組織・人事 バラバラな人事施策を戦略でつなぐ考え方
事例Ⅰ 第24回
「評価制度、去年ちゃんと見直したはずなのに、なぜか社員のモチベーションが上がらない。そういう与件、見たことありますよね」。動画は、こんな問いかけから始まります。評価だけ、報酬だけと一つの制度を直しても、ほかとちぐはぐなら社員は動かない。このページでは、人事システムの論点に気づく与件文のサイン、四つの要素への振り分け、前提の押さえ方、答案の書き方、よくある誤答を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
評価制度を直したのに、社員が動かない
動画は、講師のこんな問いかけから始まります。「評価制度、去年ちゃんと見直したはずなのに、なぜか社員のモチベーションが上がらない。そういう与件、見たことありますよね」。聞き手は「あります」と答えたうえで、悩みを打ち明けます。人事システムという考え方自体は知識として知っているけれど、どの設問でそれを引っ張り出せばいいのか、いつも迷うのだそうです。
講師の答えは、この論点の入口を言い当てています。評価だけ、報酬だけ、というふうに一つの制度だけ直しても、ほかの制度とちぐはぐなままでは、社員は動きません。そこに気づけるかどうかが勝負だ、というのです。聞き手が「じゃあ今日は、その気づき方から教えてほしい」と頼み、動画はそこから進みます。
このページでは、動画の流れにそって、次の順番でまとめます。
- どんな設問・与件で人事システムの論点が出てくるか
- 与件文に出てくるサインと、それを四つの要素に振り分ける方法
- 四つの要素の前提として意識すること
- 解答の書き方(骨格・補強・整合性・字数配分)
- よくある誤答
知識としては知っているのに、設問を前にすると、どれを引っ張り出せばいいか分からなくなるんです。
そこを埋めるのが今日の話です。知っている知識を、与件文のサインと結びつけて、答案の型にまで落としていきましょう。
どんな設問で人事システムを疑うか
講師がまず挙げたのは、事例Ⅰでよく出るパターンです。新しい事業をやろうとしている会社が、人事の仕組みは古いまま、という与件が典型だといいます。
聞き手は「新しい事業戦略に合わせて人事制度を見直したいみたいな与件ですよね」と言い、「あれ、評価制度だけの話だと思って読んでいました」と告白します。これに対して講師は「そこなんです」と応じました。あの種の与件は、評価だけの話ではありません。採用も配置も報酬も、全部がその新しい戦略に合っているかを聞かれているのです。
じゃあ、一つの設問で人事施策が複数まとめて出てきたら、人事システムの話だと疑っていいんですか。
そうです。特に、複数の人事施策がまとめて問われる、全体最適の助言を求める大きな設問。あそこで効くことが多いんです。
個別の施策だけを聞く設問ではなくて、いくつもの施策をまとめて聞かれるときに出やすいんですね。
もう一つよく出るパターンが、「人材育成の方向性が定まっていない」という与件です。これも、能力開発だけの問題ではなく、人事システム全体の話として読んでほしい、と講師は言います。
聞き手は「それも一つの施策の話だと思って読んじゃいそうです」と認めたうえで、「育成の方向性がぶれているのは、結局は経営戦略が人事に落とし込まれていないということですもんね」とまとめます。講師は「そのとおりです」と受けました。
動画の整理:人事システムを疑う場面
- 新しい事業をやろうとしているのに、人事の仕組みが古いままという与件
- 複数の人事施策がまとめて問われる、全体最適の助言を求める大きな設問
- 「人材育成の方向性が定まっていない」という与件(能力開発だけの話にしない)
与件文のサイン:ズレに気づく
では、与件文のどこを見ればいいのか。講師が挙げた着眼点は、次の5つです。共通するのは、制度どうしや、戦略と人事の間にズレがある、という書かれ方です。
| 与件文の書き方 | 疑うズレ |
|---|---|
| 新しい事業戦略を掲げている | 戦略に人事がついていけているか |
| 評価はあるが処遇に反映されない | 評価と報酬が未連動 |
| 経営者の考えと現場の運用にズレ | 戦略と施策が噛み合わない |
| 異動・昇進の仕組みが硬直的 | 社内の労働市場が動かない |
| 育成の方向性が定まらない | 戦略が人事に落ちていない |
1つ目は「新しい事業戦略を掲げている」という一文です。これが出たら、人事システムがその戦略についていけているかを疑ってください、と講師は言います。聞き手の読み方は「戦略の話と人事の話が別々に書いてあったら、そこがズレのサイン」。講師は「そうです」と同意しました。
