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行政書士試験

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用益物権の比較とは?地上権・永小作権・地役権の違いを4つの観点で整理

民法 06713分21秒2026年9月20日公開

「スマホを買い替える時、店頭でスペック表を並べて、この機種は容量が大きいけど、こっちは軽いって見比べたこと、ありませんか」。動画はこの身近な話から始まります。今日は、まさにそのスペック表を作る回です。地上権、永小作権、地役権と1つずつ学んできた用益物権を、並べて比べます。このページでは動画の流れにそって、4つの観点での違いをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

3行でいうと

  • 用益物権の代表である地上権・永小作権・地役権は、どれも他人の土地を使う権利です。比べる観点は、存続期間・対価・物権的請求権・抵当権の4つです。
  • 永小作権だけがちがう行は、存続期間(20年以上50年以下)と対価(小作料が要素)。地役権だけがちがう行は、返還請求と抵当権(どちらもできない)です。
  • 地上権は、どの行でも誰かとペアになります。地上権を基準にして、ズレを見つけるのがコツです。

用益物権のおさらいと、今日の4つの観点

用益物権とは、他人の土地を使う権利と覚えておけば大丈夫です。その代表が、次の3つでした(用益物権には、ほかに入会権(民法263条・294条)もありますが、今日は比べる対象に入れません)。

  • 地上権:他人の土地で、工作物や竹木を所有するために、その土地を使用する権利(民法265条)
  • 永小作権:小作料を支払って、他人の土地で耕作や牧畜をする権利(民法270条)
  • 地役権:設定行為で定めた目的に従い、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利(民法280条)

他人の土地を使うという点では共通していますが、細かな性質が違います。「仲間だけど、性格が違う三人組」のようなものです。一つずつ覚えたままだと、試験で「あれ、どれがどの権利の話だっけ?」と混ざりやすいので、今日は4つの観点で見比べます。

  • 存続期間:権利がどれくらいの期間続くか
  • 対価の位置づけ:地代や小作料の扱い
  • 物権的請求権:侵害されたときに求められる請求
  • 抵当権の設定:抵当権の目的にできるか

観点1:存続期間

まず、地上権は、期間を永久と定めることができます。永久と定めることも可能とされていて、判例(大審院明治36年11月16日判決)も認めています。地役権も、当事者の間で永久と定めることができます。

これに対して永小作権だけは違います。存続期間は20年以上50年以下と決まっています(民法278条1項前段)。50年より長い期間を定めても、50年に縮みます(同項後段)。

ちょっと待ってください、20年とか50年って、ピンとこないです。

今20歳の人なら、20年後は40歳、50年後は70歳です。その間の範囲で期間を決める枠だと考えてください。長い期間ではありますが、上限があるところが大事です。

スマホの契約プランなら、地上権と地役権は「期間は自由に決めてください」、永小作権だけ「20年から50年の間でお選びください」という枠つきのプランですね。

存続期間の枠地上権永久と定めることも可地役権永久と定めることも可永小作権20年以上50年以下ここまで
枠があるのは永小作権だけ。他の2つは、期間を自由に決められます。

だから、試験で「永小作権も永久と定めることができる」という文が出てきたら、上限があるので誤りだと判断できます。

観点2:対価の位置づけ

2つ目は、地代や小作料、つまり対価の位置づけです。ここでのキーワードが「要素」で、「要素である」とは、その権利が成り立つために必須だという意味です。

  • 地上権:地代は要素ではありません(民法266条)。無償の地上権も成り立ちます。
  • 地役権:対価は要素ではありません(民法280条は権利の内容として対価を挙げていません)。対価がなくても成り立ちます。
  • 永小作権:小作料は要素です(民法270条)。小作料を支払うことが、権利の内容そのものになっています。
地上権266条対価は要素でない無償でも成立する永小作権270条対価は要素である小作料が必須地役権280条対価は要素でない無償でも成立する
対価が「必須」なのは永小作権だけです。

たとえるなら

会費を払わなくても入れる会員制度と、会費を払うこと自体が会員の中身になっている会員制度のちがいです。永小作権は後者のタイプです。

試験では、「地上権は地代が要素である」のように、要素かどうかを入れ替えた文が出やすいです。「要素なのは永小作権の小作料だけ」と見分けてください。

観点3:物権的請求権

3つ目は、物権的請求権です。権利を侵害されたときに、その侵害をなくすよう求められる請求のことで、代表的なものは3つあります。

  • 返還請求:占有を奪われたときに、「返せ」と求める
  • 妨害排除請求:すでに妨害が起きているときに、その妨害を「やめさせる」
  • 妨害予防請求:妨害が生じるおそれがあるときに、それを「未然に防ぐ」

日常でたとえると

傘を持っていかれたら「返して」、席に荷物を置かれていたら「どけて」、置かれそうな気配があれば「置かないで」。あくまで感覚をつかむためのたとえです。

地上権と永小作権は、この3つをすべて請求できます。ところが地役権だけは、返還請求ができません。妨害排除請求と妨害予防請求はできます。

地役権だけ返還請求ができないんですか? どうしてですか?

