部門と階層をつなぐ連結ピンの活かし方
事例Ⅰ 第37回
「中間管理職の役割を問われる問題、知識はあるのに本番だと手が止まる人、多いんですよね」。動画は、講師のこんな一言から始まります。このページでは動画の流れにそって、連結ピンが問われる設問の聞かれ方、縦と横のどちらが切れているかを示す与件文のサイン、重複集団型組織での整理、結節点として位置づける解答の型と施策、よくある誤答、リーダーシップの論点との書き分けをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、本番で手が止まる
動画は、講師のこんな一言から始まります。「中間管理職の役割を問われる問題、知識はあるのに本番だと手が止まる人、多いんですよね」。聞き手はすぐに「それ私です」と応じます。管理者の役割は一次試験で散々やったので、言葉は出てくる。けれど二次でいざ与件文を読むと、どこでその知識を使えばいいのか分からなくなる、というのです。
今回の主役は連結ピンです。講師は、特に連結ピンという見方は、知ってはいても二次の答案に落とし込めない人が本当に多い、と話します。聞き手も、意味は分かっているつもりだと言います。ただ、それは「管理者が上と下をつなぐ話」くらいの理解で、二次の設問の中でどう使えばいいのかが分からない。
連結ピンって、意味は分かってるつもりなんです。管理者が上と下をつなぐ、みたいな話ですよね。でも二次の設問の中でどう使えばいいのか、そこが分からなくて。
いい着眼点です。連結ピンは、組織の見え方そのものを変える視点なんです。
講師によると、二次の事例では、部門間や階層間の連携がテーマになる設問があります。そこでこの視点が使えるかどうかで、答案の質が変わります。このページでは動画の流れにそってまとめます。
どんな聞かれ方をするのか
聞き手が「具体的にはどんな聞かれ方をするんですか」と尋ねると、講師は次のような問われ方を挙げます。
- 部門間の連携を高めるにはどうすべきか
- 中間管理職に求められる役割は何か
- トップの方針が現場に伝わらない、現場の声が上に届かない、といった状況の改善策
どれも、部門間や階層間の連携がテーマになっている設問です。ここで聞き手は、少し意外な反応を見せます。
あ、それ、単に伝達がうまくいってないだけの話かと思ってました。
そこがまさに落とし穴です。管理者を単なる指示の伝え役として書いてしまうと、この論点の本質を外してしまうんです。
聞き手が最初に思い浮かべたのは「伝達がうまくいっていない」という見方でした。講師はこれを落とし穴と呼びます。管理者を指示の伝え役として書くと、本質を外してしまう。この誤りは、あとで誤答の一つとして整理します。では、どんな記述を見たら連結ピンの出番だと気づけるのか。まずは与件文のサインです。
与件文のサイン:縦が切れているか、横が切れているか
聞き手は「与件文のどこを見たら連結ピンの出番だって気づけるんですか」と聞きます。講師の答えは、サインがいくつかある、というものです。大きくは、縦のつながりが切れているサインと、横のつながりが切れているサインに分かれます。
- ① 縦の連結が弱いサイン:トップの方針が現場に浸透しない、現場の情報が経営層に上がってこない、という記述。聞き手はこれを「階層間のつながりが切れてるってことですね」と受け止めました。
- ② 横の連結が弱いサイン:部門間の連携が乏しい、
セクショ ナリズムがある、という記述。聞き手が「セクショナリズムって聞いたら、もう連結ピンが弱いって思っていいんですか」と確かめると、講師は「はい、それくらい強いサインです」と答えます。 - ③ 連結ピン役そのものが不在のサイン:中間管理職が育っていない、管理者がプレイヤー化している、という記述。聞き手が「管理者が自分の実務に追われて、つなぐ役割を果たせてない状態ってことですか」と言い換え、講師は「その通りです」と認めます。
- ④ つなぐ役割が機能していないサイン:意思決定が遅い、現場感覚とずれている、という記述も、講師はこう読めると言います。
サインが結構たくさんあるんですね。全部覚えるのは大変そうです。
覚え方としては、縦が切れているか、横が切れているか、その両方を疑う癖をつければ十分です。
サインを一つずつ暗記するのではなく、縦か横か、その両方かを疑う。この癖が、次の整理につながります。
重複集団型組織で整理する
サインを見つけたあと、頭の中でどう整理すればいいのか。講師が問いかけると、聞き手は「組織図を描いて、どこがつながってないかを探す、みたいな感じですか」と答えました。講師は「近いです」と応じ、組織の捉え方を示します。
