異動で組織を活性化する、配置の使い分け
事例Ⅰ 第14回
「『配置』って論点、1次のときはさらっと流せていたのに、二次の答案にしようとすると急に手が止まる人が多いんです」。動画はこんな悩みから始まります。ジョブローテーションも社内公募制も意味は分かっているのに、与件文で配置の論点だと気づけない。このページでは、動画の流れにそって、配置が出る4つのパターン、与件文のサイン、2つの仕組みの使い分け、答案の型、減点されやすい書き方をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
1次ではさらっと流せたのに、二次で手が止まる
動画は、配置という論点への、こんな悩みから始まります。1次試験のときはさらっと流せていたのに、二次の答案にしようとすると、急に手が止まる人が多い。聞き手も「まさにそれです」と言います。ジョブローテーションも社内公募制も、意味は分かっている。それなのに、与件文を読んでいるときに「あ、これは配置の論点だ」と気づけないのです。
聞き手が挙げた困りごとは、もう一つあります。「組織の活性化について助言せよ」のような設問を見ると頭が真っ白になり、教科書に書いてあることをそのまま並べて終わってしまう、というものです。動画はそこを埋めるために、次の3つを順番に整理していきます。
- この論点が二次でどう出るか
- 与件文のどこを見れば気づけるか
- どう答案に落とし込むか
配置の知識を持っていることと、本番で使えることは別です。このページでは、動画の流れにそって、気づき方から書き方までをまとめます。
知識としては持っているのに、本番の緊張感の中だと、どの一文がスイッチになるのか分からなくなるんです。
そこを今日は埋めていきましょう。スイッチになる記述を、順番に整理します。
配置の論点が出る4つのパターン
講師は、この論点の出方を大きく4つに分けます。次のどれかが与件に出てきたら、配置の見直しを疑ってください、という言い方です。
- 特定の社員に業務が偏っている
- 部門間の連携が悪い
- 社員のモチベーションが低い
- 社員の潜在的な適性が活かされていない
聞き手は「全部『配置』でくくれるのが意外でした」と驚きます。講師は、逆の側面も指摘します。この4つのどれにも当てはまらないのに配置を持ち出すと、的外れな答案になる。だから、手段の名前から入るのではなく、困りごとの種類から入ることが大事だ、ということです。
まず「困りごとの種類」を切り分ける
では困りごとの種類をどう見極めるのか。講師が示した軸は、次の2つの局面です。
- 会社主導で人材を育てたい局面
- 社員の意欲を活かしたい局面
どちらの局面かによって、使う仕組みが変わってきます。講師は、ここを見極めるのが、この論点の一番の勝負どころだと言います。
つまり「配置」と一言で片づけてはダメで、どっちの困りごとなのかを、まず切り分けろということですね。
その通りです。次は、その切り分けを与件文のどこで判断するか、着眼点に入っていきましょう。
与件文のサイン:属人化と部門間はジョブローテーション
聞き手の質問は、「与件文のどこを見れば、配置の論点だと気づけるのか」です。講師は、キーワード的な記述をいくつか挙げます。
1つ目は、「特定の社員しかできない業務がある」「業務が属人化している」という記述です。これはジョブローテーションのサインです。特定の人に業務が固まっているということは、他の社員がその業務を経験していないということ。だから、複数の職務を計画的に経験させて、業務対応力を広げる必要がある、という流れになります。
2つ目は、「部門間の意思疎通が悪い」という記述です。聞き手が「それもジョブローテーションですか」と聞くと、講師は「それもジョブローテーションのサインです。ただし狙いが違います」と答えます。部門間の連携が悪い、セクショナリズムがある、という場合は、他部門の業務を経験することで、お互いの仕事内容を理解し合う相互理解の促進が狙いになります。
| 与件の困りごと | 手段 | 書く狙い |
|---|---|---|
| 属人化 | ジョブ | 業務対応力の向上 |
| 部門間の連携不足 | ジョブ | 部門間コミュニ |
