聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

マトリックス組織、二人の上司の混乱を抑える作り方

事例Ⅰ 第49回

事例Ⅰ 二人の上司を持つ組織を答案でどう書くか8分26秒2026年8月5日公開

「マトリックス組織って、1次のときに一通り勉強はしましたよね」。動画はこの一言から始まります。知識はあるのに、二次の答案でどう使えばいいのか分からない。与件文を読んでも、マトリックスの話だと気づけない。このページでは、設問の聞き方と与件文のサイン、メリット・デメリット・運営上の留意点の三層、答案の三段構え、やりがちな誤答、本番のチェックポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

知識はあるのに、答案で使えない

動画は、1次試験で一通り学んだマトリックス組織を、2次試験の答案でどう使うかという視点で整理していきます。冒頭、講師が「1次のときに一通り勉強はしましたよね」と切り出すと、聞き手は「機能軸と事業軸を掛け合わせて、一人が二人の上司を持つ形」という知識はある、と答えます。

ところが講師によると、「知識はあるのに、二次の答案でこれをどう使えばいいのか分からない」という声はとても多いそうです。聞き手も、与件文を読んでいて「あ、これマトリックスの話だ」と気づけないまま終わってしまうことがある、と打ち明けます。動画のねらいは、この気づき方と書き方を整理することです。

  • 設問の聞き方にあらわれる特徴
  • 与件文に出るサイン(メリット側とデメリット側)
  • メリット・デメリット・運営上の留意点の三層
  • 答案の型と、やりがちな誤答
  • 本番で使うチェックポイント

このページでは、この順番で動画の流れにそってまとめます。

設問の聞き方に出る特徴

講師は、この論点が出るときは、だいたい設問の聞き方に特徴がある、と言います。例として挙げられたのは、次のような問われ方です。

  • 「二方向の要求に同時に応える組織をどう作るか」
  • 「環境が複雑で変化が激しいときに、どんな組織構造を助言するか」

聞き手が「機能別組織や事業部制と比べられる形で出てくるイメージですか」と確かめると、講師は「そうです」と答えます。マトリックス組織は、機能別組織と事業部制、それぞれの長所を両方取りに行く形として位置づけられることが多い、という説明です。

片方だけだと足りない、という状況で出てくるんですね。

その通りです。だからこそ、なぜ両方の軸が必要なのか、という視点で与件文を読む準備をしておく必要があります。

ここでの合言葉は「なぜ両方の軸が必要なのか」です。機能軸だけでも、事業軸だけでも足りない状況が与件文に書かれていないか。その目で読み始めることが、最初の一歩になります。

与件文のサイン:メリット側とデメリット側

聞き手が次に尋ねたのは、与件文のどこを見ればこの論点だと気づけるか、でした。講師はいくつかサインがあると答え、まずメリット側のサインを3つ挙げます。

  • 二つの軸を両方立てたい:「顧客からの二通りの要求に応えたい」「製品軸と地域軸の両方を立てたい」といった記述。
  • 環境が複雑:「経営環境の変化が激しく、複雑な意思決定が必要」という記述。聞き手は「環境が複雑だから、対応する組織も複雑にする、という発想ですか」と受け止め、講師は「その通りです」と答えています。
  • 資源を共有したい:「経営資源を共有したい」「共通化したい」という記述。見逃せないサインだと講師は言います。

3つ目の資源の共有化は、規模の経済性を狙う場面や、高い業績目標を掲げている場面で、特に効いてくるメリットだそうです。聞き手の「業績目標が高いからこそ、資源を無駄にできない、という文脈で出てくるんですね」という確認に、講師は「つながります」と答えました。

逆に、デメリット側のサインもあります。「命令系統が混乱している」「どちらの上司に従えばいいか分からない」「会議や調整に時間を取られている」といった記述が出たら、それは「デメリットが顕在化しているサイン」だと講師は言います。

