聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

絵に描いた餅にしない、計画の共有術

事例Ⅰ 第20回

事例Ⅰ 絵に描いた餅にしない、計画の共有術8分42秒2026年8月9日公開

「経営計画って、意味は言えるのに、いざ答案を書く段になると、どこで使えばいいのか一瞬手が止まる論点じゃないですか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは、経営計画が問われる場面、与件文のサイン、二つの要素と五つの役割、答案の骨格、やってしまいがちな失敗を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

意味は言えるのに、答案で手が止まる

動画は、経営計画という論点の悩みから始まります。経営計画とは、目標を立て、それを実現する行動予定を決めること。意味は言えるのに、いざ答案を書く段になると「どこで使えばいいのか」と一瞬手が止まる。聞き手も、与件文のどのタイミングで引っ張り出せばいいのか、正直まだ迷うと打ち明けます。

講師によると、知識はあるのに使うタイミングが分からないまま本番を迎えてしまう受験生は、本当に多いそうです。そこで今回は、この論点を使うタイミングから、実際の解答に落とし込むところまでを扱います。

  • どういう場面で問われやすいか
  • 与件文のどの記述が「この論点だ」というサインか
  • サインを見つけたあと、頭の中でどう整理するか
  • 答案の骨格と、やってしまいがちな失敗
  • 本番で意識しておくこと

このページでは、この順番で動画の内容をまとめます。

問われるのは「決める話」ではなく「実行に移す話」

経営計画が絡む問題は、だいたい助言問題だと講師は言います。しかも共通しているのは、戦略の中身そのものではなく、決めた方針をどう実行に移すかという段階でつまずいている、という設定です。

講師が挙げた場面は3つです。社長の頭の中にしか方針がない。戦略は立てたけれど現場にまだ浸透していない。事業承継を控えていて将来像を共有したい。こうした場面で、経営計画を策定・共有することの効果を助言する形で出てきます。

決める話じゃなくて、実行に移す話、ということですね。

そうです。社長の頭の中にしか方針がない、現場に浸透していない、将来像を共有したい。こういう場面で出てきます。

どれも、決めてはいるけど伝わっていない、という状態が共通していますね。

そうです。だから戦略そのものの中身と、戦略を計画に落として組織に浸透させる段階の話を、はっきり分けて書く意識が必要になります。

経営戦略何をするかを決める経営計画目標と行動予定を明文化する共有・浸透組織に浸透させ実行に移す中身の話(成長戦略・多角化)二次で問われるのはこちら決める方ではなく浸透させる方
戦略の中身と、計画を浸透させる段階は、分けて書きます。

戦略の中身とは、たとえば成長戦略や多角化の話です。一方、経営計画は、その戦略を計画に落として組織に浸透させる段階の話です。聞き手が「二次で問われているのは、決める方ではなく、浸透させる方だよ、ということですね」とまとめると、講師は「その通りです」と応じます。ここを区別できるかどうかで、答案が設問の趣旨からずれるかどうかが決まる、というのが講師の見立てです。

与件文のサイン4つ

では、与件文のどの一文が出たら、この論点だと気づけばいいのか。講師はパターンを4つ挙げます。

後継者に方針が伝わらない方針が欠けている従業員が戦略を理解していない理解が欠けている場当たり的な意思決定が多い拠り所が欠けている新事業の道筋が不明確道筋が欠けている書いてあることより、欠けているものを探す
4つのサインは、どれも「あるべきものが欠けている」と読めます。
  • 「社長が高齢で、後継者に方針が伝わっていない」:経営計画による方針の明文化・共有が求められているサインです。
  • 「戦略は決めたが、従業員が理解していない」:経営計画が持つ、経営意識を醸成するという役割を使う場面です。
  • 「場当たり的な意思決定が多い」:経営計画が意思決定のよりどころ、つまり羅針盤になっていないというサインです。
  • 「新事業に着手するが、道筋が不明確」:目標と、それを実現する具体的な行動予定がまだ決まっていない状態を示しています。

事業承継の文脈で出てきそうですね。

もう一つが「戦略は決めたが、従業員が理解していない」という記述です。経営意識を醸成するという役割を使う場面ですね。

戦略の中身ではなく、伝わっていないこと自体が課題として書かれているわけですね。

そうです。さらに「場当たり的な意思決定が多い」という記述も見逃せません。

4つを並べると、聞き手が気づいた共通点が見えてきます。聞き手は「どれも『本来あるべきものが欠けている』という読み方で共通していますね」と言います。講師は「いい着眼点です」と受けたうえで、方針が欠けている、理解が欠けている、拠り所が欠けている、道筋が欠けている、と言い換えました。どれも経営計画のどこかの機能が抜け落ちている状態として読める、ということです。

