チームとグループ「とりあえずチーム編成」の前に確かめる3条件
事例Ⅰ 第13回
「チームとグループの意味は知っている。でも事例Ⅰで『どんな体制で進めるべきか』と問われたら、とりあえずチームと書きたくなる」。動画は、この反射的な書き方への問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文のサイン、定義と代償、体制を助言する型と問題点を指摘する型、混同しやすい誤りをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「とりあえずチーム編成」と書きたくなったら
動画は、チームとグループの言葉の意味を確かめるところから始まります。聞き手は「チームは相乗効果を狙う集まりで、グループは助け合いの集まり」と、すぐに答えます。意味は知っている。ところが事例Ⅰの与件文を読んで「この会社はどんな体制で進めるべきか助言してください」と問われたとき、反射的にどう書きたくなるか。聞き手は正直に、部門をまたぐ課題と書いてあれば、とりあえず「プロジェクトチームを組む」と書きたくなる、と認めます。
講師は、まさにそこだと言います。多くの受験生が反射的にチーム編成を書いてしまう場面ですが、その前にそもそもチームにする必要があるのかを判定する視点を持っているかどうかで差がつく、というのです。
チームにする必要があるかどうかを判定する、ってどういうことですか。何でもチームにすればいいわけじゃないんですか。
そうなんです。今日は、知識としては知っているのに、二次の現場でチームとグループの使い分けをどう見抜いて解答に落とすか、というところを埋めていきます。
このページでは、出題の場面、与件文のサイン、定義と代償、答案の型、混同しやすい誤りの順に、動画の流れにそってまとめます。
この論点が出る設問
聞き手の最初の質問は、この論点がどんな設問で出てくるのか、でした。講師が挙げた場面は次のとおりです。
- 部門をまたぐ課題に対して、どのような体制で進めるべきかを問う設問
- 新製品開発や技術承継のように、複数の専門性が必要な取り組みの進め方を問う設問
- 「連携が取れていない」「部門ごとに動いている」といった、組織への打ち手を問う設問
- チーム制を導入したけれどうまくいっていない企業の問題点を問う設問
4つ目は、導入した後の話です。聞き手が整理したとおり、体制を作る前の話としても、作った後の問題点としても出てくる論点だということになります。連携不足を指摘する設問は見た覚えがある、と聞き手も言っていました。
チームが適するサイン3つ
次は、与件文のどんな記述が出たらこの論点だと気づけばいいのか、という着眼点です。講師は、チームが適していると判断できるサインを3つ挙げます。
- 業務の複雑性と異なる視点の必要性:その業務の遂行に、複数のメンバーでの対応や、多様なスキル・経験が必要だと書かれているか。
- 価値ある目標への到達の必要性:目標が個別目標の単純な合計ではなく、それ以上の価値がある共通目標につながると書かれているか。
- 相互依存関係の必要性:その業務で、メンバー同士が相互に依存する関係にあると書かれているか。
1つ目について、聞き手は「一人や一部門だけでは対応できない、専門性がバラバラに必要、という記述ですね」と受け止めています。2つ目の「それ以上の価値がある共通目標」が分かりにくいという聞き手に、講師はこう説明します。各部門がバラバラに自分の仕事をこなすだけでは届かない、みんなで力を合わせて初めて届くような目標。単純な足し算では出てこない成果、です。
1足す1が2じゃなくて3になる、みたいなイメージですね。
そのイメージで大丈夫です。
3つ目の相互依存について、聞き手は「お互いの仕事がお互いの進捗に影響し合うこと」と確認しました。講師の説明は具体的です。誰かの仕事が終わらないと次の人の仕事が進まない。あるいは、お互いの情報がないと自分の判断ができない。こうした関係性が書かれていたら、相互依存関係のサインです。
(補足:動画にない、自作の練習例です。与件文に「新製品の開発には営業・製造・設計それぞれの知見が必要で、どの部門の進捗も他部門の作業に影響する」とあったとします。3条件のうち、複数の視点やスキルが必要という記述と、相互に依存しているという記述の2つが見つかります。与件文の一文ごとに「どの条件に当たるか」を横に書き出していく、という使い方です。)
では、3つのうちいくつ当てはまればチームと判断していいのか。講師の答えは、明確に「何個以上」という基準があるわけではない、というものです。ただし、複数の条件が重なって書かれているほど、チーム編成を勧める根拠は強くなります。逆に、これらのサインが乏しいのにチームを勧めると、根拠が弱い解答になる、と講師は注意します。
