技術を組み合わせ差別化の陳腐化に抗う視点
事例Ⅰ 第35回
「自社の技術力をどう活かすかを問われたとき、知識はあるのに答案が『技術力がある』で止まってしまう」。動画は、こんな悩みから始まります。技術は持っているだけでは答案になりません。このページでは、与件文のサイン、技術を組み合わせる柱と差別化がすり減る現象に抗う柱、答案の型、よくある間違いを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「技術力がある」で止まる答案
動画は、自社の技術力をどう活かすかを問われたとき、知識はあるのに答案が「技術力がある」で止まってしまう、という悩みから始まります。講師は、こういう人はけっこう多いと言い、聞き手も「それ私です」と認めます。技術が強みだというところまでは書けるのに、そこから先をどう展開すればいいのか分からなくなる、というわけです。
講師の指摘は、技術という強みは、持っているだけでは答案にならないということです。それをどう組み合わせて、どう製品につなげるかまで書けて、初めて評価される答案になります。
組み合わせる、というのがポイントなんですか。
はい。そしてもう一つ、せっかくの差別化が競合に追いつかれて、価格競争に巻き込まれていく。この現象への対処も、この論点の重要な柱です。
動画のタイトルにある「差別化の陳腐化に抗う視点」が、この2つめの柱にあたります。以降、本文では動画の言い方にならって「差別化がすり減る」と書きます。今日の動画が扱うのは、次の2本柱です。
この論点の2本柱
- 柱1:技術を組み合わせて、製品につなげる
- 柱2:差別化がすり減っていくことに抗う
講師は、二次でどう出るか、与件文のどこで気づくか、答案にどう落とし込むかを順番に見ていきます。そのあと、やってしまいがちな間違いと、本番でのポイントで締めます。このページも同じ順番でまとめました。
二次ではこう聞かれる
まず出方です。講師によると、この論点は次のような聞かれ方をします。
- 自社の技術力を、新製品や新事業にどう活かすか
- 価格競争から抜け出すには、どうすべきか
- 差別化を維持するには、どうすべきか
技術の話と価格競争の話、両方がこの論点に入るんですね。
そうなんです。技術を持っているだけでなく、拠点や部門をまたいで組み合わせて活かす視点。そして、差別化がすり減っていくことに抗う視点。この両方で語れるかがポイントです。
聞き方は「技術の活かし方」と「価格競争からの脱出」でまったく違って見えます。それでも、答案で使う視点は、組み合わせて活かす視点とすり減りに抗う視点の2つです。設問文を読んだら、まずこの2つのどちらで書くのかを頭に置きます。
与件文のサイン:4つの記述
聞き手の問いは、与件文のどんな記述が出たら、この論点だと気づけるのか、でした。講師が挙げたのは、次の4つの記述です。
- 複数の拠点や部門に、技術やノウハウが分散している:組み合わせて価値を生む余地があるサインです。
- せっかくの技術が、製品開発に活かせていない:研究開発と製品化のつなぎが課題になっているサインです。
- 他社も同等品を出して価格競争になっている、値下げ圧力が強い:差別化がすり減っていく現象のサインです。
- 顧客にとっての価値が頭打ちになっている:これも、差別化がすり減っていく現象のサインとして読めます。
分散している、というのは、たとえば本社の技術と、別の拠点の技術がバラバラに存在している、みたいなイメージですか。
そうです。それから、せっかくの技術が製品開発に活かせていない、という記述も、研究開発と製品化のつなぎが課題になっているサインです。
技術はあるのに、製品に落とし込めていない、ということですね。
はい。一方で、他社も同等品を出して価格競争になっている、値下げ圧力が強い、という記述が出たら、差別化がすり減っていく現象のサインです。
顧客が価格しか見なくなった、機能が過剰で頭打ち、みたいな記述もありそうですね。
その通りです。それは、顧客にとっての価値が頭打ちになって、差別化がすり減っていく現象のサインとして読めます。
聞き手が「記述の種類がはっきり違うんですね」とまとめたように、前半2つと後半2つは、与件文に出る言葉の種類が違います。前半は「ある技術が活かされていない」話、後半は「競合に追いつかれて価値が薄れていく」話です。