与件文欠けるもの役割
後継者に方針が伝わらない方針方針の明文化・共有
従業員が理解していない理解経営意識の醸成
場当たり的な意思決定拠り所意思決定のよりどころ
新事業の道筋が不明確道筋目標と行動予定

聞き手の言葉を借りれば、何が書いてあるかより、何が欠けているかを探す読み方です。なお、表の右の列は、動画で講師が各サインに添えた言葉をそのまま並べたものです。

二つの要素で整理する

こうした記述を見つけたあと、頭の中では二つの要素で整理するといい、と講師は言います。

経営計画の二つの要素

  • 目標の設定
  • 目標を実現するための方策と具体的な行動予定の決定

目標を決めるだけじゃなくて、実現するための道筋まで含む、ということですね。

その通りです。この二つが、経営計画の中身になります。

先ほどの4つ目のサイン「道筋が不明確」は、まさにこの2つ目が決まっていない状態でした。「計画を立てる」と書くときに、目標の話だけで終わらせない。

五つの役割:どれが欠けているかを特定する

次に、経営計画には五つの役割があります。講師が挙げたのは、経営の羅針盤になること、合理的に経営活動を進められること、経営意識を醸成すること、経営活動を推進する意思決定情報になること、経営管理の中核になること、の五つです。この五つは、与件文のどこに反応すればいいかを決める物差しになります。

五つも全部答案に書くんですか。

いえ、並べる必要はありません。与件文を読んで、この五つのうちどれが欠けているのかを特定するんです。書くべき役割を絞り込む作業だと考えてください。

骨格の一文に組み込まれる2つ経営意識を醸成する合理的に経営活動を進める課題に合わせて付け足す3つ経営の羅針盤になる意思決定情報になる経営管理の中核になる
五つの役割のうち、二つは骨格に入り、三つは付け足しに使います。

講師が示した対応はこうです。方針が不明確なら羅針盤の役割。従業員に浸透していないなら経営意識の醸成。意思決定が場当たり的なら意思決定情報としての役割。

ここで一点だけ、動画の言い方に触れておきます。「場当たり的な意思決定」について、動画は前半で「意思決定のよりどころ、つまり羅針盤になっていない」と言い、後半では「意思決定情報としての役割」と対応させています。呼び方が2通り出てきますので、このページでは動画の言い方をそのまま併記しました。

さっきの四つのパターンと、五つの役割を、その場で結び付けていく作業なんですね。

そうです。しかも経営計画は、経営活動を進めるうえでの合理性を支えたり、経営管理全体の中核として機能したりもします。役割は一つに絞らず、与件文の状況に一番合うものを選ぶ意識で読んでください。

一対一で対応させるというより、与件文の課題に一番効く役割を選ぶ感覚ですね。

そうです。ここを丁寧にやると、解答が与件文に根拠を持った、説得力のあるものになります。

つまり、五つを全部並べるのでも、一対一で機械的に当てはめるのでもありません。与件文の課題に一番効く役割を選ぶ。そのやり方が、解答に「与件文という根拠」を持たせます。

答案の骨格:共有した結果まで書き切る

実際に解答を書くときの基本の型を、講師はこう示します。

答案の骨格

経営計画を策定し、目標と具体的な行動予定を明文化して従業員と共有することで、経営意識を醸成し、合理的な意思決定を可能にする。

① 策定する経営計画を策定し② 明文化する目標と具体的な行動予定を明文化し③ 共有する従業員と共有することで④ 結果を書く経営意識の醸成と合理的な意思決定最後に足す一言を場面で変える事業承継の場面後継者や従業員の腹落ち新事業の場面社内の行動の一貫性
骨格の文は同じ。最後の一言で、与件文の場面に合わせます。

聞き手は「この一文をベースに、与件文の状況に合わせて言葉を差し替えればいいんですね」と確認します。講師の答えは「そうです」。たとえば、事業承継の文脈が絡む問題なら、経営計画の共有が後継者や従業員の腹落ちにつながる、という形で書けます。新事業立ち上げの文脈なら、目標と行動予定を明文化することで、社内の行動の一貫性が保たれる、という形で厚みを持たせられます。

では、この骨格文は、五つの役割のどれを使っているのか。聞き手が尋ねると、講師は、経営意識を醸成することと、合理的に経営活動を進められること、この二つが骨格に組み込まれていると答えます。残りの、羅針盤になる、意思決定情報になる、経営管理の中核になるという役割は、与件文の課題に合わせて付け加える一文として使うと、答案にもう一段厚みが出ます。

