聞き流しラボby KUFUYA
中小企業診断士 1次試験

7科目を、聞き流しで一周する。

企業経営理論から中小企業政策まで、1次試験の論点を科目別の講義動画にまとめています。過去問の解説も1問ずつそろえています。

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診断士 聞き流しラボ

民法の基礎知識と法律行為

経営法務・民法 00119分5秒2026年4月8日公開

「握手しただけで、1000万円の契約って成立するの?」動画はこんな問いから始まります。答えは、実は「成立する」。このページでは動画の流れにそって、民法のいちばん基本のところを、はじめての人にもわかる言葉でまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

POINT

この講義でわかること

  • 民法は「すべての基本になるルール」で、会社法などは「その分野専用のルール」だということ
  • 民法の3つの大原則(所有権絶対・契約自由・過失責任)と、それがあると何がうれしいのか
  • 「物権」と「債権」のちがいと、取引先が倒産したときに差がつく理由
  • 「法律行為」とは何か、3つの見方での分け方
  • 遺言は書き方が厳しいのに、ふつうの契約は口約束でも成立する理由
NOTE

動画の内容をやさしく解説

3行でいうと

  • 民法は、社会のルールの「土台(OS)」。会社法などの特別法に書かれていない部分は、民法が受け持ちます。
  • 「自分の物は守られる」「誰と契約するかは自由」「わざと・不注意でなければ責任を負わない」の3原則が、安心して商売できる社会を支えています。
  • ふつうの契約は口約束でも成立します。だから冒頭の「握手だけの1000万円の取引」も、契約として成立しています。

民法ってそもそも何?

民法は、人と人とのあいだのルールを広く決めた法律です。物の売り買い、お金の貸し借り、家族のことまで、暮らしとビジネスの基本がここに書かれています。

一方で、会社法や商法のように「この分野だけ」を細かく決めた法律もあります。こちらを特別法、民法のような基本の法律を一般法といいます。特別法にルールがあればそちらが優先され、書かれていないところは民法で決まります。

たとえるなら

民法はスマートフォンのOS、会社法や商法はあとから入れる専用アプリ。アプリで対応できないことは、いつもOSのルールで動きます。

民法の3つの大原則

民法の土台には、3つの大きな考え方があります。

① 所有権絶対の原則

自分の物は自分の物。国も他人も、勝手に取り上げることはできません。もし「この在庫、今日からうちの物ね」と持っていかれる社会だったら、怖くて仕入れも設備投資もできませんよね。

② 契約自由の原則

誰と、どんな内容で契約するか。契約しないことも含めて、自分で自由に決められます。A社から仕入れるかB社から仕入れるかを、国に命令されることはありません。

③ 過失責任の原則

人に損害を与えても、故意(わざと)か過失(不注意)がなければ、賠償する責任を負いません。

借りている機械が、大地震で壊れてしまったら? 私の操作ミスではないんですけど…

故意も過失もないので、この原則で考えると、賠償する責任はありません。

よかった。もし何でも弁償だったら、怖くて機械なんて借りられないですね。

そうなんです。3つの原則は、私たちをしばるためではなく、安心して動けるようにするためのルールなんです。

民法の中身は「財産」と「家族」

民法は大きく、お金や物のルール(財産法)と、家族のルール(家族法)に分かれます。ビジネスで特に大事なのは財産法で、さらに3つに分かれます。

  • 総則:民法全体に共通するルール。意思能力や代理など。ゲームを始める前の「基本操作の説明書」のようなものです。
  • 物権:物に対する権利のルール。所有権や占有権など。
  • 債権:特定の人に「〇〇してください」と求める権利のルール。契約や不法行為から生まれます。

家族法は、結婚や親子のルールである親族と、亡くなった人の財産を引き継ぐルールである相続に分かれます。診断士として特に大事なのは、会社の事業承継(社長の交代)とつながる相続です。

