組織活性化
事例Ⅰ 第4回
「一体化度と無関心度って、1次のときに用語としては覚えましたよね。でも、いざ事例Ⅰの与件文を読んで組織状態を診断してくださいと言われたとき、この2つの軸をパッと当てはめられますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは、状態診断と施策提案をセットで書く順番、一体化度と無関心度の与件文のサイン、動機づけ要因・衛生要因の仕分け、診断に対応する施策の選び方、混同しやすいポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
用語は知っているのに、与件文に当てはめられない
動画は、一体化度と無関心度という、1次で用語として覚えた話から始まります。講師の問いかけはこうです。「いざ事例Ⅰの与件文を読んで『さあ、この会社の組織状態を診断してください』と言われたとき、この2つの軸をパッと当てはめられますか」。
聞き手の理解は、一体化度は組織の目的をどれだけ共有しているか、無関心度は指示をどれだけ鵜呑みにしてしまうか、というものです。それでも聞き手は「正直できない」と答えます。用語は知っているのに、与件文のどの一文が一体化度の話で、どの一文が無関心度の話なのか、読んでいる最中に判断がつかないからです。
講師は、今日はまさにそこ、知識を持っているのに二次の現場で使えない、というところを埋めていくと宣言します。テーマは組織活性化です。
用語は知ってるのに、与件文のどこを見ればいいのかが分からない。まさにそこで止まってしまうんです。
そこなんですよね。知識を、与件文を読む手つきに変えていく。それが今日のねらいです。
まず「状態診断」、それから「施策」
講師によると、事例Ⅰでは、社員の士気が下がっている、一体感が乏しい、指示待ちの社員が多い、変化に対して受け身、といった組織の停滞状況が描かれます。そのうえで、どんな施策で組織を活性化すべきか、と問われることが多いそうです。聞き手も「よく見る設問パターン」と応じます。
ただし聞き手は、こういう問題が出ると、褒める、給料を上げる、といった思いつきの答えを並べがちだと打ち明けます。講師は「そこが差がつくポイント」と言います。
答案を書く順番
- 思いつきの施策を並べる前に、なぜ組織が停滞しているのかという状態診断をする
- その診断に対応する施策を選ぶ
- 状態診断と施策提案をセットで書く(診断が抜けると、施策だけがふわっと浮いた答案になる)
状態診断と施策提案、この2つをセットで書く、ということですか。
そうです。診断が抜けると、施策だけが浮いた答案になってしまいます。
活性化された組織とは何か
聞き手は、活性化された組織とはどういう状態か、一言で説明しろと言われると詰まる、と言います。講師の答えは次のとおりです。
活性化された組織
- メンバーが組織の目的や価値観を自分の判断基準として内面化している(一体化度が高い)
- 与えられた指示を鵜呑みにせず、自分で考えて行動できる(無関心度が低い)
- この2つがそろった組織
聞き手は「逆に言うと、一体化度が高くても無関心度も高いと、活性化しているとは言えないんですね」と確認します。講師は、それは言われたことは忠実にやるけれど自分では考えない、いわば受動的な組織だと答えます。理念は共有されているけれど思考停止している、というパターンです。
では一体化度が低い場合はどうなるのか。講師は、そもそも組織への帰属意識自体が弱い状態で、理念や方針が浸透していないので、無関心度がどうこう以前に、組織としてバラバラな状態と考えてよいと説明します。
一体化度が高くても無関心度も高いなら、活性化とは言えない。受動的な組織ですね。
そうです。理念は共有されているのに、思考が止まっている。そういう状態です。
与件文のサイン:一体化度と無関心度
定義は分かった。では与件文でどう気づけばいいのか。聞き手は、設問の要求を見誤らないためにも着眼点を知りたい、と尋ねます。講師は「いい質問です」と言って、2つの軸それぞれのサインを挙げます。
- 社員の間で経営理念やビジョンが共有されていない、社長の考えが現場に伝わっていない。これは一体化度の低さのサインです。
- 指示されたことしかやらない、前例踏襲、上司の言うことに疑問を持たない。これは無関心度の高さのサインです。