メリット側のサインデメリット側のサイン顧客の二通りの要求製品軸と地域軸の両方命令系統が混乱している環境の変化が激しい複雑な意思決定が必要どちらの上司に従うか分からない経営資源を共有共通化したい会議や調整に時間を取られている設問が「メリット」か「課題・留意点」かで拾う側のサインを切り替える
サインはメリット側とデメリット側の2種類。設問に合わせて拾い分けます。

同じ論点でも、メリット側のサインとデメリット側のサインの両方があるんですね。

この二種類のサインを両方頭に入れておくと、設問文が「メリットを述べよ」なのか「課題や留意点を述べよ」なのかに応じて、拾うべき記述を切り替えられるようになります。

設問の聞き方拾う記述
メリットを述べよメリット側のサイン
課題・留意点を述べよデメリット側のサイン

聞き手の言葉を借りれば、設問の聞かれ方に合わせて、意識するサインを変える、ということです。講師はこれに「そうです」と答え、整理するときはメリット・デメリット・運営上の留意点の三層で分けて考えるといい、とつなげます。

整理は三層:メリット・デメリット・留意点

講師が示した三層は、メリットが3つ、デメリットが2つ、運営上の留意点が2つです。数が決まっているので、答案でも数えながら書けます。

メリット(3つ)二方向の要求に応える調整環境変化・複雑な意思決定への対応経営資源の共有化デメリット(2つ)機能・事業マネジャー間のコンフリクト会合や葛藤処理で時間が取られる運営上の留意点(2つ)トップ・マネジメントが最終判断を行う命令の優先順位をあらかじめ決める
メリット・デメリット・留意点の三層で整理します。

この三層は、あとで答案の型にそのまま使います。まずは、メリットから順に見ていきましょう。

メリットは3つ:三つの狙いとして覚える

講師が挙げたメリットは3つです。1つ目は、顧客からの二通りの要求に応えるための調整ができること。2つ目は、経営環境の頻繁な変化や複雑な意思決定に対応できること。3つ目は、規模の経済性の追求や高い業績目標の達成のために、経営資源が共有化されることです。

狙いメリットの中身
二方向の要求顧客の二通りの要求に応える調整ができる
環境変化頻繁な変化・複雑な意思決定に対応できる
資源共有規模の経済性・高い業績目標のため経営資源を共有化する

なるほど、人や設備を機能軸と事業軸で使い回せる、というイメージですね。

この三つのメリットは、バラバラに覚えるのではなく、「二方向の要求」「環境変化」「資源共有」という三つの狙いとしてセットで押さえておくと、解答用紙に書くときも迷いません。

三つのメリットに、それぞれ役割があるんですね。

その通りです。

ここで先ほどのサインとつなげてみてください。「二通りの要求」「両方の軸」というサインは1つ目、「変化が激しい」「複雑な意思決定」は2つ目、「共有」「共通化」は3つ目のメリットに結びつきます。サインを見つけた時点で、書くべきメリットがほぼ決まります。

デメリットは2つ:二人の監督のたとえ

次にデメリットです。講師は2つ挙げます。機能マネジャーと事業マネジャーの間にコンフリクトが生じやすいこと、そして頻繁な会合や葛藤処理の煩雑さに、それぞれのマネジャーの時間が取られてしまうことです。

聞き手が「一人が二人の上司を持つ、というツーボス・システムだからこそ起きる問題ですね」と言うと、講師は「まさにそこが本質です」と答えます。そして、こうたとえます。

講師のたとえ

一人の選手が、二人の監督から違う指示を受け続けているような状態。どちらの指示を優先すればいいか分からなくなってしまう。

それは選手も混乱しますね。

しかも厄介なのは、この混乱が一度や二度では終わらず、日常的に繰り返されてしまう点です。会合のたびに調整が必要になり、そのたびにマネジャーの時間が削られていきます。

