PB(プライベートブランド)戦略で立場が逆転する要注意論点
事例Ⅱ 第3回
「知識としては知っているはず。でも二次の与件文でPBが出てきたとき、どこを見て、どう答案に落とし込めばいいか、パッと言えますか?」。動画は、PB(プライベートブランド)をめぐるこんな問いかけから始まります。このページでは、売る側と作る側で良い面と悪い面が逆になる立場の切り分け、与件文のサイン、メリット・デメリット、受託製造からの脱却、答案の型、混同しやすい誤りを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
PBは知っているのに、与件文で気づけない
動画のテーマは「PB、プライベートブランド」です。スーパーやコンビニが自分の名前で商品を作る、あれです。講師はまず、「知識としては知っているはず。でも二次の与件文でPBが出てきたとき、どこを見て、どう答案に落とし込めばいいか、パッと言えますか?」と問いかけます。
聞き手は正直に、PBと聞くと「自社ブランドの商品を作る」くらいのイメージしかなく、与件文にどんな記述が出たら「これはPBを使う場面だ」と気づけばいいのか、そこがはっきりしない、と答えます。知識はあるのに。
ここで講師が強調するのが立場です。PBは、事例企業がPBを売る側なのかPBを作らされる側なのかで、良い面と悪い面の中身がまるで逆になります。ここを取り違えると、解答の方向性ごと外れてしまう、という警告です。
え、逆になるんですか……。それ、知らずに本番で書いたら危なかったです。
はい。今日は、PBという論点を二次試験の現場でどう見抜いて、どう答案に落とし込むかを、立場の違いも含めてじっくりやっていきます。
動画のタイトルには「事例Ⅱと事例Ⅲで立場が逆転する要注意論点」とあります。講師は、メーカー側の立場が「生産や技術がテーマになる事例」で問われることもある、と話しています。
出方は2通り:売る側と作る側
講師が最初に整理するのは、この論点がどう出るかです。中心の1つは、流通業者側、つまりスーパーやチェーンストアが事例企業になっているパターンです。「PBを新たに開発すべきか」「PB比率を高めるべきか」といった形で、メリットとデメリットの両面を踏まえた提案が求められます。
もう1つは逆の立場、メーカー側のパターンです。事例企業が取引先のPBを受託製造している側で、「PB供給を続けるべきか、自社ブランドに軸足を移すべきか」という、受託製造から抜け出す論点と組み合わさって出ることがあります。
PBを増やすかどうかを、良い面と悪い面の両方から考えて助言する、ということですね。
そうです。もう一つは逆の立場、メーカー側のパターンです。
作る側と売る側、両方の立場で出る可能性があるんですね。
はい。それと、単独で「PBとは何か」だけを問う設問は少なくて、他の論点と組み合わせて出題されることが多いんです。
PB単体じゃなくて、他の論点とセットで顔を出す感じなんですね。
組み合わせの相手として講師が挙げたのは、チャネル戦略、ブランド戦略、生産計画、受託量が変動するリスクといった論点です。
与件文のサイン:立場ごとに3つずつ
次は、与件文のどんな記述が出たらこの論点に反応すべきか、着眼点です。流通業者側とメーカー側に分けて、3つずつ挙げられます。
流通業者側(PBを企画・販売する立場)のサイン
- 消費者情報を持っている:自社の店舗や顧客のデータ、会員情報、購買履歴などを示す記述。
- 費用と競争の悩み:広告宣伝費や営業経費の負担が重い、価格競争が厳しいといった記述。
- 差別化の悩み:既存のナショナル
ブランドだけでは他社と差別化できない、という課題の記述。
それは、その情報を商品開発に使えるっていうヒントですよね。
そうです。
コスト面の悩みと、差別化の悩み、両方がPBに向かうヒントになるんですね。
メーカー側(PBを受託製造する立場)のサイン
- 特定の取引先への売上依存度が高い:主要顧客への依存という論点とも重なります。
