組織のライフサイクルモデルの段階と危機
事例Ⅰ 第45回
「組織が大きくなっていく過程で、必ずどこかで壁にぶつかるっていう感覚、ありますか」。動画はこんな問いかけから始まります。成長段階の名前は言えるのに、二次の答案でどう使えばいいか分からない。このページでは動画の流れにそって、助言問題での出方、与件文のサイン、4段階と危機の連鎖、衰退への対策3つ、答案の型、混同しやすいNGパターンをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
段階の名前は言えるのに、答案で手が止まる
動画は、こんな問いかけから始まります。「組織が大きくなっていく過程で、必ずどこかで壁にぶつかるっていう感覚、ありますか」。組織の成長には段階があり、段階ごとに壁がある。この知識そのものは、多くの人が持っています。ところが聞き手は、「成長段階の名前は言えるけれど、二次の答案でどう使えばいいのかピンと来ない。与件文と結びつける自信がない」と打ち明けます。講師も、段階の名前は言えるのに、二次の現場でどう使うかで止まってしまう人はすごく多い、と応じます。
講師によれば、この論点は事例Ⅰの助言問題でかなりの頻度で土台になっています。このページでは、動画の順に次のことをまとめます。
- どう出るか:設問の形と、段階を見立てる意味
- 与件文のサイン:どんな一文が出たらこの論点か
- 4段階と危機の連鎖、そして衰退への対策3つ
- 答案の型:段階・危機・打ち手を一続きで書く
- 混同しやすい3つのNGパターン
どう出るか:段階を見立てれば対応が決まる
講師が挙げた設問の形は、たとえば「成長に伴って組織をどう変えるべきか」「組織が停滞している原因と対応を助言せよ」といったものです。見たことがある、と聞き手も言います。では、こうした設問は、今の会社がどの段階にいるかを見立てるところから始めればよいのでしょうか。講師の答えは「そうです」。
この論点の考え方
今どの段階にいて、どんな危機に直面しているかを見立てられれば、そこから対応策がほぼ自動的に決まってくる構造になっている。
なるほど、段階が特定できれば、対応も芋づる式に出てくるということですね。
そのとおりです。では次は、与件文のどんな一文が出たらこの論点だと気づけるか、そこを見ていきましょう。
与件文のサイン:記述のトーンが段階ごとに変わる
講師は与件文に出てきそうな記述を順に挙げ、「これはどの段階のサインだと思いますか」と聞き手に問いかけていきます。やり取りの結果を図にまとめました。
- 「創業者のリーダーシップで急成長してきた」「まだ仕組みが整っていない」:一番最初の段階、創造性で立ち上げていく段階のサインです。
- 「一体感はあるけれど、権限が創業者に集中していて任せられない」:一体感で伸びる段階の次に来る、権限委譲が必要になる危機のサインです。聞き手は「さっきより少し進んだ段階で、次の壁にぶつかっている感じ」と見立て、講師は「いい着眼点」と受けました。
- 「規則や手続きを整えた」「官僚的になってきた」:権限委譲のあと、今度は仕組みで管理する段階に入ったサインです。
- 「大きくなって硬直化した」「変化に対応できない」「停滞している」:もう成熟した段階で、再活性化が必要な危機のサインです。
こうして並べると、与件文の記述は「その会社が今どこにいるか」を教えてくれる手がかりだと分かります。状況説明として読み流すのではなく、段階か、危機か、という目で一文ずつ拾っていく。これが、この論点を答案につなげる最初の一歩です。
権限集中が危機になる理由は、講師の説明が明快です。創業者が全部の意思決定を抱え込んだままだと、組織の規模に判断のスピードが追いつかなくなる。そこに気づけるかどうかが、この段階を見立てる分かれ目になる、と言います。
「創業者に権限が集中している」という表現一つでも、単なる説明じゃなくて、危機のサインとして読めるようになるということですね。
はい。そう読めるようになるのが目標です。
記述のトーンが、段階ごとにはっきり変わっていくんですね。
