聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

仕事を横に広げるか縦に深めるかの使い分け

事例Ⅰ 第42回

事例Ⅰ 仕事を横に広げるか縦に深めるか。答案での使い分け7分30秒2026年8月6日公開

「従業員のやりがいを高める仕事の与え方を問われたとき、知識はあるのに何を書けばいいか手が止まる」。動画は、講師のこんな一言から始まります。仕事を増やせばいい、というイメージだけでは答案がぼやけてしまう。このページでは、仕事を横に広げる打ち手と縦に深める打ち手の違い、与件文のサイン、答案への落とし込み、幅と深さが両方出たときの書き分け、よくある間違いを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「仕事を増やせばいい」では手が止まる

動画は、講師のこんな一言から始まります。従業員のやりがいを高める仕事の与え方を問われたとき、知識はあるのに、何を書けばいいか手が止まる人がけっこう多い、というのです。聞き手もすぐに「それ私です」と手を挙げます。仕事を増やしてあげればいい、くらいのイメージしかなくて、具体的に何を変えるべきなのか、うまく言葉にできない、と。

講師はここで、核心を先に示します。仕事の与え方を変える打ち手には、大きく分けて二つの方向があります。この二つを混同したまま書くと、答案がぼやけてしまう、というのが動画全体の出発点です。

横に広げる細分化された仕事を流れに沿って結ぶ多能工・応援体制縦に深める判断の幅そのものを広げる能力・成長の機会どちらも目的は能力開発とやる気の向上
横は担当の範囲、縦は判断の幅。方向が違います。
  • 仕事を横に広げる方向
  • 仕事を縦に深める方向

このページでは、動画と同じ順番で進めます。二次試験でどう出るか、与件文のどこで気づくか、そして答案にどう落とし込むか。最後に、この論点でやりがちな間違いと、本番での使い方をまとめます。

二次ではどう聞かれるか

まず出方です。講師が挙げた聞かれ方は、次の3つです。

  • 従業員のやりがいや成長を高める仕事の与え方はどうすべきか
  • 多能工化を進めるにはどうすべきか
  • 単調な作業でモチベーションが上がらない状況をどう改善するか

多能工化も、この論点で答えられるんですね。

そうなんです。共通しているのは、仕事そのものの設計を問われているという点です。

聞き方はばらばらに見えても、問われているのは同じ、仕事の設計です。そこで事例が求めているのが、仕事の幅を広げることなのか、深さを増やすことなのか。そこを見極めて使い分けられるかがポイントだと講師は言います。

与件文のサインを見分ける

聞き手が次に聞いたのは、与件文のどんな記述が出たら、この論点だと気づけるのか、という点でした。講師は、サインが大きく二組あると説明します。

横に広げるサイン縦に深めるサイン単調な作業の繰り返し裁量がない担当が細分化されすぎ言われたことだけやる特定の人しかできない成長実感がない応援が利かない責任ある仕事を任せたい
記述の種類がはっきり違います。まずどちらの記述かを見分けます。

まず横に広げるほうのサインです。単調な作業の繰り返し、担当が細分化されすぎている、という記述。聞き手が「一人が一つの作業しかしていない、みたいなイメージですか」と確かめると、講師は「そうです」と答えました。さらに、特定の人にしかできない、応援が利かない、という記述も、横に広げる打ち手、つまり多能工化のサインになります。聞き手はこれを「属人化している状態ですね」と言い換えていました。

次に縦に深めるほうのサインです。裁量がない、言われたことだけをやっている、成長実感がない、という記述が出たら、仕事を縦に深める打ち手が効く場面です。聞き手が「もっと責任ある仕事を任せたい、という記述もありそうですね」と挙げると、講師は「その通り」と認め、それは縦に深める打ち手、それから目標を自分で管理していくような仕組みのサインとして読める、と続けました。

与件文の記述効く打ち手
単調な作業の繰り返し/担当の細分化横に広げる
特定の人しかできない/応援が利かない横に広げる(多能工化)
裁量がない/言われたことだけ/成長実感がない縦に深める
もっと責任ある仕事を任せたい縦に深める/目標を自分で管理する仕組み

横に広げるサインと、縦に深めるサイン、記述の種類がはっきり違うんですね。

はい。では、この二つの方向を、頭の中でどう整理すればいいと思いますか。

横と縦を頭の中でどう整理するか

講師は、この二つの方向を頭の中でどう整理すればいいか、聞き手に問いかけます。聞き手の答えは、横に広げるのは仕事の種類を増やすこと、縦に深めるのは仕事の責任や裁量を増やすこと、というものでした。講師は「かなり近いです」と受けたうえで、整理を言い直します。

方向発想生まれるもの
横に広げる細分化された仕事を、仕事の進む流れに沿って結びつけ、担当できる範囲を広げるいろいろな作業をこなせる人。応援体制
縦に深める計画・段取り・実行・調整・確認といった判断の幅そのものを広げる能力や人間的な成長の機会

