聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

オープン・イノベーションを具体化するコツ

事例Ⅰ 第10回

事例Ⅰ 「連携する」で終わらせない具体化のコツ13分26秒2026年8月11日公開

「与件文にこの論点が出たら、答案のどこに何を書きますか」。動画は、意味は知っているのに「連携しましょう」で終わってしまう、こんな悩みから始まります。このページでは動画の流れにそって、使いどころのサイン、効果の整理、連携の具体像、解答の型、混同しやすい誤答をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

意味は知っているのに、答案が「連携しましょう」で終わる

動画は、講師が聞き手に「オープン・イノベーション、意味はもう知ってますよね」と声をかける場面から始まります。聞き手は「内部と外部のアイデアを有機的に結合させて価値を創造する、ってやつですよね。知識としてはバッチリです」と即答します。ここで聞き手が口にしたのは、いわゆる教科書的な定義です。

ところが、講師が「与件文にこの論点が出たら、答案のどこに何を書きますか」と聞くと、聞き手の返事は「連携するといいですよ、みたいな感じで書く……んですかね?」と歯切れが悪くなります。講師は、知識はあるのに本番でどう使えばいいか分からないまま終わってしまう受験生が、実はとても多いと言います。聞き手も「連携しましょう、で終わっちゃって、なんかスカスカな答案になっちゃう気がして」と、まさに自分のことだと認めます。

そこで動画は、この論点を二次の現場でどう見抜き、どう解答に落とし込むかを、じっくり整理していきます。このページでも、動画の順にまとめます。

知識としては知っているのに、答案になると「連携しましょう」の一言で終わってしまいます。

今日はそこを埋めます。使いどころの見抜き方と、解答への落とし込み方を、セットで押さえましょう。

どんな場面で出るのか:自前主義の限界を疑う

講師がまず挙げるのは、中小企業の事例では「自社単独で全部やろうとする前提そのものに無理がある」という設定がよく出てくる、という点です。聞き手が「単独で全部って、具体的にはどういう場面ですか」と聞くと、講師は例を挙げます。新事業や新製品を開発したいけれど、技術や人材、ノウハウが自社に足りない。そこに、開発のスピードが競合に負けている、開発費の負担が重い、という記述も一緒に出てくることが多い、とのことです。

二次では、自社の経営資源に限りがある中小企業の新事業開発の打ち手として、この論点が問われます。だから「全部自前でやる」という前提のまま助言を組み立てると、そもそも無理筋になりやすい。設問で「新事業開発を進めるにはどうすべきか」と聞かれたら、真っ先に自前主義の限界を疑う癖をつけておくと、この論点に気づきやすくなる、と講師は言います。

ほかの問われ方もあります。大学や研究機関、あるいは同業者や異業種の企業との連携が与件文に書かれていて、その効果や留意点を問う設問は定番です。さらに、社内が既存事業の論理に閉じていて新しい発想が生まれにくい、という組織側の記述から、この論点につながることもあります。

事業側のサイン技術・人材が不足開発が競合より遅い開発費の負担が重い組織側のサイン発想が硬直している既存事業の論理に閉じる新しい発想が出にくいどちらも入り口になるまず自前主義の限界を疑う
入り口は事業側と組織側の2つ。どちらからでも気づけます。

組織の閉塞感みたいなところからも来るんですね。それは意外でした。

開発が足りない、遅い、高いという「事業側」のサインと、発想が硬直しているという「組織側」のサイン、両方から入り口があると覚えておいてください。

与件文のサイン:使いどころは5つ

次に聞き手が知りたがったのは、与件文のどこを見ればこの論点だと気づけるのか、です。講師が挙げた「使いどころのサイン」は、先ほどの話を整理して5つあります。

  • 新事業や新製品の開発に必要な技術・設備・人材が自社に不足している記述
  • 開発期間が長い、あるいは市場投入が競合に遅れているという記述
  • 開発費の負担が重いという記述
  • 近隣に大学・研究機関・試験場、または連携できそうな同業者・異業種企業があるという記述
  • 社内が既存事業の論理に閉じていて、新しい発想が生まれにくいという記述

