組織・人事 まとまりを成果に変える集団の見立て方
事例Ⅰ 第36回
「チームの一体感を高めましょう、という助言、なんとなく良さそうに聞こえて、実は危ない答案になることがあるんです」。動画は、講師のこんな一言から始まります。まとまりを高めるのは、条件次第で逆効果になることもある。このページでは、与件文のサイン、まとまりと目標の一致度で考える4つのパターン、答案の組み立て順、よくある誤答、字数配分を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「一体感を高めましょう」は、実は危ない助言?
動画は、講師のこんな一言から始まります。「チームの一体感を高めましょう、という助言、なんとなく良さそうに聞こえて、実は危ない答案になることがあるんです」。聞き手は「まとまりを高めるのって、いいことじゃないんですか」と驚きますが、講師は、条件次第では逆効果になることもある、と答えます。
この話は、知識としては知っていても、二次でどう使うか整理できている人が少ない論点だそうです。聞き手も、集団の力学を扱うグループ
- チームの生産性を高めるにはどうすべきか
- まとまりのある職場をどうつくるか
- 小集団活動を成果につなげるには
聞き手が「小集団活動って、QCサークルみたいなやつですか」と確かめると、講師は「そうです」と答えます。こうした設問で差がつくのは、とにかくまとめれば良いという単純な発想ではなく、何のためにまとめるのか、つまり目標の方向づけとセットで語れるかどうかです。
目標の方向づけ、ですか。まとまってさえいれば十分だと思ってました。
そこが最大の落とし穴です。まとまりは、何のためにまとめるのかという目標とセットで語って、はじめて答案になります。
このページでは、与件文のサイン、整理のための2つの軸、答案への落とし込み、よくある誤答、字数配分の順に、動画の流れにそってまとめます。
与件文に出るサイン4つ
講師は、この論点を使うサインが与件文にいくつか出てくる、と言います。動画で挙がったのは次の4種類の記述です。
- 職場がバラバラ:一体感がない、協力し合わない、という記述です。聞き手も「まとまってないってことですよね」とすぐ分かるものです。
- 仲は良いが業績につながらない:内向きで馴れ合っている、という記述です。講師が「もっと注意してほしい」と強調したのがこれです。
- 小集団活動・QCサークル:活動がある、あるいは導入したい、という記述です。講師は、まとまりと目標の一致をどう両立させるかという論点そのものだと言います。
- 目標が共有されていない:組織目標との一致度が低いというサインとして読みます。
1つ目は「まとまりが足りない」記述ですが、2つ目は「まとまりはあるのに問題がある」記述です。講師の言葉でいえば、まとまってはいるけれど、そのまとまりが会社の目指す方向とずれている、というサインです。
あ、それ、まとまってるのに問題があるパターンですよね。
その通りです。まとまってはいるけれど、そのまとまりが会社の目指す方向とずれている、というサインなんです。
仲がいいだけじゃダメってことですね。
そうです。仲の良さだけを見て安心してしまうと、この論点を取り逃がします。
ここまでのサインを踏まえて、頭の中でどう整理すればいいか。講師に問われて、聞き手は「まとまってるかどうかだけじゃなくて、もう一つ軸が必要な気がします」と答えます。講師は「いい勘です」と受けて、整理の軸を示します。
整理の軸は2つ:まとまり×目標の一致度
整理の軸は2つです。1つ目は集団のまとまりの高低。2つ目はその集団の目標が組織の目標とどれくらい一致しているか。この2つの掛け合わせで考えると、4つのパターンができます。
1つ目は、まとまりが高く、目標も一致している場合。生産性は大幅に上昇します。これが最も望ましい状態です。2つ目は、まとまりが高いのに目標が不一致の場合。講師はこれを一番危険なパターンだと言います。まとまりが組織と逆方向に働いて、生産性はむしろ低下します。
え、まとまってるのに一番危ないんですか。
はい。仲間内の結束が強いほど、その方向が間違っていたときの悪影響も大きくなるんです。
