聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

時間をかけて育てる、新卒採用という投資

事例Ⅰ 第22回

事例Ⅰ 新卒採用の使いどころ。与件文のサインと答案の型7分42秒2026年8月9日公開

「新卒採用のメリットとデメリット、意味は知ってるという人ほど、二次の解答欄で手が止まるんですよね」。動画はこんな言葉から始まります。用語を知っていることと、与件文を読んで「ここは新卒採用の話だ」と気づけることは別のスキルです。このページでは、出方の2パターン、与件文のサイン、メリット・デメリットの整理、局面の見極め、答案の型、やってしまいがちな失敗、本番のチェックポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

意味は知っているのに、二次の解答欄で手が止まる

動画は、事例Ⅰの定番論点である新卒採用のメリットとデメリットを扱います。ただし主題は意味の説明ではありません。講師は冒頭で、「新卒採用のメリットとデメリット、意味は知ってるという人ほど、二次の解答欄で手が止まる」と言います。聞き手も「知識としては言えるんですけど、実際どの設問でこれを使えばいいのか、パッと判断できなくて」と打ち明けます。

講師が指摘するのは、用語を知っていることと、与件文を読んで「ここは新卒採用の話だ」と気づけることは、まったく別のスキルだという点です。そこで動画は、意味の説明はもう大丈夫という前提で、この論点が事例Ⅰでどう問われるか、与件文のどこで反応すればいいかに絞って進みます。

知識としては言えるのに、どの設問で使えばいいのか判断できない。まさに私のことです。

そこが今日の出発点です。意味ではなく、気づき方を整理していきましょう。

このページでは、出方の2パターン、与件文のサイン、メリット・デメリットの整理、答案の型、やってしまいがちな失敗、本番のチェックポイントの順に、動画の流れにそってまとめます。

出方は大きく2パターン

聞き手が「どんな場面で出やすいんですか」と聞くと、講師は大きく2つのパターンを挙げます。

  • 社員の年齢層が偏っていて、将来の経営を担う人材が育っていない、という組織課題が与件に出てくるパターン
  • 自社独自のやり方や社風を、これから採用する人にしっかり浸透させたい、という文脈
① 年齢層の偏り将来の経営を担う人材が育っていない② 社風の浸透自社独自のやり方を採用者に浸透させたいどちらも先を見た組織づくり今すぐの人手不足ではない時間をかけて育てる投資
出方は2パターン。どちらも「先を見た組織づくり」の話です。

聞き手は、どちらも「今すぐの人手不足」というより、もう少し先を見た組織づくりの話なんですね、とまとめます。講師は「そこがポイントです」と応じ、新卒採用は即戦力の補充ではなく、時間をかけて自社に合う人材を育てる、いわば投資だと説明します。

投資、ですか。

ええ。だから設問側も「どうすればよいか助言せよ」という形で、人材戦略そのものを問うてくることが多いんです。

つまりこの論点は、メリット・デメリットの暗記を聞かれるというより、助言型の設問で人材戦略として使う場面で出てきやすい、というのが動画の見立てです。

与件文で反応すべきサイン

では、与件文のどんな一文が出たら、この論点だと気づけばいいのか。講師はいくつかのキーワードを挙げます。

年齢構成が偏っているベテラン偏重年齢構成の適正化(メリット)自社独自の技術・接客を浸透させたい社風になじみやすい(メリット)教育体制が整っていない今すぐ即戦力が必要デメリット側のサイン新卒は向かない将来の経営を担う人材を育てたい幹部候補のコア人材育成
与件文の記述に反応して、書く論点を決めます。
  • 「年齢構成が偏っている」「ベテラン社員に偏重している」:年齢構成を適正化するための新卒採用、というメリットに直結します。
  • 「自社独自の技術や接客スタイルを浸透させたい」:新卒が社風になじみやすい、というメリットに対応します。
  • 「教育体制が整っていない」「今すぐ即戦力が必要」:新卒採用のデメリット側のサインです。教育に時間もコストもかかるので、今すぐ人手が欲しい局面には新卒は向かない、という判断につながります。
  • 「将来の経営を担う人材を育てたい」:幹部候補としてのコア人材育成の話です。