「物権」と「債権」のちがい

ここがいちばんつまずきやすいところです。自転車で考えてみましょう。

  • 物権:「この自転車は私の物だ」と、世の中の誰に対しても言える権利
  • 債権:「約束どおり、あの自転車を渡してください」と、特定の相手にだけ言える権利

差が大きく出るのは「相手が倒産したとき」

工場で使う機械を1000万円で注文して、代金も先に払ったとします。このとき、あなたが持っているのは「機械を渡してください」という債権です。

ところが、納品の直前にメーカーが倒産してしまいました。債権は「約束を守って」と言える権利にすぎないので、ほかの債権者と同じ列に並んで、残った財産を分けてもらうのを待つしかありません。機械は手に入らないかもしれません。

でも、契約で「代金を払った時点で所有権が移る」と決めていて、機械の所有権(物権)がすでにあなたに移っていたら、話は変わります。「それは私の機械です」と言って取り戻せる可能性があるのです(実際には、引渡しなどの「対抗要件」とよばれる条件もかかわります)。だから実務では、「所有権がいつ移るか」がとても大事になります。

「法律行為」ってなに?

法律行為とは、「こうしたい」という意思表示をきっかけに、法律がその結果を認めてくれる行為のことです。

たとえるなら

エクセルのマクロ。「こう計算したい」と入力してボタンを押すと、裏でプログラムが動いて結果が決まります。意思表示が入力、法律がプログラムです。

法律行為は、3つの見方で分けられます。

見方① 誰と誰の意思表示か

  • 契約:向かい合う2人以上の意思表示がかみ合って成立します(「売ります」「買います」)。
  • 単独行為:1人だけの意思表示で成立します(取消し、遺言など)。
  • 合同行為:同じ目的に向かう2人以上の意思表示で成立します(会社の設立など)。

イメージ

契約は、立場のちがう2人が向かい合って握手する形。合同行為は、何人かが肩を組んで同じ山頂を目指す形です。

取消しって、相手の同意なしに1人でできるんですか? 相手は困りませんか?

たとえば未成年者が親の同意なしに結んだ契約は、原則として一方的に取り消せます(おこづかいの範囲の買い物など、例外もあります)。相手の同意が必要だとしたら、悪い業者にだまされた未成年者を守れないからです。

見方② 決まった形式が必要か

  • 要式行為:法律で決まった形式が必要です。代表は遺言。たとえば自筆証書遺言は書き方が細かく決まっていて、外れると無効になります。
  • 不要式行為:形式の決まりがありません。ふつうの契約は、書面がなくても、口約束でも成立します(民法522条2項)。

遺言はそんなに厳しいのに、何千万円の契約が口約束でOKって、バランスがおかしくないですか?

遺言が効力を持つのは、本人が亡くなったあとですよね。「本当はどうしたかったの?」と本人に確かめられないので、偽造を防ぐために形式を厳しくしているんです。

なるほど。じゃあ、契約がゆるいのは?

コーヒー1杯買うたびに書面とハンコが必要だったら、商売が回りませんよね。取引のスピードを大事にしているんです。契約書は、あとで「言った・言わない」にならないための証拠です。

ただし、保証契約のように、法律で書面が必要とされている契約もあります。

見方③ 何を求めるか

  • 債権行為:売買契約のように、「機械を渡す」という約束(債権)を生む行為
  • 物権行為:所有権を移す・抵当権をつけるのように、物の権利(物権)を直接生んだり移したりする行為

試験ではここに注目

  • 一般法と特別法の関係(特別法が優先)
  • 物権は誰にでも主張できる、債権は特定の相手にだけ主張できる
  • 契約・単独行為・合同行為の例(取消し・遺言は単独行為、会社の設立は合同行為)
  • 遺言は要式行為、ふつうの契約は不要式行為

用語を丸暗記するより、「なぜこのルールがあるのか」をセットで覚えると、ひっかけの選択肢に強くなります。

冒頭の問いの答え

握手だけの1000万円の取引は、「売ります」「買います」の意思表示がかみ合っていれば、契約として成立しています。ふつうの契約は不要式行為だからです。ネットで「購入する」ボタンを押すのも、契約の申込みという意思表示です。お店の承諾(注文確定のお知らせなど)とかみ合えば、書面がなくても契約が成立します。

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