集団間コンフリクト
事例Ⅰ 第11回
「『部門同士がぶつかっている』という記述、事例Ⅰの与件文でよく見ますよね」。動画はこんな問いかけから始まります。読んでも「何が原因で、何を書けばいいのか」がその場で決まらない。その悩みを、対立を水平的と垂直的の2種類に切り分けることで解いていきます。このページでは、出題場面と問われ方、与件文のサイン、原因と施策の整理、答案の型、混同しやすい5つの誤りを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「部門同士がぶつかっている」と書いてあったら
動画は、事例Ⅰの与件文でよく見かける「部門同士がぶつかっている」という記述から始まります。聞き手も「よく見ます」と応じますが、正直そこから先が苦しいと言います。読んでも「じゃあ何が原因で、何を書けばいいのか」がその場で決まらない。この悩みに、講師は「対立を2種類に切り分けるだけで、答案の組み立て方がはっきり変わる」と答えます。
このページでは、動画の流れにそって次の順で整理します。
- 対立の2種類(水平的と垂直的)と、この論点が出やすい場面・問われ方
- 与件文でどこを見れば、横か縦かに気づけるか
- 原因の組み立て方と、施策の整理の仕方
- 答案への落とし込み方と、混同しやすい5つの誤り
水平的と垂直的:2種類に切り分ける
講師が示す2種類は、水平的と垂直的です。同じ階層同士がぶつかるのが水平的、上下の階層の間でぶつかるのが垂直的。今日の論点はこの2つに分けて捉えることだ、と講師は言います。
2種類、ですか。集団同士がぶつかってる、というだけの話じゃないんですね。
そうなんです。同じ階層同士か、上下の階層の間か、この2つに分けて捉えるのが今日の論点です。
言葉としては知ってます。でも、二次の現場でその2つ、どう見分ければいいんですか。
見分け方は、このあと「サイン」の章でくわしく見ます。先に押さえておきたいのは、動画が最初にやるべきこととして挙げた手順です。それは、どの集団とどの集団の対立かを確定すること。聞き手は「部門A対部門Bの横の話なのか、上位組織対下位組織の縦の話なのか、ということですね」と言い換えています。講師は、ここを先に決めないと、書く原因も施策も変わってしまう、と念を押します。
この論点が出やすい場面
講師は、この論点が出やすい場面を3つ挙げます。そこに、上下関係の摩擦が加わります。
| 場面 | 問われ方の例 |
|---|---|
| 組織構造を変えた直後(事業部制 | 「予想される問題点」 |
| 経営統合・買収の後 | 「組織的な課題」「留意点」 |
| 複数部門が関わる新しい | 立ち上げの際の課題 |
| 本社と現場、親会社と子会社 | 上下関係の摩擦(この論点の出番) |
あー、再編直後って混乱が起きやすいイメージ、確かにあります。
親会社と子会社みたいな、上下関係がある組織同士の話も入るんですか。
入ります。本社と現場、親会社と子会社のような上下関係の摩擦も、まさにこの論点の出番です。
問われ方は2つ:原因か、対応策か
しかも、問われ方にも型があります。「なぜ対立が生じるのか」という原因を聞くパターンと、「どう抑えるか」という対応策を聞くパターンです。
| 設問 | 書くこと | 起きやすい事故 |
|---|---|---|
| なぜ対立が生じるのか | 原因 | 施策を書いてしまう |
| どう抑えるか | 対応策 | 原因の説明で字数を使う |
そこ、取り違えたら事故になりそうです。
まさにそこが事故ポイントです。原因を聞かれているのに施策を書いてしまう、施策を聞かれているのに原因の説明で字数を使ってしまう、これが起きやすいんです。
講師のアドバイスは、設問の要求を最初にはっきり確認する癖をつけることです。サインを拾う前に、まず「原因を聞かれているのか、対応策を聞かれているのか」を押さえます。
水平的コンフリクトを疑うサイン
ここから与件文のサインです。まず、水平的、つまり同じ階層・横の関係を疑うサインを、講師は3つ挙げます。
- 複数の部門が、同じ資源(人員や設備、予算や時間)を取り合っている記述
- 部門ごとに目標や評価指標が別々に設定されていて、方向がそろっていない記述
- 部門間の業務が相互に依存しているのに、情報共有や調整の仕組みがない記述
相互依存、というのはどういう状態を想像すればいいんですか。
