Off-JT・自己啓発
事例Ⅰ 第5回
「能力開発を問われたとき、OJTのことばかり答案に書いてしまって、あとで気づいたら文字数が足りなくなった、という経験はないですか」。動画は講師のこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文のサイン、Off-JTと自己啓発支援の整理の仕方、答案に落とし込む型、誤答しやすい5つのパターンをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
OJTだけで答案が埋まってしまう
動画は、講師のこんな問いかけから始まります。能力開発を問われたとき、OJTのことばかり答案に書いてしまって、あとで気づいたら文字数が足りなくなった。そんな経験はないですか、と。聞き手は「あります、めちゃくちゃあります」と即答します。日常業務の中で教える、という話だけで一気に書き進めてしまい、気づいたときには他の切り口を入れる余地がなくなっているのです。
講師によれば、OJTは書きやすく発想もしやすい論点です。ただ、それだけで終わると、組織全体の育成方針としては一面的だと評価されてしまう可能性があります。聞き手も、Off-JTや自己啓発支援という言葉自体は知っているのに、本番でどこに気づき、どう使い分ければいいのかが自分の中で整理しきれていない、と打ち明けます。そこで今回のテーマは、OJTだけで答案が埋まりそうになったとき、どこで踏みとどまってOff-JTと自己啓発支援を差し込むか、です。
この論点の問われ方について、講師の説明は次のとおりです。
- 能力開発の助言問題全体の中で、3本柱のうちの2つ(Off-JTと自己啓発支援)として出てくることが多い。
- 「Off-JTについて述べよ」のような単独の問われ方より、OJT・Off-JT・自己啓発支援を組み合わせて全体設計を問われる形が中心。
単発の知識ではなく、組み合わせの一部として登場する、ということですね。
そうです。だから与件文を読むときも、この3つのうちどれが不足しているか、どれを厚くすべきか、という視点でチェックしていく必要があります。
与件文のサイン:4つの記述に反応する
聞き手が最初に尋ねたのは、与件文のどんな一文が出たら、Off-JTや自己啓発支援を書くべきだと気づけるのか、という点でした。講師が挙げたサインは、記述のタイプで数えると4つです。
- 専門性のサイン:「専門的な知識や資格が求められる業務がある」「新しい技術や分野への対応が必要」。社内の日常業務だけでは補えない専門性の話なので、社外の研修や講習の必要性に直結します。聞き手は「社内だけでは完結しない専門性、というのがキーワード」と整理していました。
- 体系のサイン:「教育制度が体系立っていない」「その場任せの指導しかできていない」。階層別・職種別に計画的な教育機会が不足している、というサインです。「体系だっていない」という言葉が出たら反応する、と覚えておきます。
- 自己啓発のサイン:「社員に自己啓発の意欲はあるけれど、時間や費用がネックになっている」。講師は「これはもう自己啓発支援そのもの」と言います。会社側が金銭面・時間面で支援できる余地がある、という話になるからです。
- 階層のサイン:「中堅社員や管理職層の底上げが課題」。新入社員・中堅社員・管理職といった階層に応じて共通の知識を習得させる、階層別研修の出番です。
4つ目について、講師は注意を添えています。専門研修だけがOff-JTだと思っていると、この階層別研修の視点が抜け落ちてしまう、というのです。聞き手も「階層で分けて考えるというのは、意外と見落としがちかもしれません」と話していました。
「社員に自己啓発の意欲はあるけれど、時間や費用がネックになっている」という記述が出たら、これはもう自己啓発支援そのものです。
意欲はあるのに時間やお金がネック、というのは、支援すべき対象が明確に書かれているってことですね。
Off-JTの整理:実施方法2通り×内容2通り
サインに気づいたら、次は情報の整理です。まずOff-JTから。講師の説明では、Off-JTは「職場を離れた場で教育研修を受ける」能力開発の方法で、実施の仕方が2通りあります。
1つは、自社以外で開催されている講習会や研修会に社員を参加させる方法。もう1つは、自社に外部の専門講師を招いて講習会を行う方法です。聞き手は「外に行かせるだけじゃなくて、外の人を呼んでくるパターンもOff-JTなんですね」と驚いていました。講師は「ここを見落とす受験生が本当に多い」と言います。Off-JTを「社外研修」とだけ理解していると、社内で外部講師を招くパターンを書き逃してしまうからです。
