職場の一体感を意図してつくる打ち手
事例Ⅰ 第39回
「職場の一体感を高めるには、と聞かれたとき、思いつく施策が一つしか出てこない人、結構多いんですよね」。動画は、こんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文のサインと切り口の対応、代表的な七つの切り口、事例に合わせた選び方、答案への落とし込み、誤答3つ、本番のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
思いつく施策が一つで終わってしまう
動画は、講師のこんな一言から始まります。「職場の一体感を高めるには、と聞かれたとき、思いつく施策が一つしか出てこない人、結構多いんですよね」。聞き手もすぐに「あ、私です。まとまりを高める方法って、正直パッと一つか二つしか浮かばなくて、それで終わっちゃいます」と認めます。
ところが講師によると、まとまりを高める切り口は複数あります。そして事例の状況に合わせて、それを選び分けることが求められます。聞き手は「切り口が複数あるっていうのは知らなかったです」と言い、まず、どういう聞かれ方をするのかを尋ねます。講師が挙げた聞かれ方は次のとおりです。
- 職場の一体感を高めるには
- チームのまとまりをつくる施策は
- 新設した部署やチームを早く機能させるには
3つ目の「新設のチームを早く機能させる」について、聞き手は「同じ論点で答えられるんですね」と確認します。講師の答えは「そうです」。共通しているのは、集団を一つにまとめる打ち手を求めている点です。問われ方が変わっても、中身は同じ論点だということです。
聞かれ方が違っても、集団を一つにまとめる打ち手を答えればいい、ということですね。
そうです。ここで差がつくのは、複数ある切り口の中から、事例の状況に合うものを選んで組み立てられるかどうかなんです。
つまり、知っている切り口の数よりも、事例に合わせて選べるかが勝負になります。2次試験は答案の書き方が主題ですから、このページでは、与件文のサイン、七つの切り口、選び方、答案への落とし込み、誤答、本番のチェックポイントの順に、動画の流れにそってまとめます。
与件文のサインから、使える切り口を見つける
次に聞き手が尋ねたのは、「与件文のどこを見たら、どの切り口が使えるって分かるんですか」ということでした。講師は「いくつか対応関係があります」と言って、4つを挙げます。
- 大所帯で目が届かないという記述なら、集団を小規模にするという切り口が使えます。聞き手は「人数が多すぎるなら、分割して小さくすればいいってことですね」とまとめ、講師は「はい」と答えました。
- 目標が浸透していないという記述なら、集団目標への合意を促進するという切り口です。
- 交流が少ない、接点が薄いという記述なら、メンバーが共に過ごす時間を増やすという切り口が対応します。
- 他部署や他社との競争意識が薄い、あるいは強いという記述もサインになります。これは集団間の競争を促進する切り口が使える場面かどうかを見る、ということです。
3つ目について、聞き手は「一緒に過ごす時間を増やすだけで、まとまりって高まるものなんですか」と疑問を挟みました。講師の答えは「高まります」。顔を合わせる回数が増えるほど、お互いの理解や信頼が積み重なっていく、という考え方だと説明します。4つ目の「集団間の競争を促進する」という切り口は、聞き手が先に言葉にして、講師が「その通りです」と受けています。
ここで聞き手は、2つ目の切り口に気づきます。
これは前の論点の、目標の方向づけの話ともつながりますね。
よく気づきました。目標の一致は前提としてすでに大事だと押さえていますが、そのうえで合意を作る動きそのものが、まとまりを高める切り口の一つにもなるということです。
目標の方向をそろえることは、前提として大事。そのうえで、目標への合意を作る動きは、まとまりを高める切り口の一つにもなる。この二段構えで覚えておきましょう。あとの誤答の話にも、この前提が出てきます。
代表的な七つの切り口
