アウトソーシング
事例Ⅰ 第55回
「一次では普通に解ける論点なのに、二次の答案になると急に手が止まる、という感覚はありませんか」。動画は、こんな問いかけから始まります。業務を自社でやるか、外部に任せるか。意味は分かっているのに、使うタイミングで迷う論点です。このページでは、与件文のサイン、コア業務とノンコア業務の仕分け、リスクの検討、判断の順番、答案の三段構成、よくある失敗を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、二次の答案で手が止まる
動画は、こんな問いかけから始まります。「一次では普通に解ける論点なのに、二次の答案になると急に手が止まる、という感覚はありませんか」。聞き手は「まさにそれです」と答え、知識としては知っているのに、与件文を読んでいると、どこでその知識を出せばいいのか分からなくなる、と打ち明けます。
今日の論点は、業務を自社でやるか、外部に任せるかという判断、つまりアウトソーシング(外部委託)です。聞き手も「知識としては全然知っている」と言います。講師によると、意味は分かっているのに、使うタイミングで迷う人が本当に多い論点です。
まず、どう聞かれるのか。講師は、次のような設問を挙げます。
- 「業務の一部を外部に任せるべきか助言せよ」
- 「もっと本業に集中するための施策を助言せよ」
聞き手は、後者の「コア業務に集中」という聞かれ方をけっこう見た記憶がある、と言います。講師は、組織・人事を扱う事例で、固定費を抑えたい、専門性の高い業務を効率化したい、という文脈でよく出てくると説明します。つまりこの論点は、「助言せよ」系の設問と相性がいいのです。
助言問題って、知識を並べるだけだと点が伸びないやつですよね。
その通りです。だからこそ、与件文のどこを見てこの論点を選ぶのか、その着眼点を先に持っておく必要があるんです。
このページでは、動画の順にそって、与件文のサイン、業務の仕分け、リスクの検討、判断の順番、答案の三段構成、よくある失敗を整理します。
与件文のサイン:活用と警戒の両方を拾う
聞き手は「与件文のどんな一文が出たら、これだと反応すればいいんですか」と尋ねます。講師が挙げたサインは4つ。2つは活用する側、2つは警戒する側です。
- 活用① 専門性:「コア業務に集中したい」「専門性の高い業務を外部の専門家に任せたい」という記述。聞き手の言い換えでは、専門知識を外に求めたい、という動機です。
- 活用② コスト:「固定費を抑えたい」「設備投資を避けたい」という記述。コスト面の動機のサインです。
- 警戒① 外に出すべきでない領域:「機密情報を扱う業務」「自社にしかないノウハウ」という記述。
- 警戒② 弊害がすでに出ている:「委託先の品質が不安定」「委託先に依存しすぎている」という記述。講師は、これはもう既にデメリットが顕在化しているサインだと言います。
なるほど、動機が二種類あるんですね。専門性と、コスト。
はい。そして逆方向のサインもあります。「機密情報を扱う業務」「自社にしかないノウハウ」という記述は、外部に出すべきでない領域のサインです。
あ、それは逆に、外部委託を提案しちゃいけない場所ってことですか。
そうです。
聞き手が「活用すべきサインと、警戒すべきサインの両方を、与件文の中で拾っていく感じ」とまとめると、講師は「その理解で合ってます。片方だけ見て飛びつくと、事故ります」と返しました。「コスト削減」の文字が見えた瞬間に外部委託へ飛びつかず、同じ与件文に警戒のサインが隠れていないかを確かめる、ということです。
頭の中の整理:コア業務とノンコア業務に仕分ける
サインを拾えたとして、ただ並べているだけでは使いこなせない、と聞き手は言います。講師の答えは、まずその業務が、自社の強みや差別化の源泉、つまりコア業務なのか、そうでないノンコア業務なのかを見極めること。業務を二つに仕分けるところから始めます。
コア業務は、基本的に内製を維持する方向で考えます。そしてノンコア業務のうち、専門性が必要だったり、コストがかさんでいたりするものを、外部委託の候補として整理していきます。