| 与件文の記述 | 読み方 |
|---|---|
| 技術・ノウハウが | 組み合わせて価値を生む余地 |
| 技術が製品開発に | 研究開発と製品化のつなぎが課題 |
| 同等品・値下げ圧力 | 差別化がすり減る現象 |
| 顧客の価値が | 差別化がすり減る現象 |
講師は続けて、この2つを頭の中でどう整理するかを聞き手に尋ねます。聞き手は「1つ目は技術をどう活かすかの話、2つ目は技術が活きなくなっていく話」と答え、講師は「かなり近いです」と受けます。ここから、2つの柱を1本ずつ見ていきます。
柱1:分散した技術を組み合わせる
1つ目の柱は、複数の拠点で生まれた資源や技術を、あちこちで重ねて使うことで価値を生む、という発想です。講師は、競争力のある企業が、複数の拠点の研究開発の力を製品開発にまとめて活用する、という考え方が土台にあると説明します。
中小企業の場合、拠点というより、部門とか、外部の連携先、というイメージですか。
まさにそうです。拠点間という言葉を、部門間や連携先との間に読み替えて、分散した技術を組み合わせる発想として使えます。
中小企業での読み替え
- 拠点間 → 部門間、または連携先との間
- 分散した技術を組み合わせる発想として使う
具体例を求められた講師は、こんな会社を挙げます。加工部門が持つ精密加工の技術と、開発部門が持つ素材の知識があるのに、それぞれ別々にしか使われていない。この2つを組み合わせて一つの新製品にまとめたら、どうなるか。
単独の技術では出せなかった価値が、組み合わせることで生まれそうです。
その通りです。これがシナジーの発想です。
講師は、考える手順も示しています。分散している技術をまず洗い出して、どう組み合わせれば新しい価値になるかを考える。「技術がある」で終わらせず、何と組み合わせられるかまで考える、という順番です(聞き手の言葉では「技術がある、で終わらせずに、何と組み合わせられるかまで考える」)。
さらに講師は、一箇所にまとめて終わりではない、と言います。複数の部門や連携先の技術を多重に使い回す発想なので、一度の組み合わせで終わらせず、他の製品や事業にも展開できないかまで考えると、答案の視野が広がるそうです。
一つの組み合わせを、他の場面にも横展開できないか考えるんですね。
そうです。では、もう一つの柱、差別化がすり減っていく現象について見ていきましょう。
柱2:差別化がすり減っていく現象
2つ目の柱です。講師の説明では、これは、参入する企業が増えて差別化が難しくなり、価格競争の結果、利益を出せないほど価格が下がってしまう現象です。
なぜそんなことが起きるんですか。
要因は三つあります。製品の構造が誰でも組み立てられるような仕組みになってしまうこと、部品や中間の材料が広く市場で調達できるようになること、そして顧客にとっての価値が頭打ちになってしまうことです。
| 見る点 | すり減るときの状態 |
|---|---|
| 製品の構造 | 誰でも組み立てられる仕組みになる |
| 部品・中間材料 | 広く市場で調達できるようになる |
| 顧客にとっての価値 | 頭打ちになる |
3つ目の「価値の頭打ち」について、聞き手は「機能を高めすぎることも関係あるんですか」と質問します。講師は「鋭いですね」と言い、こう説明します。機能を高めれば差別化できる、と思いがちですが、顧客がそれ以上の機能を求めていなければ、機能を上げても価値としては伝わらず、結局は価格でしか比較されなくなってしまうのです。
高機能化を目指したつもりが、逆にすり減りを早めてしまうこともあるんですね。
そうなんです。だからこそ、機能を高めるという発想だけでなく、顧客が価値を感じる別の軸に差別化を移していく、という発想が必要になります。
図の下段の3つ(用途の提案、サービスとの組み合わせ、顧客との関係性)は、このあと答案への落とし込みで講師が挙げる、新しい差別化の軸です。
答案への落とし込み
聞き手が「実際の答案にどう落とし込むか」を尋ね、講師は2つの柱をそれぞれ型にして示します。
柱1の型は、分散している技術やノウハウを、部門や連携先をまたいで組み合わせ、独自の価値ある製品開発につなげる、というものです。講師は、これを「技術という強みを、機会に結びつける」骨格だと説明します。
柱2の型は、差別化がすり減る前に、機能を高める以外の軸へ移す、という助言です。講師は「前に」を3つ並べています。