講師によると、この5つが揃えば揃うほど、この論点で書ける可能性が高まります。聞き手が「全部揃ってないとダメ、ってわけではないですよね?」と確かめると、講師は「もちろんです」と答えます。1つか2つでも、方向性としてこの論点を検討する価値はある。ただ、複数重なっているときほど、この論点を軸に答案を組み立てる確信が持てる、という言い方です。

分かりました。もう一つ、留意点を書くべきサインもあるって聞いたんですが。

そうなんです。ここが盲点になりやすいところなので、次にじっくり見ていきましょう。

留意点のサイン:効果と裏のリスクを同時に探す

講師が「盲点になりやすい」と強調するのが、留意点を書くべきサインです。2つあります。1つ目は、自社の技術やノウハウが競争優位の源泉になっている記述。これは流出リスクに触れるべきサインです。2つ目は、連携先との関係が対等でない、依存が強くなりそうな記述。これも留意点として拾うべきサインになります。

使いどころのサイン(効果を書く)① 技術・設備・人材が自社に不足② 開発期間が長い・市場投入が競合に遅れ③ 開発費の負担が重い④ 近隣に大学・試験場・同業者・異業種企業⑤ 社内が既存事業の論理に閉じている留意点のサイン(リスクに触れる)⑥ 自社の技術・ノウハウが競争優位の源泉⑦ 連携先と対等でない・依存が強くなりそう
効果のサイン5つと、留意点のサイン2つ。両方のアンテナを立てます。

聞き手は「効果を書くだけじゃなくて、その裏にあるリスクのサインも同時に探しておく、っていう読み方なんですね」と言い換え、講師は「まさにそうです」と受けます。効果のサインだけ拾って喜んでいると、留意点を求められたときに何も書けなくなる。だから与件文を読む段階から、効果と留意点の両方のアンテナを立てておく、という話です。

強みを外に出しすぎると危ない、ってことですよね。

その通りです。自社の技術やノウハウが競争優位の源泉になっている記述があれば、それは流出リスクに触れるべきサインです。

効果は3つの角度で整理する

サインが見つかったら、次はその情報の整理です。講師は効果を3つの角度で整理します。

組織の活性化外を探す過程で社内に競争圧力コストの低減外部の優秀な人材と共同で開発スピードの向上高い専門性の企業との連携で加速3つとも触れると答案に厚みが出る
効果は3つの角度で整理します。
  • 組織の活性化:企業外部の経営資源を探索する過程で、社内の事業開発に対する競争圧力が強まり、組織の活性化につながる。
  • コストの低減:企業外部の優秀な人材と共同で新規事業開発ができることで、内部の開発コストの低減が期待できる。
  • スピードの向上:より高い専門性を持つ企業との連携によって、事業開発プロセスのスピードアップにつながる。

1つ目について、聞き手は「外を探しに行くこと自体が、社内に効くんですね」と驚き、講師は、外の動きを知ることで社内の停滞感に刺激が入るイメージだと説明します。

講師が特に強調するのは、効果を書くときにコスト低減だけで終わらせないことです。3つとも触れると、答案に厚みが出ます。

組織活性化、コスト低減、スピード向上。この3つですね。

はい。コスト低減は思い浮かびやすいので、あとの2つを意識して入れてください。

連携の具体像:何を共同で行うかで4つの型に切り分ける

聞き手は「実際に企業間でどう連携するのか、具体的な形もあるんですか」と聞きます。講師は、連携の具体像を考えるときは何を共同で行うのかで切り分けるのがポイントだと言い、4つの型を挙げます。

