組織・人事 分かれた部門をつなぐ、統合の仕組み方
事例Ⅰ 第18回
「『部門間の連携を強化する』って書いて、なんとなく点数が伸びない。そんな経験、ありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、事例Ⅰの助言問題での聞かれ方、与件文のサイン、統合の三つの型、状況に合わせた型の選び方、プロジェクトチームを書くときの注意、混同しやすい点をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「連携を強化する」と書いて、点数が伸びない
動画は、こんな問いかけから始まります。「部門間の連携を強化する」と書いたのに、なんとなく点数が伸びない。そんな経験はありませんか、と。聞き手は「まさに私です」と応じ、分化や統合といった知識は持っているのに、答案にすると急にふわっとしてしまう、と打ち明けます。講師も、知識はあるのに、与件文のどこでそれを引っ張り出せばいいのか、本番では分からなくなる、と言います。今回の動画は、そこを埋めていく回です。
論点は組織の話です。分化した部門を、どう統合するか。事業が拡大したり多角化したりすると、部門はどんどん専門分化していきます。その結果、部門ごとに目標がバラバラになったり、情報が部門の中で止まってしまったりします。それを繋ぎ直す話です。
分化とか統合とか、知識としては知ってるんですけど、答案にすると急にふわっとするんですよね。
知識はあるのに、与件文のどこでこれを引っ張り出せばいいのかが、本番だと分からなくなるんです。今日はそこを埋めていきます。
このページでは、二次試験での聞かれ方、与件文のサイン、統合の三つの型、解答への落とし込み、混同しやすい点の順に、動画の流れにそってまとめます。
二次ではどう聞かれるか、よくある失敗
講師によると、典型的には事例Ⅰの助言問題で問われます。「部門間の連携を強化するために、どのような施策が必要か」といった形です。聞き手は「その言い回し、見たことあります。でも私、いつも『連携を強化する』って書いて終わっちゃうんですよね」と言います。
この論点で一番やりがちな失敗
講師は「『連携を強化する』は結論であって、解答じゃない」と言います。どう強化するか、具体的な仕組みまで書けているかが問われます。
具体的な仕組み、ですか。
はい。どう強化するのか、その仕組みまで書けているかが問われます。しかも、もう一つ注意が必要なことがあります。
組織構造の設計と、分化後の調整を混同しない
講師が挙げる注意は、組織構造そのものの設計と混同しないことです。マトリックス組織や事業部制のような「そもそもどう部門を作るか」の話と、「分化した後にどう繋ぎ直すか」という調整の話は、別の論点だといいます。
混ざりやすいですね、それ。両方とも組織図に関わる話だから。
そうなんです。だから、与件文を読んだときに「これは繋ぎ直す方の話だ」と気づけるかどうかが、最初の分かれ目になります。
ここで、あとの話につながる断りがひとつあります。講師は、統合の手段を説明する場面で、マトリックス組織やプロジェクトチームといった言葉を「繋ぎ直す手段の側」で使っている、と断っています。同じ言葉が出てきても、「組織をどう作るか」の文脈なのか、「分化した部門をどう繋ぐか」の文脈なのかで、意味が変わります。言葉に反応するのではなく、文脈を見るのがコツです。
与件文のサイン4つ
では、与件文のどんな一文が出たら、この論点だと気づけばいいのか。聞き手の問いに、講師は4つのサインを挙げます。
- 部門間の利害対立やセクショナリズム:一番分かりやすいサインです。「部門ごとに目標が異なり、連携が取れていない」「各部門が自部門の業績を優先し、全社的な視点が欠けている」といった記述です。
- 部門をまたぐ対応が必要な記述:「新規事業の立ち上げにあたり、複数部門の協力が必要になった」のように、特定のプロジェクトのために部門横断の対応が要る書き方です。聞き手が「プロジェクトチームとかタスクフォースの匂いがしますね」と言うと、講師は「その通りです」と応じています。
- 情報の断絶:情報が部門内に閉じてしまい、全社的な意思決定が遅くなっている記述です。統合の仕組みが弱いことを示すサインです。
- 「経営資源に余裕がない」「小さな変化にも敏感に対応したい」という記述:講師が「見落としがち」と言うサインです。統合担当者やプロジェクトチームとは違うタイプのサインだといいます。
え、違うタイプ、あるんですか。
あります。ここで整理しておきたいのが、統合の手段には大きく三つの型があるということです。
統合の手段は三つの型で整理する
講師が挙げた三つの型を、順に見ていきます。
一つ目は、公式の統合担当者を置くやり方です。リエゾン担当者やブランドマネジャーのような、部門間を横断して調整する役職を設ける方法です。聞き手は「人を一人立てるイメージですね」と受け止め、講師は「そうです」と答えます。
二つ目は、公式組織そのものの調整能力を高めるやり方です。マトリックス組織や、プロジェクトチーム、タスクフォースのように、部門をまたいだ自己完結型の組織単位を作ってしまう方法です。聞き手が「人ではなくチームを作る、という違いですね」とまとめると、講師は「そこがポイントです」と言います。
三つ目は、スラック資源の活用です。さきほどの「経営資源に余裕がない」というサインに対応する型で、部門間で在庫のような余裕資源を持たせておくことで、不確実性のショックを和らげます。
| 型 | 動画で出た例 |
|---|---|
| 統合担当者 | リエゾン担当者、ブランド |
| 公式組織の | マトリックス |
| スラック資源 | 在庫のような余裕資源 |
あ、スラック資源ってそういう位置づけなんですね。人でもチームでもなく、資源そのものに余裕を持たせるという。
