LAN・WANとスター型トポロジ
経営情報システム 第21回
「あなたがこの音声を聞いているスマートフォンは、実は無数の電子信号が飛び交うかなり混沌とした空間に向かって、常に大声で叫び続けているような状態なんですよね」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、LAN・WAN・インターネットという規模による分類、VAN(付加価値通信網)、そしてLANの内部のつなぎ方であるバス型・リング型・スター型のトポロジーをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
スマホの通信は、なぜパニックにならないのか
動画は、いま音声を聞いているスマートフォンの話から始まります。目に見えない電子信号が無数に飛び交う空間で、遠く離れたサーバーが自分のスマホの信号だけを的確に拾って、ほんの一瞬で音声データを返してくる。考えてみると奇跡のような話ですが、講師は、これは魔法ではなく、ネットワークの構造が合理的に階層化されているからだと説明します。ネットワークは広さ(規模)によって分類されているのです。今回の動画が整理するのは、次の2つです。
- 規模による分類:LAN、WAN、インターネット。それに、かつて重宝されたVAN。
- LANの内部のつなぎ方:トポロジーと呼ばれ、バス型・リング型・スター型の3つに整理される。
LAN:身内だけの閉じた空間
いちばん狭い範囲のネットワークがLAN(ローカルエリアネットワーク、ラン)です。動画の説明では、同じ建物の中、たとえばオフィスや家の中で、コンピューターやプリンター、サーバーがつながっている状態を指します。つなぐと、データや機器を共有できます。
ここで聞き手が疑問を出します。どうせ最後はインターネットにつながるのだから、最初から全部の機器を個別に外へつなげばよいのでは、というものです。講師は、もし社内の機密データが入ったサーバーや部署専用のプリンターまで、すべてが直接インターネットにさらされていたらどうなるかと返します。外から勝手にプリンターを動かされ、大事なデータが世界中から丸見えになる危険があります。だから、まず身内だけの閉じた空間を作る。範囲が限られているからこそ安全に共有できる、これがLANの最大の特徴だと講師は話します。
もう一つの仕組みとして、LANのどこか1か所がインターネットに接続していれば、そのLANにつながるコンピューターはすべてインターネットにアクセスできます。
パソコン1台1台に外へのドアを持たせる必要はなくて、安全な部屋に、外へ続く共通のドアを1つだけ作ればいいんですね。管理も楽です。
ええ、まさにその通りです。
(補足:動画は「同じ建物の中」と説明しますが、JIS X 0001:1994(1994年版で確認)は、ローカルエリアネットワークを「地理的に限定された地域内にあり,利用者の構内に配置された計算機ネットワーク」と定義しています。構内であれば建物が複数でもLANと読めます(規格は建物の数までは書いておらず、ja.Wikipediaは「単一または近隣の建物」と書きます)。また、動画は機器名を挙げていませんが、「共通のドア」にあたるのはルーターなどです。)
WAN:離れたLANをつなぐ
東京に本社があり、大阪に拠点がある企業を想像してください。それぞれのビルにLANがあります。この地理的に離れた2つのLANをつなぐのがWAN(ワイドエリアネットワーク、ワン)です。聞き手が「離れた場所にあるLAN同士を接続するネットワークで、本社と拠点の企業内LANをつなぐためなどに使われる」と答えると、講師は「完璧な説明」と応じます。
ここで聞き手が、また鋭い疑問を出します。LANに外へのドアがあればインターネットにつながるのだから、本社と拠点も普通にインターネット経由でやり取りすればよいのでは。わざわざWANを用意する意味がしっくり来ない、というのです。
講師は、インターネットの本質から説明します。インターネットとは、家庭内LANや企業内LANなど世界中のネットワークを相互接続した巨大なネットワークで、言ってみれば誰もが走る公共の道路網です。誰でも自由に走れる反面、渋滞もあれば、悪意を持った車が走っているかもしれません。顧客データや経営の機密情報を、そんなコントロール不可能な公道だけでやり取りするのはリスクが高すぎる。だから拠点同士を結ぶ、企業専用の安全な高速道路としてWANを利用する、という説明です。
LANが自社ビルの敷地内だとしたら、WANは本社と拠点だけを結ぶ秘密の専用トンネルみたいなものなんですね。
ええ、とても分かりやすい例えですね。
| ネットワーク | 範囲 | 動画のたとえ |
|---|---|---|
| LAN | 建物内など限られた範囲 | 自社ビルの敷地内 |
| WAN | 離れたLAN同士 | 拠点を結ぶ専用の道 |
| インター | 世界中のネットワーク | 誰でも走れる公道 |