たとえば、営業は受注を優先したい、製造は稼働の平準化を優先したい、というふうに部門ごとの優先順位がずれている、というイメージです。
なるほど、優先順位が違う部門同士が同じ仕事でつながっている、という状態ですね。
その通りです。
この営業と製造の話は、講師自身が「考え方を直感的につかむための一般的な例で、特定の年度の事例の話ではない」と断っています。それでも、こうしたズレが与件文に書かれていたら反応してほしい、というのが講師の言い分です。あわせて、事業部と総務・経理のような管理部門との関係や、事業部同士の関係についての言及も、水平的コンフリクトの代表的な現れ方として覚えておきます。
垂直的コンフリクトを疑うサイン
垂直的、つまり上下の関係を疑うサインも、講師は3つの形で示します。
- 指示命令の系統が機能していない、現場が本社の方針に従っていない、という記述
- 権限の配分が偏っている、あるいは誰が決めるのかが曖昧、という記述
- 親会社と子会社、本社と支店・工場のような上下関係がある組織間の摩擦
上からの指示が現場まで届いていない、みたいなイメージですか。
はい。それから、権限の配分が偏っている、あるいは誰が決めるのかが曖昧という記述もそうです。
経営層の考えが現場に伝わらない、という記述も入りますか。
入ります。経営層の方針が現場に伝わっていない、逆に現場の実情が上に上がっていない、という記述も垂直的コンフリクトのサインです。上と下、どちらの向きの断絶も対象になります。
横にも縦にも効くサイン:不透明な環境と文化の違い
聞き手が「両方に共通して効くサインってあるんですか」と聞くと、講師は2つ挙げます。
- 「環境が不透明」「先行きが読めない」という記述。目標がまとまりを欠く土壌になるので、対立が大きくなりやすい前提として使えます。
- 組織文化が異なる集団が一緒になった記述、つまり統合・合併・提携の場面。出身組織ごとの派閥や、待遇・昇進をめぐる対立に直結しやすいサインです。
環境が読めないと、部門ごとにバラバラな判断をしてしまう、ということですね。
そうです。
それは統合・買収系の設問で覚えておくと便利そうですね。
その通りです。
原因の組み立て:横は3点、縦は3点
サインを拾えて、集団の組み合わせも確定したら、原因を組み立てます。講師は横と縦で、それぞれ3点を示します。
横だと分かったら、相互依存の強さ、目標の不統一、限られた資源の競合の3点です。縦の場合は、階層が機能していない、権限配分のゆがみ、正当性の欠如の3点で組み立てます。
この3つって、どれか1つだけ書けばいいんですか。
いえ、この3つは同時に成り立つことが多いので、与件文から拾えたものを並べれば、それがそのまま原因の骨格になります。
なるほど、3点セットで考えるイメージですね。
聞き手は、縦の3点のうち「正当性の欠如」が具体的に何を指すのかを尋ねます。講師の説明は、上位の指示や意思決定が、下位から見て「なぜそれに従うべきか」が納得できない状態、という意味です。権威が正当性を失っている、というイメージで捉えてください、と講師は言います。
施策の整理と、答案への落とし込み
施策側にも型があります。講師は施策を、次の3系統に整理しておくと、どの事例でも当てはめやすくなると言います。
- 目標を共通化する打ち手
- 調整の仕組みをつくる打ち手
- 権限と責任を明確にする打ち手
聞き手が「原因の整理と、施策の整理、両方に型があるのが心強いです」と言うと、講師は実際の解答の型を示します。動画の言い方をそのまま並べます。
動画が示した解答の型
- 原因を問われた場合:「部門間で何かが相互に依存しているのに調整の仕組みがない、部門ごとの目標が不統一である、限られた資源を取り合っているため、対立が生じる」
- 対応策を問われた場合:「全社共通の目標・評価指標を設定して方向を揃える、部門横断のチームや定例の情報共有の場を設けて調整する、権限と責任の範囲を明確化する。以上により対立を抑制し組織を活性化する」
3点セットをそのまま文章にする感じですね。
そうです。
動画で原因の型として示されたのは、部門間の場合の3点です。縦(上下関係)の場合の文章の型は、動画では示されていませんでした。縦の原因の3点(階層が機能していない、権限配分のゆがみ、正当性の欠如)を、先ほどの横の型と同じように並べていく、というのが素直な使い方だと思いますが、あくまでページ側の読み方です。