組織を、上位の集団と下位の集団、それから左右の部門の集団が重なり合ってできているものとして捉える。これを重複集団型
そして各集団の管理者や監督者は、自分の所属する集団と、その一つ上の集団の両方に同時に所属しています。この二重の所属こそが、二つの集団をつなぐ結び目になる、と講師は説明します。
つまり管理者一人が、二つの輪の重なるところに立ってる、みたいなイメージですか。
まさにそのイメージです。この結び目を通じて、上位の意図が下位に伝わり、下位の情報が上位に伝わる。しかもそれは一方通行ではなく、双方向に流れることが大事なんです。
双方向っていうのがポイントなんですね。上から下だけじゃなくて。
そうです。この双方向の流れがあることで、意思決定の質とスピードの両方が上がります。
連結ピンの考え方(動画の整理)
- 組織は、上位・下位・左右の集団が重なり合ってできている(重複集団型
組織) - 管理者は、自分の集団と一つ上の集団に同時に所属する。その二重の所属が結び目
- 上位の意図も下位の情報も、双方向に流れることが大事
- 双方向の流れで、意思決定の質とスピードの両方が上がる
- 事例を読むときの最初の作業は、縦で切れているか、横か、両方かを見極めること
仮の例で見る:課長同士が集まらない工場
ここまで聞いて、聞き手は「頭では分かった気がするんですけど、実際の事例だとどう見えるのか、まだイメージがぼんやりしてます」と打ち明けます。講師は、あくまで仮の設定として、こんな会社を考えます。工場の課長たちは現場をよくまとめているけれど、課長同士が集まって話す場がほとんどない。
あ、それだと横の連結が弱そうですね。課長同士がつながってないってことですよね。
そうです。この場合、各課長は自分の課の中では管理者として機能していても、課をまたいだ集団の一員としては機能していない、という状態になります。
なるほど、同じ管理者でも、下の集団に対する顔と、横の集団に対する顔と、二つあるってことですね。
その理解でばっちりです。
講師は、この仮の例のように、片方の顔だけがうまく機能していないケースは、二次の事例でも起こりやすい構図だと言います。
解答の型:中間管理職を結節点として位置づける
見極めたら、その次はどうするのか。聞き手の問いに、講師は「ここで解答の型が決まります」と答えます。
解答の型(動画の説明)
中間管理職を、上位の方針と現場をつなぐ結節点として位置づけ、双方向の情報連携と意思決定への参加を促す。
結節点、っていう言葉を使うんですね。
はい。この言葉が入るだけで、単なる伝達役ではなく、つなぐ機能そのものを強化しようとしていることが答案から伝わります。
この型には、3つの要素が入っています。中間管理職を結節点として位置づけること、双方向の情報連携を促すこと、意思決定への参加を促すこと。
施策は、切れている箇所に合わせて選ぶ
聞き手が「具体的な施策としては、どんなものを書けばいいんですか」と尋ねると、講師は、事例が縦で切れているか横で切れているかで施策を選ぶ、と答えます。動画で挙がった施策を表にまとめます。
| 切れている箇所 | 書ける施策 |
|---|---|
| 縦 | 管理者の権限・役割を明確にする |
| 縦 | 階層をまたぐ会議体・情報共有の場を作る |
| 横 | 部門をまたぐ会議体・情報共有の場を作る |
| 縦横どちらも | 管理者自身を育成する |
講師は、管理者自身の育成は、縦横どちらの弱さに対しても有効な打ち手として書ける、と話します。
縦と横で、少しずつ施策の中身を変えるってことですね。
その通りです。事例の切れている箇所に合わせて、施策を選んで書くことが大事です。
よくある誤答3つ
施策の話が終わると、講師は「ここでよくある誤答を挙げておきましょう」と切り出します。3つあります。
1つ目は、連結ピンを単なる情報の伝達役と捉えてしまうことです。意思決定への参加や双方向性という視点を落としてしまうパターンです。
それ、さっき私が言いかけたやつですね。
そうです。伝えるだけでは連結ピンとは言えません。上下双方の意思決定に関わる存在として書くことが必要です。
2つ目は、縦の階層間だけを見て横の部門間の連結を落とす、あるいはその逆です。片方だけに気を取られると、事例が求めているもう一方の弱さを見落としてしまいます。
縦横両方をセットで確認する癖をつけないといけないですね。
はい。
3つ目は、組織構造そのものの話に流れることです。機能別組織や事業部制の話に流れてしまい、つなぐ人という人の役割の論点であることを見失うパターンです。
