士気と生産性を同時に上げるリーダーの関わり方
事例Ⅰ 第40回
「ワンマン経営で現場が指示待ちになっている会社を立て直すとき、社長にどんなリーダーシップを求めればいいか、すぐに言葉にできますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文のサイン、支持的関係・集団的意思決定・高い業績目標の3つの原則、土台の有無による解答の中心の変え方、答案の型、やりがちな誤答をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「優しく接する」では答えにならない
動画は、こんな問いかけから始まります。ワンマン経営で現場が指示待ちになっている会社を立て直すとき、社長にどんなリーダーシップを求めればいいか、すぐに言葉にできますか。聞き手は、優しく接するとか、話をよく聞くとか、なんとなく人柄の話になってしまって、うまく答えられないと正直に打ち明けます。
講師によると、リーダーシップというと性格やカリスマの話だと思われがちですが、二次試験ではもっと構造的に問われます。構造的とは、部下との関わり方を、いくつかの要素に分けて設計するという発想です。今日扱うのは、その中でも参加型のリーダーシップの考え方です。
構造的、というのは、どういうことですか。
部下との関わり方を、いくつかの要素に分けて設計する、という発想です。人柄の話ではなく、関わり方の設計として書く、ということですね。
このページでは、問われ方、与件文のサイン、3つの原則、積み上げの順番、答案の型、やりがちな誤答の順に、動画の流れにそってまとめます。
士気と生産性を「同時に」上げる
聞き手は、与件文だとどんな聞かれ方をするのかを尋ねます。講師が挙げたのは、次のような聞かれ方です。
- 後継者や新任の管理者は、どのようなリーダーシップを発揮すべきか
- 従業員の士気と生産性を両立させるには
- トップダウンから脱却して現場を活かすには
士気と生産性を両立、というのは、よく出てきそうなテーマですね。
そうなんです。士気だけ、生産性だけを個別に上げる打ち手を書いてしまう人が多いんですが、この論点は、両方を同時に押し上げる関わり方を問うている、と捉えてください。
片方だけの対策ではなく、両方に効く関わり方を書く、というのがポイントなんですね。
そうです。ここで単に、部下の話を聞く、で終わらせず、参加、支持、目標という3つの要素で語れるかどうかが差になります。
この論点の捉え方
- 問われているのは、士気と生産性を同時に押し上げる関わり方
- 「部下の話を聞く」で終わらせず、参加・支持・目標の3つの要素で語る
与件文のサイン4つ
聞き手が次に聞いたのは、与件文のどこを見れば、この論点だと気づけるのか、という点です。講師が挙げたサインは4つです。
- ワンマン経営、トップダウンで指示待ちが多い:参加型への転換が論点になるサインです。
- 上司と部下の信頼関係が薄い、相談しにくい:支持的な関係が弱いサインです。
- 目標が曖昧、現状維持的:高い業績目標を共有できていないことが課題になっています。
- 現場の意見が意思決定に反映されない:集団的意思決定がうまく機能していないサインです。
2つ目と3つ目では、聞き手が「その表現だけでもサインとして読んでいいのか」と確かめています。
相談しにくい、という表現も、信頼関係の薄さのサインとして読んでいいんですか。
いいんです。相談できない、話しかけにくいという記述は、部下の個人的な側面への関心が足りていない、というサインとして読み取ってください。
現状維持的、という表現だけでも、高い業績目標が共有できていないサインとして読んでいいんですか。
いいんです。挑戦的な目標に向かっていない、という記述は、そのまま高い業績目標の原則が満たされていないサインとして扱ってください。
目標そのものが弱い、というパターンもあります。聞き手は、4つのサインをそれぞれ違う要素と結びつけて読むのだと整理しました。そして1つの与件文の中には、これらのサインが複数出てくることも多い、と講師は言います。見つけたサインを一つずつ、このあと説明する3つの原則のどれに当たるか、仕分けながら読み進めてください。
読みながら、頭の中で仕分けの箱を用意しておく感じですね。
そうです。
整理の軸は3つの原則
サインを見つけたら、3つの原則で整理します。
| 原則 | 動画の説明 |
|---|---|
| 支持的 | 部下の個人的な側面に関心を寄せ、良好な信頼関係を築くと、部下は集団への満足感を持つ |
| 集団的 | 集団をつなぐ役割を果たし、部下を意思決定に参加させると、一体感(凝集性)が高まる |
| 高い業績 | 上の2つが満たされていれば、メンバーの自己実現の欲求を満たす目標として機能する |
1つ目は支持的関係の原則です。リーダーが部下の個人的な側面に関心を寄せて、良好な信頼関係を築くと、部下は集団への満足感を持つようになります。聞き手は「関心を持たれている、と感じることが大事なんですね」と受け止めました。
2つ目は集団的意思決定の原則です。リーダーが集団をつなぐ役割を果たして、部下を意思決定に参加させると、集団の一体感、つまり凝集性が高まります。聞き手は、リーダーが橋渡し役になるイメージかと確かめ、講師は「そうです」と答えています。
3つ目が高い業績目標の原則です。支持的関係と集団的意思決定、この2つがすでに満たされていれば、高い業績目標がメンバーの自己実現の欲求を満たす目標として機能するようになります。ここで大事なのは、3つが並列ではなく、積み上がる関係だという点です。
いきなり高い目標を掲げても、土台がなければ響かない、ということですね。
その通りです。信頼を作って、参加させて、その上で高い目標を共有する、という順番で積み上がっていく関係だと捉えてください。
順番を飛ばして、目標だけ高く掲げてしまうと、うまくいかないんですね。
うまくいきません。土台がないところに目標だけ乗せても、押し付けにしかならないんです。
土台の有無で、解答の中心が変わる
