カテゴリー診断
事例Ⅱ 第1回
「与件文に『売上構成比』とか『前年比』みたいな数字がズラッと並んでると、どこから手をつけていいか分からなくなること、ありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、既存の品揃えの課題を見抜く診断の3レベルと3段階の手順、答案での書き方、混同しやすい誤りをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
数字の山を前に、手が止まる
動画は、こんな問いかけから始まります。与件文に「売上構成比」や「前年比」といった数字がずらっと並んでいると、どこから手をつけていいか分からなくなることはありませんか。聞き手も「数字は読めるんですけど、それを『じゃあ結局どこに課題があるの』まで持っていけない。全部大事に見えちゃって」と答えます。
講師は、知識としては「強みと弱みを整理すればいい」と分かっているのに、いざ本番で数字の山を見ると、どこから絞り込めばいいか手が止まる、と言います。そこで今回扱うのが、その絞り込み方の順番です。
対象は、既存の品揃えを診断して、課題を見つけていくときの型です。ゼロから「これからどんな品揃えにするか」を設計する話とは別で、今すでにある品揃えの何がまずいのかを言い当てる、分析側の話になります。
「これから何を置くか」じゃなくて、「今置いてあるものの、どこが悪いか」を見抜く方ってことですね。それ、結構違いますね。
全然違います。
この違いは、あとの「混同しやすい誤り」でもう一度出てきます。頭の片隅に置いておいてください。このページは、二次での出方、与件文のサイン、診断の手順、答案の型、混同しやすい誤りの順に、動画の流れにそってまとめます。
二次での出方:どのレベルの情報として読むか
典型的なのは、「売上が伸び悩んでいる理由を分析せよ」「品揃えの課題を指摘せよ」といった設問です。与件文には、カテゴリーごとの売上構成比、競合や市場平均との比較、前年との比較といった数値・傾向の記述が置かれています。そして問われるのは、それをどのレベルの情報として読むかです。
どのレベル、っていうのは?
そこがまさに今日の核心です。診断には、企業全体の話、特定の商品群の話、個別の商品の話と、レベルが何段階かあります。見分けずに読むと、答案の粒度がズレます。
全体の話を聞かれてるのに、個別商品の話で答えちゃったりするってことですか。
まさにそれです。
しかも、診断で課題を特定したあと、改善の方向性を助言させる設問につながることも多いそうです。最初の診断がズレると、後の助言までズレていきます。聞き手の言葉でいえば、診断が土台になっているので、そこがブレると全部崩れる、ということです。
3つのレベルと、与件文の書かれ方
では、そのレベルを与件文のどこで見分けるのか。講師によると、与件文の記述にはレベルごとに書かれ方の癖があります。3つのレベルを順に見ていきましょう。
- 全体レベル:企業全体、あるいは大きな取扱分野レベルでの水準の変化を示す記述。「昨年に比べて売上が減少している」「主力の取扱分野の売上が伸び悩んでいる」など。「近隣の同業他社と比べて客単価が低い」のような、市場・競合との比較もここに入ります。
- サブカテゴリーレベル:取扱商品群という単位での構成や実績の記述。「特定の分野の売上構成比が高い、または低い」「主力商品群の販売実績が落ちている」など。「競合店ではよく売れている分野が、自店では扱いが薄い」のような、品揃えの構成の違いもここです。
- アイテムレベル:個別商品の品揃え・回転に関する記述。「特定の商品が定番として長年扱われているが、最近は動きが鈍い」「新商品の取り扱いが少ない」など。「陳列スペースが特定の商品に偏っている」「値引き販売が常態化している」のような、個別商品の売場での扱われ方もここに入ります。
| レベル | 見る単位 | 記述の例 |
|---|---|---|
| 全体 | 企業・取扱 | 売上の増減、市場との比較 |
| サブ | 取扱商品群 | 構成比、群ごとの実績 |
| アイテム | 個別商品 | 回転、陳列、値引き |
企業まるごと、とか、大きなくくりでの話ですね。
さっきより一段階、範囲が絞られてる感じですね。企業全体じゃなくて、「その中のどのジャンル」の話、というか。
全体、サブカテゴリー、アイテム。3段階で、だんだん範囲が狭くなっていくんですね。
その通りです。
たとえ:クローゼットの整理
この段階分けをイメージしやすくするために、講師はたとえを出します。「自分のクローゼットを整理するとき、どう進めます?」という問いです。