なじみやすいというのは、変な癖がついていない分、素直に吸収してくれるということですよね。

まさにそういうことです。逆にデメリット側のサインが出たら、真逆の反応をすることになります。

聞き手が「幹部候補を育てる話と、単に人手を増やす話は、書き分けたほうがいいんですか」と聞くと、講師はこう答えます。単なる人員補充ではなく、将来の経営を担うコア人材の育成という視点まで書けると、助言としての深みが出る。与件文に「経営を任せられる人材」といった記述があれば、この視点を強く出すサインです。

メリットとデメリットは必ず「対」で押さえる

キーワードを拾えたあと、どう整理するか。講師のコツは、メリットとデメリットを必ず対で押さえることです。動画で挙がった内容を表にします。

メリット(3つ)デメリット(4つ)
年齢構成の適正化一から社会人教育を行う必要
社風になじませやすい即戦力としてはすぐに期待できない
採用後しばらくは比較的低い賃金で雇用できる人材の見極めが比較的難しい
―準備期間を含め周到な準備が必要

メリットが三つで、デメリットは四つ。数だけ見ると、むしろ手間のかかる採用なんですね。

そうなんです。だから与件文を読むときも、この局面は「今すぐ人手が欲しい」のか、「長期的に組織をつくりたい」のか、その一点を見極めれば、新卒採用が有効かどうか判断できます。

メリットの3つ目、低い賃金で雇えるという点の使い方も、聞き手が確認しています。講師によると、これはコストを抑えながら人材を確保したいという与件文の文脈で使えます。ただし、メリットとして単独で強調しすぎると、待遇面だけの解答に見えてしまいます。年齢構成の適正化や社風への定着といった他のメリットと組み合わせて書くのがコツです。

局面を見極める:同じ論点でも評価が逆転する

具体的なイメージがわかない、という聞き手に、講師はあくまで仮の例として、こんな会社を挙げます。ベテラン社員ばかりで平均年齢が高い製造業の会社が、「将来の技術継承を担う人材を育てたい」と考えている。この場合は、新卒採用で年齢構成を整えつつ、時間をかけて技術を継承させる、という話になります。

一方、繁忙期で今すぐ人手が足りない会社なら、新卒よりも即戦力になる中途採用の方が適している、という判断になります。講師は「同じ論点でも、局面が変われば評価が逆転する」と強調します。

この局面は?今すぐ人手が欲しい(繁忙期など)長期的に組織をつくりたい即戦力になる中途採用が適する時間をかけて育てる新卒採用が適する同じ論点でも、局面で評価が逆転する
見極めるのは一点だけ。今すぐの人手か、長期の組織づくりか。

新卒採用は、メリットが多いから有効、というわけではないんですね。

有効かどうかは、与件文の局面で決まります。局面を見る習慣が、この論点の核心です。

答案の型:長期育成の流れ+デメリットへの対応策

実際に解答を書くときの基本の型は、「新卒採用によって自社の組織文化に合った人材を育成し、将来の幹部候補とする」という長期育成の流れです。ここに、デメリットへの対応策を添えるのが、差がつくポイントだと講師は言います。

① 長期育成の流れ組織文化に合う人材を育て、幹部候補に② メリットを書く年齢構成・社風・賃金など与件に合うもの③ デメリットと対応策教育体制・インターンシップなどの具体策④ 中途採用との対比目的と手段をセットにして一言添える
長期育成の流れに、デメリットの対応策と中途採用との対比を足します。

対応策として講師が挙げたのは次の2つです。

対応策動画での位置づけ
体系的な教育計画(OJTとOff-JTの組み合わせ)デメリットへの対応策として添える
インターンシップの活用入社前のミスマッチを防ぐ

インターンシップって、そういう位置づけだったんですね。

そうなんです。インターンシップは主に新卒採用の場面で使われる制度で、入社前後のミスマッチを防ぐ効果があります。デメリットである「人材の見極めが難しい」という部分を補う打ち手として書けるんです。

聞き手の言葉を借りれば、メリットを書いて終わりではなく、デメリットへの対応まで書いて初めて完成します。そこで講師が足すのが字数配分の意識です。メリットだけに字数を使いすぎず、デメリットとその対応策にも必ず配分する。メリットを長々と書いてデメリットが一言で終わる、という形は避けたい、という話でした。