| 区分 | 見分け方 | 基本の扱い |
|---|---|---|
| コア業務 | 自社の強み・差別化の源泉 | 内製を維持 |
| ノン | 自社の強みに直結しない | 専門性・コストの記述に当たるものを委託候補に |
ここで聞き手が、自分で例を出して確かめています。
たとえば、経理業務は昔からの担当者が一人でやっていて、専門知識も特にいらないルーティン作業だとします。そういうのはノンコア業務の候補になりますか。
いい例ですね。まさにそういう、自社の強みに直結しない定型業務が、アウトソーシングの候補として整理される典型です。
逆に、その会社が独自の製法とか、長年培った技術を持ってたら、そこは絶対に外に出しちゃダメですよね。
その通りです。そこがまさに競争優位の源泉なので、内製を維持すべき領域になります。
この2つの例は聞き手が出したもので、講師はそれを「典型」「その通り」と認めた形です。見るべきなのは業種や業務名ではなく、その業務が自社の強みに直結するかどうか、という軸だと読み取れます。
リスクの検討は、仕分けと同時並行で
聞き手は、外部委託することで生じるリスクをどう整理するのかが気になります。講師は「それも同時に検討します」と言い、与件文の記述と照らし合わせるリスクを三つ挙げました。
外部委託のリスク3つ
- 社内にノウハウが蓄積されない
- 業務がブラックボックス化する
- 委託先への依存度が高まる
つまり、コア・ノンコアの仕分けと、リスクの検討を、同時並行でやるイメージですね。
はい。片方だけで判断を終わらせないことが大事です。
(補足:動画が結びつけて話しているわけではありませんが、前の章の警戒サイン②「委託先に依存しすぎている」は、三つ目のリスクがすでに表に出た状態と読むと、与件文とリスクの対応が頭に入りやすくなります。)
判断の順番:除外、仕分け、絞り込み
情報がいろいろ出てきたとき、全部を同時に見ようとすると混乱しそうだ、と聞き手は心配します。講師のすすめは、順番を意識することです。
- 除外:まず、機密性やノウハウに関する記述がないか確認します。あれば、その業務は候補から外します。
- 仕分け:残った業務を、コアかノンコアかに分けます。
- 絞り込み:最後に、ノンコアの中で専門性やコストの記述に該当するものを、外部委託の候補にします。
除外して、仕分けして、絞り込む、という三段階なんですね。
そうです。順番を意識すると、与件文の情報が多くても迷いにくくなります。
この三段階とは別に、前の章のリスクの検討を同時に走らせておく、という位置づけです。先に危ないものを外し、その後で絞るので、「自社にしかないノウハウ」を外に出してしまう事故を、順番の面から防げます。
解答の型:内製維持、外部委託、資源の再配分
整理ができたら、実際の解答にどう書くか。講師は、型があると言います。三段構成です。
- 一つ目:コア業務は内製を維持する。
- 二つ目:ノンコア業務のうち、与件文にある専門性やコストの記述に該当するものを外部委託する。
- 三つ目:それによって浮いた経営資源を、コア業務に集中投下する。
委託して終わり、じゃなくて、浮いた資源をどうするかまで書くんですね。
そこが抜けると、施策の効果が答案の中で完結しないんです。委託した先に何が起きるか、まで書いて初めて助言になります。
書く分量に迷ったらどこを厚くするか、という聞き手の質問には、こう答えています。三つ目の資源の再配分は、書き忘れやすい部分なので、分量を削るとしても、そこは削らない方がいい。聞き手は「抜けやすいところほど、意識して書く感じですね」とまとめました。
(補足:動画にない、自作の答案イメージです。聞き手が出した例を使って三段構成に当てはめると、たとえば次のようになります。実際の答案では、与件文の記述を根拠として書いてください。)
三段構成の答案イメージ(自作)
経理などの定型業務は自社の強みに直結しないノンコア業務であり、専門業者へ委託してコストを抑える。一方、独自の製法に関わる製造は競争優位の源泉であるため内製を維持する。委託で浮いた人員や資金は製造技術の強化に集中投下し、強みを高める。