そうなんです。では、この4段階を整理の仕方として、もう一段深く見ていきましょう。
4段階と危機の連鎖
動画の整理は、4つの段階と、それぞれの段階の先に待つ危機のセットです。段階の名前だけでなく、「この段階をうまく乗り切ると、次にどんな危機が来るか」まで一緒に覚えるのがポイントです。
| 段階 | 次の危機 | サインの例 |
|---|---|---|
| 創造性で立ち上げ | 強力なリーダー | 創業者主導・仕組み未整備 |
| 一体感で伸びる | 権限委譲の必要性 | 権限が創業者に集中 |
| 規則・手続きで管理 | 官僚制の弊害の除去 | 官僚的・規則の整備 |
| チーム | 再活性化の必要 | 硬直化・停滞 |
一段階目は、創造性で立ち上がっていく段階です。ここがうまくいくと、次は強力なリーダーシップが必要になるという危機が来ます。創造性だけではどこかで限界が来る、ということです。
二段階目は、一体感で組織が伸びていく段階です。これを乗り越えると、今度は権限委譲の必要性という危機に直面します。聞き手は「一体感があるからこそ、権限を分けるのが逆に難しくなる」と受け止め、講師は「いい理解」と評価しました。
三段階目は、規則や手続きの導入で管理していく段階です。進めていくと、官僚制の弊害を取り除く必要があるという危機が来ます。仕組みを整えたはずなのに、それが今度は足かせになる、という流れです。
四段階目は、チームワークの醸成で乗り切っていく段階です。ここにも再活性化が必要になる危機があり、放置すると衰退に向かってしまいます。
段階が進むごとに、乗り越え方から次の危機に変わっていくのが、連鎖みたいですね。
いい表現ですね。人にたとえると分かりやすいかもしれません。
人にたとえると:成長するたびに壁が変わる
講師のたとえはこうです。若いうちは勢いだけで動き回れます。ところが大人になるにつれて、役割分担やルールが必要になる。さらに歳を重ねると、今度は硬くなった考え方をほぐす必要が出てくる。そんな感覚に近い、という説明です。
あ、それすごくイメージつきます。成長するたびに、その時々で乗り越えるべき壁が変わっていくんですね。
そうなんです。そして、もし成熟した段階で壁を乗り越えられずに停滞が続くと、衰退に向かってしまいます。
衰退への対策は3つ:縮小だけではない
講師は、衰退への対策も3つ押さえておく必要があると言います。
- 組織を動態化・柔構造化する:硬くなった組織の動き方そのものを柔らかくする。
- ドメインを再定義する:今の事業領域そのものを見直し、新しい方向に転換していく。
- ダウンサイジング:聞き手は「縮小するイメージ」と受け取っていました。
動態化とドメインの再定義は、どう違うんですか。
動態化・柔構造化は、組織の動き方自体を柔らかくするイメージです。一方、ドメインの再定義は、事業領域そのものを見直して、新しい方向に転換していくイメージです。
衰退への対策って、縮小するだけじゃなくて、事業領域を見直すという前向きな選択肢もあるんですね。
そこが本当に大事なポイントです。衰退イコール縮小だと思い込んでいると、この前向きな打ち手を答案から落としてしまうんです。
答案の型:段階・危機・打ち手を一続きで書く
では、これを実際の解答にどう落とし込むか。講師の型は二段構えです。まず、同社が今どの段階にあり、どんな段階特有の危機に直面しているかを書く。そのうえで、その危機に対応する打ち手を続けます。
| 与件文の状況 | 段階特有の危機 | 打ち手 |
|---|---|---|
| 権限が集中し任せられない | 権限委譲の必要性 | 権限委譲を進める |
| 官僚的になっている | 官僚制の弊害の除去 | その弊害の解消 |
動画の答案例
「同社は共同体段階にあり、創業者への権限集中という段階特有の危機に直面している。対応として、権限委譲を進め、意思決定のスピードを確保する」
ポイントは、段階と危機と打ち手を一続きの文でつなげることです。聞き手が「段階と危機と打ち手を、そのままつなげて書くイメージですね」と確認すると、講師は「そうです」と答えました。
