5G・VPN・MACアドレスの正体を10分で完全理解
経営情報システム 第22回
「今あなたがこの音声を再生するために画面をタップした瞬間」。動画はこの一文から始まります。このページでは動画の流れにそって、回線の進化と5G、VPNとトンネリング、MACアドレスの構造をまとめました。動画の説明と公的な資料に違いがある点は、補足として並べています。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
画面をタップした瞬間、裏側では何が起きている?
動画は「今あなたがこの音声を再生するために画面をタップした瞬間」という一文から始まります。動画の語り口では、手元の端末は誰にも見えない仮想のトンネルを一瞬でつくり、書き換えられない指紋のようなものを世界中のルーターに見せながら、目的のデータを引っ張ってきた、とされます。普段まったく意識しない、静かで確実なデータのやり取りです。
今回のミッションは3つのポイントです。
- 速度:通信インフラは、どうやって今の圧倒的な速度を手に入れたのか。
- 安全性:オープンな世界で、どう安全を確保しているのか(VPNの話)。
- 識別:ネットワーク上のすべての機器を、どうやって正確に見分けているのか。
動画は、この3つをつなげると、企業が重要なデータを守りながら通信システムをつくる姿が見えてくる、と進めます。このページも同じ順番です。付け足しは「補足」と書き、動画の言い方と食い違う点は「動画では〜」と断って資料の内容を並べます。特にMACアドレスの章は、見直しが必要です。
固定回線の進化:電話線からFTTHへ
最初は速度の話、固定回線の歴史です。動画は、アナログの電話回線から始めて、ISDN、ADSL、FTTHの順にたどります。
| 回線 | 動画の説明 |
|---|---|
| アナログ電話回線 | 音声を伝えるための銅線を、無理やりデータ通信に使っていた。速度は遅い |
| ISDN | 同じ回線を使ったデジタル回線 |
| ADSL | 既存の電話回線を再利用。当時のインターネットに革命を起こした |
| FTTH | 光ファイバーを使い、電気信号でなく光で通信。今の主流 |
動画が「面白い」と強調するのはADSLです。まったく新しい線を引かず、既存の電話回線を再利用しました。電話回線のうち、音声電話に使う周波数はごく一部。ADSLは、音声に使わない高い周波数を使って高速のデータ通信を実現した、という説明です。
ここで聞き手が、たとえを使って整理します。
つまりADSLは、新しい道路を作ったわけじゃなくて、電話という道路の、音声で使っていなかった隙間、いわば誰も走らない路肩を、データ通信用の高速レーンに作り替えたようなものですよね。
そのたとえ、とても分かりやすいです。まさにそれですね。インフラを敷き直すコストをかけずに速度を上げた、すごい工夫です。
それでも速度の限界が来て、最終的に今の主流であるFTTHにたどり着きます。FTTHはFiber To The Home(ファイバー・トゥ・ザ・ホーム)の略で、電気信号ではなく光を使うことで圧倒的な速度を実現しました。ここまでが固定回線の流れです。
(補足:ADSLは、音声の周波数帯域(0.3〜3.4kHz)を避けた、それより高い帯域を使います。また、NTTは「INSネット」ディジタル通信モードを2024年1月に終了すると発表していました(実施状況は確認できていません)。ADSLも、NTT東日本・西日本がフレッツ光提供エリアの「フレッツ・ADSL」を2023年1月31日で終了すると発表していました(令和8年4月1日時点では終了日を過ぎています)。動画はあくまで「歴史」として話しています。)
無線回線:携帯電話とWi-Fi・WiMAX
続いて無線です。動画は、無線回線を大きく「携帯電話用」と「無線LANの規格」に分けます。
携帯電話用は、3Gの時代があり、3Gを高速化したLTEを代表とする4Gへ進化しました。そして2020年3月にサービスが始まったのが、4Gをさらに高速化した次世代通信規格の5Gです。3G、4G、5Gと、どんどん速くなっているわけですね。
もう一方の無線LANの規格が、国際的な標準規格であるIEEE 802.11に準拠したWi-Fiです。ここで動画は、同じIEEEが規格化しているものとしてWiMAXを紹介します。
Wi-Fiとは違うんですか?