3つ目は、まとまりが低くて目標は一致している場合。生産性は幾分上昇する程度にとどまります。聞き手は「一致してても、まとまってないと効果は限定的なんですね」と確認します。4つ目は、まとまりも低く目標も不一致の場合で、生産性に目立った影響はありません。
| まとまり | 目標 | 生産性 |
|---|---|---|
| 高い | 一致 | 大幅に上昇 |
| 高い | 不一致 | むしろ低下(最も危険) |
| 低い | 一致 | 幾分上昇する程度 |
| 低い | 不一致 | 目立った影響なし |
この表から言えること
- まとまりは、それ自体が善でも悪でもない
- 目標の方向づけがあって、はじめてプラスに働く
- まとまりが高いほど、不一致のときの悪影響も大きい
講師の言い方では、まとまりというのはそれ自体が善でも悪でもなく、目標の方向づけがあって初めてプラスに働くものです。冒頭の「一体感を高めましょう」が危ない助言になりうるのは、この右上のマスを考えていないからです。
「仲が良い」の記述だけで飛びつかない
ここで聞き手が具体的な場面を持ち出します。現場のチームがすごく仲良くて、休憩時間もいつも一緒、という職場があったとして、それだけでどう判断するのか。講師の答えは明快で、それだけでは判断できません。
そのチームの目標が、会社の求める品質向上や効率化と同じ方向を向いているかどうかを、与件文の別の記述と突き合わせて見る必要があります。聞き手が「仲の良さの記述だけで飛びついちゃダメってことですね」とまとめ、講師は「その通りです」と応じます。
もし、内輪の楽さを優先してしまっている、というような記述が近くにあれば、それは危険な組み合わせだと読み解けます。逆に、会社の求める方向と合っていれば、先ほどの表の左上、望ましい組み合わせです。同じ「仲が良い」でも、近くの記述しだいで評価が変わります。
仲の良さの記述が出たら、まずその近くに、目標の向きが分かる記述がないか探す、ということですか。
そのとおりです。与件文の別の記述と突き合わせる、というのがポイントです。
小集団活動・QCサークルの記述はどう読む?
聞き手の次の質問は、小集団活動やQCサークルの記述が出てきたとき、導入したい、と書いてあれば、それだけでプラスに評価していいのか、というものでした。講師は、そこも同じ考え方が使えると答えます。
小集団活動そのものは、まとまりを高める仕組みです。しかし、その活動の目標が、品質向上や効率化など、組織が求める方向と一致しているかを必ず確認してください、というのが講師の指示です。
活動を始めること自体が目的化していないか、ということですね。
そうです。もし与件文に、活動はしているが成果に結びついていない、というニュアンスがあれば、それはまとまりだけが先行して、目標との一致が弱い状態だと読めます。
つまり、小集団活動の記述は、「ある」「導入したい」の一言で加点材料として使うのではなく、活動の目標が組織の求める方向と合っているか、成果に結びついているか、をあわせて読む対象です。成果に結びついていないニュアンスがあれば、表でいう右上寄りの状態です。
答案の型:目標の方向づけが先、まとまりはあと
整理ができたら、解答にどう落とし込むか。聞き手の問いに、講師は型を示します。まず組織目標と方向をそろえたうえで、集団のまとまりを高めて生産性につなげる、という順番で助言を組み立てる、というものです。
順番が大事なんですね。まとまりを高める話を先に書いちゃダメなんですか。
先に書いてしまうと、目標のずれを放置したままの助言に見えてしまいます。仲は良いのに成果が出ない職場なら、目標の共有や方向づけを先に出す。
では、バラバラな職場の場合はどうか。講師は、目標の共有と、まとまりを高める施策の両方を出す必要があると答えます。
| 与件文の様子 | 書くこと |
|---|---|
| 仲は良いのに成果が出ない | 目標の共有・方向づけを先に出す |
| 職場がバラバラ | 目標の共有と、まとまりを高める施策の両方 |
なお、まとまりを高める具体的な方法については、別の論点として押さえておくべきものだと講師は言います。聞き手は「この論点だけで完結させず、次の一手につなげる意識が必要なんですね」と受け取り、講師は「その通りです」と応じています。