聞き手は一体化度のほうを「経営者と現場の距離みたいな話ですね」と受け止め、2つは言葉として似ているようで、着目している場所が違うと整理します。講師も同意して、こう言います。一体化度は理念が伝わっているかという軸、無関心度は現場が自分の頭で考えて動けているかという軸。この違いを意識すると、与件文の記述を拾いやすくなります。
一体化度と無関心度、言葉は似てるのに、見ている場所が違うんですね。
そうなんです。理念が伝わっているか、現場が自分の頭で動けているか。この違いを意識すると拾いやすくなります。
ほかのサイン:モラール低下・権限集中・風通し
聞き手が「他にもサインになる記述はありますか」と聞くと、講師は3つ挙げます。
| 与件文の記述 | 読み取れること |
|---|---|
| 若手・中堅の離職が続く、モチベーションの低下 | モラール |
| 権限が一部の役員や古参社員に集中、現場に裁量がない | 権限 |
| 風通しが悪い、部門間の情報共有が乏しい | 組織が成り立つ基本的な要素が欠けた状態 |
権限の話について、聞き手は「権限がない状態が続くと、現場が考えなくなって無関心度が上がっていく、というつながりですね」と整理し、講師は「その通り」と応じます。
風通しの話は、聞き手が「コミュニケーション不足まで組織活性化の話に入ってくるんですね」と驚く場面です。講師は、組織が成立するには共通の目的、協働しようとする意欲、コミュニケーションが欠かせないと説明します。これが乏しいと、理念も伝わりにくく現場の意見も届きにくくなるので、一体化度と無関心度の両方の軸に影響してくる、ということです。
権限がないまま時間が過ぎると、現場が考えなくなって、無関心度が上がっていく。そういうつながりですね。
その通りです。風通しの悪さのほうは、両方の軸に影響してくるので見逃せません。
拾った記述を仕分ける:2軸と動機づけ要因・衛生要因
着眼点がイメージできたところで、聞き手は「拾った記述をどう整理するのか。バラバラに拾っただけだと、答案を組み立てるときに混乱しそう」と尋ねます。講師の答えは2軸への仕分けです。与件文から拾った記述を、これは一体化度に関わる記述、これは無関心度に関わる記述、と振り分けていきます。
聞き手は、一体化度は理念共有やビジョン浸透、無関心度は権限委譲の有無や裁量の広さ、と整理しました。講師は「そうです」と答え、この仕分けをしておくと診断パートで何が問題かを整理しやすくなると言います。聞き手は、書く前に頭の中を整理するイメージだと受け止めています。
講師はさらにもう一つ、モラール低下の要因を仕分ける軸を挙げます。動機づけ要因と衛生要因という切り口です。聞き手は「1次で聞いたことはあるけれど、二次でどう使うのか分からない」と言います。
動機づけ要因は、達成、承認、仕事そのもの、昇進、成長といった要素で、満たされないと物足りなさを感じます。衛生要因は、給与、作業条件、人間関係、会社の方針、命令系統で、満たされないと不満そのものが生じます。聞き手は「物足りなさと不満、性質が違うんですね」と受け止めます。
だから、与件文の記述がどちらの不足を示しているかを見極めることが重要になります。給与や作業条件への不満の記述なら衛生要因の不足、成長機会や達成感の乏しさの記述なら動機づけ要因の不足、という具合です。聞き手は、この仕分けをしておくと施策パートで抜け漏れなく打ち手を提案できる、とまとめ、講師は「その通り」と答えます。
診断パートの書き方
診断パートでは、一体化度が低い、あるいは無関心度が高い、あるいはその両方のため組織が停滞している、という形で、与件文の記述を根拠に簡潔に状態を言語化します、と講師は言います。仕分けで拾った記述が、ここで根拠になります。
施策パートは、その診断内容に対応させて打ち手を選ぶんでしたね。
はい。診断で挙げた原因に対応する施策を選ぶ。診断と施策がつながっているのが大事です。
施策パート:診断に対応させて選ぶ
講師が挙げた施策を、診断の種類ごとに表にまとめます。
| 診断 | 講師が挙げた施策 |
|---|---|
| 一体化度を高める | 理念・ビジョンの共有機会、社長と社員の対話機会、目標管理制度による目標共有 |
| 無関心度を下げる | 権限委譲、職務拡大、職務充実、提案制度、社内公募制、ジョブ |
| 動機づけ要因に効く | 表彰制度、目標管理制度、昇進・昇格の機会 |
| 衛生要因に効く | 指揮命令系統の明確化、評価基準の明確化と公開、コミュニケーション機会の増加 |
聞き手は、目標管理制度が目標を共有することで理念の浸透にもつながる、という位置づけなのだと受け止めています。表のとおり、目標管理制度は一体化度を高める施策としても、動機づけ要因に効く施策としても挙がっています。