ポイントは、日常的に繰り返されるという点です。たまに起きる行き違いではなく、構造として毎回起きるから、デメリットとして重い。2つのデメリットはどちらも、ツーボス構造から生まれている、と整理できます。

運営上の留意点:現場任せにしない

聞き手は、混乱が繰り返されるのなら、あらかじめ優先順位を決めておく仕組みが必要になる、と言います。講師は「だからこそ、運営上の留意点が重要になります」と受けて、2つを挙げます。

運営上の留意点(2つ)

  • トップ・マネジメントが最終的な判断を行うこと
  • あらかじめ命令の優先順位を決めておくこと

聞き手が二人の監督のたとえに戻して「最終的にどちらの指示を優先するか、あらかじめルールを決めておく、ということですね」とまとめると、講師は、この2つが効いてくる前提を補います。

この二つの留意点が効いてくるのは、現場のマネジャー同士では優先順位を決めきれない、という前提があるからです。だからこそ、より上位のトップが判断する仕組みが必要になります。

現場任せにせず、あらかじめルールとして持っておく、ということですね。

その通りです。

一人が二人の上司を持つ(ツーボス構造=原因)コンフリクトが生じやすい会合・葛藤処理に時間が取られるトップが最終判断を行う命令の優先順位をあらかじめ決める現場のマネジャー同士では決めきれないので、上位が判断する
デメリットの原因はツーボス構造。対応策はその原因につなげて書きます。

この図の流れが、答案の骨格になります。原因(ツーボス構造)があり、結果(コンフリクトと調整の煩雑さ)があり、対応策(トップの最終判断と優先順位の明確化)がある。原因から対応策まで一本の線でつながっていることが大切です。

答案の型:三段構え

聞き手が「実際の解答にするときは、どんな型で書けばいいですか」と尋ねると、講師の答えは三段構えでした。

  • メリット:二方向の要求への対応、複雑な環境変化への適応、資源の共有がある、と書く。
  • デメリット:一方で、機能マネジャーと事業マネジャーの間のコンフリクトや、調整の煩雑さがある、と続ける。
  • 対応策:トップが最終判断を担い、命令の優先順位をあらかじめ明確にしておく、と締める。
① メリット二方向の要求・複雑な環境・資源の共有② デメリット機能・事業マネジャーのコンフリクトと調整の煩雑さ③ 対応策トップの最終判断と命令の優先順位の明確化字数配分:①と②は同じくらい、残りを③にメリットだけ厚く書くと評価が下がる
メリット、デメリット、対応策の順に書きます。

聞き手は「メリット・デメリット・対応策の三段階、覚えやすいです」と感想を述べています。

(補足:動画にない書き方の例です。講師の三段構えを一続きの文にすると、たとえば次のようになります。「マトリックス組織には、二方向の要求への対応、複雑な環境変化への適応、資源の共有というメリットがある。一方で、機能マネジャーと事業マネジャーの間のコンフリクトや調整の煩雑さがデメリットである。そこで、トップが最終判断を担い、命令の優先順位をあらかじめ明確にしておく。」実際には、設問の指示と字数制限に合わせて言葉を選んでください。)

字数配分と、原因とのつながり

字数配分の感覚について、講師は、メリットとデメリットにそれぞれ同じくらいの分量を割き、残りを対応策に充てるイメージだと言います。そのうえで、メリットだけを厚く書いてしまう答案は、それだけで評価が下がってしまうと注意します。聞き手は「メリットに寄せすぎず、三つの要素をバランスよく書く」と受け止めました。

もう一つ、講師が「ここで大事」と強調したのが、デメリットの原因の理解です。デメリットの原因は「一人が二人の上司を持つ」というツーボス構造そのものにある。原因を分かったうえで対応策を書くと、答案に一本筋が通る、と言います。

原因と対応策がつながっている、というのがポイントなんですね。

ここまでの整理を踏まえて、やりがちな誤答も見ておきましょう。

やりがちな誤答4つ

講師が挙げた誤答は4つです。

1つ目は、メリットだけ書いて終わるパターンで、一番多いそうです。二重指揮命令によるコンフリクトや調整コスト、そしてその抑制策まで書けているかどうかで差がつく、と講師は言います。