えっと……まず服が全体的に増えすぎてないか見て、次にトップスとかボトムスとか、種類ごとの量を見て、最後に一着一着「これ最近着たかな」ってチェックする、みたいな感じですかね。
まさにそれです。
クローゼットのたとえ
いきなり一着ずつ「これ着る?着ない?」とやると、時間がかかりすぎるし、全体の傾向も見えません。だから全体の量→種類ごとの量→個別の一着の順で絞り込みます。品揃えの診断も、発想はまったく同じです。
聞き手は「いきなり個別商品に飛びつかないで、まず大きいところから見る、ってことですね」と受け止めていました。
診断の手順:3段階で絞り込む
ここからが、実際にどう整理していくかの手順です。
第1段階は、全体の水準を見ることです。企業全体、または大きな取扱分野全体の売上高が、前年と比べてどう動いているか、市場・競合と比べてどの水準にあるかを確認します。ここで大きなズレが見つかれば、その先の分析で原因を絞り込んでいきます。聞き手はこれを、まず「そもそも全体として、悪いのか良いのか」を確認すること、と言い換えていました。
第2段階は、サブカテゴリー、つまり商品群ごとの構成を見ることです。全体をいくつかの商品群に分けたときの売上構成比を確認し、どの商品群の構成比が高いか低いかを把握したうえで、市場の標準的な構成比や前年の構成比と比べます。構成比が市場や前年と大きくズレている商品群があれば、そこに課題が潜んでいる可能性が高い、というのが講師の説明です。
「構成比が高い」だけだと、まだ良い悪いは分からないですよね。
いいところに気づきましたね。構成比の高さ自体は、それだけでは良し悪しを判断できません。市場の標準や自社の強みと整合しているかどうかで評価が変わります。
なるほど、比べる相手があって初めて意味が出る数字なんですね。
そうです。
第3段階は、アイテム、つまり個別商品ごとの評価です。課題がありそうな商品群の中で、個別商品レベルで、品揃えの幅は適切か、陳列スペースの配分は適切か、売価の設定は適切かを評価します。観点は、品揃えが偏っていないか、売れ筋商品にスペースが十分割かれているか、値引きに頼った売価設定になっていないか、の3つです。
3段階を通して見ると、やっていることは一貫しています。聞き手がまとめたとおり、全体から個別へと段々に範囲を絞り込みながら、前年や市場との水準・構成のギャップを見つけていくのです。講師も「その一言に尽きます」と応じていました。
アイテムレベルの見方:売れ筋・死に筋とスペース配分
このアイテムレベルの評価って、具体的にはどうやって見分けるんですか。
実務的には、単品ごとの販売データを定期的に見て、売れ筋と死に筋を把握するのが基本です。
見る視点は2つです。動きの鈍い商品を、いつまでも同じスペースで置き続けていないか。逆に、売れている商品のスペースが手薄になっていないか。
そしてスペース配分を見直すときは、増やす商品だけを考えるのではなく、その分どの商品のスペースを減らすのかも、対で考える必要があります。総スペースには限りがあるので、増やす・減らすをセットで提案できると、答案の説得力が上がる、と講師は言います。
「増やす」だけ書いて終わりにしがちですけど、「その分どこを削るか」まで書くと一段深い答案になるんですね。
そこまで書けると、採点者にも診断の解像度が伝わります。
診断の深さと、打ち手の大きさ
どの段階で大きなギャップが見つかったかによって、提案すべき打ち手の粒度も変わってきます。全社的な戦略転換が要るのか、特定商品群のてこ入れなのか、個別商品の入れ替えなのか。聞き手はこれを「診断の深さと、打ち手の大きさが対応してる」とまとめ、講師も「はい」と答えていました。
改善提案までセットで問われる場合は、診断で特定した課題のレベルに対応する打ち手を書きます。講師が挙げた対応は次のとおりです。
| 課題のレベル | 書く打ち手 |
|---|---|
| 全体 | 取扱分野の再構築 |
| サブ | 商品群構成の見直し |
| アイテム | 個別商品の入れ替え、スペース配分の調整、売価の見直し |
診断がズレなければ、提案も自然に正しい粒度になる、って感じですね。
はい。
答案の型:どの段階の話かを明示する
ここまでの診断を、解答にどう落とし込むか。講師が示した型は次のとおりです。
答案の型
「与件文より、全体、または特定の商品群、または特定の商品について、前年比、または市場比で、構成比・実績が高い、低い、あるいは悪化していることが読み取れる。このことから、品揃えの幅、スペース配分、売価設定に課題があると考えられる」
この型、さっきの3段階がそのまま入ってますね。