デメリットに触れるなら、対策までセットで
デメリットには触れないとまずいこともありますよね、と聞き手。講師は、デメリットに触れる場合は、機密保持契約を結ぶとか、委託先の選定基準を設けるとか、リスクを抑える工夫まで一緒に書くと説得力が増す、と答えます。
単に「リスクがあります」で終わらせずに、対策もセットにするってことですね。
そうです。それがあるかないかで、答案の完成度が変わります。
動画が挙げた対策の例は、この2つです。リスクを書いたら、必ず「どう抑えるか」を一言添える。この習慣が、答案の完成度を左右します。
実際にやらかす4つのパターン
「理屈は分かるんですが、実際に間違えるとしたら、どこでやらかしますか」。聞き手の問いに、講師は典型的な失敗を挙げていきます。
1つ目は、何でもかんでも外部委託を提案してしまうことです。コア業務まで外に出してしまうパターンで、聞き手が「競争優位の源泉を手放しちゃうやつですよね」と確認すると、講師は「まさにそれです」と応じます。コストが下がるから、業務が楽になるから、という理由だけで判断すると、自社の強みまで削ってしまいます。
2つ目は、メリットだけ、またはデメリットだけを書く偏りです。聞き手が、機密漏洩やブラックボックス化、士気が下がることなどをデメリットの例として挙げ、講師は「そうです。片面だけの答案は説得力が弱くなります」と返しています。(講師自身が挙げたリスクは、前の章の3つです。機密漏洩や士気低下は聞き手の言葉でした。)
3つ目は、コスト削減だけ書いて終わることです。聞き手の設例は、コスト削減だけを狙って複数の業務を外に出した会社。講師の答えは、コストが下がったことだけを書くと、外に出した後にノウハウが失われるリスクや、委託先への依存度が高まるリスクへの言及が抜ける、というものでした。そこまで書けて初めて、バランスの取れた答案になります。
4つ目は、効果をコスト削減とだけ書いて、浮いた資源を何に使うかまで書かないことです。講師は、これも典型的な減点ポイントだと言います。コア業務への集中投下という着地まで書いて、初めて助言として成立します。
| 失敗 | 抜けるもの | 直し方 |
|---|---|---|
| 何でも委託 | 強みの保護 | コアは内製 |
| 片面だけ | もう一方の面 | 両面+対策 |
| コスト削減だけ | 裏側のリスク | セットで見る |
| 使い道なし | 資源の行き先 | 集中投下まで |
削減効果と、その裏側のリスクをセットで見る癖をつければいいんですね。
そうです。
効果を書いて終わりじゃなくて、その先の使い道まで書かないといけないってことですね。
そうです。コア業務への集中投下という着地まで書いて、初めて助言として成立します。
書き終えたらこの4点を見直す(動画の注意点から)
- コア業務まで外に出していないか
- メリットとデメリットの両方を書いたか。デメリットには対策を添えたか
- コスト削減だけで終わらず、ノウハウ喪失や依存のリスクにも触れたか
- 浮いた資源をコア業務に集中投下するところまで書いたか
まとめ
動画の整理
- 本番では、まず与件文に、コスト面や専門性の記述、または機密性の記述がないか探す(活用のサインと警戒のサイン)
- 次に、業務をコアとノンコアに仕分け、リスクも同時に検討する。判断の順番は、除外、仕分け、絞り込み
- 解答は、内製維持、外部委託、資源の再配分の三段構成で書く。三つ目は書き忘れやすい
- デメリットに触れるときは、機密保持契約や委託先の選定基準など、対策まで書く
- 失敗は、何でも委託する、片面だけ書く、コスト削減だけで終わる、資源の使い道を書かない
動画の最後で、聞き手は「次の演習では意識してみます」と話しています。講師は、デメリットに触れるときは対策まで書く、コア業務まで手放さない、この二点を忘れなければ、この論点で大きく崩れることはないはずだと締めました。知識として知っていることと、与件文のサインから答案の三段構成までつなげて書けることは別です。サインを拾い、仕分けて、浮いた資源の行き先まで書く。この流れを持っておくことが、二次試験での使いどころになります。