- 生産計画や在庫に関する記述:受注量の予測が難しい、繁閑の差が大きいといった内容。
- 自社での直接販売が弱い:自社ブランドでの直接販売の実績が乏しい、営業力が弱いという記述。
依存してる相手のPBを作らされてる、っていう構図ですね。
そうです。
この3つが出たら、受託製造側としてPBやOEMの論点を疑うんですね。
最初にやること:立場の切り分け
拾った記述をどう整理するか。講師が「一番大事」と言うのは、事例企業がPBを企画・販売する流通業者側なのか、PBを受託製造するメーカー側なのかを最初に切り分けることです。ここを誤ると、メリット・デメリットの中身ごと逆になります。
さっき言ってた「逆になる」って、ここのことだったんですね。
はい。まず流通業者側で整理する場合、メリットは3つです。
次の表は、この先で見ていく内容を、立場ごとに短く並べたものです。
| 見る点 | 流通業者側 | メーカー側 |
|---|---|---|
| 立場 | PBを企画・販売 | PBを受託製造 |
| サイン | 情報・費用・差別化 | 依存・在庫・営業力 |
| 良い面 | 開発・価格・ | 安定・製造に集中 |
| 悪い面 | 売れ残り・欠品 | 依存・交渉力低下 |
流通業者側:メリット3つ・デメリット2つ
流通業者側のメリットは3つです。
- 自社が持つ消費者の購買データやニーズ情報を、商品開発に反映できる。
- 広告宣伝費や営業にかかる費用を抑えられるため、比較的安価に商品を提供できる。
- 消費者ニーズを捉えた商品で付加価値を高めることで、自社のブランドイメージが向上する。
聞き手は、さっきの与件文の着眼点、つまり消費者情報とコスト負担、差別化の悩みが、そのままこの3つのメリットにつながっていると整理し、講師も「そのとおりです」と応じます。
一方でデメリットも2つあります。
- 仕入れた商品を基本的に自社で買い取ることが多く、売れ残りリスクを自社で負う。
- 需要予測を誤って少なく作りすぎると、長期間の欠品につながる。
売れなかったら在庫として自分で抱える、逆に作らなさすぎたら品切れが続く、両方向にリスクがあるんですね。
はい。次はメーカー側、受託製造で整理する場合です。
メーカー側:安定の裏にあるデメリット
メーカー側、受託製造の立場で整理する場合のメリットは、次の3つです。
- 著名な相手先ブランドを利用できることで、売上が安定しやすい。
- 製造に集中できて、ノウハウが蓄積できる。
- 自社で営業のための人件費や販促費をかけずに済み、販売チャネルの開拓も不要になる。
作ることに専念できて、営業しなくていい分、経営が安定しやすいってことですね。
そうです。ただしデメリットもあります。
デメリットは6つあります。
- 委託先への依存度が高まると、交渉力が弱くなる。
- 自社の営業力そのものが弱まってしまう。
- 自社ブランドを消費者に訴求できない。
- 顧客ニーズを捉えられず、自社の企画開発力が弱体化する。
- 利益率が低い。
- 委託先の都合で急に取引を打ち切られる、経営リスクが高い。
メリットで挙げてた「経営が安定する」の裏側に、これだけのデメリットが積み重なってるんですね……。
たとえ話:アクセサリー作家と、脱却の4つの道筋
ここで講師はたとえ話を出します。手作りのアクセサリー作家さんが、最初は雑貨屋さんから「このデザインで作ってください、うちの店の看板で売ります」と頼まれて作り始めたとします。
あ、それって受託製造の話ですよね。仕事はもらえるけど、自分の名前じゃなくて、雑貨屋さんの名前で売られる。
そうです。最初は仕事が安定してもらえて助かりますが、ずっとそれだけだと、作った本人の名前はお客さんに一切知られません。しかも雑貨屋さんの都合で「もう発注しません」となったら、収入が一気に途絶えます。
それ、まさに交渉力が弱いとか、経営リスクが高いっていう話ですね。じゃあこの作家さんは、どうすればいいんですか?