2つ目は「評価制度はあるが処遇に反映されていない」という書き方です。聞き手は「評価はしているけれど報酬に結びついていない、つまり制度同士がつながっていないということですよね」と言い換え、講師が「まさにそれです」と認めています。
3つ目は「経営者の考えと現場の人事運用にズレがある」という表現で、同じ系統のサインです。経営戦略と人事施策が噛み合っていない、という話になります。
4つ目は「社内の異動や昇進の仕組みが硬直的」という記述です。講師はこれを、社内の労働市場がうまく動いていない、というサインだと説明します。聞き手が「内部労働市場、知識としては知っているけれど、与件文にその言葉でそのまま出てくるわけではないですもんね」と言うと、講師は「そうなんです」と応じました。
だから、「異動がない」「昇進のルートが決まっている」といった具体的な書き方から、自分でその話だと気づく必要があるんです。
つまり、専門用語そのものより、それに置き換わる具体的な事実の書き方を覚えておく必要があるんですね。
5つ目が、先ほどの「人材育成の方向性が定まっていない」です。
四つの要素に振り分けて整理する
サインに気づいたら、与件文を整理します。講師のおすすめは、人事システムを四つの要素に分けて考える方法です。採用と配置、評価、報酬、能力開発の四つで、聞き手も「それは知っています」と言います。難しいのは、与件文を読みながらこの四つに振り分ける作業です。
講師は具体例で示します。たとえば与件文に「即戦力を中途で採用しているが、定着しない」と書いてあれば、それは採用と配置の話。聞き手が続けて、「評価基準が曖昧で、頑張っても給料が変わらない」と書いてあれば評価と報酬の話になりますね、と確認すると、講師は「そうです」と言い、こう続けます。
講師の言葉では、一文ずつ、四つの箱に振り分けていくイメージです。
では、四つの箱は、どういう関係なのか。講師はオーケストラにたとえます。
オーケストラのたとえ
各楽器がどれだけ上手くても、指揮がバラバラだと音楽にならない。採用・配置も評価も報酬も能力開発も、それぞれは正しくても、経営戦略という指揮に合っていないと機能しない。
その例、分かりやすいです。個別の施策がいくら優れていても、方向性が揃っていないと意味がない、ということですね。
そのとおりです。ですから四つの箱は、バラバラに眺めるのではなく、経営戦略との関係で見てください。
前提を意識する:財務と労働市場
四つの要素を整理するときは、経営戦略だけでなく、組織や人材のマネジメント戦略、それに財務状況も前提として意識するよう、講師は求めます。聞き手の理解はこうです。会社にお金の余裕がなければ、報酬を手厚くする提案は書けない。講師は「そうです」と受けました。
もう一つの前提が、内部労働市場と外部労働市場です。講師の言い方では、社内で人を動かせるのか、社外から採れるのか。この違いで、打てる施策そのものが変わってきます。聞き手は、外部労働市場を「社外で欲しい人材が採用しやすいかどうか」という前提だと説明しました。
動画の整理:四つの要素と前提
- 四つの要素は、採用と配置・評価・報酬・能力開発
- 前提として、経営戦略・組織や人材のマネジメント戦略・財務状況を意識する
- もう一つの前提が、内部労働市場と外部労働市場
- 四つの要素は、こうした前提の上に載っている、という枠組みで整理する
四つの要素をただ並べるんじゃなくて、その前提もセットで意識するということですね。
そうです。前提が変われば、同じ要素でも書くべき施策が変わります。与件を整理するときに、前提も一緒に拾っておいてください。
解答の書き方:骨格を一文目に置く
ここからが答案の作法です。講師のコツは、いきなり個別施策を並べないこと。まず「経営戦略に沿って人事システム全体を一貫させる」という骨格を、一文目に置きます。
聞き手は「いきなり『評価制度を見直す』から書き始めちゃいそうです」と言います。講師の指摘は、それだと、なぜ評価を見直すのかという理由が抜けてしまう、というものでした。まず全体の骨格を示してから、与件で弱い要素を補強する。この順番を守ってほしい、と講師は繰り返します。
「弱い要素を補強する」とは何か。聞き手の確認はこうです。さっきの四つの箱のうち、与件文で問題が書かれていた要素を選ぶこと。講師は「そうです」と答えました。四つの箱への振り分けは、答案で何を補強するかを決めるための作業でもあります。
次に、施策同士の整合性です。講師は、たとえば評価の基準を変えるなら、報酬や能力開発もそれに合わせて変える、というふうに、施策同士が矛盾しない書き方をするよう求めます。聞き手は「評価だけ変えて報酬はそのまま、みたいに書くと、与件で問題視されていたバラバラな状態と同じになってしまう」と気づきました。
