パレート図と重点管理の発想
事例Ⅲ 第4回
「今回は、事例Ⅲの品質管理の場面でよく出てくる『パレート図』という考え方を扱います」。動画はこの一言から始まります。このページでは動画の流れにそって、パレート図の考え方、二次試験での出方、ABC分析との共通点、与件文の着眼点、解答の型、特性要因図との違い、数値を作らない注意をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
パレート図とは
動画は、事例Ⅲの品質管理の場面でよく出てくるパレート図という考え方を扱います。最初に断りを入れたのは聞き手です。パレートと聞くと、経済学のパレート最適とか、マーケティングでよく言われる二割の顧客が八割の売上を作るという話を思い浮かべる方もいるかもしれないが、今回はそれとは別物だ、と言います。
講師の説明では、事例Ⅲで出てくるパレート図は品質管理の代表的な手法の一つで、いわゆるQC七つ道具の一つに数えられるものです。発想はシンプルです。不良項目や問題項目を、発生した件数や金額が多い順に並べて棒グラフにします。さらに、その累積の比率を折れ線で重ねて示します。
聞き手が注目したのは、並べて終わりではなく累積比率まで示すところでした。講師もこれを受けて、累積比率を見ると、上位のごく一部の項目だけで全体の大部分を占めているということが視覚的にわかる、と説明します。
並べて終わりではなく、累積比率まで示すところがポイントですよね。
そうです。累積比率を見ると、上位のごく一部の項目だけで全体の大部分を占めているということが視覚的にわかります。
だからこそ、限られた人員や時間の中で、どの項目から優先的に対処すべきかを絞り込むための図として使われます。ここまでを整理すると、次のようになります。
パレート図の整理
- 不良項目や問題項目を、件数や金額が多い順に並べた棒グラフ
- その累積の比率を折れ線で重ねて示す
- 上位のごく一部の項目だけで全体の大部分を占めることが視覚的にわかる
- 限られた人員や時間の中で、優先的に対処する項目を絞り込むために使う
二次試験での出方
では、二次試験でこの論点はどう出るのか。聞き手の整理はこうです。パレート図そのものを作図させる問題は、あまり多くありません。それよりも、複数の不良項目や問題が発生している企業が題材になります。その中から重点的に対処すべき問題をどう特定し、改善につなげるかという設問の中で、この考え方を使う場面が多い、というわけです。
講師はこれを受けて、論点の中身をこうまとめます。図の書き方を覚えることが目的ではありません。多くの不良項目の中から影響の大きいものに絞って対策を打つという重点管理の発想を、解答にどう活かすかが問われている、ということです。
二次試験でこの論点がどう出るかというと、パレート図そのものを作図させる問題はあまり多くありません。
つまり、図の書き方を覚えることが目的ではなくて、多くの不良項目の中から影響の大きいものに絞って対策を打つという、重点管理の発想を解答にどう活かすかが問われているということですね。
ABC分析との共通点
ここで聞き手が、一次の生産管理や在庫管理で学ぶABC分析の考え方にも通じる、と指摘します。品目や項目を重要度の高い順にA・B・Cのグループに分けて、Aグループに管理を集中させるという発想でした。
講師は「その通り」と受けます。ABC分析は在庫や品目の管理に使う枠組みでしたが、根っこにある考え方は同じです。限られた経営資源をすべての対象に均等に配分するのではなく、影響の大きい少数の対象に優先的に配分する。この点で共通しています。
これは一次の生産管理や在庫管理で学ぶABC分析の考え方にも通じますね。
その通りです。あちらは在庫や品目の管理に使う枠組みでしたが、根っこにある考え方は同じです。
講師は、この共通点を意識しておくと、事例Ⅲの解答でも自然に重点管理という言葉が出てくるようになる、と言います。
与件文のサイン
次は、与件文のどんな記述が出てきたら、この論点を疑えばいいのかです。聞き手の問いに、講師は着眼点を4つ挙げます。
- 複数の種類の不良や問題が発生していて、どれから手をつけるべきか整理されていないという記述。
- 不良の原因や種類ごとの発生件数、あるいは損失金額といったデータが、与件文の本文や図表として示されている記述。