(補足:動画の単純化。動画はWANを専用の道、インターネットを誰でも使える道と対比しますが、実際はもう少し重なります。IPAの基本情報技術者試験シラバス(Ver.9.2)は、WANを構成する場合は「電気通信事業者による提供サービスやインターネット接続サービスを利用すること」を理解する、としています。インターネット接続もWANの材料の一つです。VPNにも、通信事業者の閉域網を使うIP-VPNと、インターネットを使うインターネットVPNがあります(Wikipedia、二次資料)。動画の「LAN→WAN→インターネット」は、学習用の整理と受け取ってください。)
VAN:かつて重宝された付加価値通信網
講師は、LANに少し似た響きのサービスとしてVAN(付加価値通信網)を紹介します。通信事業者から専用回線をレンタルし、ただデータを送るだけでなく、情報の蓄積や処理機能といった付加価値をつけて提供される通信サービスで、昔は企業間の取引のやり取りなどで重宝されていました。
動画では、現在は利用が減少していると言います。聞き手の「必須ではないのか」という疑問に、講師は、コストの問題もあるが最大の理由はインターネットの爆発的な普及だと答えます。一般道にあたるインターネットの整備が進み、クラウドサービスなどが進化して、VANと同等の機能が実現可能になったからです。泥道で危ない時代は、高いお金で処理機能付きの専用道路を借りる価値があった。一般道がきれいで高速になり、安全に処理できる仕組みも標準で備わったので、VANの不可欠さが目立たなくなった。講師は「まさにその通り」と応じます。
(補足:Wikipedia(二次資料)によると、VANは1980年代に流行した名称で、通信事業者から借りた回線に自営のコンピューターを置き、データの蓄積交換や情報処理などを行うものをいい、企業向けには共同受発注などのEDIが始まりました。同じ記事は、1990年代以降は名称としてVANは使われておらず、同様のサービスはインターネット上で行われているとも書いています。動画の「利用が減少した」はおおむね合っていますが、名称としては使われなくなったと説明する資料もあります。)
LANの内部へ:トポロジーとは
後半は、視点をLANの内部に戻します。建物の中でパソコンやプリンターを物理的にどうつないでいるか、そのつなぎ方の形をトポロジーといいます。動画はLANのトポロジーを、バス型、リング型、スター型の3つに整理します。
(補足:トポロジーは3つだけではなく、Wikipedia(二次資料)はメッシュ形や木型(ツリー型)なども挙げています。動画はLANの代表的な3つに絞っています。)
バス型:1本の廊下を全員で使う
バス型は、1本のケーブル(バス)に複数のコンピューターを接続するつなぎ方です。構造はシンプルに見えますが、講師は致命的な欠点がいくつもあると言います。
- 衝突:1本の細い水道管に複数の蛇口がついている状態にたとえ、2台が同時にデータを送ると、ケーブルの中でデータ同士が衝突して壊れてしまう。
- 構成変更が難しい:ケーブルの長さに厳しい制限があり、あとからパソコンを追加するのが非常に難しい。
- 障害箇所の特定が困難:メインケーブルのどこかでトラブルが起きると、場所を突き止めるのが極めて難しい。
聞き手は、これを「1本の廊下を全員で共有していて、同時に大声を出したら声がぶつかって誰が何を言っているか分からなくなる状態」にたとえ、講師は「まさにそんな感じ」と応じます。こうした理由から、現在ではバス型はほとんど利用されていないと講師は述べます。
(補足:動画は「衝突して壊れてしまう」と説明しますが、初期のイーサネットはCSMA/CDという手順で衝突を検出し、再送することで扱っていました(Wikipedia、二次資料)。同じ記事によると、1999年のスイッチングハブと全二重通信の一般化以降は、衝突を気にする必要がほとんどなくなりました。)
リング型:輪の途中で止まると全体が止まる
リング型は、複数のコンピューターを輪の形につなぎます。講師が欠点を問うと、聞き手は、途中の1人のパソコンが壊れたらデータの通り道が遮断されるのではと答えます。講師は「お見事です」と認め、たった1台の故障でネットワーク全体の通信障害になると説明します。
1台のパソコンの不具合が、会社全体のネットワークをダウンさせるなんて。
はい。現代のインフラとしては受け入れられないですよね。だからリング型も、現在では利用されていません。
(補足:Wikipedia(二次資料)によると、1つの区間が故障しても逆向きの接続で伝送できるリングもありますが、2か所で断絶すると通信できなくなります。動画の説明は、こうした対策のない単純な輪の話です。)
スター型:中心のハブから放射状に
現在の主流がスター型です。ハブと呼ばれる装置を中心に複数のコンピューターを星型につなぐ方法で、ハブを多段に接続して拡張することもできます。聞き手はこれを自転車のスポークにたとえ、講師は「すごく良いたとえ」と応じます。
動画のたとえ:自転車のスポーク
中心の軸(ハブ)から縁に向かって、個別の棒が伸びています。1本が折れても、他のスポークは軸とつながったままです。