内容の面でも2つに分けられます。1つは、職務に必要な技術や能力を学ぶ専門研修。営業ならコミュニケーション技術、経理なら簿記、といったものです。もう1つが、先ほどのサインに出てきた階層別研修です。
Off-JTの整理の軸
- 実施方法:社外の講習会・研修会に参加させる/社内に外部の専門講師を招く
- 内容:専門研修(職務に必要な技術・能力)/階層別研修(階層に応じた共通の知識)
専門研修と階層別研修、この2軸で整理すればいいんですね。
はい。与件文からは「何を」「誰に」学ばせるのか、そして「社外に出すのか、社内に呼ぶのか」を読み取って、この型に当てはめていくイメージです。
自己啓発支援の整理:主体は社員、会社は後押し
続いて自己啓発支援です。講師の定義は、社員が自分の能力開発のために行う通信教育や学校への通学といった自主的な学習を、会社がバックアップすることです。ここでのポイントは、主体が社員側にあることだと講師は強調します。
聞き手の整理はこうでした。OJTやOff-JTは会社が主体で教育する。自己啓発支援は社員が主体で、会社は後押しする側。講師はこれを「まさにそこが最大の分かれ目」と認めています。
支援の中身は2種類に整理できます。1つは金銭的支援で、通信教育費用や書籍購入費用、通学費用の一部を会社が負担するというもの。もう1つは時間的支援で、夜間に教育機関へ通学する社員に対して、残業を免除したり、フレックスタイムを適用したりするものです。
書くときのコツとして、講師は与件文の困りごととの対応づけを挙げます。
| 与件文の困りごと | 支援 | 中身の例 |
|---|---|---|
| 「費用がネック」 | 金銭的支援 | 費用の一部を負担 |
| 「時間が取れない」 | 時間的支援 | 残業免除・ |
聞き手は「与件文の困りごとと支援の中身を1対1で対応させるイメージなんですね」とまとめ、講師も「そうです」と応じました。ここまでで、Off-JTの2つの実施方法と2つの内容、自己啓発支援の2つの支援の中身、という材料がそろったことになります。
答案の型:OJTを土台に、2つを足す
では実際に解答へ落とし込むとき、どういう型で書くのか。講師の答えは、能力開発を問われたら、まずOJTを土台に置く、というものです。そのうえで、専門性が高い場面や体系的な知識が必要な場面ではOff-JTを、社員の自主性を伸ばしたい場面では自己啓発支援を、それぞれ組み合わせて提案すると、網羅性が上がるといいます。聞き手の言葉でいえば「土台がOJTで、そこに2つを足していく」イメージです。
書く中身は、具体的であるほど評価されます。講師の指摘を整理すると、次のようになります。
- Off-JT:「誰を」「どんな内容の研修に」「社内実施か社外参加か」まで具体化する。ここが抽象的なままだと、点数が伸びにくい。
- 自己啓発支援:「金銭的支援」「時間的支援」のどちらか、または両方に触れて具体性を出す。「支援する」とだけ書いて終わらせない。
Off-JTは対象と内容と実施場所の3点セット、自己啓発支援は支援の中身まで踏み込むかどうかで差がつく、ということですね。
そのとおりです。「支援する」とだけ書いて終わらせないことが重要です。
(補足:動画にない書き方の例です。「中堅社員の底上げのため、中堅社員を対象に階層別研修を、社内に外部講師を招いて実施する」のように、対象・内容・実施場所を一文に入れると、型として使いやすくなります。)
何もない企業には、段階的に整える
講師はもう1つ、能力開発を全体設計として問われた場合に使える発想を紹介します。何も教育の仕組みがない状態から、段階的に整えていくという考え方です。順番は、まずOJTを実施し、次にOff-JT、最後に自己啓発支援。教育制度が全くない企業に対して、いきなり全部を提案するのではなく、この順序で組み立てていくと、論理的な流れとして書きやすくなる、と講師は言います。
何もない状態から積み上げていく順番があるんですね。これは知らなかったです。
教育制度が全くない企業に対して、いきなり全部を提案するのではなく、まずOJT、次にOff-JT、最後に自己啓発支援という順序で組み立てると、書きやすい流れになります。
前の章の型と、この章の順序は、どちらも3本柱を組み合わせて全体設計を書くための発想です。動画は後者を「使える発想」として紹介していて、必ずこの順にしろ、とは言っていません。
誤答しやすい5つのパターン
ここからは、混同しやすい点、誤答しやすい点です。講師は5つ、順に確認していきます。
- 1. 実施パターンの見落とし:Off-JTを「社外研修」とだけ書いて、自社に外部講師を招くパターンを見落とす。聞き手も「社内実施のOff-JTがあることを忘れない」と確認していました。
- 2. 主体の取り違え:Off-JTと自己啓発支援を取り違える。判断基準は主体です。Off-JTは会社が主体となって実施・参加させる教育、自己啓発支援は社員が自主的に行う学習を会社が後押しするもの、という違いで見分けます。