Wi-Fiは家の中とか局所的なものですが、WiMAXは携帯電話のように、提供エリア内であればどこでも利用できるようにした通信規格なんです。
広範囲をカバーする無線LANって感じですね。
そうです。
(補足:次の4点を確認しました。)
- 5Gは「速さ」だけではない:動画は「4Gをさらに高速化」と説明します。5Gに求められる要素は、高速大容量、高信頼・低遅延、多数同時接続の3つに整理されます(ITU-Rの定義を紹介する二次資料)。
- 「LTE=4G」の呼び方:ITUは2010年12月、正式な4G(IMT-Advanced)はLTE-AdvancedとWirelessMAN-Advancedだとしつつ、4Gという語は前身のLTEやWiMAXにも使われうると説明しました(用語自体は未定義)。呼び方は資料により異なります。
- 3Gの終了:NTTドコモは、3GのFOMAを2026年3月31日に終了すると発表していました(令和8年4月1日時点では終了予定日を過ぎています。終了の実施は確認できていません)。
- WiMAXの分類:WiMAXの規格IEEE 802.16は、一般にWirelessMAN(無線MAN)と呼ばれ、802.11の無線LANとは別の規格です。動画は広範囲をカバーする無線LANの規格として説明しています。
- WiMAX:IEEE 802.16作業部会は、IEEEのサイトで解散済みと表示されています。国内の事業者サービスの現状までは確認できませんでした。
VPN:オープンなネットに「仮想の専用線」をつくる
回線が高速化し、Wi-FiやWiMAX、5Gでどこからでも大容量のデータ通信ができるようになりました。動画はここから、問題を持ち出します。だからこそ、誰もがつながるオープンなネットワークを介して、企業の重要なデータをやり取りするときの安全性の確保が急務になった、というのです。
そこで登場するのがVPNです。動画の説明では、VPNは、インターネット上に仮想的な専用線を設けることで安全性を確保する通信方法です。東京と大阪の間に物理的な専用線をドカンと引くより、安いコストで高い安全性を実現できます。そのため、企業の拠点どうしの通信や、外部から社内LANへのリモートアクセスに使われます。
オープンなインターネットの上につくるのに、なぜ安全なのか。動画はその肝をトンネ
動画のたとえ(聞き手の整理)
聞き手は、トンネリングを「誰でも通れる透明なガラスのパイプ(インターネット)の中に、外から中身が見えない鉄のパイプを通すイメージ」と言い換え、講師は「まさにそんな感じです」と応じました。
では企業はみんなVPNを使っているのか、という流れで、動画はVPNを2種類に分けます。インターネット回線を使うインターネットVPNと、通信事業者が提供するネットワークを使うIP-VPNです。動画の説明を表にまとめます。
| 項目 | インター | IP-VPN |
|---|---|---|
| 使う網 | インター | 事業者の |
| コスト | 安価 | 高価 |
| セキュリティ | 一般に低め | 高い |
つまり企業は、守るべき情報の重要度に合わせて、鋼鉄のパイプの厚さとお金を天秤にかけて選んでいるということですね。
おっしゃる通りです。コストとセキュリティのトレードオフですね。
(補足:IP-VPNは多数の加入者で帯域を共用する閉域網を使うサービス、インターネットVPNは誰でもアクセスできるインターネット網で仮想専用線の通信をする技術、という整理が一般的です(二次資料)。IPAの試験シラバスにも、IP-VPN、VPN、IPsec、トンネリングが載っています。動画の「セキュリティは低い」は閉域網と比べた一般論と読むのが自然で、暗号化の方式や設定でも変わるため、資料により説明が異なります。)
MACアドレス:機器の「身分証明書」?
VPNで、外部から社内へ安全にアクセスする道はできました。ところが動画は、その道を通って接続してくるのが本当に許可された正しい機器なのか、どうやって見分けるのか、と問いを重ねます。聞き手は、いくら道が安全でも、つなごうとしているパソコン自体が泥棒のものかもしれない、ということですね、と受けます。
講師はそのとおりだと答え、通信を成立させる最後のピースとして、機器の絶対的な身分証明書が必要になると述べます。それが3つ目の要素、MACアドレスです。
動画の説明では、MACアドレスは機器に固定で割り当てられたアドレスです。パソコンやスマホの中にあるLANカードのROMに記憶されているため、一度設定されると変更できません。聞き手が「ROMは読み出し専用メモリですよね」と確認し、講師は、だから身分証明書として機能すると答えます。
構造はこうです。MACアドレスは48ビットのデータ長を持ち、通常は16進数を2桁ずつ区切った12桁で表記します。48ビットは真ん中で半分に分かれていて、上位24ビット、つまり前半の6桁が機器の製造元を示すID、後半24ビットの6桁が各製品に一意に振られる固有の製造番号です。
(補足:検算です。24ビットは2の24乗で16,777,216通り、つまり製造元ごとに約1,678万個の製品へ別々の番号を振れます。16進数は1桁が4ビットなので、12桁で48ビットになります。)