同じジョブローテーションでも、与件の困りごとによって「何のためにやるか」の説明を変えるということですか。
まさにそこです。手段は同じでも、狙いは業務対応力の向上なのか、部門間コミュニケーションの円滑化なのか、与件に合わせて言葉を選ぶ必要があります。
与件文のサイン:人選の苦労は社内公募制、意欲の低下は両方
3つ目の社内公募制のサインは、「新規事業やプロジェクトの人選に苦労している」という記述です。会社が一方的に人を割り当てるのではなく、社員自らが希望して手を挙げる仕組みなので、意欲ある人材を集めたい場面で使います。
ここで聞き手が整理します。会社主導で育てたいのがジョブローテーション、社員の意欲を引き出したいのが社内公募制、という対比ですね、と。講師は「その理解で合っています」と受けます。
もう一つ、「社員のモチベーションが低い」「マンネリ化している」という記述も出やすいと講師は言います。こちらは、ジョブローテーションでも社内公募制でも、配置転換によって職場に変化を与え、活性化するという文脈で使えます。この記述だけは、手段が1つに決まらない点に気をつけてください。
「誰が主導するか」の一本軸で表にする
ここまでのサインを、実際にどう整理するか。講師が「今日いちばん伝えたいところ」と言うのは、ジョブローテーションと社内公募制を対比の表として頭の中に持っておくことです。表の軸は「誰が主導するか」の一本で十分だ、と講師は言います。
会社が主導して、戦略的・計画的に職務を経験させる側がジョブローテーション。社員が自ら手を挙げる側が社内公募制。与件の記述を、まずこの左右に振り分けます。そのうえで、書き分ける効果も表に入れておきます。
| 観点 | ジョブ | 社内公募制 |
|---|---|---|
| 主導 | 会社(計画的) | 社員(自ら挙手) |
| 幅広い視野の人材 | 育てられる | (挙げず) |
| 部門間の連携 | 円滑にする | (挙げず) |
| 潜在的な適性 | 発見して活かす | (挙げず) |
| 本人の意欲 | (挙げず) | 活かす |
表の「(挙げず)」は、動画がその効果を挙げていないという意味で、効果がないという意味ではありません。動画が挙げた効果は、ジョブローテーション側が3つ、社内公募制側が「本人の意欲を活かす」の1つです。ジョブローテーション側の3つは、順に「業務の幅を広げて会社全体を見渡せる人材を育てる」「部門間コミュニケーションを円滑にする」「社員の潜在的な適性や能力を発見して活かせる」です。
ここで聞き手が、自分で例を考えてみます。社長がずっと一人で経理も営業も抱えてきて、他の社員がその仕事に触れたことがない、という会社なら、ジョブローテーションの方が合いそうだ、と。
社長が経理も営業も一人で抱えていて、他の社員がその仕事に触れたことがない会社なら、ジョブローテーションの方が合いそうですね。
いい例ですね。それはまさに属人化のケースなので、会社主導で計画的に経験を広げさせるジョブローテーションが適しています。
講師はこれに続けて、逆の設定を挙げます。新しいプロジェクトを立ち上げたいけれど、誰を担当にするか決めかねている、という設定なら、社員の側から手を挙げてもらう社内公募制の出番です。
与件文を読みながら、これは会社が動かすべき局面か、社員に動いてもらうべき局面か、という軸で仕分けていくイメージですね。
その通りです。この軸さえ持っていれば、与件文中のどの記述をどちらの仕組みに紐づけるか、迷わなくなります。
答案の型は2つ持っておく
実際に答案にするときの書き方です。講師は、型を2つ持っておくといいと言います。
答案の2つの型
- 1つ目:「ジョブローテーションで幅広い業務経験を積ませ、部門間の相互理解と将来の幹部候補育成につなげる」
- 2つ目:「社内公募制で意欲ある人材を募り、モチベーション向上とミスマッチの少ない配置を実現する」
聞き手は、「業務経験を積ませる」で終わらせず、相互理解や幹部候補育成まで書くのですね、と確認します。講師の答えは、「配置転換する」だけだと表面的なので、その先にある効果まで書き切ることで説得力が出る、というものです。社内公募制の型も同じで、応募を募るだけでなく、モチベーション向上とミスマッチが少なくなる、という効果まで書きます。