その通りです。ここで一番大事なのは、「どの段階の話をしているか」を答案上でも明示することです。
講師は、その理由を2方向から説明します。全体の課題を指摘する設問で個別商品の話だけをすると、論点がずれる。逆に、個別商品の課題を問う設問で全体の話に終始すると、具体性を欠く。聞き手の言葉では、設問が求めている粒度と、答案の粒度を合わせる、ということです。
改善提案までセットで問われる場合も同じ考え方で、診断の粒度と提案の粒度をそろえます。診断がズレなければ、提案も自然に正しい粒度になります。
混同・誤答しやすい4つのポイント
最後に、混同や誤答をしやすいポイントを、講師と一緒に確認しておきましょう。
1つ目は、これからどんな品揃えにすべきかという設計側の論点と混同することです。今日扱っているのは、今すでにある品揃えの何が課題かを特定する診断・分析の話。出発点がまったく違うので、設問がどちらを聞いているか、まず見極めます。聞き手も「最初に教えてもらった、『これから何を置くか』と『今置いてあるものの、どこが悪いか』の違いですね」と振り返っていました。
2つ目は、3段階を飛ばして、いきなり個別商品の話をしてしまうことです。与件文に具体的な商品名が出てくると、そこに引っ張られて、全体・サブカテゴリーレベルの水準確認を省略しがちです。診断の手順としては、段階を踏むことが重要です。
さっきのクローゼットの例で言うと、いきなり一着だけ見て「これがダメだ」って結論づけちゃうようなものですね。
いい例えです。まさにそれです。
3つ目は、前年との比較と市場との比較を混同する、またはどちらか一方だけで判断することです。前年比で悪化していても市場水準自体が低下している場合もあれば、前年並みでも市場全体は伸びている中で相対的に見劣りする場合もあります。両方の軸で見て初めて、正確な診断になります。
前年と比べただけだと安心しちゃうこともある、ってことですよね。市場全体が伸びてる中で自分だけ横ばいだったら、実質後退してることになる。
その視点、すごく大事です。
4つ目は、構成比の高さ・低さだけを見て、それが良いか悪いかを短絡的に判断することです。構成比が高いこと自体は必ずしも問題ではなく、市場の標準的な構成比や自社の強みと整合しているかどうかで評価が変わります。第2段階のところで出てきた注意点です。
数字の大小だけを見るんじゃなくて、「その大小に意味があるか」まで考える、ってことですね。
はい、そこまで含めて診断です。
| 誤り | 見るべきこと |
|---|---|
| 設計側との混同 | 設問が診断か設計か |
| 段階を飛ばす | 全体・サブ |
| 前年か市場の一方だけ | 両方の軸で比べる |
| 構成比の高低だけ | 市場の標準・自社の強みとの整合 |
本番でのチェックポイント
講師は最後に、本番でこの論点を使うときのチェックポイントを3つにまとめます。
本番でのチェックポイント(動画より)
- 数値・比較の記述が出たら、まず全体・サブカテゴリー・アイテムのどのレベルの話かを見極める
- 全体から個別へ段階を踏んで絞り込みながら、前年比と市場比の両方でギャップを確認する
- 診断の粒度と、答案・提案の粒度をそろえる
聞き手は「全体から個別へ、段階を踏む。前年と市場、両方で見る。診断と提案の粒度をそろえる。この3つ、本番で数字の山を見たときに、まず思い出すようにします」と復唱し、講師は「それができれば、どんな数字が並んでいても、慌てずに読み解けるはずです」と締めくくりました。
まとめ
動画の整理
- 今回の論点は、既存の品揃えの何が課題かを見抜く診断・分析。これからの品揃えを設計する話とは別
- 診断には3つのレベルがある。全体(企業・大きな取扱分野)、サブカテゴリー(商品群)、アイテム(個別商品)。与件文の書かれ方でレベルを見分ける
- 手順は、全体の水準→商品群ごとの構成→個別商品の評価。クローゼットの整理と同じく、大きいところから絞る
- アイテムの評価は、売れ筋と死に筋の把握と、スペース配分の増減をセットで考える
- 答案では、どの段階の話かを明示し、診断の粒度と提案の粒度をそろえる
- 注意は4つ:設計側との混同、段階の飛ばし、前年比か市場比の一方だけで判断、構成比の高低だけで判断
数字が並んでいると、どれも大事に見えて手が止まる。そんなときは、まず「これはどのレベルの話か」と自分に問い、全体から個別へ一段ずつ絞っていきます。順番さえ決まっていれば、数字の山も慌てずに読み解けます。まず動画で流れを耳に入れてから、このページで型を確認してみてください。
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