MACアドレスって、機器にとってのDNAとか指紋みたいなものですよね。
そうですね。
前半の6桁を見れば、どのメーカーの出身かが分かり、後半の6桁を見れば、その中のどの1台かが完全に特定できる。変更できないROMに書き込まれているからこそ、私は間違いなくこの機器ですと証明できるわけだ。
まさにその通りです。企業はこのMACアドレスを見て、事前に登録されている安全なパソコンからのアクセスだけをVPNに通す、といった制御をしているわけです。
ここから先は、動画の説明を公的な資料と照らしておきましょう。
補足:MACアドレスは「絶対の身分証明書」なのか
動画の説明と、確認できた資料の内容が食い違う点が3つあります。
- 「変更できない」について:動画では「一度設定されると変更はできない」とされます。一方、MACアドレスはソフトウェアの設定で変更できる機器もある、と説明されます(二次資料)。さらにAppleは、iPhoneなどが、ネットワークごとに異なるWi-Fiアドレスを使い、定期的にアドレスを変更する場合があると説明しています。Androidも、Android 10以降はMACアドレスのランダム化が既定で有効だとしています。
- 「前半で製造元が分かる」について:IEEEの資料では、アドレスの先頭1バイトの、下位から2番目のビット(U/Lビット)が0なら世界で一意となることを意図した「ユニバーサル管理」、1なら「ローカル管理」です。ローカル管理のアドレスは、製造元が割り当てた値とは限りません。
- 「MACアドレスを見てVPNに通す」について:MACアドレスは、OSI参照モデルの第2層、データリンク層のアドレスです(二次資料)。RFC 1812(IPv4ルーターの要件)は、送信元の物理アドレスを「パケットを受け取った直前のホストまたはルーターのリンク層アドレス」と定義しています。つまり、インターネットの向こう側から接続してくる端末のMACアドレスを、そのまま社内側が見られるとは限りません。動画の冒頭にあった「世界中のルーターに指紋を提示する」も、文字どおりには受け取らないほうが安全です。
登録したMACアドレスだけを通す方法(MACアドレスフィルタリング)自体は、社内LANや無線LANなど、同じネットワークの中で使われます。ただし、MACアドレスは変更できる場合があるため、単独の対策だと突破される可能性が指摘されています(二次資料)。動画の「登録済みの機器だけ通す」は、考え方の一例として聞くとよいでしょう。
最後の問い:変わらない指紋は、追跡の痕跡にもなる
動画のまとめでは、私たちが日々享受している快適なネットワークは、5Gなどの速度への執念、安全な通信経路を仮想的につくるVPNのトンネリング技術、そして膨大な機器の中から1つを正確に識別し続ける不変のMACアドレス、この3つが連携して成り立っている、とされます。どれ1つ欠けても、今の安全で便利なインターネット社会は成立しません。
動画は最後に、リスナーのあなたへ問いを投げかけます。MACアドレスが変更できない絶対的な指紋だとして、持ち歩くスマホやパソコンのすべてが、どこへ移動してもその指紋を持ち続けているとしたらどうでしょう。確実な通信のための技術は、同時に、どこでネットワークに触れたかという移動の痕跡を、永遠に刻み続けることにもなります。聞き手は「セキュリティの強さは、裏を返せば完全な追跡が可能になるということでもありますね」と受けました。
(補足:この問いは「もしそうだとしたら」という仮定の話です。Appleは、常に同じMACアドレスを使うと、ネットワークの事業者などがそのアドレスを機器の活動や位置情報に結びつけやすくなり、ユーザーの追跡が可能になると説明しています。そのうえで、この懸念に対処するために「プライベートWi-Fiアドレス」の機能を設けています。動画の問いは、現実の機器側でもすでに意識されている論点だと言えます。)
まとめ
このページのまとめ
- 固定回線は、動画では、アナログ電話、ISDN、ADSL、FTTHの順。ADSLは電話の「使っていない周波数」を使い、FTTHは光で速度を上げた。
- 無線は、動画では携帯電話用(3G・4G・5G)と無線LANの規格(Wi-Fi・WiMAX)に分けている。Wi-Fiは局所的、WiMAXは携帯電話のように広いエリア向け。
- VPNは、インターネット上の仮想専用線。トンネリング(カプセル化・暗号化・認証)で中身を隠す。インターネットVPNは安価、IP-VPNは高価だが閉域網という整理で、コストとセキュリティのトレードオフ。
- MACアドレスは、48ビット(16進数12桁)。動画では、前半24ビットが製造元ID、後半24ビットが製品固有の番号という説明。
補足で確認したこと(動画の説明との違い)
- MACアドレスは、機器やOSの機能で変更・ランダム化されることがあり、「絶対に変えられない指紋」とは言い切れない。
- ルーターをまたぐ通信では、インターネット越しの相手のMACアドレスが、そのまま届くとは限らない。
速度、安全性、識別。動画をもう一度聞いて、あとからこのページで、補足と照らしながら復習してみてください。
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