横に広げる打ち手は、一人が一つの作業だけでなく、複数の作業をこなせるようになる、という形で現れます。それによって、いろいろな作業をこなせる人が育ち、応援体制にもつながります。

(補足:動画にない呼び名の話です。一般に、横に広げる打ち手は「職務拡大」、縦に深める打ち手は「職務充実」と呼ばれます。動画ではこの用語は使われておらず、答案では「多能工化」「裁量・責任を与える」のように、具体的な打ち手の言葉で書く形になっています。職務設計の考え方として、職務の幅を広げる職務拡大と、計画や統制のような管理的要素を含めて職務遂行を作業者に任せる職務充実があることは、JIS Z 8141:2001年版(生産管理用語)で確認しました。)

縦に深めるとは「判断の中身」を増やすこと

縦に深める打ち手は、計画を立てる、段取りを組む、実行する、調整する、うまくいっているか確認する、といった判断の幅そのものを広げていく発想です。これによって、能力や人間的な成長の機会が生まれます。

計画を立てる段取りを組む実行する調整するうまくいっているか確認する広げるのはこの判断の幅作業の量ではありません量を増やすだけの提案は負担増に見えてしまう
縦に深めるとは、判断の中身を増やすことです。

縦に深める、というのは、作業の量を増やすことじゃなくて、判断の中身を増やすことなんですね。

そこが一番の誤解されやすいポイントです。

講師が「一番誤解されやすい」と強調したのは、縦に深めることを「作業が増えること」だと取り違えてしまう点です。やることの数が増えるのではなく、計画や段取りといった判断の部分が増える。その違いを、頭に置いておきましょう。

目標を自分で管理する仕組みと、小さなチーム

講師は縦に深めるやり方として、もう一つ、目標を自分で管理していく仕組みを挙げます。これは、個人レベルでの深まりを図るものです。また、小さなチームでの活動を通じて進める、という考え方もあります。

目標を自分で管理する、というのは、上から与えられた目標をこなすのとは違うんですか。

はい。自分自身で目標を設定し、その達成に向けて自分で進め方を決めていく、という仕組みです。これも仕事の深さを増やす打ち手の一つとして捉えられます。

では小さなチームはどうでしょうか。聞き手が「小さなチームでの活動というのも、深さを増やす話につながるんですか」と尋ねると、講師は「つながります」と答えました。少人数のチームに、計画から実行、改善までをある程度任せることで、個人だけでなくチーム単位でも判断の幅が広がっていくからです。

事例で見かけたら

  • 小さな単位での改善活動が出てきたら、チームで深さを増やす仕組みとして読める
  • 現場主導の取り組みが出てきたら、同じく深さを増やす仕組みとして読める

製造現場の例で、幅と深さを比べる

聞き手が「具体的にイメージが湧かないので、例を挙げてもらえますか」と頼み、講師は製造現場の例を出しました。一人が一つの工程だけをずっと担当していて、隣の工程が忙しくても手伝えない、という会社です。

横に広げる例一人が一工程隣を手伝えない複数工程を一人で担当応援が利く生産が柔軟に縦に深める例同じ工程の担当者段取りと品質確認も責任感・やりがいに変化
同じ「任せる」でも、狙う効果が違います。

ここで複数の工程を一人が担当できるように仕事を組み替えたら、どうなるでしょうか。聞き手の答えは、忙しい工程を他の人が手伝えるようになって、生産の柔軟性が上がりそう、というものでした。講師は「これが横に広げる打ち手です」と確認します。

逆に、その人に工程の段取りや品質確認まで任せて、自分で工夫できる余地を増やしたらどうか。聞き手は、作業そのものより、責任感ややりがいの面で変化が出そうだと答え、講師は「まさにそこが違いです」と応じました。

事例を読むときは、幅の話なのか、深さの話なのかを、まず特定するのが最初の作業なんですね。

同じ仕事を任せるという行為でも、範囲を広げるのか、深さを増やすのかで、狙う効果が変わってくるんです。

答案への落とし込み方

では、実際の答案にどう落とし込むか。講師の整理は次のとおりです。

  • 単調さや属人化が課題なら、仕事を横に広げて多能工化し、応援体制をつくる、という打ち手を書く。
  • やりがいや成長実感の不足が課題なら、仕事を縦に深めて、裁量や責任を与える、という打ち手を書く。

聞き手が二つ目を自分の言葉で言い切ると、講師は「その通りです」と応じ、さらに二つの利点を挙げました。

この書き方の利点(動画より)

  • 達成感や責任、成長といった、やる気を引き出す要因を実際の仕事の中に埋め込む具体策として書けるので、モチベーション理論との一貫性を出せる。
  • 権限を渡す話に直結するので、権限委譲の論点と接続して書くと、答案に厚みが出る。