まさにそこです。だから、複数の施策を書くときは、それぞれがどう連動しているかまで一言添えると、答案の説得力が上がります。
施策を並べるだけじゃなくて、施策同士のつながりまで書く、ということですね。
最後に字数配分です。最初の骨格の一文は、あくまで一文で短く収めます。残りの字数は、与件で弱かった施策の具体化に厚く使うイメージです。骨格ばかり長く書くと、具体性がない答案に見えてしまう、と講師は注意します。聞き手の言葉では「骨格は短く言い切って、そのあとの中身で勝負する」バランスです。
(補足:動画にない書き方の例です。たとえば「新規事業の戦略に沿って、人事システム全体を一貫させる。具体的には、与件で弱い評価と報酬を連動させ、能力開発も評価基準に合わせる。」のように、骨格を一文で言い切り、そのあとに弱い要素とその連動を続けると、図の①〜③の形になります。実際の設問では、設問文の指示と字数に合わせて、中身を入れ替えてください。)
動画の整理:解答を書く順番
- いきなり個別施策を並べず、骨格を一文目に置く
- 骨格のあと、与件で弱い要素を補強する
- 評価を変えるなら報酬や能力開発も合わせるなど、施策同士が矛盾しないようにする
- 連動のしかたを一言添える
- 骨格は短く、残りは弱い要素の具体化に厚く
よくある誤答4つ
講師が挙げた誤答は、聞き手の言葉を借りれば「知識はあるのに、使い方を間違えるパターン」です。個別の施策を知っているから、つい並べたくなってしまう、という心理にも触れています。
1つ目は、一番多い誤答です。評価と報酬と能力開発をただ並べて終わるパターン。経営戦略との整合という、上に立つ視点が抜けてしまいます。
2つ目は、内部労働市場と外部労働市場の混同です。社内異動の話をしているのに、外部採用の話にすり替えて書いてしまう。聞き手は「それぞれ前提が違うから、混ぜて書くと施策の根拠がおかしくなる」と整理しました。
3つ目は、「制度を整備する」で終わる答案です。経営戦略のどこに合わせて整備するのかが書かれていないので、説得力が弱くなります。「整備する」と書くだけでなく、何のために整備するのかまで書く、というのが講師の指摘です。
4つ目は、評価と報酬とキャリアコースの話です。この三つは特に関連が強く、どれか一つだけを直して終わり、という提案は不自然になりやすいので注意してほしい、と講師は言います。聞き手は「キャリアコースの話も、評価や報酬とセットで考える」と確認しました。
| 誤答 | 弱い理由 |
|---|---|
| 施策を並べて終わる | 戦略との整合の視点がない |
| 内部と外部を混同 | 施策の根拠がおかしくなる |
| 「整備する」で終わる | 何に合わせるかが不明 |
| 三つの一つだけ直す | 評価・報酬・キャリアは関連が強い |
個別の施策は知っているから、つい並べたくなってしまいます。
並べたくなったときこそ、一文目に戻って「これは経営戦略とどうつながるのか」を確かめてください。
試験ではここに注目
- 与件文に、戦略と人事のズレ、制度どうしのズレを示すサインがあるか
- 一文ずつ、採用・配置、評価、報酬、能力開発のどれの話か
- 一文目に、経営戦略との整合という骨格を置いたか
- 施策どうしが矛盾せず、連動が一言書かれているか
まとめ
動画の整理
- 評価だけ、報酬だけと一つの制度を直しても、ほかとちぐはぐなら社員は動かない。そこに気づくのが入口
- 複数の人事施策をまとめて問う大きな設問や、「人材育成の方向性が定まっていない」という与件で、人事システム全体を疑う
- 与件文のサインは、新しい事業戦略、評価と処遇の不連動、経営者と現場のズレ、硬直的な異動・昇進など。具体的な書き方から自分で気づく
- 与件文は、採用・配置、評価、報酬、能力開発の四つに振り分け、財務状況や内部・外部労働市場の前提も意識する
- 解答は、経営戦略との整合という骨格を一文目に置き、弱い要素を補強し、施策の整合性を保つ。骨格は短く、具体化に厚く
- 誤答は、並べて終わる、内部と外部の混同、「整備する」で終わる、評価・報酬・キャリアコースの一つだけ直す
動画の最後で、聞き手は「次に『新規事業に合わせて』とか『評価と処遇がちぐはぐ』みたいな与件を見たら、絶対にこの論点だと気づけそうです」と話しています。人事システムの論点は、知識の量より、サインに気づく目と、一文目に骨格を置く書き方で差がつきます。与件を四つの箱に振り分けて、戦略という指揮に合わせて書く。この流れを、本番でも思い出してください。
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