部門間の対立を協調で解く着眼点
事例Ⅰ 第33回
「コンフリクトという論点、1次知識としては馴染みがあると思うんですが、二次の答案では対立をどう解消するかまで、ちゃんと書けていますか」。動画はこんな問いかけから始まります。対立の指摘まではできても、解消法が「話し合いましょう」で止まってしまう。このページでは、対立は悪ではないという前提、与件文のサイン、原因と解消法の対応、設例、答案の型、誤答しやすいパターンを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
対立の「指摘」だけで終わっていませんか
動画は、事例Ⅰの組織・人事で問われるコンフリクト(対立)の論点を、「答案でどう書くか」という視点で整理していきます。講師が最初に投げかけるのは、こんな問いです。コンフリクトは1次知識としてはなじみがあるはずだが、二次の答案では、対立をどう解消するかまで、ちゃんと書けていますか。
聞き手の答えは正直です。対立が起きている、という指摘まではできる。でもその後、どう解消すればいいかとなると、「話し合いましょう」くらいしか書けない。講師は、それはすごくよく見る答案だと言います。原因の特定はできても、解消法が抽象的なまま止まってしまうのです。
聞き手はもうひとつ、自分の癖を打ち明けます。対立は基本的に悪いものだと思っていて、とにかく無くすべきだという前提で書いてしまう、というものです。
対立が起きている、という指摘まではできるんです。でもその後、どう解消すればいいかとなると、話し合いましょう、くらいしか書けなくて。
それ、すごくよく見る答案です。原因の特定はできても、解消法が抽象的なまま止まってしまう。
このページでは、動画の流れにそって、対立に対する基本の前提、出題のされ方、与件文のサイン、原因と解消法の対応、設例、答案の型、誤答しやすいパターンの順にまとめます。
対立は悪ではない:目指すのは「協調的な解消」
聞き手が「対立は無くすべきもの」と話したところで、講師は「そこ、実は誤解しやすいポイントなんですよ」と切り出します。対立は必ずしも悪ではありません。適度な緊張は、改善や革新を促す建設的な側面も持っているからです。
だからこの論点は、対立をゼロにすることではなく、協調的に解消することが目指す方向になります。
え、そうなんですか。組織の中で対立が起きているなら、それは問題だと思っていました。
適度な緊張は、改善や革新を促す建設的な側面も持っているんです。だからこの論点は、対立をゼロにすることではなく、協調的に解消することが目指す方向になります。
なるほど、ゼロにするのではなく、協調的に、というのが今日のキーワードになりそうですね。
そうです。
今日のキーワード
- 対立は必ずしも悪ではない(適度な緊張には建設的な側面がある)
- 目指すのは、対立をゼロにすることではなく協調的に解消すること
この前提は、動画の中で何度も戻ってきます。与件文のサインを拾うときも、解消法を書くときも、そして最後の誤答の話でも、「対立を悪と決めつけない」「協調的に」が軸になります。
二次ではどう聞かれるか
次に講師は、この論点が二次でどう出るかを整理します。多い聞かれ方は次のようなものです。
- 「部門間の対立をどう解消するか」
- 「機能別組織の縦割りをどう乗り越えるか」
- 「組織変革やM&A後の摩擦をどう和らげるか」
聞き手は「機能別組織やM&Aの論点と、セットで出てくることが多いんですね」と受け止めます。講師の答えは、その通りで、対立の原因を特定して、協調的に解決する助言を求められる、という点は共通している、というものでした。
機能別組織やM&Aの論点と、セットで出てくることが多いんですね。
はい。対立の原因を特定して、協調的に解決する助言を求められる、という点は共通しています。
つまり、組織構造やM&Aの設問だと思って読んでいても、求められているのは「対立の原因を見つけ、協調的な解消を助言する」ことかもしれません。設問の聞かれ方から、この論点の出番を見抜く姿勢が大切です。
与件文のサイン4つ
聞き手が次に知りたかったのは、与件文のどんな表現から、この論点だと気づけばいいのか、という点です。講師が挙げた着眼点は4つあります。
| 与件文の表現 | 疑うサイン |
|---|---|
| 部門間の対立・縦割り・セクショ | 集団間コンフリクト |
| 情報が共有されない・連携が悪い | コミュニ |
| 部門ごとに目標や利害が食い違う | 利害関係の対立や競合 |
| 組織が未成熟・新旧の対立 | 未熟な組織内関係 |
1つ目の「部門間の対立」「セクショナリズム」「縦割り」は、そのまま集団間コンフリクトのサインです。2つ目の「情報が共有されない」「連携が悪い」という記述は、コミュニケーション・ネットワークの不完全さを示します。3つ目の「部門ごとに目標や利害が食い違う」は、利害関係の対立や競合のサインです。4つ目の「組織が未成熟」「新旧の対立」は、未熟な組織内関係のサインになります。