中途採用との対比を一言添える

もう一つ、解答の説得力を上げる工夫が中途採用との使い分けです。短期の戦力補充は中途採用、長期の組織づくりは新卒採用、という対比を一言添えるだけでも違う、と講師は言います。

言い回しについて聞かれた講師は、「即戦力の補充には中途採用、長期的な組織づくりには新卒採用が適している」というように、目的と手段をセットで対比させる形が使いやすいと答えます。設問が助言型なら、この対比を根拠にして、新卒採用を選ぶ理由を書く。そうすると説得力のある解答になります。

答案の型の要点

  • 基本は「組織文化に合う人材を育成し、将来の幹部候補とする」長期育成の流れ
  • メリットだけで終えず、デメリットへの対応策(教育計画・インターンシップ)を添える
  • メリットだけに字数を使わず、デメリットと対応策にも配分する
  • 中途採用との対比を、目的と手段をセットにして一言入れる

やってしまいがちな3つの失敗

聞き手が「やってしまいがちな失敗は?」と聞くと、講師は3つのパターンを挙げます。

① メリットだけ書いて終わるデメリットとその対応策に触れない② 局面を見ずに同じ解答今すぐ人手が欲しい局面でも新卒を勧める③ 「新卒を採用する」で終わる教育体制やインターンシップに踏み込まない
3つとも「書いた気になる」ところが落とし穴です。

1つ目は、メリットだけ書いて終わるパターンで、講師は「一番多い」と言います。年齢構成が整う、社風になじむ、と書いて満足してしまい、教育コストがかかる、即戦力にならないというデメリットと、その対応策に触れません。聞き手も「書いた気になっちゃいそうです」と応じていました。

2つ目は、中途採用との使い分けを意識せず、どんな局面でも同じ解答を書くパターンです。今すぐ人手が欲しい局面でも新卒採用を勧めてしまうと、与件文と矛盾してしまいます。聞き手の言葉では、局面を見ずに、覚えた型をそのまま当てはめてしまう失敗です。

3つ目は、「新卒を採用する」で終わってしまうパターンです。教育体制やインターンシップといった具体策に踏み込まない。講師は、ここまで書いて初めて助言としての解答になる、と言います。

あ、それ、書いた気になっちゃいそうです。局面も見ずに型を当てはめてしまう感じですね。

そうです。3つに共通するのは、覚えた内容を書いて満足してしまうことです。具体策と局面への目配りまで入れて、はじめて助言になります。

失敗足りないもの
メリットだけ書くデメリットと対応策
同じ解答を書く局面の見極め・中途採用との使い分け
「採用する」で終わる教育体制・インターンシップ

本番でのチェックポイント

最後に講師は、本番でこの論点を使うときのチェックポイントを3つにまとめます。聞き手は「意味を知っているだけじゃなくて、局面を見極めて、対で書いて、具体策まで添える」と復唱し、講師は「その順番で考えられれば、初見の与件文でも手が止まりません」と締めくくります。

動画が挙げた3つのチェック

  • 与件文の局面が「長期的な組織づくり」なのか「今すぐの人手不足」なのかを見極める
  • メリットとデメリットを必ず対で書く
  • 教育体制やインターンシップといった具体策を添え、中途採用との使い分けを一言入れる

まとめ

動画の整理

  • 出方は2パターン:年齢層の偏りで将来の経営を担う人材が育っていない、自社独自のやり方や社風を浸透させたい。どちらも先を見た組織づくり
  • 新卒採用は即戦力の補充ではなく、時間をかけて育てる投資。設問は助言型で人材戦略を問うことが多い
  • サインは、年齢構成の偏り、独自の技術・接客の浸透、教育体制の不備や即戦力の必要、将来の経営を担う人材の育成
  • メリット3つ(年齢構成の適正化・社風になじませやすい・低い賃金)とデメリット4つを対で押さえ、見極めは「今すぐの人手か、長期の組織づくりか」の一点
  • 答案は長期育成の流れ+デメリットへの対応策(OJTとOff-JT、インターンシップ)+中途採用との対比。字数もデメリット側に配分する
  • 失敗は3つ:メリットだけ、局面を見ない、「採用する」で終わる

用語を知っていることと、与件文で気づけることは別のスキルです。局面を見極め、メリットとデメリットを対で書き、具体策と中途採用との対比まで添える。この順番で考える癖をつけておけば、初見の与件文でも手が止まりにくくなります。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む