販売力を高める窓口の一本化など機能そのものを統合仕入コストを下げる共同仕入量的割引を引き出す販売経費を下げる共同配送機能差の小さい活動新規顧客を獲得異なる顧客層の企業と相互に補完し合うどの型でも相手側のメリットも考える
何を共同で行うかで、連携を4つの型に切り分けます。
  • 販売力を高める共同:販売施設の共有、共同の催事場、受注窓口の一本化など。単純に他社と一緒に販売するだけでは効果は薄いとされ、窓口の一本化のように機能そのものを統合する工夫が必要。
  • 仕入コストを下げる共同:共同仕入による量的割引。まとめて仕入れることで、単独では得られない値引きを引き出す。
  • 販売経費を下げる共同:共同配送。物流のように、自社の付加価値が少なく他社と機能差が小さい活動は、共同化によってコスト低減とサービス向上の両方が期待できる。
  • 新規顧客の獲得:異なるセグメントの顧客を持つ企業同士が連携し、お互いの顧客層を相互に補完し合う。

逆に言うと、付加価値の高い活動は共同化に向かない、ってことですか?

鋭いですね。まさにそこが留意点につながります。付加価値の源泉となる活動を外に出す場合は、ノウハウ流出のリスクに注意が必要です。物流のような機能差の小さい活動と、自社の強みそのものである活動は、分けて考える必要があります。

忘れがちな視点:連携相手のメリットも考える

この4つの型を考えるときに、講師が「絶対に忘れてはいけない」と言うのが、自社だけでなく連携相手候補側のメリットも意識する視点です。聞き手は「自社の得のことしか考えてなかったです」と、完全に見落としていたと認めます。

講師の説明はこうです。連携は相互のものであり、片側だけ得をする提案は成立しません。与件文の情報を整理するときから「相手にとっての利点は何か」というアンテナを立てておくと、解答の説得力が変わってきます。

解答に落とし込む型:効果編と助言編

ここから、実際の書き方です。講師は型を2つ示します。まず、効果を書くときの型です。

効果を書くときの型

「外部の技術と人材を取り込むことで、自社に不足する専門性を補い開発コストを抑え、開発期間を短縮して市場投入を早め、外部との接触により社内に競争圧力が生まれ組織が活性化する」

さきほどの3つの効果を全部盛り込む流れです。聞き手が「コスト、スピード、組織活性化の順で書けばいいんですね」と聞くと、講師は、順番はそのときの設問の聞き方次第でよいが、3つとも入れることが大事だと答えます。

次に、助言として書くときの型です。

助言として書くときの型

「〜と連携し、自社の〜という強みと相手の〜という技術を組み合わせて開発を進める。その際、自社の中核技術の管理と、相手側の利点にも配慮した対等な関係づくりに留意する」

自社が出すもの技術・ブランド顧客基盤など相手から得るもの専門技術・販路生産設備など連携「自社の〜を提供し、相手の〜を得る」と対応づけて具体的に書く留意:自社の中核技術の管理相手の利点にも配慮した対等な関係
「連携する」で終わらせず、出すものと得るものを対応づけます。

講師は、「連携する」だけで終わらせず、自社が何を出し、相手から何を得るのかを具体化することが、この論点の解答で一番差がつくポイントだと言います。聞き手が「具体化できるかどうかって、どこで差が出るんですか」と聞くと、講師はこう説明します。与件文には、自社の強み(技術・ブランド・顧客基盤など)と、相手に期待できるもの(専門技術・販路・生産設備など)のヒントが必ず散りばめられている。それを解答の中で対応づけて書けているかどうかで、読み手の印象がまるで違う。単に「連携すべきである」とだけ書いた答案と、「自社の〜を提供し、相手の〜を得る」と書いた答案とでは、説得力の差は歴然だ、ということです。