セクショナリズムという言葉が出てきたら、すぐこの論点を思い出せばいいんですね。
そうです。次に「情報が共有されない」「連携が悪い」という記述。これはコミュニケーション・ネットワークの不完全さのサインです。
連携が悪い、くらいの表現でも拾っていいんですか。対立という言葉が出てこなくても。
はい、拾ってください。それから「部門ごとに目標や利害が食い違う」という記述は、利害関係の対立や競合のサインです。
目標そのものがバラバラになっている、というパターンですね。
そうです。そして「組織が未成熟」「新旧の対立」という記述は、未熟な組織内関係のサインです。
ここで大事なのは、「対立」という言葉が出てこなくても拾うことです。「連携が悪い」程度の表現でも、講師は拾ってくださいと言っています。与件文を読むときは、言葉の強さではなく、部門や集団の間で何が噛み合っていないのかに注目しましょう。
まず要因を3つで特定する
着眼点がそろったら、いよいよ整理の手順です。講師は「ここが核心です」と言って、まず要因を特定することを求めます。集団間コンフリクトの要因は3つです。
集団間コンフリクトの要因
- 不完全なコミュニケーション・ネットワーク
- 利害関係の対立や競合
- 未熟な組織内関係
聞き手は、さっきの与件文の着眼点と、そのまま対応していることに気づきます。講師もその通りだと答え、対応させて覚えておくと与件文から拾いやすくなる、と言います。整理すると次のとおりです。
- 「情報が共有されない」「連携が悪い」 → 不完全なコミュニケーション・ネットワーク
- 「部門ごとに目標や利害が食い違う」 → 利害関係の対立や競合
- 「組織が未成熟」「新旧の対立」 → 未熟な組織内関係
「部門間の対立」「縦割り」「セクショナリズム」は、その全体を指すサインです。この表現を見つけたら、次は原因がどの要因にあたるのかを、与件文の記述から探します。
原因に対応させて、協調的な解消法を当てはめる
要因を特定したら、もう一度、先ほどの前提に立ちます。コンフリクトは常に悪ではないという点です。そこを押さえたうえで、協調的な解消法を当てはめます。講師が挙げた解消法は3つです。
協調的な解消法
- コミュニケーション機会を増大させる
- 仲介者を設ける
- 人事交流を深める
原因と解消法を、ペアで整理するイメージですね。
まさにそのイメージです。原因を特定せずに解決策だけ並べる答案が多いので、必ず対応させて書いてください。
動画は、どの要因にどの解消法を1対1で当てるかまでは示していません。示しているのは、原因を特定したうえで、その原因に合う解消法を対応させて書くという姿勢です。具体的な当てはめ方は、次の設例で見てみましょう。
設例:営業部門と製造部門の納期対立
聞き手は、頭では分かるが、実際の与件文でどう表れるのかを具体的にイメージしたい、と言います。そこで講師が出したのが次の設例です。
講師の設例
営業部門と製造部門を抱える中堅メーカー。新商品の納期をめぐって、両部門が対立しています。営業部門は、顧客に約束した短納期を守りたい。製造部門は、品質を確保するために必要な工程を省略できない。それぞれの目標が最初から食い違っています。さらに、両部門の間で情報のやり取りが少なく、営業が受けた注文の詳細が、製造側に十分伝わっていません。
これはさっきの、利害関係の対立や競合、というパターンですね。
その通りです。さらに、両部門の間で情報のやり取りが少なく、営業が受けた注文の詳細が、製造側に十分伝わっていない、という記述もあったとしましょう。
それは、不完全なコミュニケーション・ネットワークですね。目標の食い違いと、情報共有の不足が、同時に起きているということですか。
まさにそこです。原因は一つとは限りません。
この設例のポイントは、原因が一つとは限らないことです。目標の対立(利害関係の対立や競合)と、コミュニケーション不足(不完全なコミュニケーション・ネットワーク)の両方を拾ったうえで、「コミュニケーションの機会を増やす」「両部門をつなぐ仲介者を置く」という二つの解消法を対応させて書く。講師はそう説明します。
原因が複数あれば、解消法も複数を組み合わせて書けばいいということですね。こういう具体例があると、与件文のどこを拾って、どう対応させるか、かなり見えてきます。
その通りです。
答案の基本の型
整理ができたところで、聞き手は「では実際の解答は、どういう型で書けばいいんでしょうか」と尋ねます。講師が示した基本の型は、原因の特定から具体策へという流れです。
まず、対立の原因を特定します。情報共有の不足なのか、目標や利害の食い違いなのか、関係の未成熟なのか。そのうえで、コミュニケーションの場をつくり、仲介や調整役を置き、人事交流、いわゆるローテーションで相互理解を深める、という流れで書きます。
原因の特定から始めて、具体策につなげるんですね。
はい。さらに余裕があれば、部門を束ねる共通の上位目標を掲げて、部分最適から全体最適へ向かわせる、という要素を加えてもいいです。