ここまでで4つの切り口が出てきましたが、講師は「実はもう少しあります」と言います。聞き手が「全部でいくつあるんですか」と聞くと、代表的なものとして七つを押さえるように言います。1つ目から3つ目は、いま話した分です。
4つ目以降を、講師の言葉で整理します。四つ目は、集団のステータスを高め、参加資格を得がたいものに見せること。五つ目は、他集団との競争を促進すること。六つ目は、個々ではなく集団全体に報酬を与えること。七つ目は、集団を物理的に近づける、あるいは独立性を持たせることです。
四つ目:ステータスを高め、参加資格を得がたく見せる
聞き手が「どういうイメージですか」と尋ねると、講師は仮の例を出します。ある会社で、あるプロジェクトチームへの配属を、選ばれた人だけが入れる特別なものとして扱った、という例です。
入るのが難しいチームだと思われると、入れたこと自体に誇りを持てそうですね。
そうです。その誇りが、集団への愛着やまとまりの強さにつながっていく、という仕組みです。この仮の例のように、参加資格の見せ方を工夫するだけでも、まとまりを高める打ち手になり得るんです。
六つ目:集団全体に報酬を与える
聞き手は「個人の成果じゃなくて、集団の成果に対して報酬を出すってことですか」と確かめます。講師は「その通りです」と答え、理由を説明します。個人ごとに評価を分けてしまうと、集団の中で競争が生まれて、まとまりがかえって弱まることがある。集団単位で報酬を設計すれば、協力し合う方向に力が働く、という説明です。
七つ目:物理的に近づける、独立性を持たせる
どういう場面で使うのかという聞き手の問いに、講師はこう答えます。物理的に離れている、あるいは他の部署と机が混ざっていて集団としての境界があいまい、という記述があれば、物理的な配置を変える打ち手として使えます。
| 切り口 | 動画の説明 |
|---|---|
| ④ ステー | 参加資格を特別に見せ、誇りと愛着へ |
| ⑥ 集団 | 個人評価の競争を避け、協力へ向かわせる |
| ⑦ 物理 | 離れている、境界があいまいなときに使う |
切り口が多いからこそ、選び方が大事
七つもあると、どれを使えばいいのか迷います。聞き手もそう口にしました。講師は「そこがこの論点の一番大事なところです」と言います。事例の状況、つまり規模、目標の共有度、交流の程度、報酬制度といった与件文の情報に照らして、合う切り口を選ぶ必要がある、ということです。
全部書いてしまいたくなる気持ち、正直あります。
それはやめたほうがいいです。事例の状況に合わない切り口まで並べると、根拠のない助言に見えてしまいます。
迷ったときの優先順位
聞き手は、似たような記述が複数あって選ぶ基準に迷ったらどうするか、と尋ねます。講師の答えは、与件文で最も強調されている課題に対応する切り口から優先すること。字数が足りていて余裕があれば、二つ目、三つ目の切り口を加える、という順番で考えます。
一番困っている部分に効く切り口を、まず一つ確実に当てるということですね。
その通りです。優先順位をつけずに思いついた順に並べてしまうと、事例が本当に求めている打ち手が埋もれてしまいます。
答案への落とし込み
では、解答にはどう落とし込むのか。講師が示した型は、組織目標と方向をそろえたうえで、目標への合意形成、交流機会の創出、集団単位の目標や報酬の設定といった切り口から、事例に合うものを二つか三つ選んで具体化する、という組み立て方です。
全部並べるんじゃなくて、絞り込んで深掘りするってことですね。
そうです。それから、この考え方は小集団活動やチーム制、プロジェクト制を導入する理由づけとしても使えます。
なぜその制度を導入するのか、という問いにも応用できるんですね。
その通りです。
切り口の名前だけを並べない
最後に、聞き手が大事な質問をします。「切り口の名前だけを並べる書き方でも大丈夫なんですか」。講師の答えは、名前だけを並べると、なぜその打ち手が有効なのかが採点者に伝わらない、というものです。選んだ切り口が、与件文のどの課題に効くのかを一言添えます。
切り口と、それが解決する課題をセットで書くということですね。
