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ハンコ地獄はなぜ起きる?BPRとBPMの違い

ストラテジ系・業務プロセス改善 00111分41秒2026年8月21日公開

「この書類、いったい何回ハンコを押せばいいの?」 書類が部署から部署へたらい回しにされる、いわゆるハンコ地獄。動画は、そんなぼやきから始まります。「今のやり方、このままでいいんだっけ?」と見直すときの代表的な考え方が、BPRとBPMです。このページでは動画の流れにそって、2つの違いと、似た言葉との区別をまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

3行でいうと

  • BPRは、会社全体の業務プロセスを、部分最適ではなく全体最適の視点で、ゼロから抜本的に作り直すこと。
  • BPMは、業務プロセスを、環境の変化に合わせて継続的に見直し、改善していくこと。
  • 見分けるキーワードは「抜本的」ならBPR、「継続的」ならBPM。BPRはリストラやIT化とは別物です。

分析のあとは「改善」の段階

会社の仕事の流れ(業務プロセス)は、まず図などで現状を分析し、そのうえで改善します。改善のしかたの代表が、今回のBPRとBPMです。

BPR:業務の流れをゼロから作り直す

BPR(Business Process Reengineering:ビジネスプロセス・リエンジニアリング)は、企業全体の業務プロセスを抜本的に、つまりゼロから根本的に見直して作り直す手法です。部分的な手直しではなく、仕事の流れそのものを組み直します。

いちばん大事なのは、部分最適ではなく全体最適を軸にしている点です。BPRは、もともと「分業への反省」から生まれたといわれます。各部門が自分の持ち場だけを効率化しても、部門と部門の受け渡しにムダや重複がたまり、会社全体ではかえって遅くなることがあるからです。

部分最適営業部自部門は◎経理部自部門は◎総務部自部門は◎待ち二重入力→ 会社全体では遅く、ムダが増える全体最適(BPR)営業部経理部総務部顧客にとっての流れで、部門をまたいで作り直す
持ち場ごとの効率化(部分最適)では、部門のすき間にムダがたまります。BPRは全体の流れから作り直します。

なぜ全体最適をそこまで重視するの?

製造部門は生産の効率、営業部門は売上というように、部門ごとに評価のものさしが違います。それぞれのものさしだけを追うと、部門の間で情報の伝え漏れや二重作業が起きやすくなります。

そこでBPRでは、「顧客にとって価値があるか」という視点で、部門の壁をこえて業務の流れ全体を見直します。BPRは1990年代に欧米で提唱された経営手法です。

リストラとのちがい

会社を作り直すって、なんだかリストラと似ていませんか?

いいところに気づきましたね。リストラは、もうからない部門を切り捨てて、もうかる部門にヒト・モノ・カネを集中させること。部門単位の取捨選択です。

BPRは、部門を減らすのが目的じゃないんですね。

そうです。BPRは、非効率な業務プロセスそのものを作り直す手法。「対象が部門か、業務プロセスか」を意識してください。

BPM:作り直したあとも、磨き続ける

BPM(Business Process Management:ビジネスプロセス・マネジメント)は、業務プロセスを見直して継続的に改善していく手法です。経営環境や技術は日々変わるので、一度作り直したら終わり、というわけにはいきません。

BPRとBPMを見分ける最大のポイントは、BPRは「抜本的」、BPMは「継続的」という点です。「抜本的」が出たらBPR、「継続的」が出たらBPM、と反射的に判断できるくらいにしておきましょう。

たとえるなら

BPRは、古い建物を取り壊して間取りから作り直す建て替え工事。大がかりで一度きりです。BPMは、建て替えた建物を長く快適に使うための日々の掃除や修繕。変える頻度と規模が大きく違います。

業務の効率時間見直し前BPR(建て替え)一度で大きく作り直すBPM(日々の手入れ)小さな改善を続ける手入れしないと元に戻ってしまう
BPRは一度きりの大改革、BPMはその後も続く手入れ。2つはセットで考えます(グラフはイメージです)。

