聞き流しラボby KUFUYA
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

減価償却の方法の見分け方とキャッシュフローへの足し戻し方

事例Ⅳ 償却方式の見分け方とキャッシュフローへの足し戻し方9分43秒2026年9月11日公開

事例Ⅳでほぼ毎年のように出てくる「減価償却の方法」。定額法や定率法の名前も計算式もひと通り知っているのに、問題文を前にすると、どこでどの式を使うのか一瞬止まってしまう。動画はそんな悩みから始まります。このページでは動画の流れにそって、償却費を出す場面、方式の見分け方、キャッシュフローへの足し戻しまでをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

3行でいうと

  • 事例Ⅳの新規設備投資(正味現在価値法や回収期間法)では、ほぼ必ず減価償却費の算定が前提になります。償却費を出すこと自体がゴールではなく、キャッシュフローを出すための通過点です。
  • 問題文の償却方法の指定(定額法・定率法・生産高比例法)を最初に確認し、途中で自分の判断で方式を変えないことが最重要です。
  • 償却費は現金支出を伴わない費用なので、税引後利益に足し戻してキャッシュフローにします。売却があれば売却損益の扱いまでセットで考えます。

減価償却は「通過点」だからこそ怖い

定額法、定率法、名前も式もひと通り知っているのに、いざ問題文を前にすると「ここでどの式だっけ」と一瞬止まってしまう。減価償却でつまずく人の、いちばん多いパターンです。

事例Ⅳで減価償却が出てくる場面は、実はかなり絞られています。新規設備投資の意思決定です。正味現在価値法や回収期間法で投資判断をさせる問題では、その前提として減価償却費の算定が求められます。

投資判断の計算に入る前に、まず償却費を出す作業が挟まる、ということですか。

そうです。償却費そのものは現金の支出を伴わない会計上の費用ですが、税引後利益に足し戻すことで正しいキャッシュフローが出せます。つまり償却費の計算はゴールではなく、キャッシュフローを出すための通過点です。

だからこそ怖いのが、償却方法の読み違いです。問題文が「定率法で」と指定しているのに、慣れた定額法で計算すると、その先の設問がすべて連鎖して崩れます。まず「これは減価償却の論点だ」と気づくサインを押さえましょう。

気づきたい4つのサイン

  • 取得価額・耐用年数・残存価額が数値で示されている:残存価額は取得価額の10%とされることが多いものの、近年は0とする設問も増えています。10%か0かで、その後の計算がまるごと変わります。
  • 償却方法が明示されている:「定額法により償却する」「定率法により」「生産高比例法による」といった記述です。見た瞬間に使う式が決まります。
  • 稼働時間や生産量に応じて価値が減る設備:たとえば航空機や鉱業設備、特定の機械装置です。生産高比例法が絡んでいないか意識します。
  • 耐用年数の途中、あるいは経過後に売却する条件:減価償却費だけでなく、売却損益の扱いまでセットで問われます。
問題文のサインまず考えること取得価額・耐用年数・残存価額の数値残存価額は10%か0か先に確かめる償却方法が問題文に明示指定の方式のまま最後まで計算する稼働時間や生産量で価値が減る設備生産高比例法を疑ってみる耐用年数の途中や経過後に売却売却損益の扱いもセットで考える
4つのうち1つでも見えたら、減価償却の出番です。特に「償却方法の明示」は指定どおりに進めます。

3つの方式を式と性格で整理する

定額法:毎期まったく同じ額

取得価額 × 定額法の償却率で計算します。償却率は1 ÷ 耐用年数です。耐用年数10年なら10分の1で、毎年同じ額が10年間続きます。

なお、この式は残存価額を0として計算する場合の形です。問題文に「残存価額は取得価額の10%」などと指定があるときは、償却の対象になるのは取得価額から残存価額を引いた金額なので、(取得価額 − 残存価額)× 償却率(=(取得価額 − 残存価額)÷ 耐用年数)で計算します。生産高比例法も同じく、残存価額があれば取得価額から引いた金額を基準にします。

定率法:最初に大きく、だんだん小さく

(取得価額 − すでに償却した金額)× 定率法の償却率で計算します。償却率には、定額法の償却率の2倍を使う200%定率法が一般的です。耐用年数10年なら、定額法が10分の1なので、定率法は5分の1(20%)です。

まだ償却していない残高に率を掛けるので、初期にたくさん償却して、年数が進むほど償却費が逓減していきます。

たとえば

新品の家電の下取り価格に近いイメージです。買った初年度はガクッと価値が落ちて、年数がたつほど下がり方が緩やかになる。あの「最初に大きく減って、だんだん減り方が小さくなる」曲線が定率法、毎年同じ額でコツコツ減っていくまっすぐな線が定額法です。

生産高比例法:使った分だけ費用にする

取得価額 × 当期の利用量 ÷ 総利用可能量で計算します。稼働時間や生産量に応じて費用が決まる、いわば従量制の考え方です。

定額法毎期同じ額取得価額 × 償却率(1 ÷ 耐用年数)耐用年数10年なら償却率は10分の1定率法だんだん小さくなる(取得価額 − 償却済額)× 償却率償却率は定額法の2倍(200%定率法)生産高比例法使った分だけ取得価額 × 当期の利用量 ÷ 総利用可能量使った量に応じて費用が決まる従量制
式を暗記するより、「毎期一定」「逓減」「使った分だけ」という性格とセットで覚えます。

ここで一番大事な注意点です。設問文がどの方式を指定しているかを最初に必ず確認し、計算の途中で自分の判断で方式を変えないこと。慣れている定額法で計算したくなる気持ちは分かりますが、そこが最大の落とし穴です。