その通りです。この一言があるかどうかで、単なる知識の暗唱なのか、事例に即した助言なのかが、答案から伝わってきます。
| 書き方 | 伝わり方 |
|---|---|
| 名前だけを並べる | なぜ有効かが伝わらない |
| 切り口+効く課題 | 事例に即した助言になる |
よくある誤答3つ
ここで講師は、よくある誤答を3つ確認します。
誤答1:目標一致を無視して、まとまりだけを高める
1つ目は、目標一致を無視して、まとまりだけを高める助言をしてしまうパターンです。聞き手がすぐに反応しました。
それ、前の論点でも出てきた話ですよね。馴れ合いや内向きのまとまりを招いてしまう。
よく覚えていますね。まさにその通りで、まとまりを高める切り口を使う前に、必ず目標の方向づけができているかを確認する癖をつけてください。
誤答2:切り口を一つだけ、または七つ全部
2つ目は、切り口を一つだけ挙げて終わってしまう、あるいは逆に七つ全部を並べて事例に合わせない、というパターンです。講師は、どちらも事例の状況を踏まえた選び方になっていないと指摘します。
誤答3:集団間競争を安易に使う
3つ目は、集団間競争の促進という切り口を安易に使ってしまい、部門間の対立を助長するリスクを見落とすパターンです。聞き手は「競争を促進する切り口自体が、別の問題を生むこともあるんですね」と受け止めます。
切り口を選ぶときは、良い面だけじゃなくて副作用も考えないといけないんですね。
その意識があるかどうかで、答案の完成度がかなり変わってきます。
講師の説明では、競争を煽りすぎると、部門をつなぐ役割や連携が弱まってしまうこともあります。この切り口を使うときは、事例の中に対立の火種になりそうな記述がないかも、合わせて確認します。
| 誤答 | 動画の指摘 |
|---|---|
| 目標一致の無視 | 先に目標の方向づけを確認する |
| 一つだけ/全部 | 事例の状況を踏まえた選び方ではない |
| 競争の安易な促進 | 部門間の対立を助長するリスク |
本番でのチェックポイント
動画の最後に、講師は本番でのチェックポイントをまとめます。4つあります。
動画のチェックポイント4つ
- 大所帯、目標の未浸透、交流の薄さ、競争意識といった与件文の記述から、対応する切り口を思い浮かべる
- 事例の状況に合う切り口を二つか三つに絞り込んで具体化する
- 切り口を使う前に、必ず目標の方向づけができているかを確認する
- 集団間競争のような切り口は、副作用まで考えたうえで使う
聞き手は「切り口が複数あることを知っているだけじゃなくて、選び方と組み合わせ方まで押さえておくことが大事なんですね」とまとめます。講師は、まとまりは、ただ願うものではなく、状況に合わせて意図的につくり出せるものだと言い、その視点を持てれば、この論点は本番で武器になると話しています。
まとめ
動画の整理
- 一体感、チームのまとまり、新設チームを早く機能させる、はどれも「集団を一つにまとめる打ち手」を求める同じ論点
- 切り口は複数ある。与件文の記述(大所帯、目標の未浸透、交流の薄さ、競争意識)から使える切り口を見つける
- 代表的な七つは、小規模化、目標への合意、共に過ごす時間、ステータスと参加資格、集団間競争、集団全体への報酬、物理的な近さと独立性
- 全部は書かない。事例の状況に合うものを二つか三つに絞り、最も強調された課題に効くものを優先する
- 答案は、組織目標と方向をそろえたうえで、切り口の名前だけでなく、効く課題を一言添える
- 誤答は3つ:目標一致の無視、一つだけ/全部並べる、集団間競争の安易な促進(対立を助長するリスク)
動画は、切り口を知っているだけでは足りない、と繰り返しています。サインを見つけ、事例に合うものを絞り、効く課題とセットで書く。そして切り口を使う前に目標の方向づけを確かめ、競争のような切り口では副作用まで考える。この流れを持っておけば、「職場の一体感を高めるには」と聞かれたときに、一つで終わらずに答案を組み立てられます。
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