- 構造が誰でも組み立てられるようになる前
- 部品が市場で調達できるようになる前
- 価値が頭打ちになる前
この3つの「前」に、用途の提案、サービスとの組み合わせ、顧客との関係性といった、新しい差別化の軸へ移していく、という型で助言します。
二つ目の柱では、差別化がすり減る前に、機能を高める以外の軸に移す、ということを書けばいいんですか。
その通りです。構造が誰でも組み立てられるようになる前、部品が市場で調達できるようになる前、価値が頭打ちになる前に、新しい差別化の軸へ移していきます。
技術の強みを活かす話と、差別化を守る話、両方とも強みを機会につなげる、という骨格は共通なんですね。
そうです。では次に、この論点でよくやってしまう間違いを見ていきましょう。
答案の骨格(動画の説明の整理)
- 柱1:部門・連携先をまたいで組み合わせ、独自の価値ある製品開発へ
- 柱2:すり減る前に、機能以外の軸(用途・サービス・関係性)へ
- 共通:強みを機会に結びつける
よくある間違い3つ
講師は、この論点でよくやってしまう間違いを3つ挙げます。
| 間違い | 足りないこと |
|---|---|
| 「技術力がある」で止める | 組み合わせて製品開発に活かす道筋 |
| 単なる価格競争と捉える | 3つの要因まで踏み込む |
| 差別化=機能を高めること | 機能過剰が招く価値の頭打ち |
1つ目は、技術力がある、で止めてしまい、拠点や部門をまたいで組み合わせて製品開発に活かす道筋を示さないことです。講師は「強みを挙げるだけでは助言になりません」と言います。
技術力がある、と書いて満足しちゃいけないんですね。
そうなんです。もう一つ、よくある間違いがあります。
2つ目は、差別化がすり減る現象を、単なる価格競争としか捉えず、構造の組み立てやすさ、部品の市場調達、価値の頭打ちという3つの要因まで踏み込まないことです。
価格競争、で終わらせずに、なぜ価格競争になったのかまで書くんですね。
はい。それから、もう一つの間違いがあります。
3つ目は、差別化とは機能を高めることだ、と短絡してしまうことです。機能過剰はむしろ、顧客にとっての価値の頭打ちを招いて、すり減りを早めてしまうことがあります。
高機能化が正解とは限らない、という視点は持っておかないといけないですね。
その通りです。では最後に、本番でこの論点を使うときのポイントをまとめておきましょう。
本番で使うときのポイント
講師が最後にまとめた、本番での見極め方です。
本番で確認すること(動画のまとめから)
- 技術やノウハウが分散している、活かせていない、という記述 → 組み合わせの発想
- 他社と同等品になり価格競争になっている、という記述 → 差別化がすり減る現象
- 「技術力がある」で止めず、何と組み合わせるか、どう差別化を守るかまで書く
技術力がある、で止めずに、何と組み合わせるか、どう差別化を守るかまで書くんですね。
その通りです。強みを機会に結びつけて、差別化を絶えず更新していく、という視点を持てれば、この論点は本番で確実に武器になります。
まとめ
動画の整理
- 技術という強みは、持っているだけでは答案にならない。組み合わせて製品につなげるところまで書く
- 出方は、技術の活かし方、価格競争からの脱出、差別化の維持。活かす視点とすり減りに抗う視点の両方で語る
- 与件文のサインは4つ。技術の分散、技術が製品開発に活かせていない、同等品・値下げ圧力、顧客の価値の頭打ち
- 柱1は、部門や連携先をまたいで組み合わせ、さらに他の製品・事業へ展開できないかまで考える
- 柱2は、構造・部品調達・価値の頭打ちという3つの要因を踏まえ、すり減る前に機能以外の軸へ移す
- 間違いは3つ。「技術力がある」で止める、価格競争としか捉えない、差別化を機能向上と短絡する
動画の締めの言葉は、強みを機会に結びつけて、差別化を絶えず更新していく、という視点でした。技術があるだけでは答案は終わりません。与件文の記述から、組み合わせるのか、すり減りに抗うのかを見極め、強みを機会に結びつけるところまで書き切る。この流れを持っておけば、技術力と価格競争のどちらの聞き方でも、答案の軸がぶれません。
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