2つ目は、マトリックス組織を万能の理想形として、無条件に勧めてしまうパターンです。実際は運用が難しく、混乱を招きやすい形態です。環境の複雑さが本当にそれを必要とする場合に限る、という前提を忘れてはいけません。聞き手の言葉では「条件付きで勧めるべき組織形態」ということになります。

3つ目は、メリットとデメリットを並べる順番を意識していないパターンです。設問が課題や留意点を聞いているのに、メリットを長々と書いてから最後に少しだけ触れる。これでは聞かれたことに答えていない印象を与えてしまう、と講師は言います。設問が何を聞いているかに合わせて、書く順番や分量も変える必要があります。

4つ目は、命令系統の混乱の原因を曖昧にしたまま、対応策だけ並べるパターンです。原因、つまりツーボス構造への言及が抜けると、なぜその対応策が必要なのかが伝わらない答案になってしまいます。

やりがちな誤答こう直すメリットだけ書いて終わるデメリットと対応策まで書く万能の理想形として無条件に勧める環境の複雑さが必要な場合に限ると書く設問の聞き方を無視して書く設問に合わせて順番と分量を変える原因を曖昧にして対応策だけ並べるツーボス構造を示し対応策につなげる
誤答のパターンは4つ。どれも、聞かれたことと原因に戻って直します。

原因と対応策のつながりを常に意識しておきます。

その通りです。原因を示さずに対応策だけ書くと、なぜその対応策が必要なのか伝わらない答案になってしまいます。

本番のチェックポイント3つ

最後に、講師は本番でこの論点を使うときのチェックポイントをまとめます。

番号確認すること
1つ目与件文に二方向の要求や資源共有のニーズが書かれていないか
2つ目メリットを書いたら、デメリットと対応策までセットで書く
3つ目デメリットの原因がツーボス構造にあると示し、トップの最終判断と優先順位の明確化につなげる

メリット、デメリット、そして原因に基づいた対応策、この三点セットを意識します。

この三点セットさえ押さえておけば、設問がメリットだけを聞いていても、デメリットや留意点を聞いていても、同じ知識の中から必要な部分を取り出して書けるようになります。

知識は一つ、使い方は設問次第、ということですね。

それができれば、この論点はもう本番で怖くありません。

試験ではここに注目

  • 与件文に、二方向の要求・環境の複雑さ・資源共有のサインがあるか
  • 与件文に、命令系統の混乱や調整の負担といったデメリットのサインがあるか
  • 設問はメリットを聞いているのか、課題・留意点を聞いているのか
  • 答案は、メリット・デメリット・対応策の三段になっているか

まとめ

動画の整理

  • 設問は「二方向の要求に同時に応える組織」「複雑で変化の激しい環境での組織構造」といった聞き方で出る。機能別組織と事業部制の長所を両方取りに行く形
  • 与件文のサインは2種類。メリット側(二通りの要求・環境の複雑さ・資源の共有)とデメリット側(命令系統の混乱・調整の負担)
  • 整理は三層。メリット3つ、デメリット2つ、運営上の留意点2つ(トップの最終判断、命令の優先順位)
  • 答案はメリット・デメリット・対応策の三段構え。メリットとデメリットは同じくらい、残りを対応策に
  • 誤答は4つ。メリットだけ、無条件に勧める、設問に合わせない、原因を曖昧にして対応策だけ並べる

動画の最後に、聞き手は「ありがとうございます、整理できました」と話しています。マトリックス組織は、知っているだけでは答案になりません。サインに気づき、メリットだけで終わらず、ツーボス構造という原因を示して対応策までつなげる。この流れを持っておけば、設問がどちらの側を聞いてきても、同じ知識から必要な部分を取り出して書けます。

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