効用関数と無差別曲線
仕事終わりの1杯目のビールは最高なのに、3杯目は「まあ、こんなものか」。この感覚、実は経済学のグラフでちゃんと説明できます。このページでは動画の流れにそって、効用関数と無差別曲線を、グラフが苦手な人にもわかるようにまとめました。
この講義でわかること
- 「効用」は満足度のこと。消費者は満足度がいちばん高くなるように行動すると考える
- 限界効用:1つ増やしたときに満足度がどれだけ増えるか。だんだん小さくなる理由
- 無差別曲線:満足度が同じになる組み合わせを結んだ線
- 無差別曲線が「右下がり」で「原点に向かってふくらむ(原点に凸)」理由
- 手袋、硬貨、ケーキとビール、弁当とゴミ。形がちがう特殊な無差別曲線
動画の内容をやさしく解説
3行でいうと
- 効用=満足度。2つの物の量と満足度の関係を「山」の形で表したものが効用関数です。
- 無差別曲線は、その山の「等高線」。同じ線の上なら、どの組み合わせでも満足度は同じです。
- ふつうの無差別曲線は右下がりで、原点に向かってふくらみます(原点に凸)。
効用と効用関数
物やサービスを消費したときの満足度を、経済学では効用といいます。そして、「消費者は効用がいちばん大きくなるように行動する」と考えます。いつも自分がいちばんハッピーになれる選び方をしている、という前提です。
ビール(財X)と焼き鳥(財Y)をどれだけ消費すると、満足度がどれくらいになるか。この関係を表したものが効用関数です。
イメージ
横と奥行きにビールと焼き鳥の量、高さに満足度をとると、効用関数は山のような形になります。高いところほど満足度が高い。立体のままだと扱いにくいので、ふだんは地図の等高線のように、同じ高さの点を線で結んで平面で表します。
限界効用:1杯目と3杯目のちがい
限界効用(MU)は、ある物を1つ増やしたときに、満足度がどれだけ増えるかです。
満足度の山を縦にスパッと切って、横から断面を見てください。ふもとは坂が急なので、1歩進むと高さがぐっと上がります(限界効用が大きい)。奥へ進むほど坂がゆるやかになって、1歩進んでもあまり高くなりません(限界効用が小さい)。
これが「1杯目のビールは最高、3杯目はそうでもない」の正体です。飲むほど満足度は増えるけれど、増え方はだんだん小さくなる。これを限界効用逓減といいます。
無差別曲線:満足度が同じ組み合わせ
ある人にとって、次の3つの満足度がまったく同じだったとします。
- ビール4杯と焼き鳥1本
- ビール2杯と焼き鳥3本
- ビール1杯と焼き鳥10本
このように、満足度が同じになる組み合わせを結んだ線が無差別曲線です。どれを選んでも満足度に差がない(無差別)ので、こう呼びます。効用関数の山を、ある高さで横に切ったときの等高線にあたります。
なぜ右下がりになるの?(単調性)
ビールも焼き鳥も両方増やしたら、もっと満足しますよね? なんで右下がりなんですか?
そう、両方増やしたら満足度は上がってしまいます。でも無差別曲線は「満足度が同じ」線でしたよね。
あ、そうか。ビールを増やしたら、そのぶん焼き鳥を減らさないと同じにならない。
その通りです。「どちらか一方を増やせば満足度が上がる」という性質を単調性といいます。単調性があるから、無差別曲線は右下がりになるんです。
なぜ原点に向かってふくらむの?(限界代替率の逓減)
無差別曲線の傾き(接線の傾きの大きさ)を限界代替率(MRS)といいます。満足度を変えずに片方を1つあきらめるなら、もう片方がどれだけ必要か、という「交換レート」のようなものです。
たとえば
さっきの3つの組み合わせで見てみましょう。ビールが2杯しかないとき、1杯あきらめるなら焼き鳥が7本も必要でした(3本→10本)。ビールが少ないときの1杯はとても貴重なんです。
でも、ビールが4杯あるときは、2杯あきらめても焼き鳥2本(1本→3本)で足ります。1杯あたりなら焼き鳥1本です。たくさんあるときのビールは、そこまで貴重ではないんですね。
このように、たくさん持っている物ほど1つあたりの価値が下がり、交換レートがだんだん小さくなります。これを限界代替率逓減といいます。そのため、ふつうの無差別曲線は、原点に向かってふくらんだ形(原点に凸)になります。
無差別曲線どうしのルール
- 満足度の高さごとに、無差別曲線は何本でも引ける
- 満足度のちがう無差別曲線は交わらない(高さのちがう等高線が交わらないのと同じ)
- 原点から遠い無差別曲線ほど、満足度が高い
形がちがう、特殊な無差別曲線
- L字型(完全補完財):右の手袋と左の手袋のように、セットでないと意味がない組み合わせ。右手だけ増えても満足度は上がりません。
- 直線(完全代替財):500円玉1枚と100円玉5枚のように、どちらでもかまわない組み合わせ。交換レートがいつも同じなので限界代替率は一定で、線はまっすぐになります。
- 原点に凹:ケーキとビールのように、一緒に食べるより、どちらかにかたよったほうがうれしい組み合わせ。
- 右上がり:弁当と、食べたあとの容器(ゴミ)のように、片方は増えるとうれしく、もう片方は増えると困る組み合わせ。ゴミが増えたぶんの不満を埋めるには弁当をもっと増やす必要があるので、右上がりになります。所得と労働時間のように、増えるほどつらいもの(働く時間)が入る組み合わせも、単調性が成り立たない例です(軸を「余暇と所得」にとれば、ふつうの右下がりの無差別曲線になります)。
試験ではここに注目
- 右下がり=単調性、原点に凸=限界代替率逓減
- 満足度のちがう無差別曲線は交わらない、原点から遠いほど効用が大きい
- L字型=完全補完財、直線=完全代替財(限界代替率が一定)
形を丸暗記するより、「山の等高線」と「その財の性質」から形を考えるクセをつけると、見たことのないグラフにも対応できます。

