は放棄しているんでしょうか。
そこがまさに、試験で問われる大きなポイントなんです。OSSは決して、権利を放棄した無法地帯ではありません。むしろ逆で、著作権を保護した上でソースコードを公開するものです。
著作権は開発者がしっかり保持している。権利を持っているからこそ、利用者に対してルールを守らせることができる。これが動画の答えです。
動画のたとえ:管理人がいる場所
動画は、OSSを「無法地帯ではなく、管理人がちゃんとルールを言って、ルールを守る前提で公開されているもの」と受け止めています。
(補足:IPAのITパスポート試験シラバス(Ver.6.5)は、OSSの特徴として「ソースコードの公開、再配布の制限の禁止、無保証の原則」を挙げ、OSSを利用するときは、ソフトごとに利用許諾条件がまとめられたライセンスに留意する必要があるとしています。動画の「ライセンスで範囲が決まる」という話と同じ方向です。)
(補足・動画の単純化:動画は「無償で利用できる」とOSSを説明しますが、OSI(オープンソース・イニシアティブ)のオープンソースの定義は、ソフトを「売ること」を制限してはならないとしています。核になるのは、ソースコードがあり、自由に再配布でき、改変もできることです。GNUも、自由は「価格がゼロ」の意味ではないと説明しています。無償のOSSが多いのは確かですが、「OSSイコール無料」と決めつけない方が安全です。)
代表例:ランプ(LAMP)と、身近なOSS
では、代表的なOSSを見ていきます。動画が最初に挙げるのは、インターネットの基盤として欠かせない4つです。OSのLinux、WebサーバーのApache、データベースソフトのMySQL、そしてプログラミング言語のPHP(またはPython)。それぞれの頭文字を取って、ランプ(LAMP)と呼びます。動画は、これを数えきれないほどのWebサービスを支えてきた「黄金の組み合わせ」だと紹介します。
日常的に触れるものとして、動画は、ブラウザー、オフィスソフトのLibreOffice(リブレオフィス)、CMS(Webサイトの内容を管理するソフト)のWordPressも挙げます。WordPressは、企業のホームページ制作で必ずと言っていいほど名前が出ます。さらに、現代のエンジニアにとって事実上の標準ツールになっている統合開発環境のVisual Studio Codeも、代表例として登場します。
動画は、ビジネスの現場はすでにOSSなしでは回らず、有償のツールか無償のOSSかという選択が常に問われる、と言います。
(補足:IPAのシラバス(基本情報技術者・Ver.9.2)は、LAMPを「Linux、Apache、MySQL、PHP」とし、データベースがPostgreSQLの組み合わせをLAPPと呼んでいます。)
(補足:次の表は動画にない整理です。OSSでも、ライセンスは一つではありません。)
| ソフト | 種類 | ライセンス |
|---|---|---|
| Linuxカーネル | OS | GPL-2.0のみ |
| MySQL | DB | GPLと商用の二本立て |
| PHP | 言語 | PHP License 4(BSD系) |
| WordPress | CMS | GPLv2以降 |
| Libre | オフィス | MPL v2.0 |
(補足・動画の単純化:動画はブラウザーとVisual Studio CodeもOSSの代表例に含めます。字幕のブラウザー名は聞き取りが不確かで、ここでは「Chrome」と推定しています。Chromeなら、OSSなのはChromiumというプロジェクトで、Google Chromeは独自のフリーウェアとして配布されている、と説明されています。Visual Studio Codeも、公式リポジトリのソース(Code - OSS)はMITライセンスですが、配布版はMicrosoft製品ライセンスです。名前だけでは決められず、ライセンスを確かめる必要があります。)
ライセンスが範囲を決める:コピーレフトという考え方
聞き手は、ここで話を戻します。OSSは、ソースコードが公開されていて、複製・改良・再配布が誰でも自由にできる。でも著作権が保護されている以上、何でもありではないはず。その範囲はどうやって決まっているのか。動画の答えは「ライセンスによって制限されている」です。ライセンスは、自由を与える代わりに、守るべき条件を定めたルールだと説明されます。
そして、ライセンスの考え方の主なものがコピーレフトです。動画は、著作権を意味するコピーライトの「ライト」の逆で「レフト」だ、と覚え方を示します。コピーレフトとは、著作者が著作権を保有したまま、利用者に著作物の複製・改変・再配布の自由を与える、という考え方です。