- 品質改善活動を行ってはいるものの、対策が場当たり的で効果が限定的だという記述。
- 限られた人員や時間の中で改善活動に取り組まなければならないという記述。
講師は4つ目について、重点管理をしないと手が回らないという状況を示唆している、と補足しています。
では、与件文のどんな記述が出てきたら、この論点を疑えばいいでしょうか。
いくつか着眼点があります。まず、複数の種類の不良や問題が発生していて、どれから手をつけるべきか整理されていないという記述です。
図表がある場合・ない場合
聞き手は続けて、図表としてデータが示されている場合と、文章の中だけで示されている場合とで、読み取り方は変わるのかを尋ねます。講師の答えは、基本の発想は同じ、というものです。すべての問題に均等に対処しようとするのではなく、影響の大きい少数の項目に絞って対処する。この重点管理の発想で整理します。
図表に不良項目ごとの発生件数や損失金額のデータがあれば、その中で発生比率が高い上位の項目、つまり全体の大部分を占める項目を特定して、そこに改善の優先順位を置く、という流れです。
では、データが数値としてはっきり示されていない場合はどうするのか。これも聞き手の問いです。講師は、与件文の記述の中に「特に頻発している」とか「特に影響が大きい」といったニュアンスで書かれている問題があれば、それを優先項目として拾っていく、と答えます。数値の裏付けがなくても、与件文の書きぶりから重みづけを読み取る姿勢が大事だ、ということです。
| 与件文の状況 | 読み取り方 |
|---|---|
| 件数・金額のデータが | 発生比率が高い上位の項目を特定し、優先順位を置く |
| 数値がはっきり | 「特に頻発」「特に影響が大きい」と書かれた問題を優先項目に拾う |
データが数値としてはっきり示されていない場合はどうすればいいですか。
その場合でも、与件文の記述の中に「特に頻発している」とか「特に影響が大きい」といったニュアンスで書かれている問題があれば、それを優先項目として拾っていきます。
講師は最後にこう念を押します。図表がない年度もあるので、数値がなければ使えない論点だと思い込まないようにしてください、と。
解答の型
聞き手が「実際に解答へ落とし込むときの型を教えてください」と頼み、講師が型を示します。問題点や改善提案を問われた場合、まず因果関係を書きます。書き方は、複数の不良や問題が発生しているが対策の優先順位が定まっていない。その結果、重点項目に絞った対策ができておらず、改善効果が限定的になっている、という形です。
そのうえで、対応策として三つの流れを提示します。
対応策の3段階
- 一つ目:発生頻度や影響度の大きい項目を特定して、優先順位をつける
- 二つ目:その重点項目に、対策の人員や時間を集中的に投下する
- 三つ目:対策を打った後に効果を測定し、次に影響の大きい項目へ順次対処していく
効果測定まで書く理由
聞き手は、三つ目の効果測定まで書くのはなぜ大事なのかを尋ねます。講師の説明は、次のとおりです。一度対策を打って終わりにしてしまうと、その効果が本当にあったのかわからないままになります。次にどの項目へ手を広げるべきかも判断できません。
効果を測定してから次の項目へ順次対処するという流れを書くことで、改善活動が一回きりで終わらず、継続的に回っていくという姿勢を示せます。
三つ目の効果測定まで書くのは、なぜ大事なんでしょうか。
一度対策を打って終わりにしてしまうと、その効果が本当にあったのかわからないままになりますし、次にどの項目へ手を広げるべきかも判断できません。
講師は、単に「品質管理を徹底する」という抽象的な解答よりも、重点項目に絞って対策するという視点と、その後の展開まで書いたほうが、評価につながりやすくなる、と言います。
特性要因図との違い
最後に、聞き手が混同しやすいポイントを整理したいと切り出します。講師が挙げたのは、特性要因図との違いです。パレート図が扱っているのは、どの問題から優先的に対処すべきかという優先順位づけ。特性要因図が扱っているのは、その問題がなぜ起きているかという原因分析です。役割がまったく違います。
聞き手の求めに応じて、講師は特性要因図がどういう図かも説明します。魚の骨のような形をした図で、問題という結果を右端に置き、そこに向かって原因になりそうな枝を体系的に伸ばしていきます。パレート図が「どれから手をつけるか」という順位づけの図だとすると、特性要因図は「なぜそれが起きているか」を枝分かれさせながら掘り下げていく図、という違いです。