場面骨格の後に足す一言
事業承継共有が後継者や従業員の腹落ちにつながる
新事業明文化で社内の行動の一貫性が保たれる

同じ骨格でも、事業承継か新事業かで、最後に足す一言を変えるということですね。

そうです。単に計画を作りましょうで終わらせず、共有した結果どうなるかまで書き切る。因果を最後まで書くことで、助言として完結した答案になります。

やってしまいがちな失敗3つ

逆に、やってしまいがちな失敗は何か。講師が挙げたのは3つです。

戦略と計画の区別で止まる実行段階を問われているのに、戦略立案だけで終わる要素を書き切らずに止まる「計画を立てる」だけで、要素と共有・浸透に触れない策定だけで止まる提案して終わり。浸透のさせ方まで踏み込まないどこで止まっていないか、書き終えて見直す
3つとも、途中で止まってしまう失敗です。

1つ目は、経営戦略と経営計画の混同です。一番多い失敗だと講師は言います。経営戦略は何をするかを決める話で、経営計画はそれをどう実行に移すかという話です。ここが入れ替わると、実行段階を問われているのに、戦略立案の話だけで答案が終わってしまいます。

2つ目は、「計画を立てる」とだけ書いて終わってしまうことです。目標設定と具体的な行動予定という二つの要素、そして共有・浸透という役割に触れないまま終わる答案が、本当に多いそうです。

3つ目は、策定を提案して終わることです。策定したあとにどう組織へ浸透させるかまで踏み込まない答案も目立つ。講師は「策定して終わりではなく、共有までがセット」と意識するよう促します。

三つとも、途中で止まってしまう失敗、という共通点がありますね。

いい整理です。戦略と計画の区別で止まる、要素を書き切らずに止まる、策定だけで止まる。どこで止まっていないか、答案を書き終えたあとに見直すと、失敗を減らせます。

書き終えたあとの見直しポイントとしても使えそうですね。

そうです。書いている最中より、書き終えたあとの点検に向いた3点です。

失敗答案でどうなるか見直しの問い
戦略と計画の混同戦略立案だけで終わる実行段階を書いたか
要素の書き漏れ「計画を立てる」だけ目標と行動予定、共有に触れたか
策定だけで終了浸透まで踏み込まない共有までセットか

本番で意識すること:手順を一本通す

講師は最後に、本番でこの論点を使うときに意識しておくべきことをまとめます。まず、方針が伝わっていない、浸透していない、場当たり的、道筋が不明確、といった記述を見たら経営計画のサインだと気づくこと。次に、目標設定と具体的行動予定という二つの要素で整理すること。

聞き手は、そこにさらに「五つの役割のうち、どれが欠けているかを特定して、解答に反映させる」ことを加えます。講師は「その通りです」と応じ、経営戦略との違いを意識しながら、策定するだけでなく共有・浸透まで書き切ることを強調します。これができれば、この論点は本番で確実に得点源になる、というのが講師の見方です。

動画が挙げた手順(聞き手のまとめ)

  • サインに気づく
  • 二つの要素(目標設定・具体的行動予定)で整理する
  • 欠けている役割を特定する
  • 骨格に当てはめる
  • 戦略との混同がないか見直す

サインに気づく、二つの要素で整理する、欠けている役割を特定する、骨格に当てはめる、戦略との混同がないか見直す。この流れを一本通しておけばいいんですね。

そうです。特に最初のサインに気づく段階だけは外さないでください。そこさえ拾えれば、あとは今日の手順どおりに埋めていけます。

まとめ

動画の整理

  • 経営計画は、決める話ではなく、決めた方針を実行に移す・浸透させる段階の話として助言問題で出る
  • サインは4つ:後継者に方針が伝わらない、従業員が理解していない、場当たり的な意思決定、新事業の道筋が不明確。どれも「欠けているもの」を探す読み方
  • 頭の中では「目標の設定」と「方策と具体的な行動予定の決定」の二つの要素で整理する
  • 五つの役割は並べるのではなく、与件文でどれが欠けているかを特定して選ぶ
  • 骨格は「策定し、目標と具体的な行動予定を明文化して従業員と共有することで、経営意識を醸成し、合理的な意思決定を可能にする」。最後の一言を場面で変え、共有した結果まで書く
  • 失敗は3つ:戦略と計画の混同、「計画を立てる」だけで終わる、策定だけで浸透に踏み込まない

動画の最後に、聞き手は「知識はあったので、あとは使いどころさえ押さえれば大丈夫そうです」と話しています。意味を言えることと、答案のどこで使うかが分かることは別です。サインに気づき、二つの要素で整理し、欠けている役割を特定して骨格に当てはめ、最後に戦略との混同がないかを見直す。計画を作って終わりにせず、共有・浸透まで書き切ることが、「絵に描いた餅にしない」ための答案の書き方です。

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