業務経験を積ませる、で終わらせずに、相互理解とか幹部候補育成まで書くんですね。
そうです。「配置転換する」だけだと表面的なので、その先にある効果まで書き切ることで説得力が出ます。
社内公募制は「留意点」まで書くと差がつく
さらに、社内公募制を使う場合は、運用上の留意点にも触れると答案の厚みが出ます。講師が挙げた留意点は3つです。
社内公募制の運用上の留意点
- 応募の自由度を確保すること
- 制度に対する管理職の理解を得ること
- 人選に漏れた社員へのフォローを行うこと
聞き手は「選ばれなかった人へのフォローまで書くのですか。そこまでは思いつかなかったです」と驚きます。講師は「ここ、差がつくポイントなんです」と強調します。社内公募制は、手を挙げたのに選ばれない社員が出てきます。そこへのケアがないと、逆にモチベーションを下げてしまうリスクがある。だから制度として機能させるには、フォローまでセットで考える必要がある、という説明です。
では、字数との兼ね合いはどう考えるか。聞き手が「字数に余裕があるときは、留意点まで入れると評価される答案になりそうですね」と言うと、講師は「そうですね」と応じて、配分の考え方を示します。
| 設問の字数 | 優先して書くこと |
|---|---|
| 字数が少ない | 効果の部分を優先 |
| 字数に余裕がある | 留意点まで広げる |
字数に余裕があるときは、その留意点まで入れると評価される答案になりそうですね。
そうですね。字数が少ない設問では効果の部分を優先し、余裕があれば留意点まで広げる、という配分で考えるといいと思います。
減点されやすい3つのパターン
聞き手が「混同しそうなポイントはありますか」と聞くと、講師は気をつけてほしいことを3つ挙げます。
1つ目は、「配置を見直す」とだけ書いて終わってしまうパターンです。時間がないとやってしまいそうだ、と聞き手も言いますが、これでは具体的にどう見直すのかが採点者に伝わりません。ジョブローテーションなのか社内公募制なのか、具体的な仕組みまで書き切ることが大事です。
2つ目は、ジョブローテーションを単なる「異動」としか説明しないパターンです。異動そのものは手段であって、目的ではありません。幅広い経験による能力向上や組織活性化という狙いに触れないと、論点として弱い答案になります。
3つ目は、社内公募制の留意点が抜けるパターンです。提案するときに、選考に漏れた社員へのフォローという運用上の配慮を欠いてしまう。講師は、これも頻出の減点ポイントだと言います。
この3つ、全部「手段だけ書いて、その先を書かない」という共通点がある気がします。
いい気づきですね。配置の論点は「何をするか」だけでなく、「何のためにするか」「どう運用するか」まで書けて初めて、完成する答案になるんです。
試験ではここに注目
- 与件に、業務の偏り・連携の悪さ・意欲の低下・適性の埋もれが出ていないか
- 会社主導で育てたい局面か、社員の意欲を活かしたい局面か
- 答案が、手段・狙い・運用上の配慮まで書けているか
まとめ
最後に、聞き手が「本番で使うときのポイントをまとめてもらえますか」と頼み、講師が3点に整理します。
動画のまとめ
- 気づく:特定社員への業務の偏り、部門間の連携の悪さ、モチベーションの低下、潜在的な適性の埋もれ。このどれかが与件文に出たら、配置の論点
- 使い分ける:会社主導で育てたい局面か、社員の意欲を活かしたい局面かで、ジョブローテーションと社内公募制を仕分ける。軸は「誰が主導するか」
- 書き切る:手段だけでなく狙いまで。ジョブローテーションなら業務対応力の向上や部門間コミュニケーションの円滑化、社内公募制ならモチベーション向上とミスマッチの少ない配置、そして選ばれなかった社員へのフォローまで
動画の終わりで、聞き手は「知識はあったはずなのに、使い方まで整理してもらうと、本番での気づき方が全然違いますね」と話しています。講師の答えは、知識と使い方はセットで初めて武器になる、というものでした。次に与件文を読むときは、まず困りごとの種類を切り分け、手段と狙いと運用の配慮を、一続きで書き切ってみてください。
動画で聞く
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