分限処分と懲戒処分の違いとは?休職と停職・降給と減給を整理
「公務員は簡単にはやめさせられない、ということは聞いたことはありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。安定した仕事というイメージは、じつは単なるイメージではなく、法律の仕組みとして裏付けがあります。このページでは動画の流れにそって、身分保障、分限処分と懲戒処分の違い、人事行政の機関、給与と勤務条件の決め方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
3行でいうと
- 公務員は、法律などに定める場合を除いて、本人の意思に反して免職や休職をされません(身分保障)。意に反する処分は分限処分と懲戒処分の2つで、どちらも行政処分です。
- 分限処分は「職責を十分に果たせない場合」の処分で、免職・降任・休職・降給。懲戒処分は「義務違反への制裁」で、免職・停職・減給・戒告です。
- 休職と停職、降給と減給は、中身が同じで呼び名だけがちがいます。見分けるコツは、結果ではなく理由を見ることです。
公務員は「簡単にやめさせられない」のはなぜ?
公務員は、法律などに定める場合を除いて、本人の意思に反してやめさせられたり、休職させられたりすることがありません。これを公務員の身分保障といいます。本人が嫌だと言っているのに、勝手にやめさせることはできない、ということです。
ただし、大事なのは「法律などに定める場合を除き」という部分です。絶対にやめさせられないわけではありません。裏を返せば、法律などに定めがある場合には、本人の意思に反する処分ができる、ということになります。
その「定めがある場合」というのは、どんな場合なんですか?
国家公務員法や地方公務員法が、公務員の身分に関する処分として2つを定めています。1つが分限処分、もう1つが懲戒処分です。
前回、一般的な公務員法が適用されるのは一般職だ、というお話がありましたよね。
よく覚えていましたね。今日の身分保障や2つの処分も、一般職の公務員が舞台です。特別職の人たちは、また別の扱いになります。
この2つの処分に共通する土台が、もう1つあります。どちらも行政処分と解されていて、だからこそ審査請求の対象になります。処分を受けた人が、不服を申し立てられるということです。
分限処分:職責を十分に果たせないときの処分
分限処分とは、公務員が職責を十分に果たすことができない場合に、その身分に関してなされる処分です。
勘違いしやすいのですが、悪いことをしたかどうかは関係ありません。動画の例は2つです。
- 心身の故障のため、職務の遂行に支障がある場合(体調の問題で、仕事が難しくなったとき)
- 定員の改廃などによって、廃職や過員が生じた場合(組織の枠組みが変わって、その職そのものがなくなったり、人が多くなりすぎたりしたとき)
どちらも、本人の落ち度とは関係がありません。本人のせいでなくても、分限処分はあり得る。ここが最大のポイントです。
参考までに、条文はこのほかに、勤務実績がよくない場合と、その職に必要な適格性を欠く場合も、降任や免職の事由として挙げています(地方公務員法28条1項、国家公務員法78条)。休職の事由には、心身の故障による長期の休養と、刑事事件で起訴された場合があります(地方公務員法28条2項、国家公務員法79条)。また、地方公務員法27条2項は、降任と免職は法律で定める事由、休職と降給は法律または条例で定める事由でなければ、意に反してされないとしています。
分限処分の4つの種類
- 免職:公務員の身分を失わせる(いちばん重い)
- 降任:現在より下位の職を命じる(役職が下がる)
- 休職:身分を維持したまま、職務に就かせない(身分は残るが仕事はしない)
- 降給:給与を減額する
懲戒処分:義務違反への制裁
懲戒処分とは、公務員が犯した義務違反に対する制裁として、その身分に関してなされる処分です。制裁ですから、こちらは本人に落ち度がある場合です。動画が挙げる事由は次のとおりです。
- 法令や職務上の義務に違反した場合(ルール違反)
- 全体の奉仕者としてふさわしくない非行があった場合(職務そのものでなくても、ふさわしくない行いがあれば対象になる)
懲戒処分の4つの種類
- 免職:公務員の身分を失わせる
- 停職:身分を維持したまま、職務に就かせない
- 減給:給与を減額する
- 戒告:行為を戒めて、反省を促す(身分や給与に手をつけない、性質のちがう軽い処分)