グループのままで足りるサイン
聞き手が「逆に、グループのままで足りるサインもあるんですか」と聞くと、講師は3つ挙げます。
- 各自が自分の担当範囲で仕事を進めていて、互いに助け合えば足りる状況
- 業務が定型的で、個人の成果を足し合わせれば目的が達成される状況
- 人員に余裕がなく、調整に時間を割く余力がないと書かれている状況
最後の、人員に余裕がない、というのは意外でした。人手不足ならなおさらチームで助け合った方がいいのかと思っていました。
そこがこの論点の見落としやすいところです。チームを組むこと自体にもコストがかかるので、人手不足の企業に安易にチーム編成を勧めると、かえって現場の負担を増やしてしまうんです。
チームを組むことには代償がある。この話が、次の章の中心になります。その前に、2つのサインを並べて見比べておきましょう。
| チームが適するサイン | グループで足りるサイン |
|---|---|
| 複数のスキル・視点が必要 | 各自の担当範囲で助け合えば足りる |
| 個別の合計を超える共通目標 | 定型業務で、成果の足し合わせで達成 |
| メンバー同士が相互依存 | 人員に余裕がなく調整の余力がない |
(行どうしが一対一で対応しているわけではありません。並べて見比べるための表です。)
定義と代償はセットで押さえる
与件文の情報をこの論点のフレームで整理するとき、講師は定義の違いと代償を必ずセットで押さえるよう言います。まず定義から、もう一度きちんと確認します。
チームは、メンバーが集団としての業績を目標に置いて、互いの協調を通じてプラスの相乗効果を生み出そうとする集まり。グループは、メンバーがそれぞれの責任分野の中で、業務遂行の助け合いを目的とする集まりです。聞き手の言葉で言い換えると、目標の性質が違う、ということになります。集団としての成果を狙うのか、個々の責任範囲の中での助け合いなのか。
そして代償です。講師によると、チームで業務を遂行する場合は、個人で遂行する場合よりも、一般に多くの時間と資源を必要とし、コンフリクトが顕在化する傾向にあります。
コンフリクトが顕在化する、というのは、対立が表に出てきやすい、ということですか。
そうです。複数のメンバーが協調しようとする分、意見のぶつかり合いや調整の手間が発生しやすくなるんです。
だから講師は、チームで業務を遂行することによるメリットが、この代償を上回る必要があると言います。聞き手の整理では、チームを勧めるなら、かかる時間や資源、対立のリスクよりも、得られる効果の方が大きいと言えなければならない、ということです。講師も「その通りです」と認めました。
定義と代償
- チーム:集団としての業績が目標。互いの協調で相乗効果を狙う
- グループ:それぞれの責任分野の中で、業務遂行の助け合いが目的
- チームの代償:多くの時間と資源が必要。コンフリクトが顕在化しやすい
- チームを勧めるなら、メリットが代償を上回ると言えること
解答を組み立てる順序
ここまでを、講師は1つの流れにまとめます。順序としては、まず3条件に当てはまるかを確認する。当てはまるならチーム、当てはまらないならグループでの助け合いや個人での遂行。そしてチームにするなら、時間と資源の負担、対立の顕在化への備えを書く、という流れです。
いきなり「チームを作りましょう」と書くんじゃなくて、判定してから、しかも代償への備えまでセットで書く、ということですね。
そうです。では、実際にどう解答に落とし込むか、型を見ていきましょう。
答案の型その1:体制を助言する
体制を助言するタイプの設問について、講師は次のような組み立てを示します。
動画が示した答案の流れ
「〜という業務は多様な専門性と部門間の相互依存を伴い、個別目標の合計を超える成果が求められるため、部門横断のチームを編成して進めるべきである。その際、調整に要する時間と資源、部門間の対立の顕在化に備え、責任者と共通目標を明確にする」
聞き手が整理したように、前半でチームが適する理由を3条件に沿って示し、後半で代償への備えまで書く構成です。講師は「チームにすれば良くなるで終わらせないこと」が、この論点を使う最大の要点だと言います。代償への備えまで書いて初めて、実務的に成立する助言になる、とのことです。
聞き手は「責任者と共通目標を明確にする、という部分も大事なポイントですか」と確かめました。講師の答えは、チームが機能する前提は、集団としての業績目標がメンバー間で共有されていることだ、というものです。ここが抜けると、せっかくチームを組んでも施策が空回りしてしまいます。
答案の型その2:問題点を指摘する
チーム制を導入したあとの問題点を問う設問では、こういう型が使えると講師は言います。
動画が示した答案の流れ