積み上がりの順番が、実際の解答にどう響くのか。動画では、聞き手が設定を示し、講師が答える形で、2つの場合を比べています。
まず聞き手の設定です。社長が長年トップダウンで決めてきて、現場は言われたことだけをやってきた会社なら、どうするのか。講師の答えは、まず支持的な関係を作るところから始める必要がある、というものでした。いきなり高い目標を掲げても、信頼のない状態では響きません。聞き手は、段階を踏まずに目標を掲げるのがよくある失敗パターンだと受け止めています。
次に講師が逆の場合を出します。信頼関係はすでにできていて、現場の意見もある程度は聞いているのに、目標が曖昧で現状維持的な会社です。この場合は、支持的関係と集団的意思決定の土台はできているので、高い業績目標を示すことに解答の中心を置きます。
それなら、土台はできているから、高い業績目標を示すことに解答の中心を置けばいいんですね。
その通りです。土台がすでにある事例で、また一から信頼関係の話ばかり書いてしまうと、与件文とずれた解答になってしまいます。
どの原則がすでに満たされていて、どれが欠けているかを、与件文からきちんと見極める必要があるんですね。
そうです。
字数配分と解答の型
見極めた結果は、字数の配分に反映します。講師の言い方では、欠けている原則に多くの字数を割いて、すでに満たされている原則は簡潔に触れる程度にとどめると、バランスの良い解答になります。聞き手が言い直したとおり、3原則を毎回均等に書けばいいわけではありません。
解答の型としては、部下との信頼関係を築き、意思決定に参加させて一体感を高め、その上で高い目標を共有して自己実現につなげる、という流れで書きます。
単にリーダーシップを発揮する、ではなくて、関わり方を変えることで結果につなげる、という因果を書くんですね。
そうです。関わり方を変えることで、士気と生産性を同時に上げる、という因果で書くと説得力が出ます。
解答の型
- 信頼関係を築く → 意思決定に参加させる → 高い目標を共有する
- 欠けている原則に字数を多く割き、満たされている原則は簡潔に
- 「関わり方を変えることで、士気と生産性を同時に上げる」という因果で結ぶ
他の論点とセットで問われる
この論点は、他の論点と一緒に問われることもあります。講師が挙げたのは、集団をつなぐ役割、モチベーションの理論、組織を活性化させる話です。単独の知識ではなく、他の論点とつながっている、と意識しておくといい、という話でした。
特に連結ピンは、リーダーが集団と集団、あるいは上と下をつなぐ役割そのものを指す考え方です。集団的意思決定の原則とセットで説明できると、解答に厚みが出る、と講師は言います。聞き手も「つなぎ役としてのリーダー、という見え方を、解答の中でも意識しておきます」と答えていました。
やりがちな誤答
最後に、講師はやりがちな誤答を挙げます。
| 誤答 | 何がまずいか |
|---|---|
| 性格・カリスマの話にする | 関わり方の設計として語れず、書きようがなくなる |
| 支持的関係だけ、または目標だけを挙げる | 3つが積み上がる関係を落としている |
| 高い業績目標だけを挙げる | 土台がなければ押し付けで、自己実現の欲求にはつながらない |
| トップダウンを一律に否定する | 事例によっては、信頼と参加の土台づくりの順序を示すほうが有効 |
1つ目は、リーダーシップを性格やカリスマの問題に矮小化してしまい、関わり方の設計として語らないパターンです。聞き手も「人柄の話にしてしまうと、書きようがなくなってしまいますよね」と話していました。
2つ目は、支持的関係だけ、あるいは高い目標だけを単独で挙げてしまい、3つの原則が積み上がっているという関係を落としてしまうパターンです。なかでも高い業績目標だけを挙げる解答は特に多い、と講師は言います。支持的関係と集団的意思決定が伴わない目標は、押し付けと変わらず、自己実現の欲求にはつながりません。
3つ目は、トップダウンを一律に否定してしまうことです。事例の状況によっては、まず信頼と参加の土台を作る順序を示すことが有効になります。
トップダウンが常に悪いわけではない、ということですね。
そうです。与件文にトップダウンの記述が出てきたからといって、すぐに全否定するのではなく、まずどの原則から手をつけるべきかという順序の話として整理してください。
否定するかどうかではなく、どこから直すかを考える、という姿勢ですね。
そうです。
前の章で見た、土台がすでにある事例で一から信頼関係の話ばかり書くことや、3原則を均等に書いてしまうことも、与件文とずれる原因になります。
試験ではここに注目
- 与件文のサインから、信頼関係・参加・目標のどの要素が欠けているかを見極める
- 欠けている要素から積み上げる順番で解答を組み立てる
- 性格の話にせず、関わり方の設計として因果を書く
まとめ
動画の整理
- 二次試験のリーダーシップは、性格ではなく関わり方の設計として問われる
- 問われているのは、士気と生産性を同時に押し上げる関わり方
- サインは4つ:ワンマン・指示待ち、信頼関係が薄い、目標が曖昧で現状維持的、現場の意見が反映されない
- 整理の軸は、支持的関係・集団的意思決定・高い業績目標の3原則。下から順に積み上がる
- 欠けている原則に字数を割き、満たされている原則は簡潔に。因果で結ぶ
- 連結ピンなど、集団をつなぐ役割の論点とセットで書くと厚みが出る
本番でのチェックポイントは2つです。与件文から、信頼関係、参加、目標のどの要素が欠けているかを見極めること。そして、欠けている要素から積み上げる順番で解答を組み立てることです。動画の最後に、聞き手は「性格の話にせず、関わり方の設計として、3つの要素の積み上がりを意識して書きます」と話しています。人柄の話に逃げず、土台から目標へと順番に積み上げる。この型を持っておけば、リーダーシップの設問でも答案の筋が立ちます。
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