BPMとPDCAサイクル

BPMは、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善をくり返す考え方)を、業務プロセスの管理に当てはめたものと考えると覚えやすくなります。BPRで一度作り直しても、PDCAを回し続けないと、時間とともにまた非効率な状態に戻ってしまいます。

P 計画改善案を立てるD 実行新しい手順で運用C 評価数値で効果を測るA 改善手直しして次へBPM回し続ける
BPMは、PDCAを業務プロセスの管理に当てはめたもの。止めると、また非効率な状態に戻ってしまいます。

よくある誤解:「BPR=IT化」ではない

BPRを「業務にシステムを入れること」だと思いこむ人がいます。でもBPRの本質は、業務プロセスそのものを見直して作り直すこと。ITはそのための手段のひとつにすぎません。非効率な手順をそのままシステムにすると、ムダな手順まで自動化されるだけです。まず流れを見直し、そのうえでITを使う順番が大切です。

紙とハンコの経費精算を、電子申請に切りかえるのは?

手順をゼロから作り直す一度きりの取り組みなら、それがBPRです。

電子申請にしたあとも、承認ルートが長いとか、直したいところは出てきそうです。

そこがBPMの出番です。運用しながら少しずつ見直していく。BPRで骨組みを作り、BPMで運用を磨き上げる関係ですね。

BPRの進め方と、うまくいかない例

BPRは、一般に次の3つのステップで進めます。

  1. 今の業務プロセスのムダを分析する
  2. 全体最適の視点から、あるべき姿を設計する
  3. 組織やシステムを作り直して、新しいやり方に切りかえる

反対に、現場の意見を聞かずに経営層だけで手順を決めると、定着せずに混乱をまねきます。今の手順をそのままシステムに置きかえるだけでは、「単なるIT化」で終わってしまいます。BPRが使われるのは、たとえば複数の会社が合併して、ばらばらの業務プロセスを一つにまとめるときや、急成長で今のやり方では回らなくなったときです。受発注、在庫管理、経費精算、問い合わせ対応など、複数の部門がかかわる業務なら幅広く対象になります。

似た言葉とまとめて整理

  • カイゼン:日本の製造業から広まった、現場の従業員が中心になって日々の小さなムダを少しずつ取り除く活動。ボトムアップで継続的です。トップダウンで抜本的なBPRとは対照的です。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション):デジタル技術で、業務だけでなく製品・サービスやビジネスモデルまで変えていく取り組み。BPRは会社の中の業務プロセスの作り直しなので、DXを進めるための手段のひとつと考えられます。
用語何を変える?どう変える?BPR業務プロセス全体ゼロから抜本的にBPM業務プロセス継続的に手直しカイゼン現場の日々の作業現場発で少しずつリストラ部門・事業切り捨てて集中DXビジネスモデルまでデジタルで広く変革
「何を」「どう」変えるかで並べると、似た用語の区別がはっきりします。

効果は数字で確かめる

BPRの効果は、業務にかかる時間やコスト、処理件数などの数値で確かめます。たとえば平均の処理日数や、担当者1人あたりの処理件数を、実施の前とあとで比べます。数字は経営層への説明の根拠にもなり、BPMで次にどこを直すかを見つける手がかりにもなります。「導入すること」を目的にせず、「どれだけ効率化されたか」を確かめる姿勢は、このあと学ぶワークフローシステムやグループウェア、RPAでも共通です。

試験ではここに注目

  • 「抜本的」「全体最適」ならBPR、「継続的」ならBPM
  • BPRとBPMの説明を入れかえた選択肢に注意(「BPRとは業務プロセスを継続的に改善する手法」は誤り)
  • 「もうからない部門を切り捨てる」はリストラの説明で、BPRではない
  • BPRはIT化そのものではなく、ITは手段のひとつ

BPR・BPMは、シラバスでは業務プロセスの分野に用語として挙がっています。「何を」「どう」変えるのかをセットで覚えておけば、入れかえ型のひっかけに惑わされません。

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