- 3. 支援内容の曖昧さ:自己啓発支援を「研修を受けさせる」と書き、金銭的・時間的な支援という会社側の役割を明確にしない。聞き手が「自己啓発支援なのに会社が研修させる、という書き方だと、定義がずれてしまう」と言い、講師は「そうです」と認めました。
- 4. 単一施策への偏り:OJT・Off-JT・自己啓発支援のどれか1つだけで答案を終え、3本柱を組み合わせる視点が抜ける。最初に話していた、OJTだけで書き進めてしまうパターンに戻ってきます。だからこそ、与件文を読む段階で、3本柱のうちどれが根拠として拾えるかを意識しておく必要があります。
- 5. 効果の一面的理解:Off-JTの効果を、業務に直結する専門知識の習得という側面だけで捉え、階層内での相互啓発や視野拡大、レベルアップという側面を見落とす。
5つ目は少し説明が要るので、次の章で見ます。
Off-JTの効果は専門知識だけではない
5つ目の誤答パターンで、聞き手は素直に疑問をぶつけました。効果って、専門知識を身につけることだけじゃないんですか、と。講師の答えはこうです。階層別研修などで同じ階層の社員が一緒に学ぶことで、お互いに刺激を受け合う、いわゆる相互啓発の効果があります。自分の弱点に気づいたり、視野が広がったりする側面も含めて、Off-JTの効果として書けると厚みが出る、というのです。
Off-JTの効果の見方
- 業務に直結する専門知識の習得
- 同じ階層の社員が一緒に学ぶことでの相互啓発・視野拡大・レベルアップ
聞き手は「人と人が関わることで生まれる効果もある、というのは新しい視点でした」と話しています。
5つに共通するのは「一面的」
講師は5つの誤答パターンを、実施パターンの見落とし、主体の取り違え、支援内容の曖昧さ、単一施策への偏り、効果の一面的理解、と整理しました。聞き手はここで、こう気づきます。並べてみると、全部「何かを一面的にしか見ていない」という共通点がある気がする、と。講師は「いい着眼点」と受け、Off-JTと自己啓発支援はどちらも複数の切り口を持つ論点なので、一面だけ拾って安心してしまうと点数を落としやすい、とまとめました。
| 誤答パターン | 見落とし | 補う視点 |
|---|---|---|
| 実施の見落とし | 社内招へい | 2通りで考える |
| 主体の取り違え | 誰が主体か | 会社か社員か |
| 支援内容の曖昧さ | 会社の役割 | 金銭・時間を明記 |
| 単一施策への偏り | 組み合わせ | 3本柱で検討 |
| 効果の一面的理解 | 相互啓発など | 専門知識以外も |
本番のチェックポイント
動画の最後に、聞き手の求めに応じて、講師が本番でこの論点を使うときのチェックポイントをまとめました。
動画が挙げたチェックポイント
- 能力開発を問われたら、OJTだけで終わらせず、Off-JT・自己啓発支援まで含めて3本柱で検討する
- Off-JTは、実施方法が社外参加と社内招へいの2通り、内容が専門研修と階層別研修の2通りあることを思い出す
- 自己啓発支援は、主体が社員側にあることを意識しつつ、金銭的支援と時間的支援の2種類で具体化する
- 教育の仕組みが全くない企業には、OJTからOff-JT、自己啓発支援へと段階的に整える発想も使える
OJTだけで終わらせない、実施方法と内容を具体化する、支援の中身まで踏み込む。この3つを意識して答案を組み立てていきたいと思います。
それができれば、能力開発の答案の網羅性はぐっと上がるはずです。
まとめ
動画の整理
- OJTだけで答案が埋まると一面的に見えるおそれがある。3本柱を組み合わせる視点を持つ
- 与件文のサインは4つ:専門性、体系の不足、意欲はあるが時間・費用がネック、中堅・管理職層の底上げ
- Off-JTは実施方法2通り・内容2通りで整理し、効果は相互啓発や視野拡大も含める
- 自己啓発支援は主体が社員側。金銭的支援と時間的支援で具体化する
- 答案はOJTを土台に2つを足し、対象・内容・実施場所や支援の中身まで書く
- 誤答は5つ:実施パターンの見落とし、主体の取り違え、支援内容の曖昧さ、単一施策への偏り、効果の一面的理解
5つの誤答に共通していたのは、どれも「一面的にしか見ていない」ことでした。裏を返せば、与件文のサインから3本柱を拾い、それぞれの切り口を具体的に書けば、答案の網羅性は上がります。OJTを書き終えたところで一度手を止めて、Off-JTと自己啓発支援を差し込めないかを考える。その習慣を、動画の最後の聞き手の言葉とあわせて持ち帰ってください。
動画で聞く
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