職務拡大と職務充実は、聞き手が「似てるようで違いますよね」と切り出した点です。講師の説明はこうです。
職務拡大は仕事の幅を横に広げる水平的な拡大、職務充実は権限や裁量を増やして仕事の深さを増す垂直的な拡大です。対象社員の成熟度に応じて使い分けます。聞き手は「単純に仕事を増やせばいいわけじゃなくて、社員の状態に合わせて選ぶんですね」と確認しました。
施策の数、結構たくさんありますね。全部並べたくなっちゃいそうです。
そこは注意が必要です。思いつく限り並べるのではなく、診断で挙げた原因に対応する施策を選んで書くと、一貫性のある答案になります。
字数配分の目安も、講師は示しています。基本形は、診断(現状の何が問題か)に3割から4割、施策(何をすべきか)に6割から7割です。聞き手は「診断はコンパクトに、施策で厚めに書く」と整理しました。
混同しやすい3つのポイント
講師は、混同しやすい点を3つ挙げます。
1つ目は、組織文化との混同です。組織文化は、組織の中に根づいた行動規範や価値観そのものを指す概念です。組織活性化は、メンバーがその目的や価値観をどれだけ自分ごと化し、主体的に行動できているかという、状態の見立てです。聞き手は「中身そのものか、浸透具合と主体性の状態か、という違い」と整理します。
講師は、組織文化を変える話は採用や評価制度の見直しなど中長期の話になりやすいが、活性化施策は権限委譲やコミュニケーション改善など比較的短期で打てる施策だ、とも言います。聞き手は、設問が中長期の話を求めているのか、すぐ打てる施策を求めているのか、その粒度を読み違えないこと、とまとめました。
2つ目は、モチベーション理論との混同です。動機づけ要因・衛生要因は個人のやる気に着目した施策の切り口です。一方、組織活性化は組織全体の一体感と自律性という、より集団レベルの見立てです。聞き手は、設問が個人か組織全体かのどちらの粒度を問うているかを読み違えないこと、と確認します。
| 比べる点 | 混同の相手 | 組織活性化 |
|---|---|---|
| 組織文化 | 行動規範・価値観そのもの | 自分ごと化と主体性の状態 |
| 施策の時間軸 | 採用・評価制度など中長期 | 権限委譲・対話など比較的短期 |
| モチベーション | 個人のやる気 | 組織全体の一体感と自律性 |
3つ目は、「権限委譲すればよい」という単純化です。聞き手は「それ私やりがちです。無関心度を下げるなら権限委譲一択、みたいに考えちゃいます」と告白します。講師は、気持ちは分かるが、経営理念やビジョンの共有、つまり一体化度の向上が伴わないまま権限だけを渡すと、組織の方向性がばらばらになるおそれがある、と注意します。診断で一体化度の不足も見えている場合は、権限委譲だけでなく理念共有策もセットで書く必要があります。
無関心度だけ見て終わりじゃなくて、一体化度のほうも診断できてるか確認する、ということですね。
そうです。診断と施策の対応関係を最後まで意識することが、この論点を使いこなす一番のポイントです。
動画が示した読み違えの防ぎ方
- 設問が求めているのは、中長期の話か、比較的すぐ打てる施策か
- 設問が問うているのは、個人の粒度か、組織全体の粒度か
- 無関心度だけでなく、一体化度の不足も診断できているか
まとめ
動画の整理
- まず一体化度と無関心度の2軸で組織の状態を診断し、その診断に対応する施策を、それぞれの軸から選ぶ
- 与件文のサイン:理念が伝わっていない記述は一体化度の低さ、指示待ち・前例踏襲・疑問を持たない記述は無関心度の高さ
- モラール低下が出てきたら、動機づけ要因と衛生要因のどちらの不足かも仕分けて施策に反映する
- 字数配分の基本形は、診断3〜4割・施策6〜7割
- 組織文化やモチベーション理論との粒度の違いを間違えない
動画の最後に、聞き手は「用語は知っていても、与件文でどこを見て、どう仕分けて、どう施策に落とすか、その手順まで分かっていなかった」と実感を語ります。講師は、そこが二次試験の核心で、知識を、与件文を読む手つきに変えていく練習を繰り返していきましょう、と締めくくります。理念が伝わっているか、現場が自分の頭で動けているか。この2つの目で与件文を読み、診断に対応する施策を書く。この手順を、本番で思い出してください。
動画で聞く
続けて読む
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