そうです。だから与件文を読むときは、「人を立てるべき状況なのか」「チームを組むべき状況なのか」「資源に余裕を持たせるべき状況なのか」、この三つのどれに近いかを見極める意識で読むと、整理がぐっとしやすくなります。
与件文の情報を整理する:慢性的な課題と一時的な課題
実際の整理は、頭の中でどう進めるのか。講師は設例で説明します。営業部と製造部の目標がバラバラで、しかも新商品開発のために、両部門の協力が急に必要になった。そんな状況が与件文にあったとします。
この場合、「目標がバラバラ」という慢性的な部分には、恒常的な調整役、つまり統合担当者やマトリックス組織的な仕組みが合います。一方で「新商品開発のために急に協力が必要」という部分には、期間限定のプロジェクトチームが合う、というのが講師の整理です。
同じ与件文の中でも、慢性的な課題と一時的な課題を分けて考えるということですね。
まさにそうです。全部を一つの型で片付けようとすると、与件文が持っている情報を使い切れません。
単に「統合が必要」で終わらせず、状況ごとに型を当てはめていくんですね。
その通りです。
解答への落とし込み:縦割りを壊さず、横串を通す
解答に落とし込むときのコツは、型を軸にして、既存の縦割り組織を壊さずに横串を通す発想で書くことです。聞き手が「縦割りを壊さず横串、ですか」と確認すると、講師は例を示します。「部門間の調整役を明確にする」「特定の課題については部門横断のプロジェクトチームを臨時に組成する」といった型を、与件の状況に合わせて選んで書く。
大事なのは、抽象的な「連携強化」で止めないことです。冒頭の失敗パターンを抜け出すには、与件文のサインから型を選び、その型を具体的な仕組みとして書く。この一手間が、点数の伸びに関わってきます。
プロジェクトチームを書くときの注意
聞き手が「プロジェクトチームを書くときに、気をつけることってありますか」と尋ねると、講師は大事な点を挙げます。プロジェクトチームは、課題を達成したら解散して、メンバーは元の部署に戻る臨時の組織だということです。常設組織のように書いてしまうと、論点がずれてしまいます。
あー、それやりそうです。「専門のチームを新設して恒常的に運用する」みたいに書いちゃいそう。
そうなんです。むしろ「課題達成後は解散し、既存組織とのコンフリクトを避けながら」というニュアンスを入れられると、実務的な理解が伝わる解答になります。既存組織とぶつかる可能性がある、という視点まで持てるとかなり強いです。
では、プロジェクトチームは良い面だけ書いておけばいいのか。講師は「そこも与件文次第」と言い、良い面と注意すべき面の両方を挙げます。
| 良い面 | 注意すべき面 |
|---|---|
| 各部門から人を集めるので迅速で柔軟に動ける | 既存の縦割り組織とコンフリクトが起きやすい |
| 組織が活性化する | 指揮命令系統が一時的に不明確になる |
| 幅広い専門能力を一つの課題に投入できる | 解散するので知識やノウハウが蓄積されにくい |
どちらを厚く書くかは、与件文の記述で決めます。講師が挙げた2つの場合分けは次のとおりです。
| 与件文の記述 | 書き方 |
|---|---|
| 「一つの部門だけでは対応できない課題が出てきた」 | 各部門の専門能力を集められるという良い面を強調する |
| 「頻繁に同じような課題が起きている」 | ノウハウが蓄積されない弱さに触れ、恒常的な統合担当者の設置も併せて助言する |
良い面だけでなく、その裏にある弱さまで押さえておくと、助言に深みが出そうですね。
そうです。与件文の記述に合わせて、どちらに重みを置くかを決めます。
混同しやすい3つのポイント
最後に、この論点で混同しやすいポイントを講師が改めて整理します。
| 混同しやすい点 | 見極め方 |
|---|---|
| 構造の設計と | マトリックス |
| 「連携を強化する」で | 統合担当者や |
| プロジェクト | 臨時の組織で、課題達成後に |
同じ言葉が出てきても、文脈で意味が変わるということですね。
そうです。そして二つ目の、抽象的な「連携を強化する」で終わってしまうパターンは、冒頭で話した失敗です。
これは冒頭で私がやってた失敗ですね…。書いたあとの見直しポイントとしても使えるんですね。
三つ目のプロジェクトチームを常設組織であるかのように説明してしまうことを含めて、この三つは、答案を書き終えたあとの見直しでチェックできる項目です。
書き終えたあとの見直し(動画の3項目)
- マトリックス組織や事業部制の話を、文脈を見ずに「組織の作り方」と「繋ぎ直し」で取り違えていないか
- 「連携を強化する」で止まらず、統合担当者やプロジェクトチームなどの具体策まで書けているか
- プロジェクトチームを、常設組織のように書いていないか
まとめ
動画の整理
- 与件文に「部門間の対立」「情報の断絶」「部門横断の対応が必要」「経営資源に余裕がない」といった記述が出たら、この論点に反応する
- 統合の手段は三つの型で整理する:統合担当者を置く、公式組織の調整能力を高める、スラック資源を活用する
- 慢性的な課題なのか、期間限定の課題なのかを見極めて、型を選ぶ
- プロジェクトチームは臨時組織で、課題達成後に解散する
- 「連携を強化する」で止めず、具体的な仕組みまで書き切る
動画の最後に、聞き手は「知識はあったのに使えなかった、が今日でなくなりそうです」と話しています。講師の締めくくりは、「連携を強化する」で止めず、具体的な仕組みまで書き切る意識で与件文を読めば、本番でこの論点を見逃しにくくなる、というものです。サインから型を選び、仕組みとして書く。この流れを、次に事例Ⅰの助言問題で見かけたときに思い出してみてください。
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