評価者の心理的な偏りの見抜き方
事例Ⅰ 第16回
「評価制度に納得できないという理由で、社員が辞めていく。そんな会社が与件文に出てくることがあります」。動画は、評価の知識はあるのに二次で使うタイミングが分からない、という悩みから始まります。このページでは、与件文のどんな一文が出たら評価の論点だと判断できるのか、課題の切り分け方、評価者の偏りと対策、評価対象の広がり、解答への落とし込み方とやりがちな誤答を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
評価の知識はあるのに、二次で使えない
動画は「評価制度に納得できないという理由で、社員が辞めていく。そんな会社が与件文に出てくることがあります」という場面から始まります。評価の話だと分かっても、二次でどう使えばいいか迷う人は多い、というのが講師の見立てです。聞き手も、評価の目的や評価者の偏りは用語として知っているのに、与件文のどこを見て評価の論点だと気づけばいいのかが、正直あやふやだと打ち明けます。
評価の目的とか、評価者の偏りとか、用語としては知ってるんです。でも与件文のどこを見て、これは評価の論点だって気づけばいいのか、そこが正直あやふやで。
そうなんですよ。知識はあるのに、使うタイミングが分からない。今日はまさにそこを、与件文のどんな一文が出たら評価の論点だと判断していいのか、というところから一緒に整理していきましょう。
このページは、動画の流れにそって次の順にまとめます。
- 評価の論点がどう問われるか(二つの軸)
- 評価の目的は4つ
- 評価の論点だと気づく与件文のサイン4つ
- 課題を切り分ける三つのキーワードと、評価者の偏り
- 評価の対象の広がりと、自分で目標を決めさせる考え方
- 解答への落とし込み方と、やりがちな誤答3つ
評価の論点は「助言問題」として出る
聞き手が最初に聞いたのは、評価の論点がそもそもどういう問われ方をするのか、という点です。講師の答えはこうでした。与件文に「評価基準があいまいで社員の間に不満がある」とか、「評価者によって評価にばらつきがある」といった記述が出てくると、評価制度の課題を特定して改善策を助言する設問につながりやすい、というものです。
評価そのものの仕組みを説明させる問題じゃなくて、あくまで課題を見つけて改善提案する助言問題として出るんですね。
そうです。しかも問われ方は大きく二つの軸に分かれます。
二つの軸とは、何のために評価するのかという評価の目的と、評価そのものの質です。質は、公平か、納得できるか、明確か、という見方をします。
評価の目的は4つ
聞き手は、まず目的の方から聞きたいと言います。評価は何のためにやるものとして与件文に出てくるのか。講師が挙げたのは4つです。
- 昇給や賞与に反映するため
- 昇進や昇格を判断するため
- 能力開発につなげるため
- 後継者を見つけるため
大事なのは、与件文でどの目的に課題があるのかを、まず読み取ることです。
昇給の判断だけじゃなくて、後継者発見にもつながるんですね。それは意外と見落としそうです。
評価の論点に気づく与件文のサイン4つ
次は、与件文のどんな記述が出たら評価の論点だと気づけるか、という着眼点です。講師は4つ挙げました。
| 与件文の記述 | 疑うこと |
|---|---|
| 評価基準があいまい/何を評価されているか伝わっていない | 基準の整備・透明性 |
| 社員の不満/結果に納得していない社員が多い | 納得性・ |
| 評価者でばらつき/経験の浅い管理職が評価 | 評価者の偏り・ |
| 年功的なまま/成果や行動が反映されていない | 評価の対象 |
1つ目は、評価基準があいまいである、何を評価されているか社員に伝わっていない、という記述です。聞き手は、これを評価基準がそもそも整備されていない、透明性が欠けているというサインだと整理し、講師も「その通り」と認めました。
2つ目は、評価に対する社員の不満がある、評価結果に納得していない社員が多い、という記述です。講師はこれを、納得性の不足、フィードバックの不足を示すものだとします。
評価はしているけど、その結果や理由を本人にちゃんと伝えていない、ということですね。
そうです。
