公式組織の3要素
事例Ⅰ 第53回
「組織が一体感を欠いているとき、原因はひとつではなく、いくつかのパターンに切り分けられる」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、二次試験での聞かれ方、与件文のサインと3要素のラベル振り、共通目的・貢献意欲・コミュニケーションの中身、見立てから施策を対応させる答案の型、やりがちな失敗3つ、本番のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「まとまりがない会社」で終わらせない
動画は、こんな問いかけから始まります。組織が一体感を欠いているとき、原因はひとつではなく、いくつかのパターンに切り分けられる。そのことを知っていましたか、と。聞き手は、つい「まとまりがない会社だな」で終わらせてしまうと打ち明けます。共通目的や貢献意欲という言葉は知っているのに、実際の与件文でどう使えばいいのかがずっと曖昧だった、とも話します。
講師の答えは、切り分け方さえ持っておけば、与件文を読んだ瞬間にどこが弱いか見立てられるようになる、というものです。今回の主役は、組織の3要素である共通目的・貢献意欲・コミュニケーション。覚えるだけの知識ではなく、組織の不調を診断するものさしとして使う方法を、通しで整理していきます。
- 二次試験では、この論点がどんな聞かれ方をするか
- 与件文のどの記述が、3要素のどれが弱いサインか
- 3要素の中身と、欠けたときに起きること
- 見立てから、施策を一対一で対応させる答案の型へ
- やりがちな失敗と、本番のチェックポイント
二次試験は、知っているかどうかではなく、与件文の根拠にもとづいて答案を書けるかどうかが問われる試験です。この動画も、3要素の暗記ではなく「与件文をどう読み、どう書くか」に焦点を当てています。
二次ではどう聞かれるか
聞き手が最初に聞いたのは、この論点が二次試験でどんな聞かれ方をするのか、という点です。講師が挙げた典型は次のとおりです。
- 「組織の一体感を高めるには」
- 「部門間の連携を強めるには」
- 「従業員のモチベーションと組織の求心力を高める施策を助言せよ」
聞き手は「どれも、組織がまとまっていないことへの対応を求められている感じですね」とまとめ、講師もそのとおりだと答えます。そういうときに3要素を使うと、組織が弱っている原因を切り分けられて、助言の焦点が定まるのだそうです。
焦点が定まるとは、具体的には「3つのうちどれが欠けているかを先に決める」ということです。講師は、3要素のどれが欠けているかを見立てることで、打つべき施策まで自動的に絞られてくる、と説明します。診断が先で、処方はあとから決まる、という順番です。
切り分けずに「社員が一丸となるよう働きかける」みたいな一般論で終わらせると、まずいんですか。
そうです。原因を切り分けずに一般論で助言してしまうと、与件文の根拠と対応していない解答になりやすいです。だからこそ、3要素というものさしを使う意味があります。
与件文のサイン:記述を3つのラベルに振り分ける
では、与件文のどんな一文が出たら、3つのうちどれが弱いと判断すればいいのか。講師は、記述のタイプごとに3つに分けて示しました。
| 与件文の記述 | 弱い要素 | 直す方向 |
|---|---|---|
| 理念が浸透していない/方向がバラバラ | 共通目的 | 理念の共有 |
| やる気が低い/当事者意識がない | 貢献意欲 | 評価・処遇 |
| 情報が共有されない/風通しが悪い | コミュニ | 情報共有の仕組み |
聞き手は、これを「方向性、やる気、意思疎通、この3つのどれに当てはまるかで読み分けるんですね」と整理しました。講師も「そうです」と受けたうえで、実践のコツを教えてくれます。与件文を読みながら、この記述は共通目的、この記述は貢献意欲、この記述はコミュニケーション、というふうにラベルを振っていくのです。そうすれば、読み終わった時点で、どこが弱いかが一目で分かります。
読みながらラベルを振っていく、というのは実践しやすそうです。
はい。そして大事なのは、3つのうちどれが欠けているかによって、打つべき施策が変わるということです。
