許可・認可・特許の違いとは?自由の回復・効力の完成・権利の設定で整理
「免許とか許可とか、日常でよく聞く言葉ですけど、行政書士試験の勉強を始めたばかりの人ほど、実はこの言葉づかいで引っかかることが多いんですよ」。動画はこんな会話から始まります。日常ではほとんど同じ意味で使う許可・認可・特許ですが、法律の世界では中身がまったく違う3つの行政行為です。このページでは動画の流れにそって、3つの違いと見分け方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
3行でいうと
- 許可は「本来の自由の回復」、認可は「私人間の行為の効力を完成させる」、特許は「新たな権利の設定」。この3つのキーワードが柱です。
- 分類は名前ではなく中身で決まります。同じ「免許」でも、運転免許は許可、バス事業の免許は特許に分類されます。
- 試験では、具体的な行政行為を示して「許可・認可・特許のどれか」を選ばせる形で、くり返し出題されます。
「免許」も「許可」も同じ意味?
ふだんの生活では、運転免許や飲食店の営業許可のように、「免許」「許可」という言葉をほとんど同じ意味で使っています。ところが行政法では、許可・認可・特許は、似ているようで中身がまったくちがう3つの行政行為として区別されます。
まず、3つのキーワードだけ先に頭に置いておきましょう。あとは、この1行ずつを具体例で肉づけしていくだけです。
許可:禁止を解いて、本来の自由を回復させる
試験でいう許可とは、法律で本来禁止されている行為を、特定の場合に限って解いて、適法に行えるようにする行政行為のことです。
たとえば自動車の運転は、道路交通の安全のために、法律で一般的に禁止されています。そのうえで、公安委員会の運転免許を受けた人だけが、適法に運転できるようになります(道路交通法64条1項・84条1項)。飲食店を開くときの営業許可も同じ考え方です(食品衛生法55条1項は、飲食店営業など政令で定める営業を営もうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならないと定めています)。
運転って、法律で禁止されているんですか? 知りませんでした。
一般的にはそうなんです。ただ、大事なのはその先で、許可を受ける前から、その人はもともと運転する自由やお店を開く自由を持っているんですよ。
禁止されているのに、自由は持っている?
許可は新しい力を与えるものではなく、本来持っている自由を回復させているだけなんです。
たとえるなら
許可は、もともと持っている自由のカギを、いったん預かってもらって、条件を満たしたら返してもらうようなものです。もともと自分のものだったのに、一度禁止されて、条件をクリアしたので戻ってきた、というイメージです。
試験では、ここが問われます。許可は「本来の自由の回復」というキーワードで覚えておきましょう。
認可:私人同士の行為の効力を完成させる
認可とは、私人と私人のあいだで行われた契約や行為について、その法律上の効力を完成させる行政行為のことです。動画では、農地の権利移転が例に出てきます。
農地の権利を移す契約は、売主と買主が「売った」「買った」と合意しただけでは、法律上は権利が移ったことになりません。行政庁の認可を受けて、はじめて権利移転の効力が生じます。認可を受けないまま、自分の農地だと思って使い始めても、法律的には認められません。
許可を受けずに済ませてしまうのと、認可を受けずに済ませてしまうのとでは、何がちがうんですか?
許可は禁止を解いてもらうものなので、受けずにやれば違法な行為になります。認可は契約の効力を完成させるものなので、受けなければ、その行為は効力を生じません。
試験で見分けるときは、「私人同士の合意だけでなく、行政庁のOKがセットで、はじめて成立する」という場面が出てきたら、認可を疑ってみてください。ポイントは、契約の効力そのものを完成させているかどうかです。
特許:本来持っていない権利を新しく与える
最後は特許です。「特許」というと発明の特許権を思い出しますが、行政法でいう特許は、それとはまったくの別物です。
行政法上の特許とは、本来その人が持っていない特別な権利や地位を、行政庁が新たに設定して与える行為のことです。動画の例は、道路を占用して工作物を設置する権利と、バス事業を営む権利でした。どちらも、誰もが当然に持っているものではありません。
なぜ、行政庁が与える形にしているのでしょうか。誰でも自由に道路へ工作物を置けたら、道路が物だらけになってしまいます。誰でもバス事業に参入できたら、あちこちでバスが走り回って困ります。そこで行政庁が、「この人になら、この特別な権利を与えても大丈夫」と判断したうえで、はじめて権利が発生する仕組みになっているのです。
許可と特許は、まるで逆ですね。じゃあ、認可と特許は何がちがうんですか?