定額法定率法(200%)2004001年目2002402年目2001443年目2001084年目2001085年目取得価額1,000万円・耐用年数5年・残存価額0(単位:万円)
定額法は毎年同じ、定率法は最初が大きく後ほど小さい。4年目以降が同額になるのは保証率・改定償却率の仕組みです(1円の備忘価額は省略)。

答案への落とし込み:3ステップと足し戻しの型

計算問題の流れは、次の3ステップです。

  1. 償却方法を確認する(指差し確認するくらいでちょうどいい)
  2. 各期の減価償却費を出す
  3. 税引後利益に足し戻す

足し戻しの骨格は、次の形です。先に型を書いてから数字を当てはめると、計算ミスが減ります。

  • 税引前利益 ×(1 − 税率)+ 減価償却費
  • (売上 − 費用)×(1 − 税率)+ 非現金支出費用

税金の計算上は費用として引いておきながら、キャッシュの動きとしては出ていっていないので、最後に足し戻して帳尻を合わせるイメージです。

たとえば(数字のイメージ)

売上の増加が600万円、現金支出のある費用が200万円、減価償却費が200万円、税率30%とします。税引前利益は200万円、税金は60万円、税引後利益は140万円。ここに減価償却費200万円を足し戻して、キャッシュフローは340万円です。なお「(600 − 200)×(1 − 0.3)+ 200 × 0.3」と、償却費の節税効果で考えても同じ340万円になります。

売上の増加+600現金支出の費用−200減価償却費−200税引前利益200税金(30%)−60税引後利益140減価償却費を足し戻す+200キャッシュフロー340単位:万円(黄色は現金が出ていかない費用の動き)
税引後利益140に、現金が出ていない減価償却費200を足し戻して、キャッシュフロー340になります。

売却が絡むときは

設備を売却する設問では、売却時点の帳簿価額(取得価額から償却済みの額を引いた未償却の残高)と、実際の売却価額との差額を売却損益として認識し、これもキャッシュフローの計算に反映させます。減価償却費の計算だけでは終わりません。

反映のさせ方には注意が必要です。現金として入ってくるのは売却価額そのものです。売却損益は帳簿上の差額ですが、税金の計算には効いてくるので、売却益なら税金が増え、売却損なら税金が減る分を加減します。たとえば帳簿価額300万円の設備を400万円で売れば、売却益100万円に税率30%で税金30万円、手取りは370万円です。

記述問題では理由を一言

記述問題が出たら、「減価償却費は現金支出を伴わない費用であるため、税引後利益に加算してキャッシュフローを算出する」という理由づけを一言添えます。手順だけでなく「なぜそうするのか」まで書くと、評価されやすくなります。

私、まさに「定率法で」と書いてあるのに、気づかず定額法で計算したことがあります。

よくあるミスです。だから計算に入る前に、償却方法を指差し確認するくらいの意識でちょうどいいんです。

動画にない補足:税法上の扱い

動画は事例Ⅳの計算に絞った内容でしたので、実務・税法の側から見た注意点を短く補足します(現行の法人税法施行令にもとづく整理です)。試験では、あくまで問題文の指定が最優先です。

  • 残存価額:平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産は、税法上、残存価額を0として計算し、最後に1円の備忘価額を残します。10%の残存価額は、それ以前の旧制度の考え方です。問題文が「10%」と指定していれば、それに従います。
  • 定率法の保証率と改定償却率:200%定率法(平成24年4月1日以後に取得した資産)では、償却額が「償却保証額(取得価額 × 保証率)」を下回った年から、改定取得価額に改定償却率を掛ける方式に切り替わります。耐用年数5年なら、定額法の償却率0.200、定率法の償却率0.400、改定償却率0.500、保証率0.10800です。先ほどのグラフで4年目が108になるのは、この切り替えのためです。二次試験の計算問題では、この切り替えまで求められるより、「償却率を2倍にした率を残高に掛ける」ことが基本と考えてよいでしょう。
  • 生産高比例法:税法上、選べるのは鉱業用の減価償却資産など限られた資産です。試験では、設備の性質に関する記述と、問題文の指定から判断します。

混同しやすい3つのポイント

  • 定額法と定率法の推移パターンの取り違え:定額法は毎期一定、定率法は逓減。計算しながら、つい混同してしまうミスです。「まっすぐな線」と「曲線」のイメージで確認します。
  • 償却方法が明示されているのに、慣れた定額法で計算する:指定を読まずに手が動いてしまうパターンです。計算前の指差し確認で防げます。
  • 生産高比例法の見落とし:出題頻度は定額法や定率法ほど高くありませんが、使用量に応じて劣化する設備の性質が問題文にヒントとして書かれていることが多いので、航空機・鉱業設備といったキーワードで思い出せるようにしておきます。

まとめ

  • 減価償却は、キャッシュフローを出すための通過点。新規設備投資の問題でほぼ毎年前提になる。
  • サインは4つ(数値の提示、償却方法の明示、使用量で減る設備、途中・経過後の売却)。定額法は毎期一定、定率法は逓減、生産高比例法は使った分だけ。
  • 指定の方式は絶対に変えず、「方式の確認 → 各期の償却費 → 税引後利益への足し戻し」。売却があれば売却損益の扱いまで計算し切る。

試験ではここに注目

  • 計算に入る前に、問題文の償却方法と残存価額(10%か0か)を指差し確認する
  • 「税引前利益 ×(1 − 税率)+ 減価償却費」の型を先に書いてから、数字を当てはめる
  • 記述では「現金支出を伴わない費用なので加算する」という理由を一言添える

問題文の方式のまま最後まで計算する。この一点だけでも意識できれば、事例Ⅳの得点は安定してきます。

NEXT

続けて聞く