よくある誤答3つと、混同を防ぐ書き方
続けて、講師はよくある誤答を3つ挙げます。
- まとまりを高めれば生産性が上がる、と単純化する:目標との一致度という条件を落としてしまうパターンです。聞き手は「仲がいいだけで飛びついちゃうパターンですね」と受けています。
- まとまりが高いことを、常に良いことだと決めつける:不一致の場合が最も危険だという視点が抜け落ちてしまいます。
- 集団のまとめ方そのものと、何のためにまとめるのかという目標一致の話を混同する:講師は、この2つは別の階層の話だと意識してほしいと言います。
| 誤答 | 抜け落ちるもの |
|---|---|
| まとまれば生産性が上がる | 目標との一致度という条件 |
| まとまりは常に良い | 不一致が最も危険という視点 |
| まとめ方と目標一致を混同 | 2つが別の階層という区別 |
まとまりが高い、と書いてあるだけで安心しちゃいけないんですね。
そうです。まとまりが高いと書いてあったら、その向きを必ず確かめてください。
混同を防ぐ方法として、講師が勧めるのは順序を守ることです。一文目で目標の方向づけについて触れ、二文目以降でまとまりを高める話に進む。これだけでも、混同はかなり防げます。聞き手は「順番を意識するだけで、答案の説得力が変わりそうですね」と言います。
もう一つ、講師の補足があります。まとまりを高める具体的な方法自体は、この論点の中で詳しく書く必要はありません。あくまで、目標との掛け合わせで生産性が決まるという見方までを押さえてください、ということです。
見方と手段は役割が違うから、分けて覚えておくべきなんですね。
そうです。この見方を持たずにいきなり手段だけ並べてしまうと、目標とずれた手段を選んでしまう危険があります。順番としては、必ずこの掛け合わせの見方が先に来ると覚えておいてください。
字数配分:どちらの弱さが色濃いかで決める
聞き手は最後に、字数配分で気をつけることを尋ねます。目標の話とまとまりの話のどちらを厚く書けばいいのか、迷いそうだというのです。
講師の答えは、基本は事例がどちらの弱さを強調しているかで配分を変える、というものです。目標のずれが色濃く書かれているなら、目標の方向づけを厚く。まとまり自体の弱さが色濃いなら、まとまりを高める部分を厚く書きます。
与件文のどちらの記述が多いかで、力の入れどころを決めるんですね。
その通りです。この配分の感覚まで身につけば、グループダイナミクスはただの知識ではなく、答案の設計図として使える論点になります。
ここでも順番のルールは変わりません。配分で厚みを変えても、目標の方向づけに触れる一文を先に置く、という型は崩さないでおきます。
まとめ:本番でのチェックポイント
動画の終わりに、講師は本番でのチェックポイントをまとめます。聞き手が最後の1つを言い添える形で、全部で4つです。
本番でのチェックポイント
- 仲が良い、まとまっている、という記述を見ても、それだけで良いと判断しない
- その集団の目標が組織の目標と同じ方向を向いているかを、必ず別の記述と突き合わせて確認する
- 答案は、目標の方向づけを先に、まとまりを高める話をあとにという順番で組み立てる
- まとまりが高い場合ほど、不一致だったときのリスクが大きいことを忘れない
動画で強調された点
- 整理の軸は「集団のまとまりの高低」×「組織目標との一致度」
- 最も危険なのは、まとまりが高いのに目標が不一致のパターン
- 小集団活動の記述は、活動の目標が組織の求める方向と一致しているかまで確認する
- まとまりを高める具体的な方法は別の論点。この論点では掛け合わせの見方までを押さえる
講師は、まとまりは諸刃の剣だという意識を持てれば、この論点は与件文を読む目そのものを変えてくれる、と言います。サインに気づき、目標の向きを別の記述と突き合わせ、方向づけを先に書く。そのうえで、与件文のどちらの弱さが色濃いかで字数を配分する。この流れを持っておけば、「一体感を高めましょう」の一言で終わる答案から、成果につながる助言へ進めます。
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