3つ目は、評価者によって評価結果にばらつきがある、経験の浅い管理職が評価を行っている、という記述です。講師は、評価者の心理的な偏りや、評価者訓練の不足を疑うサインだと言います。聞き手が「評価する側の問題」と受け止めたとおりです。
4つ目は、年功的な評価のままである、成果や行動が評価に反映されていない、という記述です。これは評価の対象そのもの、つまり年齢や経験中心なのか、能力や成果、行動まで見ているのか、という論点につながります。
与件文の一文一文が、目的のどこに課題があるかとか、質のどの要素が欠けているかを教えてくれるんですね。
課題を切り分ける三つのキーワード
与件文から拾った情報を整理するときに便利な軸が、講師によると三つあります。明確でオープンであること、納得できること、公平であることです。聞き手は「明確さ、納得感、公平さ」と言い換えて、この三つで課題を切り分けるのだと確認します。切り分け方は次のとおりです。
| キーワード | こんな課題 |
|---|---|
| 明確さ | 評価基準そのものが曖昧 |
| 納得感 | 結果が本人に伝わっていない |
| 公平さ | 評価者によってばらつきがある |
さっきの着眼点と、この三つのキーワードがつながってくるんですね。
つながります。特に公平さに関しては、もう一段深掘りが必要です。評価者側にどんな偏りが起きやすいか、知っておく必要があります。
公平さの深掘り:評価者の偏りと対策
講師が挙げた評価者の偏りは、次の5つのパターンです。
- 一部の印象で全体を判断してしまう偏り
- 優しくて評価を甘くつけがちになる偏り
- 差をつけずに真ん中に寄せてしまう偏り
- 関連がありそうな項目を結びつけて、事実ではなく推測で同じように評価してしまう偏り
- 評価者が自分自身を物差しにして、それと比べて評価してしまう偏り
聞き手は、1つ目の例として、営業成績が突出している社員を、勤怠や後輩の指導まで含めて何もかも優秀だと評価してしまうようなことかと尋ね、講師は「まさにそういうこと」と答えています。
こうした偏りに気づいたときの対策として、講師は4つ挙げます。評価者訓練を実施する。一人だけでなく複数人が評価して中央値を取る。上司だけでなく部下や同僚からも評価してもらう多面的な評価を取り入れる。面接で補う。
一人の評価者の主観だけに頼らない仕組みを作る、ということですね。
評価の対象は広がってきた
もう一つ、評価の対象そのものについても講師は整理します。評価の対象は変わってきていて、順に次の段階があります。
- 年齢と経験を評価する段階(聞き手の言葉では、いわゆる年功的な評価)
- 持っている能力を評価する段階
- 成果そのものを評価する段階
- 成果に加えて、その成果につながった行動まで評価する段階
成果だけを見ると、どうやってその成果を出したかが評価されなくなってしまいます。聞き手は「結果さえ出せば手段は問わない、みたいになってしまう」ことだと受け止め、講師もそのとおりだと言います。そこで、さらに進んだ段階では、成果につながった行動そのものまで評価するようになります。技術や知識のスキルだけでなく、周囲を引っ張る人間的な力や、問題を解決し変革していく力まで含めて見る評価です。
短期的な数字だけじゃなくて、長期的な成果につながるチャレンジ精神みたいなものも評価対象になる、ということですね。
その通りです。
モチベーションが課題のときは「自分で目標を決めさせる」
与件文で従業員のモチベーションや主体性が課題になっているときに使える考え方も、講師は紹介します。従業員自身に、企業が期待する成果を理解させたうえで、自分で目標を設定させ、達成状況を自己管理させる、という考え方です。
会社から一方的に目標を与えるんじゃなくて、自分で決めさせるんですね。
はい。これによって従業員は責任とモチベーションを持てるようになります。
ただし、この目標には条件があります。
自分で決めさせる目標の3条件
- 組織が客観的に必要としている目標であること
- 測定できること
- 達成可能であること
なんでもいいから自分で目標を立てさせればいい、というわけじゃないんですね。
解答への落とし込み:基本は三点
ここまでの整理を、実際にどう解答に落とし込むか。基本の型は、次の三点です。
解答の基本の三点
- 評価基準を明確にして社内に公開する