講師は「組織を活性化して、全体最適に導く、という骨格で書けば筋の通った解答になります」と言います。ここでの「上位目標」は、基本の型の後ろに余裕があれば足す要素という位置づけです。
上位目標:部分最適から全体最適へ
聞き手は「上位目標という言葉、初めて聞くと難しそうですが、要は各部門がバラバラに見ている目標を、一つにまとめ直すということですね」と言い換えます。講師は「その理解で大丈夫です」と応じました。
設例で言えば、どうなるのか。聞き手の問いに、講師はこう答えます。たとえば、部門を超えて「顧客満足度の高い商品を、約束通りの品質で届ける」といった、両部門が共有できる目標を掲げる、というイメージです。
納期を守りたい営業と、品質を守りたい製造、それぞれの主張の上に、両方を包み込む目標を置く、ということですね。
そうです。部分最適だけを見ていると、営業と製造はどこまでも対立し続けます。でも両部門が同じ上位目標を見るようになれば、対立ではなく協力の関係に変わっていく可能性があります。
対立の構図そのものを、視点を変えることで組み替えるイメージですね。
部門ごとに自分の目標だけを見ている状態が部分最適です。部門を束ねる共通の目標を置くと、全体として良い状態を目指す全体最適に向かいます。営業は納期、製造は品質、とそれぞれの主張を残したまま、その上に共通の目標を置くのがポイントです。
誤答しやすい4パターン
最後に、聞き手は混同や誤答しやすいポイントを尋ねます。講師が挙げたのは4つです。
1つ目は、コンフリクトをすべて排除すべき悪と短絡してしまうパターンです。機能的で建設的な側面を無視してしまいます。聞き手は「私が最初にはまっていたパターンですね」と返しています。
2つ目は、解消法を「話し合う」など抽象的に述べるだけで、仲介者や人事交流、上位目標といった具体策に落とし込まないパターンです。聞き手は「これも耳が痛いです」と返しています。
3つ目は、対立の原因を特定せずに、解決策だけを並べてしまうパターンです。原因と解消法が対応していないと、説得力のある答案になりません。
4つ目は、力で抑え込む、回避や強制だけの解決にしてしまい、協調的な解消に向かわないパターンです。いわゆるウィンウィンの解消を目指す必要があります。
なるほど、無理やり収めるのではなく、双方が納得する形を目指す、ということですね。
力で抑え込む解決は、その場では対立が収まったように見えても、不満がくすぶり続けて、また別の形で表面化しやすいんです。だからこそ協調的な解消が求められます。
表面上おさまっているだけで、根本は解決していない、ということですね。答案で「解決した」と書いても、それが力ずくの解決なら評価されにくそうです。
| 誤りのパターン | 書くべきこと |
|---|---|
| 対立を悪と決めつける | 建設的な側面も踏まえる |
| 「話し合う」だけ | 仲介者・人事交流・上位目標 |
| 原因なしで解決策だけ | 原因と解消法を対応させる |
| 力で抑える・回避・強制 | 双方が納得する協調的解消 |
答案を書く前の確認
- 対立を「ゼロにする」前提で書いていないか
- 原因を3つの視点(コミュニケーション・利害・組織内関係)で特定したか
- 解消法が「話し合う」だけで終わらず、具体策になっているか
- 原因と解消法が対応しているか。力ずくの解決になっていないか
まとめ
動画の整理
- 対立は悪ではない。適度な緊張には建設的な側面があり、目指すのは協調的な解消
- 出題は「部門間の対立の解消」「縦割りの克服」「組織変革やM&A後の摩擦」など。機能別組織やM&Aの論点とセットで出ることが多い
- 与件文のサインは4つ:部門間の対立・縦割り・セクショナリズム/情報が共有されない・連携が悪い/目標や利害の食い違い/組織が未成熟・新旧の対立
- 要因は3つ:不完全なコミュニケーション・ネットワーク、利害関係の対立や競合、未熟な組織内関係
- 解消法は3つ:コミュニケーション機会の増大、仲介者を設ける、人事交流を深める。さらに余裕があれば共通の上位目標で部分最適から全体最適へ
- 誤答は4つ:悪と短絡する/抽象的な「話し合う」/原因なしで解決策だけ/力で抑え込む・回避や強制だけ
動画の最後に、講師は「対立は悪ではないという前提に立ち、原因を三つの視点で特定し、コミュニケーション、仲介者、人事交流、上位目標という協調的な解消法を対応させて書く。これができれば、部門間対立や組織変革の設問で、一段深い答案が書けるようになります」とまとめます。
聞き手は「対立をゼロにしようとするのではなく、協調的にマネジメントする、という視点を持ち帰ります」と話し、今日の整理を次の演習ですぐ試してみると締めくくりました。対立を見つけたら、原因を特定して、原因に合う協調的な解消法まで書く。その流れを、次の演習から試してみてください。
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