地役権は「他人の土地を自分の土地の便益に供する権利」で、土地を占有して使う権利ではないんです。占有を伴わないので、占有を奪われて返せと言う、という場面が成り立ちません。

地上権や永小作権は土地を占有して使う権利だから、占有を奪われたら「返して」と言えるんですね。

地上権永小作権地役権返還請求返せ○○×妨害排除請求やめさせる○○○妨害予防請求未然に防ぐ○○○地役権は占有を伴わないので、返還は求められない
3つとも同じなのは、妨害排除と妨害予防だけです。

観点4:抵当権の設定

4つ目は抵当権です。詳しくは担保物権のシリーズで扱いますが、今日は「貸したお金が返ってこないときのために、財産の価値を押さえておく担保の1つ」くらいに考えてください。占有を移さずに、財産を担保に入れておくイメージです(民法369条1項)。

地上権と永小作権には、抵当権を設定できます(民法369条2項)。ところが地役権には設定できません。

理由は、地役権には付従性があるからです。地役権は、要役地から分離して譲り渡したり、他の権利の目的としたりすることができません(民法281条2項)。要役地とは、地役権によって便益を受ける側の、自分の土地のことです。

スマホでたとえると

スマホ本体は、それ単体で価値のある持ち物です。でも、本体とセットで使うオプションサービスは、単品では売ったり、担保にしたりできません。要役地が本体、地役権がオプションです。地上権と永小作権は、独立して財産的な価値を持つ「本体側」なので、抵当権の目的にできます。

抵当権を設定できる?地上権○ 設定できる永小作権○ 設定できる地役権× 設定できない369条2項281条2項要役地(本体)地役権(オプション)×要役地から切り離して、他の権利の目的にできない
地役権だけ仲間はずれなのは、「本体(要役地)から切り離せない」からです。

試験で、「地役権に抵当権を設定できる」という文が出たら、要役地から切り離して他の権利の目的にできないので誤りです。

1枚の表にして見比べる

4つの観点がそろったので、表にして眺めてみましょう。物権的請求権は、返還請求と、妨害排除・妨害予防の請求の2行に分けます。

地上権永小作権地役権存続期間永久も可20〜50年永久も可対価要素でない要素である要素でない返還請求○○×妨害排除・予防○○○抵当権○○×
黄色の枠が、その行で「ひとりだけ違う」ところです。

地役権がひとりだけ違う行と、永小作権がひとりだけ違う行があります。

そこが気づきどころです。永小作権だけが違うのは、存続期間と対価の2行。地役権だけが違うのは、返還請求と抵当権の2行です。妨害排除・妨害予防は、3つとも同じです。

じゃあ、地上権だけが違う行は?

実はありません。どの行でも、必ず誰かとペアになっています。だから、地上権を基準にして、永小作権と地役権のズレをチェックしていけばいいんです。

まとめ

  • 存続期間:地上権と地役権は永久も可。永小作権だけ20年以上50年以下(278条1項前段)。
  • 対価:地上権の地代と地役権の対価は要素でない。永小作権の小作料だけ要素(270条)。
  • 物権的請求権:地上権と永小作権は3つとも可。地役権だけ返還請求ができない(占有を伴わないため)。
  • 抵当権:地上権と永小作権は設定可(369条2項)。地役権は不可(281条2項)。

試験ではここに注目

  • 期間に枠があるのは永小作権だけ。「永小作権も永久と定められる」は誤り。
  • 対価が要素なのは永小作権だけ。地上権や地役権を「対価が必須」とする文は誤り。
  • 地役権で請求できないのは返還請求だけ。妨害排除請求と妨害予防請求は地役権でもできる。
  • 地役権に抵当権は設定できない(要役地から切り離せない)。地上権と永小作権はできる。

選択肢は、この表のセルを1つだけ入れ替えて作られることがよくあります。永小作権のズレ(期間・対価)と、地役権のズレ(返還請求・抵当権)を、2つずつ覚えておけば、この表はほぼ頭に入ります。

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