表の右端の「直す方向」は、講師が挙げた3つの施策の方向(理念の共有で直す話、評価や処遇でやる気を引き出す話、情報共有の仕組みを直す話)を並べたものです。これらはそれぞれ別物で、欠けている要素を取り違えると、施策そのものがずれてしまいます。だから、与件文の記述を3つに正しく振り分ける整理が大事になる、というのが講師の言い分です。
3要素の中身:なぜ欠けるとそうなるのか
ラベルを正しく振るには、3要素がそれぞれ何を意味するかを押さえておく必要があります。講師の説明を順に見ていきます。
まず共通目的です。本来、個人一人では達成できないことを、協働することで達成するために組織は形成されます。だからここが弱いと、全員が同じ方向を向けなくなります。聞き手は「目的がバラバラだと、そもそも協働する意味自体が揺らいでしまうんですね」と言い換えていました。
次に貢献意欲です。組織のメンバーが「自分の活動を提供しよう」という意欲を持たなければ、そもそも組織は成立しません。ここが弱いと、当事者意識ややる気が出てこない状態になります。目的があっても、動こうとする意欲がなければ組織として機能しない、ということです。
そして最後がコミュニケーションです。目的と貢献意欲が両方あっても、それを結びつける意思疎通がなければ、集団としての行為は起こせません。ここが弱いと、連携が生まれない状態になります。
3要素と、弱いときの状態
- 共通目的:協働して初めて達成できることを目指す。弱いと、全員が同じ方向を向けない
- 貢献意欲:自分の活動を提供しようという意欲。弱いと、当事者意識ややる気が出ない
- コミュニケーション:目的と意欲を結びつける意思疎通。弱いと、連携が生まれない
コミュニケーションは、目的と意欲をつなぐ役割を持っているということですね。
そうです。だから与件文の記述をこの3つのどれかに割り振って、どれが欠けているかを特定する、というのが情報整理の基本の流れです。
設例:情報が共有されない会社
実際の設定で考えると、イメージがつかみやすくなります。講師の設例はこうです。部門ごとに情報がまったく共有されておらず、営業と製造がそれぞれバラバラに動いている、という会社があったとします。
聞き手が「その場合は、コミュニケーションが弱っているサインとして拾えばいいんですね」と確認し、講師はそのとおりだと答えます。さらに、同じ設定の中に、経営理念がきちんと共有されていて、社員のやる気自体は高いという記述もあったらどうなるか。講師は、共通目的と貢献意欲は保たれていて、コミュニケーションだけが弱いという見立てになる、と説明します。
3つ全部が弱いとは限らなくて、弱いところだけをピンポイントで見つけるということですね。
そうです。見立てができたら、解答はその見立てに沿った型に流し込みます。
ここでのポイントは、与件文の記述を見て、弱い要素と、問題のない要素をどちらも判断していることです。弱いところを探すだけでなく、保たれている要素を確認することで、施策の的を絞ることができます。
答案の型:3要素に施策を一対一で対応させる
見立てができたら、いよいよ答案です。講師が示した型は、3要素に施策を一対一で対応させる形です。次の一文がその見本として紹介されました。
講師が示した型
「①経営理念・目標の共有で共通目的を明確にし、②公正な評価・権限委譲で貢献意欲を引き出し、③情報共有・対話の場づくりでコミュニケーションを活性化することで、組織の一体感を高める」
要素と施策がずれずに対応していると、どこに問題があって、どう対応しているのかという診断の一貫性が読み手に伝わります。その結果、解答全体の説得力が上がる、と講師は言います。聞き手も「対応関係がはっきりしているほうが、読み手にも伝わりやすいということですね」と確認していました。
3つの要素と3つの施策を、きれいに対応させて書くんですね。
そうです。要素と施策がずれずに対応していると、診断の一貫性が伝わって、解答全体の説得力が上がります。
(補足:動画にない書き方の例です。型の一文は3つを一気に並べる形ですが、設例のようにコミュニケーションだけが弱い場合は、「情報共有の仕組みや対話の場を設けることで、部門間のコミュニケーションを活性化し、組織の一体感を高める」のように、見立てた要素と施策を一文でつなげる書き方が考えられます。字数や設問の条件に合わせて調整してください。)
3つ全部を書かなくてもいい