「チームを編成したものの、共通の目標が示されず各自が従来の担当業務の視点で動いたため、相乗効果が生まれず調整の負担だけが増えている」
チームを作ったのに共通目標が共有されていなくて、結局グループ的な動き方のままになってしまっている、という状態を指摘しているんですね。
その通りです。形だけチームにしても、目標が共有されていなければ機能しません。この視点を持っていると、チーム制導入後の問題点を問う設問にも対応できます。
聞き手のまとめも的確でした。体制を助言するときも、問題点を指摘するときも、土台になっているのは同じ定義と代償の理解だ、ということです。
混同・誤答しやすい5つのポイント
続いて、講師は混同や誤答になりやすい点を5つ挙げます。
| 誤り | 講師の指摘 |
|---|---|
| チームとグループを同義で使う | 使い分け自体が問われることもある |
| 代償に触れない | 時間・資源の負担と対立の顕在化はセット |
| 人員に余裕のない企業に安易にチームを勧める | 兼務の負担まで含めて助言する |
| プロジェクト | 特定の課題への一点集中かどうかで分ける |
| 共通目標の設定を書き忘れる | 体制の助言では必ず触れる |
1つ目は、チームとグループを同義で使ってしまうことです。相乗効果を狙うのがチーム、助け合いがグループ、という使い分け自体が問われることもあるので、曖昧にしないでください。聞き手は、用語を無意識に混ぜて使わないように気をつける、と受け止めました。
2つ目は、代償に触れないことです。時間・資源の追加負担と対立の顕在化は、必ずセットで押さえます。メリットだけ書いて終わると、解答としては片手落ちになる、と講師は言います。
3つ目は、人員に余裕のない企業に安易にチーム編成を勧めてしまうことです。与件文に人手不足が書かれていたら、兼務の負担まで含めて助言する必要があります。聞き手の言うとおり、「チームを組みましょう」だけでは、現場に負担を強いるだけの提案になりかねません。
4つ目は、プロジェクトチームや社内ベンチャーとの区別が曖昧になることです。聞き手が「プロジェクトチームは普通のチームと何が違うのか」と聞くと、講師は使い分けの持ち方を示しました。
- 特定の課題に一点集中で取り組むならプロジェクトチーム
- 異質な新事業の運営なら独立性の高い組織
今日のチームとグループの話は、通常業務の体制をどう組むかという判定の話です。プロジェクトチームは、その中でも特定の課題に一点集中する場合の選択肢の一つ、という位置づけになります。聞き手の言葉では、通常業務の体制づくりの判定軸がまずあって、その先の具体的な組織形態の一つとしてプロジェクトチームがある、というイメージです。
5つ目は、共通目標の設定を書き忘れることです。チームが機能する前提は、集団としての業績目標が共有されていること。ここが抜けると施策が空回りするので、体制を助言する解答では必ず触れるように、と講師は念を押します。
こうして並べると、5つとも根っこは同じところにつながっている気がします。定義をちゃんと区別できているか、代償まで見えているか、というところに。
いい気づきです。結局この論点は、チームという言葉を安易に使わず、本当にチームにする必要があるのかを一つずつ確認する態度が問われているんです。
試験ではここに注目
- 「連携が取れていない」とあっても、反射でチームと書かず3条件に照らしたか
- 与件文に人手不足の記述があれば、兼務の負担まで含めて助言したか
- 体制を助言する解答に、代償への備えと共通目標の明確化が入っているか
まとめ
動画の整理
- チームは相乗効果を狙う集まり、グループは責任分野の中で助け合う集まり
- チームが適するサインは3つ:業務の複雑性と異なる視点、価値ある共通目標、相互依存関係。複数が重なるほど根拠が強い
- グループで足りるサイン:担当範囲での助け合い、定型業務、人員に余裕がない状況
- チームの代償は、多くの時間と資源とコンフリクトの顕在化。メリットが代償を上回ることを示す
- 答案は、3条件で判定し、チームなら代償への備えと共通目標の明確化まで書く
- 誤答は5つ:同義で使う、代償に触れない、人手不足の企業に安易に勧める、プロジェクトチームとの区別が曖昧、共通目標の書き忘れ
動画の最後に、聞き手は「『連携が取れていない』と書いてあったら反射でチームと書くのではなく、まず3条件に照らして本当にチームが必要かを確認する癖をつけないといけない」と話しています。講師も、そこがこの論点の核心だと言います。知識を、与件文を読んで判定する手つきに変えていく。そのためには、繰り返し練習していくことが大切です。
動画で聞く
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