著作権を保有したまま自由を与える。ここまではなんとなく分かります。でも、制限があるんですよね。
ええ、非常に強力な連鎖のルールがあります。私があなたに自由を与えたのだから、あなたがこれを改良して誰かに再配布するときも、必ず同じように他人に自由を与えなさい、という条件です。
つまり、自分が改良したものを秘密にして独占することは、許されないってことですか。
その通りです。自分が恩恵を受けたように、次の人にもソースコードを公開しなければならない。これが、自由の連鎖を強制するコピーレフトの本質です。
ここで聞き手が、冒頭の悪夢の話とつなげます。独自の画期的なプログラムを開発したのに、その土台としてコピーレフト型のOSSを使ってしまったら。動画は、システム全体がルールに引きずり込まれて、独自のコードも含めてすべて公開する義務が生じるリスクがある、と答えます。だからこそ、試験対策としても、ライセンスの種類は見極めなければいけません。
(補足:GNUプロジェクトは、コピーレフトを「プログラムを自由にし、かつ、改変・拡張された版もすべて自由であることを求める一般的な方法」と説明しています。著作権を主張しないパブリックドメインだと、誰かが独占的なソフトにしてしまえます。そこで著作権を使って、再配布する者に自由の引き渡しを求めます。動画の「著作権を保有したまま」と方向が合っています。)
GNU GPLとMITライセンス:ビジネスへの影響は天と地
コピーレフト型のライセンスの代表例がGNU GPLです。動画は、ランプの構成要素のMySQLもGNU GPLの条件に基づくソフトだと言い、MySQLを使ってシステムを構築して外部に販売するようなビジネスモデルでは、GPLのルールに細心の注意が必要だと続けます。
一方、企業が商用利用しやすいライセンスもあります。コピーレフトを採用していない非コピーレフト型の代表例がMITライセンスです。自由の連鎖を強制しないタイプで、動画の説明では、元の作者の表示さえ残しておけば、自己責任で好きに使っていい、非常に緩いルールです。独自の機能を追加して、ソースコードを非公開のまま商用販売することも許可されています。
| 観点 | GNU GPL(動画) | MIT(動画) |
|---|---|---|
| 型 | コピーレフト型 | 非コピー |
| 改良して再配布 | 同じ条件で自由を渡す | 元の作者の表示を残す |
| ソース公開 | 公開する義務が生じる | 非公開のまま商用販売も可 |
同じOSSというくくりでも、GNU GPLとMITライセンスでは、ビジネスに与える影響が天と地ほど違うんですね。
全く違います。だからこそ、コンサルタントとして、この違いを理解しておくことが最大のリスク回避になるんです。
(補足・動画の単純化の訂正:GPLの公開義務は、動画の冒頭の事例よりも、範囲がかなり限られています。GNUの公式FAQとGPLの条文(バージョン2)から、次の点が確認できます。)
- 義務が生じるのは「配布」のとき:GPLは、改変版の公開を求めません。個人でも会社でも、改変して社内で使い、外へ出さないままでよいとされています。公衆に公開するなら、そのプログラムの利用者に、GPLの下でソースを入手できるようにします。
- 相手は「世界中」ではなく、利用者:配布を受けた人にソースを提供することが求められます。動画の「世界に向けて」は広い言い方です。
- 「無償」の意味:GPLは、ソフトを売ることを妨げません。売る権利は自由ソフトウェアの定義の一部だとされています。ただし条文は、全体を第三者に使用料なしでライセンスすることを求めます。
- 範囲は「派生物」:プログラムに基づかない別の作品を、同じ媒体に並べて配るだけの「単なる集合」は、GPLの範囲に入りません。どこからが派生物かは、個別に判断する部分があります。
(補足・設例:自作の設例で、実際の判断は個別の事情によります。A社がGPLのOSSを改造して自社の在庫管理システムに組み込み、社内だけで使うなら、ソースの公開は求められません。取引先のB社に納品すると、B社にGPLの下でソースを提供する必要が出てきます。納品の前にライセンスを確かめることが、動画の言う最大のリスク回避です。)