そして、懲戒処分にはもう1つ大事な決まりがあります。懲戒に付されるべき事件が刑事裁判所に係属している間であっても、人事院、または人事院の承認を経て任命権者は、同一事件について適宜に懲戒手続を進めることができます(国家公務員法85条1項)。裁判が終わってからでないと処分できない、というわけではありません。裁判の結果を待たなくてもよく、刑事手続とは別の手続として動かせます。
4つずつ並べて見比べる
ここで、分限処分と懲戒処分の4つずつを、横に並べてみましょう。
分限の休職と、懲戒の停職。どちらも「身分を維持したまま職務に就かせない」で、ほとんど同じ説明に聞こえます。
いいところに引っかかりましたね。中身は同じで、分限なら休職、懲戒なら停職と呼び分けているだけです。給与を減額する降給と減給も同じで、分限なら降給、懲戒なら減給です。
なんだか、わざと間違えさせに来ているみたいです。
実際、試験では言葉を入れ替える形でよく問われます。
並べると、いくつか気づくことがあります。
- 免職だけが、両方にあります。中身はどちらも「身分を失わせる」ですが、そこに至る理由がちがいます。
- 降任は分限処分にしかありません。職責を果たせるかという話なので、下位の職を命じるという手段が出てきます。
- 戒告は懲戒処分にしかありません。反省を促す処分は、制裁の側にしかないのです。
見分けるコツは「理由」を見ること
見た目の結果が同じなので、見分ける軸は処分の理由です。能力や組織の事情によるのか(分限)、義務違反への制裁なのか(懲戒)を見ます。
スポーツのチームでたとえると
けがをして試合に出られない選手を、いったん外して調整させるのが分限のイメージです。責めているわけではなく、いまは役割を果たせないから外すのです。一方、ルールを破った選手に出場停止を科すのが懲戒のイメージです。こちらは制裁として外します。外すという結果は同じでも、理由がまったくちがいます。
処分に不服があるとき:人事行政の機関
こうした処分に不服がある場合は、どこに申し立てるのでしょうか。ここで、人事行政を担当する組織の話につながります。
- 国:人事院が置かれています。人事院は内閣の所轄の下に設置されています(国家公務員法3条1項)。
- 地方公共団体:規模に応じて、人事委員会または公平委員会が置かれます。
人事委員会は都道府県と政令指定都市に置かれ、政令指定都市以外の人口15万以上の市と特別区は人事委員会または公平委員会、人口15万未満の市町村などは公平委員会を置きます(地方公務員法7条)。公平委員会は、規模の小さい地方公共団体に置かれる、人事委員会より権限をしぼった組織です(勤務条件の措置要求や不利益処分の審査請求などを担当します)。
これらの機関は、勤務条件の改善を求める措置の要求を審査したり、懲戒処分などについてなされた審査請求の審査を担当したりします。不利益な処分を受けた職員は、国では人事院に、地方では人事委員会または公平委員会に、審査請求をします(国家公務員法90条1項、地方公務員法49条の2第1項)。
給与と勤務条件の決め方
最後に、給与と勤務条件の決め方です。国家公務員の給与は法律で定めることとされています(国家公務員法63条)。勤務条件に関して必要な事項は、人事院規則で定めることができます(同法106条1項)。地方公務員の給与や勤務条件は条例で定めます(地方公務員法24条5項)。
国は「法律」、地方は「条例」という対応になっているんですね。
その並びで覚えると混ざりにくいですよ。国の勤務条件の細かいところは、人事院規則です。
まとめ
- 公務員は、法律などに定める場合を除き、意に反して免職や休職をされない(身分保障)。
- 身分に関する処分は分限処分と懲戒処分の2つ。どちらも行政処分で、審査請求の対象になる。
- 分限処分は職責を十分に果たせない場合の処分で、免職・降任・休職・降給。懲戒処分は義務違反への制裁で、免職・停職・減給・戒告。
- 人事行政は、国では人事院、地方では規模に応じて人事委員会または公平委員会が担当。給与は国では法律、地方では条例で定める。
試験ではここに注目
- 身分保障は「法律などに定める場合を除き」。絶対にやめさせられないわけではない。
- 分限は「職責を果たせない場合」(本人の落ち度は不要)、懲戒は「義務違反への制裁」。理由で見分ける。
- 休職と停職、降給と減給は、中身が同じで名前だけちがう。「降任は分限だけ、戒告は懲戒だけ」もセットで押さえる。
- 人事院は内閣の所轄の下。公平委員会は規模の小さい地方公共団体に置かれる。給与は国は法律、地方は条例。
「分限処分として停職を命じた」のように、処分の名前を入れ替えた選択肢は誤りです。並べた表を、頭の中で再現できるようにしておきましょう。