成熟後の衰退が問われたときは、先ほどの3つの対策から選びます。与件文の状況に応じて、動態化・柔構造化なのか、ドメインの再定義なのか、ダウンサイジングなのか。状況に一番合うものを選んで書きます。
段階を見立てさえできれば、あとは対応する言葉を当てはめるだけ、という感覚に近いですね。
その感覚で合っています。
(補足:動画にない、自作の練習例です。与件文に「規則や手続きを整えて管理を強めたが、現場から決裁に時間がかかるという声が増えている」とあったとします。型に当てはめると、「同社は規則・手続きで管理する段階にあり、官僚制の弊害という段階特有の危機に直面している。対応として、手続きを見直して弊害を取り除き、現場の判断を速める」のように書けます。実際の設問では、与件文の記述と設問の指示に即して書いてください。)
混同しやすい3つのNGパターン
最後に、講師は混同しやすいポイントを3つ挙げます。
1つ目は、段階の名前を覚えるだけで満足してしまい、各段階の変わり目に来る危機を捉えられていないパターンです。名前だけ暗記していても、危機の中身が出てこなければ意味がありません。
2つ目は、今どの段階かの見立てを飛ばして、いきなり一般的な活性化策を並べてしまうパターンです。段階を特定せずに答えると、どの企業にも当てはまる一般論になり、与件文を読んだ意味がなくなる、と講師は言います。聞き手の言葉では、見立てを飛ばすことは結局、与件文を軽視することにつながる、ということです。
3つ目は、衰退イコール縮小と決めつけて、ドメインの再定義という前向きな対策を落としてしまうパターンです。先ほど触れた落とし穴ですね。
名前だけ暗記していても、危機の中身が出てこないと意味がないということですね。
そうです。二つ目は、見立てを飛ばして一般的な活性化策を並べるパターンです。
三つとも、知っているつもりで見落としがちな気がします。そこは特に気をつけたいです。
知っているつもりが一番危ないんです。
| NGパターン | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 段階名の暗記だけ | 変わり目の危機が出ない | 危機までセットで覚える |
| 見立てを飛ばす | どの企業にも通じる一般論 | まず段階を特定する |
| 衰退=縮小 | ドメイン | 3つの対策から選ぶ |
動画が強調した点
- 与件文の一文一文を「どの段階のどの危機のサインか」という目で読む
- 段階を見立てる、危機を特定する、打ち手を選ぶ、の順番を崩さない
- 衰退が問われたら、動態化・柔構造化、ドメインの再定義、ダウンサイジングから状況に合うものを選ぶ
まとめ
動画の整理
- 助言問題では、今の段階と直面している危機を見立てれば、対応策がほぼ自動的に決まる
- 与件文のサインは、記述のトーンの変化に出る:創業者主導、権限集中、規則と官僚的、硬直化と停滞
- 4段階は、創造性、一体感、規則・手続き、チームワーク。それぞれの先に、リーダーシップ、権限委譲、官僚制の弊害の除去、再活性化の危機が来る
- 成熟後に壁を越えられなければ衰退へ。対策は動態化・柔構造化、ドメインの再定義、ダウンサイジングの3つ
- 答案は、段階と危機を書き、そのうえで打ち手を一続きの文でつなげる
- NGは、段階名だけの暗記、見立ての省略、衰退=縮小の決めつけ
講師は最後に、本番でも崩したくない順番を示しました。与件文を読んだら、まず企業がどの段階にいるかを見立てる。次に、その段階特有の危機を特定する。そして、その危機に対応する打ち手を、3つの衰退対策も含めて選んで書く。「段階名を知っているかどうかではなく、危機と打ち手を対応させて書けるかどうかで差がつく」というのが動画の結びです。聞き手の宣言どおり、与件文の一文一文を、どの段階のどの危機のサインかという目で読む練習を続けていきましょう。
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