構造の話と人の役割の話、混同しやすそうです。
そうなんです。連結ピンはあくまで、人がどう機能するかという論点です。組織の形の話にすり替わっていないか、答案を書き終えたあとに確認する習慣をつけてください。
| 誤答 | 落ちるもの | 直し方 |
|---|---|---|
| 伝達役に矮 | 双方向・意思決定 | 参加と双方向を書く |
| 縦だけ・横だけ | もう一方の弱さ | 縦横をセットで確認 |
| 構造の話に流れる | 人の役割の論点 | 書き終えて確認 |
リーダーシップの論点との関係と、書き分け
聞き手が「この論点って、他の論点ともつながりがあるんですか」と聞くと、講師は「あります」と答えます。連結ピンは、集団の中でリーダーシップがどう発揮されるかという、集団的な意思決定の考え方と直結している。管理者が結節点として機能するからこそ、集団としての意思決定が成り立つ、という関係です。
なるほど、単独の論点というより、組織全体の見方の一つなんですね。
その通りです。
最後に、聞き手は「連結ピンの施策を書くときって、リーダーシップの論点と混ぜて書いてもいいんですか」と確認します。講師の答えは、混ぜて悪いわけではないが、主語をはっきりさせて書き分けることが大切、というものでした。設問が求めているのが結節点としての機能なのか、集団としての意思決定の進め方なのかを見て、書く中身を決めます。
| 設問が求めるもの | 書くこと |
|---|---|
| 結節点としての機能 | 切れている箇所とつなぐ施策 |
| 集団の意思決定の進め方 | リーダーシップと集団的な意思決定 |
| 両方 | 主語を分けて両方書く |
つまり、つながりを作る話と、つながった集団がどう決めるかという話は、一応別物として整理しておくべきなんですね。
そうです。両方が問われている設問なら両方書いていいですが、どちらか一方しか問われていないのに両方詰め込むと、字数配分が崩れて論点がぼやけてしまいます。設問の要求に合わせて、必要な分だけ結節点の話を厚くする、という意識を持ってください。
本番でのチェックポイント
動画の終わりに、講師は本番でこの論点を使うときのチェックポイントを4つにまとめます。
講師が挙げたチェックポイント
- 方針が伝わらない、情報が上がらない、
セクショ ナリズム、管理者の プレイヤー化。こうした記述を見たら連結ピンを疑う - 縦で切れているか、横で切れているか、あるいは両方かを見極める
- 中間管理職を結節点として位置づけ、双方向の情報連携と意思決定への参加を促す、という型で解答を組み立てる
- 伝達役への矮
小化と、縦横どちらか一方だけの視点。この二つの誤答を避ける
知識としては知っていたつもりでしたけど、こうやって使い方まで整理すると、与件文を読んだときの反応の仕方が全然違いますね。
与件文の一文を見た瞬間に、縦か横か、どっちが切れているかを反射的に考えられるようになれば、この論点はもう本番で武器になります。
なお、講師が誤答として挙げたもう一つ、組織構造の話に流れてしまうことも、書き終えたあとの確認項目として覚えておくと安心です。
まとめ
動画の整理
- 連結ピンは、知っていても二次の答案に落とし込めない人が多い論点。部門間・階層間の連携がテーマの設問で使える
- 問われ方は、部門間の連携を高める方法、中間管理職の役割、方針が伝わらない・声が上に届かない状況の改善策。管理者を単なる伝え役として書くのは落とし穴
- サインは、縦が切れている記述、横が切れている記述(
セクショ ナリズムなど)、管理者の プレイヤー化、意思決定の遅さ・現場感覚とのずれ - 組織は重複集団型
組織として捉える。管理者は二つの集団に同時に所属する結び目で、情報は双方向に流れる - 解答の型は、中間管理職を結節点として位置づけ、双方向の情報連携と意思決定への参加を促すこと。施策は縦・横の切れ方に合わせて選ぶ
- 誤答は、伝達役への矮
小化、縦横どちらか一方だけ、組織構造の話への流れ。リーダーシップの論点とは主語を分けて書く
動画の最後に、聞き手は「与件文を読んだときの反応の仕方が全然違いますね」と話しています。連結ピンという言葉を知っていることと、与件文の一文から縦か横かを考えられることは別です。サインに気づき、切れている箇所を見極め、結節点の型で施策まで書く。この流れを持っておけば、中間管理職の役割を問われる設問でも、手が止まらなくなるはずです。
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