認可は、私人同士がやろうとしていた契約や行為がすでにあって、その効力を完成させるだけです。特許は、私人がそもそも持っていない権利を、行政庁が新しく作って与える点がちがいます。
認可は「私人が始めたことに行政庁が効力を与える」、特許は「行政庁が権利そのものを作る」ということですね。
名前ではなく、中身で判断する
ここで最大のひっかけポイントです。名前に「許可」とついていても、実質的には特許に分類される行為があります。だから、名前だけ見て「許可と書いてあるから許可だ」と思い込むのは危険です。元からある自由を回復させているのか、新しい権利を設定しているのかという中身で判断するのが鉄則です。
動画では、運転免許とバス事業の免許で説明されました。同じ「免許」という言葉が使われていても、運転免許は許可(運転する自由は、もともと誰にでもあるものが、いったん禁止されているだけ)、バス事業の免許は特許(元から誰も持っていない特別な権利を新しく与える)に分類されます。
補足:条文の呼び名と、試験での分類は別もの
法律の条文で使われる呼び名と、行政法の分類(許可・認可・特許)は、別に考える必要があります。動画の内容を現行の条文と見比べると、次のようになっています。
- 農地の権利移転:農地法3条は、農業委員会の「許可」という言葉を使っています。ただ、許可を受けないでした行為は効力を生じないとされており(同条6項)、分類としては動画のとおり認可の代表例です。
- 道路の占用:道路法32条は、道路管理者の「許可」という言葉を使っています。それでも、道路を継続して使う権利を設定する行為なので、分類は特許です。「名前は許可、中身は特許」の代表例です。
- バス事業:動画は「免許」と説明していますが、現在の道路運送法4条は、一般旅客自動車運送事業を国土交通大臣の「許可」にかけています(乗合バスは2002年の規制緩和で免許制から許可制に変わりました)。教材では、特許の代表例として古くからバス事業の免許が挙げられています。法律の名前(免許か許可か)は改正で変わることがあるので、ここでも「名前ではなく中身で分類する」という考え方で覚えておきましょう。
3つをまとめて整理
- 許可:本来の自由の回復(例:運転免許、飲食店の営業許可)
- 認可:私人間の行為の効力を完成させる(例:農地の権利移転)
- 特許:新たな権利の設定(例:道路の占用権、バス事業を営む権利)
この3つのキーワードをセットで覚えておけば、混乱しません。あとで条文や判例を読むときも、「これは自由の回復なのか、効力の完成なのか、新しい権利の設定なのか」と考えるくせをつけておくと、理解が速くなります。
まとめ
- 許可は、禁止されている行為を解いて、本来持っている自由を回復させる(運転免許・飲食店の営業許可)。
- 認可は、私人間の契約や行為について、効力を完成させる。行政庁のOKがそろってはじめて有効になる(農地の権利移転)。
- 特許は、本来持っていない特別な権利や地位を、行政庁が新たに設定して与える(道路の占用、バス事業)。
- 分類は名前ではなく、中身の性質で決まる。
試験ではここに注目
- 具体的な行政行為を示して、許可・認可・特許のどれかを答えさせる問題が、くり返し出題される。
- 「許可」という名前でも特許のもの、「免許」という名前でも許可のものがある。名称にとらわれず、中身の性質で分類する。
- 許可と特許は逆向き(許可=もともとある自由を戻す、特許=もともとない権利を与える)。認可と特許は、私人の行為があるかないかで区別する。
- 行政行為の大きな分類では、許可は命令的行為、認可と特許は形成的行為の仲間に入る(くわしくは別の回で扱う)。
運転免許・営業許可、農地の権利移転、道路の占用・バス事業の3セットを、それぞれ許可・認可・特許と結びつけておくと、事例問題でも迷いにくくなります。