- 評価結果を被評価者にフィードバックする
- 評価者に対する訓練を行う
聞き手は、これを先ほどの三つのキーワード、明確さ・納得感・公平さに対応する打ち手だと整理しました。講師は、与件文の課題に応じて、この三点を組み合わせて書くと言います。曖昧さが課題なら基準の明確化と公開、不満が課題ならフィードバック、ばらつきが課題なら評価者訓練です。
与件文のどこが課題として書かれているかで、三つのうちどれを厚めに書くか変わるんですね。
そうです。加えて、評価の対象を年齢や経験、能力だけでなく、成果とその成果につながる行動プロセスまで含めて見る方向にシフトさせる提案や、従業員自身に目標を設定させ自己管理させる考え方を使った提案も選択肢になります。
さっき整理した評価対象の広がりや、自分で目標を立てさせる考え方が、ここで解答の材料として使えるんですね。
そして最後に、評価制度を変えることが何につながるのかまで書きます。講師が挙げた効果は、モチベーションの向上、人材の定着、能力開発の促進です。ここまで書き切ると、説得力のある解答になります。聞き手が言うとおり、制度を変えて終わりではなく、それがどんな効果を生むかまで書く、ということです。
やりがちな誤答パターン3つ
最後に、講師は誤答パターンを三つ押さえます。
| 誤答 | 直し方 |
|---|---|
| 評価と報酬・賃金体系の混同 | 評価の仕組みで答える |
| 「見直す」だけで終わる | 欠けている要素を具体的に |
| 成果と行動プロセスの同一視 | 行動も評価する視点を入れる |
1つ目は、評価と、報酬・賃金体系を混同するパターンです。聞き手の整理では、評価は誰をどう査定するかという仕組みで、報酬・賃金体系は査定した結果をどう給与に反映するかという話で、別物です。評価の課題に対して給与制度の変更だけで答えてしまうと、論点がずれてしまいます。
2つ目は、評価制度を見直す、とだけ書いて終わるパターンです。明確さ、納得感、公平さのどれが欠けているのかを、具体的に書く必要があります。
3つ目は、成果だけを評価することと、成果につながる行動やプロセスまで評価することを同一視するパターンです。結果だけを見る評価に終始してしまい、行動やプロセスを評価する視点が抜けてしまいます。
結果だけを見る評価に終始してしまって、行動やプロセスを評価する視点が抜けてしまう、ということですね。
はい。この三つは、書いている本人は間違えている意識がないまま起きやすいので、答案を書き終えたあとに、この三つに当てはまっていないか、必ず見直してほしいです。
動画が挙げた見直しの視点
- 与件文の記述は、明確さ・納得感・公平さのどれに当たるか
- 目的(昇給・昇進・能力開発・後継者発見)のどこに課題があるか
- 給与制度だけで答えていないか
- 「見直す」で終わらず、欠けている要素を書いたか
- 成果だけでなく行動プロセスの視点が入っているか
- 制度を変えた効果まで書き切ったか
まとめ
動画の整理
- 評価の論点は、目的と質という二つの軸で見る。課題を特定して助言する問題として出やすい
- 与件文のサインは4つ:基準のあいまいさ、社員の不満、評価者のばらつき、年功的な評価
- 着眼点は明確さ・納得感・公平さの三つに整理する
- 公平さの深掘りとして、評価者の偏り5つと、評価者訓練・複数人の中央値・多面的な評価・面接の対策がある
- 評価の対象は、年齢・経験から能力、成果、成果につながる行動へ。自分で目標を決めさせる考え方も、条件を満たせば材料になる
- 解答は、基準の明確化と公開、フィードバック、評価者訓練の三点を軸に、効果まで書き切る
動画の最後に、講師は本番での流れをこうまとめています。評価の論点が出たら、まず与件文のどの記述が三つのキーワードのどれに当たるかを拾い出す。それから、評価者の偏りや評価対象の広がりという材料を使えないか考える。最後に効果まで書き切る。聞き手は「次に評価の論点が出てきたら、この流れで整理してみます」と話しています。知識を知っていることと、与件文のサインから答案に結びつけることは別です。この流れを持っておけば、評価の論点が出ても迷わず手が動きます。
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