ここで講師は、大事な但し書きを加えます。3つ全部を毎回書く必要はありません。与件文で弱っている要素に絞って、そこを厚く助言してもいいのです。
先ほどの設例のように、部門間のコミュニケーションが弱いという設定なら、情報共有・対話の場づくりのところを厚く書く、という判断になります。聞き手の言葉を借りれば、「全部盛り込もうとせず、弱いところに絞って厚く書く」という選択肢もあるわけです。
型に3つ並べるのが基本だとしても、絞って書くのも選べるんですね。
そうです。先ほどの部門間コミュニケーションが弱いという設定なら、情報共有・対話の場づくりのところを厚く書く、という判断になります。
やりがちな失敗3つ
聞き手は、逆にやりがちな失敗も尋ねます。講師が挙げたのは、次の3つです。
1つ目は、3要素を暗記語句としてそのまま並べるだけのパターンです。講師によると、これが一番多い失敗です。共通目的・貢献意欲・コミュニケーションという言葉は書けているのに、与件文のどの記述がどの要素の不足なのかが結びついていません。言葉は書けていても、根拠となる与件文の記述とつながっていないのです。
2つ目は、コミュニケーションを単なる情報共有の話に限定してしまうパターンです。コミュニケーションは、共通目的と貢献意欲を「つなぐ」役割だという位置づけがあります。それを落としてしまうと、3要素の関係が見えない答案になります。聞き手が言うように、情報を回すだけではなく、目的とやる気を結びつける役目がある、というところまで意識することが求められます。
3つ目は、施策が3要素と対応していなくて、打ち手が的外れになるパターンです。講師が挙げた例は、貢献意欲が問題なのに、情報共有の施策だけを提案してしまう、というケースです。
やる気の問題なのに情報共有で解決しようとしても、ずれてしまいますよね。
そうなんです。だから見立てと施策は必ずセットで、ずれがないか最後に確認する癖をつけておくといいです。
| 失敗 | 起きること |
|---|---|
| 暗記語句を並べるだけ | 与件文の根拠と結びつかない |
| コミュニケーションを情報共有だけに限定 | つなぐ役割の位置づけが落ちる |
| 施策が3要素と対応しない | 打ち手が的外れになる |
本番でのチェックポイント
動画の最後に、聞き手が「本番でこの論点を使うときのチェックポイントをまとめてもらえますか」と頼みます。講師の答えは2つにまとめられていました。
試験ではここに注目
- 与件文で「理念が浸透していない」「やる気が低い」「情報共有されない」といった記述を見つけたら、共通目的・貢献意欲・コミュニケーションのどれが弱っているかを見立てる
- 弱っている要素に絞って、対応する施策をセットで書く
この2つを押さえておけば、本番でも迷わず使えるはずだ、というのが講師の結びです。聞き手も「3要素を並べるだけで終わらせず、与件文の根拠と施策をセットで結びつける、この流れ、意識してみます」と応じていました。
与件文を読んで、ラベルを振って、弱い要素を見立てて、施策をセットで書く、という流れですね。
それができれば、組織不調の診断はぐっと精度が上がります。
まとめ
動画の整理
- 組織の一体感の欠如は、共通目的・貢献意欲・コミュニケーションのどれが弱いかに切り分けられる
- 二次では「一体感を高めるには」「部門間の連携を強めるには」「モチベーションと求心力を高める施策を助言せよ」といった形で聞かれる
- 与件文の記述に、共通目的・貢献意欲・コミュニケーションのラベルを振りながら読み、弱い要素を見立てる
- 答案は、見立てた要素と施策を一対一で対応させる。3つ全部を書かず、弱い要素に絞って厚く書いてもよい
- 失敗は3つ:暗記語句の羅列、コミュニケーションを情報共有だけに限定、施策が要素と対応しない
聞き手は、はじめ「まとまりがない会社だな」で終わらせてしまうと話していました。3要素というものさしを持つと、その漠然とした印象を、「どの要素が弱いのか」という具体的な診断に変えられます。与件文の根拠にラベルを振り、見立てと施策をセットで書く。この流れが身につけば、一体感や連携を問う設問に、根拠のある助言で答えられるようになります。
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