字数配分と、悪影響の一言
聞き手が字数配分を尋ねると、講師は原因3〜4割、施策6〜7割が扱いやすい配分だと言います。原因はコンパクトに、施策は厚めに書くイメージです。
もう1つの工夫が、「対立が起きる」で終わらせないことです。講師は、対立がどこに悪影響を出すのかまで一言添えると答案が締まる、と言います。例は、意思決定の遅れ、モラールの低下、ノウハウ共有の停滞。こうした影響まで書けると評価が上がりやすい、というのが講師の見立てです。
原因だけで終わらず、その先の影響まで見せる、ということですね。
その通りです。
混同しやすい5つの誤り
最後に、混同・誤答しやすいポイントです。講師は5つ挙げます。
1つ目は、横と縦の取り違えです。聞き手が「親会社と子会社の話に資源の取り合いを書いてしまう、みたいなことですか」と例を出し、講師は「まさにそれ」と認めます。逆に、事業部間の話に権限の正当性を書いてしまうこともあります。どちらも、原因と現象が噛み合わない答案になります。
2つ目は、コンフリクトを一律に「悪いもの」として扱うことです。適度な対立は緊張感や改善につながる面もあるので、設問が「解消せよ」と言っていない限り、抑制・管理という語感で書くほうが安全です。聞き手の言葉でいえば、全部なくそう、という書き方はしすぎないほうがいい、ということです。
3つ目は、組織文化の逆機能との混同です。「変われない」「前例踏襲」は組織文化の話、「部門同士がぶつかる」はコンフリクトの話。設問がどちらを問うているのかを見極めます。
4つ目は、施策が精神論に流れてしまうことです。「コミュニケーションを密にする」だけでは弱い。共通目標、横断組織、権限の明確化のように、仕組みとして書くことを意識します。
あ、私、施策に迷うとつい「コミュニケーションを増やす」って書きたくなります。
気持ちは分かりますが、それだけだと弱いので、必ず仕組み側の言葉に落とし込んでください。
5つ目は、統合・買収の設問での位置づけです。コンフリクトは「デメリット・留意点」側で使う論点です。聞き手が、シナジーやコスト削減のようなメリット側に混ぜて書いてはいけない、ということですね、と確認すると、講師は「その通り」と答えます。統合・買収では、メリットとデメリットをきちんと分けて、コンフリクトはデメリット側に置きます。
動画が強調した確認ポイント
- 設問は原因を聞いているのか、対応策を聞いているのか
- どの集団とどの集団の対立か(横か縦か)
- 施策が精神論になっていないか(共通目標・横断組織・権限の明確化など、仕組みで書く)
- 統合・買収の設問で、コンフリクトをデメリット側に置いているか
まとめ
動画の整理
- 対立は、同じ階層同士の水平的と、上下の階層の間の垂直的に切り分ける
- 出やすい場面は、組織構造の変更直後、統合・買収の後、複数部門のプロジェクト、上下関係の摩擦。問われ方は原因か対応策かの2つで、取り違えは事故のもと
- サインは、横が資源の取り合い・目標のばらつき・依存なのに調整なし、縦が指示命令の不全・権限配分の偏り・上下の断絶。共通して、不透明な環境と文化の異なる集団の統合
- 原因は、横が相互依存・目標の不統一・資源の競合、縦が階層の不全・権限配分のゆがみ・正当性の欠如の各3点。施策は、目標の共通化、調整の仕組み、権限と責任の明確化の3系統
- 原因3〜4割、施策6〜7割。悪影響(意思決定の遅れ・モラール低下・ノウハウ共有の停滞)を一言添える
- 誤りは5つ:横縦の取り違え、一律に悪者扱い、組織文化の逆機能との混同、施策の精神論、統合・買収でメリット側に混ぜること
動画の最後に、聞き手は「まず横か縦かを確定させて、それぞれの3点で原因を組み立てて、対応する3系統の施策を選ぶ、という流れですね」と整理しました。講師は、そこに悪影響への一言を添え、誤答パターンを避ければ、この論点は本番で十分に使いこなせる、と受けます。「部門同士がぶつかる」という一文を見たら、まず横か縦かを判定する。そこから始めてください、という言葉で動画は締めくくられます。
動画で聞く
続けて読む
- 第6回 多角化の分類と、妥当性・留意点をセットで書く型事例Ⅰ 関連型と非関連型の見分け方と答案の型
- 第7回 衰退業界の競争戦略事例Ⅰ 衰退業界の競争戦略と撤退より先に確認する前提条件
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