| 比べる点 | パレート図 | 特性要 |
|---|---|---|
| 扱うこと | 優先順位 | 原因分析 |
| 問い | どれから手をつけるか | なぜ起きているか |
| 図の形 | 棒グラフと累積比率の折れ線 | 魚の骨のような形 |
講師は、図の見た目もまったく違うので、混同したままだと解答の方向性そのものがずれてしまう、と注意を促します。
特性要因図がどういう図なのかも、簡単に触れておいたほうがよさそうですね。
特性要因図は、魚の骨のような形をした図で、問題という結果を右端に置き、そこに向かって原因になりそうな枝を体系的に伸ばしていく図です。
パレート図と特性要因図はセットで
聞き手は、この二つはセットで語られることが多い、と言います。講師も同意して、実務でも二次試験の解答の流れとしても、まずパレート図の発想で重点項目を絞り込み、次に特性要因図の発想でその原因を掘り下げる、という順序で理解しておくのがおすすめだと話します。
どちらか片方の知識だけで解答を組み立てようとすると、優先順位づけの視点が抜けたり、逆に原因分析の視点が抜けたりしてしまいます。両方をセットで押さえておいてください、というのが講師の念押しです。
とはいえ、この二つはセットで語られることが多いですよね。
そうですね。実務でも二次試験の解答の流れとしても、まずパレート図の発想で重点項目を絞り込み、次に特性要因図の発想でその原因を掘り下げる、という順序で理解しておくのがおすすめです。
与件文にない数値を作らない
もう一つ、聞き手が気にしていた点があります。与件文に発生件数や損失金額の数値が出ていないときに、答案の中で数値を作ってしまいそうになることはないか、という問いです。
講師は、ここは注意が必要だと言います。与件文に無い具体的な件数や金額を、答案の中で作ってはいけません。数値が与えられていない場合は、「発生頻度や影響度の大きい項目」というように、順位づけの発想そのものを言葉で示せば十分です。図表の有無にかかわらず使える論点だという点も、あわせて覚えておいてほしい、とのことです。
与件文に発生件数や損失金額の数値が出ていないときに、答案の中で数値を作ってしまいそうになることはありませんか。
そこは注意が必要なところです。与件文に無い具体的な件数や金額を答案の中で作ってはいけません。
事例Ⅲ全体のテーマとの重なり
聞き手は、事例Ⅲでこの論点が繰り返し問われるのは、限られた人員や設備という経営資源の中で、どう生産性や品質を改善していくかという事例全体のテーマと重なっているからでもある、と指摘します。講師は「おっしゃる通りです」と受けて、そのまま今日のまとめに入ります。
試験ではここに注目
- 複数の不良や問題が発生し、どれから手をつけるか整理されていないか
- 件数や損失金額のデータが、本文や図表にあるか。なければ書きぶりの重みづけ
- 因果関係のあとに、優先順位づけ・集中投下・効果測定の3段階が書けているか
- 与件文に無い具体的な件数や金額を作っていないか
まとめ
動画の整理
- パレート図は、不良項目を発生頻度の大きい順に並べて累積比率を示し、重点的に対処すべき項目を絞り込むための図
- 二次試験では作図そのものよりも、限られた人員と時間の中で重点項目に絞って対策を集中させる発想を、解答の因果と対応策に落とし込めるかが問われる
- 与件文の着眼点は4つ:複数の不良や問題で優先順位が未整理、件数・金額のデータ、場当たり的な対策、限られた人員や時間
- 対応策は3段階:優先順位をつける、重点項目に集中投下する、効果を測定して次へ順次対処する
- 特性要因図は原因分析を担う図。パレート図とはセットで、しかし役割は別物として整理する
- 与件文に無い数値は作らず、順位づけの発想を言葉で示す
講師は、ここまで押さえておけば十分だと締めくくります。図の書き方より、重点管理の発想を因果と対応策に落とし込むこと。そして、パレート図が優先順位づけ、特性要因図が原因分析という役割の違いを、セットで整理しておくこと。事例Ⅲの解答で、この2点を意識してみてください。
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