(補足:MITライセンスの条件は、「著作権表示と許諾表示を、すべてのコピーに含めること」です。ソフトは「現状のまま」で提供され、作者は責任を負わない、とも書かれています。動画の「自己責任」は、この無保証のことです。MySQLは、Oracleが、GPLと商用ライセンスの二本立てで提供しています。商用ライセンスを買えばGPLは適用されない、という説明が公式ページにあります(2010年7月の版で、現行の条件は未確認です)。IPAのシラバスにも「デュアルライセンス」が載っています。)
混同しやすい用語:オープンデータとフリーウェア
動画は、試験で似た言葉との違いもよく問われると言い、オープンデータとフリーウェアを整理します。
オープンデータは、二次利用可能な利用ルールが適用されたデータのことです。ソフトウェアではなく、あくまでデータそのものの話です。機械判読に適していて、無償で利用できる形で公開されます。機械判読に適しているとは、人間が目で読むだけのPDFではなく、プログラムが自動で処理できる形式になっている、ということです。たとえば、政府や自治体が公開している統計データを、企業が自社のアプリに組み込んで、新しいサービスを作る。こうした二次利用ができるのが特徴です。
(補足:政府の「オープンデータ基本指針」は、国・地方公共団体・事業者が保有する官民データのうち、①営利目的、非営利目的を問わず二次利用可能なルールが適用されたもの、②機械判読に適したもの、③無償で利用できるもの、のいずれにも当てはまる形で公開されたデータを、オープンデータと定義しています。動画の説明は、この定義と重なります。)
もう一つがフリーウェアです。聞き手は、クライアントが「うちはコスト削減のためにフリーウェアを入れているから安心だ」と言うことがあるが、無料なら、フリーウェアとOSSは同じようなものではないか、と尋ねます。講師は「それは非常に危険な誤解」と答えます。
使うのはタダだけど、中身のプログラムをいじったり、それを取引先に配布したりしてはいけない、ということですね。
その通りです。OSSはソースコードが公開されていて、改変の自由があります。でもフリーウェアは、単に完成品を無料で使わせてもらえるだけ。中身はブラックボックスなんです。
動画は、実務での注意点も添えます。クライアントが、そのフリーウェアを少し改造して使いたいと言い出したら、絶対にストップをかけなければいけない。「無料」という言葉で一括りにしてしまうと、重大な違反を引き起こしかねないからです。
(補足:日本語のWikipediaは、フリーウェアを「無料で使用できる」ことに重点を置いた呼び方で、変更・再配布などの条件は「まちまち」だと説明しています。ソースコードが付かず変更できないもの、有償配布や営利利用が禁じられているものも多い、とのことです。動画の「基本的に禁止」は典型的なケースを指した説明と考えられますが、実際は個々の利用条件を読んで確かめます。なお、フリーソフトウェア財団のいう「自由なソフトウェア(Free Software)」は、フリーウェアとは意味が違います。)
最後の問いかけ:次にダウンロードするツールは?
動画は最後に問いを投げかけます。「明日、仕事で何気なく新しい無料のツールをダウンロードするとき、ほんの少しだけ立ち止まって考えてみてください」。あなたは単なる便利な道具を手に入れているのか。それとも、コピーレフトなどの哲学と法的なルールを持つ「目に見えない契約」に、足を踏み入れようとしているのか。次のツールがOSSなのかフリーウェアなのか、その裏側にある権利の仕組みに、想像を巡らせてみてください。
まとめ
この動画で押さえたいこと
- 動画では、OSSは無償で公開されていても無法地帯ではなく、著作権はしっかり保護されている、と説明されます。権利があるからルールが成り立つ、という流れです。
- 複製・改良などの自由の範囲はライセンスで決まり、代表的な考え方がコピーレフトです。動画では、自由の連鎖を強制するのが本質だとされます。
- 動画の整理では、コピーレフト型のGNU GPLと、非コピーレフト型のMITライセンスで、ビジネスへの影響が大きく違います。補足のとおり、GPLの公開義務は、配布したときの、利用者に対するものです。
- オープンデータは、二次利用でき、機械判読に適した、無償のデータです。政府の基本指針の定義と重なります。
- フリーウェアは、無料で使えるソフトです。動画では、改変・再配布が禁止されているという点がOSSとの違いとされます。実際の条件はソフトごとにまちまちなので、規約を読んで確かめます。
- 「無料」という言葉だけで決めず、ライセンスの種類を確かめることが、動画の言う最大のリスク回避です。
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