バス型やリング型の欠点を踏まえてメリットを考えるよう促された聞き手は、一部の端末が故障しても、他のパソコンは中心のハブと無事につながっているので全体に影響しない、と答えます。講師は「まさにそこです」と応じ、さらに、どのパソコンがつながっているかを見れば障害箇所が一目で特定できると加えます。
聞き手は意地悪な見方として、ハブ自体が壊れたら全体が停止するのではと指摘し、講師はそれがスター型の明確な弱点だと認めます。「1か所で全滅するならリング型と同じでは」という食い下がりに、講師は「リスクの質が全く異なる」と答えます。
社員全員のパソコンのうちどれか1台でも壊れたら全滅するリスクと、中心のハブが壊れたら全滅するリスク。どちらを管理するほうが現実的でしょうか。
全社員のパソコンがいつフリーズするかを監視するのは不可能に近いけれど、ハブという特定の機械だけを厳重に管理するほうが、はるかに現実的ですね。
講師の結論は、一部の端末の故障が全体に影響しないメリットが、中心への依存という弱点を大きく上回るので、現在の主流はスター型だ、というものです。聞き手は、暗記ではなく、なぜバス型やリング型が使われなくなったのか、弱点の仕組みを知ると腑に落ちる、と振り返ります。
| 型 | 動画が挙げる弱点・特徴 | 動画の言う現在 |
|---|---|---|
| バス型 | 同時送信で衝突/増設しにくい/障害箇所を特定しにくい | ほとんど利用されない |
| リング型 | 1台の故障で全体が止まる | 利用されていない |
| スター型 | 端末の故障は全体に影響せず、障害箇所も特定しやすい。ハブが壊れると全停止 | 主流 |
(補足:自作の設例で、動画にはありません。端末20台のスター型で端末1台が故障すると、通信できなくなるのはその1台だけで、残り19台は使えます。ハブが故障すると20台すべてが止まります。動画どおりの単純なリング型なら、1台の故障で残り19台も止まります。ハブの弱点には、Wikipedia(二次資料)によると、ハブの二重化などの対策がとられます。ハブの稼働率を99%とすると、年に約87.6時間止まる計算です。2台を並列にして、どちらかが動けば通信できるなら、止まるのは両方が同時に故障したときだけで、1−0.01×0.01=0.9999、稼働率は99.99%(停止は年に約53分)です。2台の故障は独立で、切り替えは一瞬という仮定の計算です。)
動画の締めくくり:スター型は組織にも似ている
動画の終わりには、スター型は人間の組織やプロジェクトの形にも似ているのではないか、という視点が出てきます。中心のリーダー(ハブ)がしっかり機能していれば、メンバーは独立して動けて個々のトラブルにも強い。でも、リーダー自身が倒れると、チーム全体が止まってしまう、という話でした。
まとめ
まとめ
- 動画は、ネットワークを範囲の狭い順に、LAN、WAN、インターネットと整理します。LANは身内だけの閉じた空間、WANは離れたLAN同士をつなぐもの、インターネットは世界中のネットワークの相互接続です。補足として、インターネット接続を使ってWANを作ることもあります。
- VANは、回線に蓄積・処理などの付加価値をつけたサービスです。動画では、インターネットやクラウドの発展で利用が減ったと説明されます。
- 動画では、LANのトポロジーはバス型・リング型・スター型の3つ。バス型は衝突・増設・障害箇所の特定、リング型は1台の故障で全体が止まる点が弱点とされます。
- スター型は、動画では、端末の故障が全体に影響せず障害箇所も特定しやすい一方、ハブの故障で全体が止まるが、管理する対象を絞れるぶん現実的だと説明されます。
講師は最後に、「なぜ」を理解することが使える応用力を生むと語ります。「範囲が限られているから安全に共有できる」「端末の故障が全体に広がらない」のように、理由とセットで覚えましょう。
動画で聞く
続けて読む
- 第16回 データパニックを防ぐDBMSの仕組み(別バージョン)経営情報システム・データベース 003
- 第17回 爆速アプリを支えるDBの正体経営情報システム・データベース 004
- 第18回 DWHとデータ分析のアーキテクチャ経営情報システム・データベース 005
- 第19回 OSI7階層とTCP/IP経営情報システム・ネットワーク 001
- 第20回 TCP/IP 4階層とプロトコルのリレー経営情報システム・ネットワーク 002
- 第22回 5G・VPN・MACアドレスの正体を10分で完全理解経営情報システム・ネットワーク 005
- 第23回 MNOからMDMまでのモバイル管理経営情報システム・ネットワーク 006
- 第24回 アクセスコントロール経営情報システム・情報セキュリティ 001
- 第25回 アクセス制御と性能指標経営情報システム・情報セキュリティ 002
- 第26回 暗号化と無線LANセキュリティ経営情報システム・情報セキュリティ 003
- 経営情報システムのWebテキスト一覧同じ科目の48本を一覧・検索
- 中小企業診断士 1次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