論点同士がつながっている、という書き方ですね。

はい。それと、権限を渡すという話にも直結するので、権限委譲の論点と接続して書くと、答案にさらに厚みが出ます。

(補足:書き方の例を一つ、動画にない形で示します。「作業が単調で属人化しているため、複数工程を担当させる多能工化を進め、応援体制を整えて、能力開発とやる気の向上を図る。」のように、課題、打ち手の方向、目的を一文につなげると、型として使いやすくなります。)

幅と深さの課題が両方出てきたとき

聞き手が気にしたのは、与件文に幅の課題と深さの課題が両方出てきたらどう書き分けるか、という点です。講師の答えは、両方に触れて構わない、ただし与件文でより強く書かれている方を先に、字数も多めに配分するのが基本、というものでした。

単調さ・属人化が課題横に広げ多能工化応援体制をつくるやりがい・成長実感の不足が課題縦に深めて裁量・責任を与える幅と深さが両方出る強い方を先に字数も多めに
課題の種類を見て、打ち手の方向を決めます。

片方だけに絞りすぎると、もう一方の課題への対応が抜け落ちてしまいます。まず強く書かれているほうを見極め、そちらを先に厚く書き、もう片方にも必ず触れる。この順番を覚えておきましょう。

両方書いていいけれど、強い方を先に、字数も多めに、ということですね。

そうです。片方だけだと、もう一方の課題が抜け落ちてしまいますから。

よくある3つの間違い

聞き手が「この論点でよくやってしまう間違いはどんなものですか」と尋ね、講師は3つ挙げました。

1つ目は、横に広げる打ち手と縦に深める打ち手を取り違える、あるいは同じものとして扱ってしまうことです。幅の課題に深さの打ち手を当ててしまうと、狙った効果が出ません。聞き手の言うとおり、ズレた答案になってしまいます。

2つ目は、どちらの打ち手も「仕事を増やすこと」だと捉えてしまうことです。すると、負担が増えるだけの提案に見えてしまいます。目的はあくまで能力開発とやる気の向上です。単に仕事量を増やす話ではなく、成長のための仕事の組み替えという視点が大事だと、聞き手もまとめていました。

3つ目は、「仕事を任せる」と書いて終わってしまい、横に広げているのか縦に深めているのかを特定しないことです。どちらの方向かを、言葉で示すことが大切です。

間違い起きること対策
横と縦の取り違え・同一視狙った効果が出ずズレた答案に課題が幅か深さかを先に特定
どちらも「仕事を増やす」と捉える負担が増えるだけの提案に見える目的は能力開発とやる気の向上と結ぶ
「任せる」で止める方向が特定されない幅を広げるのか深さを増やすのかを書く

任せる、で止めずに、幅を広げるのか深さを増やすのか、そこまで書くんですね。

その通りです。どちらの方向かを言葉で示すことが大切です。

試験ではここに注目

  • 与件文の記述は、幅の課題(単調さ・細分化・属人化)か、深さの課題(裁量のなさ・成長実感の不足)か
  • 答案に、横に広げるのか縦に深めるのかの一言が入っているか
  • 打ち手が、能力開発とやる気の向上という目的に結びついているか

まとめ

動画の整理

  • 仕事の与え方を変える打ち手は二つの方向。仕事を横に広げる方向と、縦に深める方向
  • 聞かれ方は、やりがいや成長、多能工化、単調な作業の改善など。共通するのは仕事そのものの設計
  • サインは、単調さ・細分化・属人化なら横。裁量のなさ・成長実感の不足・責任ある仕事を任せたいなら縦
  • 横は担当できる範囲を広げて多能工化・応援体制へ。縦は計画・段取り・実行・調整・確認の判断の幅を広げて成長の機会へ。目標を自分で管理する仕組みや小さなチームも深さの打ち手
  • 答案は、課題に合う方向を書き、能力開発とやる気の向上に結ぶ。モチベーション理論や権限委譲の論点とつなぐと厚みが出る
  • 両方出たら強い方を先に・字数も多めに。取り違え、「仕事を増やす」だけの提案、「任せる」止まりは避ける

動画の最後に、講師は本番での使い方を二つにまとめました。一つ目は、単調さや属人化の記述なら横に広げる打ち手、裁量のなさや成長実感の不足の記述なら縦に深める打ち手と、使い分けること。二つ目は、それぞれの打ち手を、能力開発とやる気の向上という目的に結びつけて書くことです。

聞き手は「横に広げるのか縦に深めるのか、この一言を答案に入れるだけで、狙いが明確な提案に見えそうですね」と話し、講師は「まさにそこが差になります」と応じました。幅と深さ、この二つの方向を使い分けられるようになれば、この論点は本番で確実に武器になる、というのが動画の結びです。

LISTEN

動画で聞く

NEXT

続けて読む