外注(アウトソーシング)との見分け方

聞き手は「外注とオープン・イノベーション、境目がちょっと曖昧に感じるんですが、どう見分ければいいですか」と質問します。講師の答えは、単に作業を委託しているだけか、それとも双方のアイデア・経営資源を組み合わせて新しい価値を生み出そうとしているか、という見方です。

見る点外注オープン・イノベーション
目的委託共創
中身作業を外に出すアイデアと経営資源を結合
例物流や単純作業を任せる技術・ノウハウを持ち寄り新事業・新製品を作る

なるほど、目的が「委託」なのか「共創」なのか、で見ればいいんですね。

そういうことです。作業を外に出すのが外注で、アイデアと経営資源を結合して新しい価値を生むのがこの論点です。ここを混同すると、論点自体がずれてしまいます。

混同・誤答しやすい5つのパターン

最後に、聞き手が「混同・誤答しやすいポイントを教えてください」と聞き、講師は5つのパターンを挙げます。

誤答パターン直し方
① 自社の強みを書かず連携だけ提案自社が提供できる価値を一言添える
② 相手側のメリットを無視片側だけ得をする提案にしない
③ ノウハウ流出に触れない管理をどうするかまで書く
④ 外注との混同委託か共創かで見分ける
⑤ 効果をコスト低減だけで書く3つの効果に触れる

①について、講師は「何も持たない企業は、そもそも連携相手に選ばれません」と言います。③は、付加価値の源泉となる活動を外に開くときは管理まで書けると答案が締まる、という点です。⑤は、3つの効果のうちコスト低減だけが思い浮かびやすく、組織活性化とスピードは忘れられがち、という指摘です。

今日教えてもらった5つの誤答パターン、全部気をつけます。

その前に、最後にもう1つ、注意点というより姿勢の話があります。

もう1つ:与件文にない連携先を作らない

講師が最後に付け加えるのは、与件文に連携先の候補が具体的に書かれていないのに、架空の相手を勝手に作り出して断定しないことです。聞き手は「たとえば『大学と連携すべき』みたいに書いちゃうとダメってことですか」と確認します。

講師の答えは、線引きがはっきりしています。与件文に大学や研究機関、同業者といった連携候補のヒントが実際にあるなら、それを踏まえて書くのは問題ありません。ただし、与件文に何のヒントもないのに、想像だけで具体的な連携先を決めつけて答案を組み立てるのは避けるべきです。与件文にある事実の範囲で、連携の方向性を組み立てることが基本、という姿勢です。

本番で見るポイント(動画の言い方)

  • 自社の強みと、相手に期待できるものを、与件文の言葉で対応づけたか
  • 効果は3つ、留意点は流出リスクと対等な関係まで触れたか
  • 相手側のメリットを考えたか。外注との混同はないか
  • 連携先は、与件文にヒントがある範囲に収めたか

まとめ

動画の整理

  • オープン・イノベーションは、自社単独で全部やる前提を疑うところから始まる
  • サインは、事業側(不足・遅い・高い)と組織側(発想の硬直)の両方から探す。留意点のサインも同時に拾う
  • 効果は、組織活性化・コスト低減・スピード向上の3つ
  • 連携の具体像は、販売力向上・仕入コスト削減・共同配送・顧客の相互補完の4つの型。常に相手側のメリットも意識する
  • 解答では「連携する」で終わらせず、自社が何を出し、相手から何を得るのかを具体化する
  • 付加価値の源泉となる活動を外に出すときは、ノウハウ流出のリスクにも触れる
  • 外注との混同と、与件文にない連携先を作ることに注意する

動画の最後に、聞き手は「外注との混同にも気をつけて、与件文にない連携先を勝手に作らない。これを本番でのチェックポイントにします」と話します。講師は、知識としては知っている論点だからこそ、使いどころと具体化のポイントを押さえておけば、確実に得点源にできると励まします。「連携する」の一言で終わらせず、出すもの、得るもの、気をつけることまで書き切る。それがこの動画の持ち帰りです。

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