だからこそ、脱却の道筋が必要になる、と講師は言います。実際の解答でも使える考え方が、次の4つです。
- 委託先と競合しない範囲で、新製品限定・小規模から自社ブランドの直販を始め、徐々に量を増やす。
- 通信販売など、自社で直接販売できるチャネルを整備する。
- 委託先への供給と並行して、自社ブランドの認知度を高める取り組みを進める。
- 営業力を強化して、自社で直接の取引先を開拓していく。
いきなり全部を自分名義に切り替えるんじゃなくて、少しずつなんですね。
はい。
さっきのアクセサリー作家さんで言うと、雑貨屋さんへの納品を続けながら、週末のマルシェとかネット販売で少しずつ自分の名前で売る場所を増やしていく、みたいなイメージですね。
いい言い換えです。まさにそういう発想です。
主要顧客への依存と、同じ引き出し
ここで聞き手が、受託製造から抜け出す話は、さっきの「特定の取引先への依存度が高い」という与件文の着眼点とそのままつながっている気がする、と気づきます。講師は「鋭いですね」と受けて、こう説明します。PBやOEMの供給は、主要顧客への依存の一つの形と捉えることができる。だから、依存から抜け出す対応策はそのまま使い回せる、というのです。
講師が挙げた、主要顧客への依存から抜け出す4つの対応策は次のとおりです。
- 営業方針を、小規模な顧客にも目を向ける方向へ転換する。
- リピートや口コミによる需要を喚起する。
- 利益率をもとに優良な顧客を選別する。
- 自社ブランドを強化して、新規顧客の開拓を誘発する。
PB・OEMからの脱却と、主要顧客への依存からの脱却、実は同じ引き出しから答えを持ってこられるんですね。
そうです。
ブランドイメージ向上は自動ではない
流通業者側のメリットに出てきた「ブランドイメージが向上する」について、講師はもう一段深掘りします。ブランドが重視されるのは、規模の大きい企業に対しても脅威になりうる、強い競争優位性になるからです。
PBを始めれば自動的にブランドイメージが上がる、って考えちゃダメなんですよね、たしか。
よく覚えていますね。ブランドを構築するには3つの要素が必要です。
3つの要素は次のとおりです。1つは、一貫したブランドコンセプト、自社ならではのこだわりがあること。2つ目は、継続的に認知度を高めていく方策があること。3つ目は、ブランドを訴求する対象の顧客が明確になっていることです。
PBを企画・販売するだけじゃなくて、この3つが伴って初めて、ブランドイメージ向上っていう効果につながるんですね。
はい。特に1つ目の、消費者ニーズを捉えた一貫したコンセプトがあるかどうかがポイントです。
コンセプトが伴わないまま「PBを始めます」とだけ書くと、効果の根拠が弱い解答になってしまう、というのが講師の注意です。
答案の型:流通業者側とメーカー側
ここまでの整理を、解答にどう落とし込むか。講師はまず、流通業者側でPB展開を提案する場合の型を示します。
流通業者側の型
「自社が持つ消費者情報や購買データを商品開発に活かし、〇〇というニーズに対応したPB商品を展開する。これにより、広告費を抑えた比較的安価な価格提案と、自社ブランドイメージの向上を実現し、〇〇という効果につなげる。ただし、売れ残りや欠品のリスクに備え、需要予測の精度向上や小ロット化といった対応もあわせて行う」
メリットを2つ並べて、効果につなげて、最後にデメリットへの対応策までワンセットにするんですね。
そうです。ここで「デメリットに触れない」パターンを避けられます。
次に、メーカー側でPB供給への向き合い方を答える型です。受託製造から抜け出す論点とも共通します。
メーカー側の型
「PB供給は経営の安定に寄与する一方、委託先への依存が続くと交渉力や自社ブランドの訴求力が弱まる。そこで、委託先と競合しない範囲で自社ブランド商品を並行して育てる、取引先を分散する、技術提案力を高めて対等な関係を築く、のいずれかによって脱却の道筋をつける」
メリットを認めつつ、リスクも認めて、そのうえで対応策を選ぶ、っていう構成、さっきの流通業者側の型と考え方が似てますね。
よく気づきました。どちらの立場でも、「メリットだけ」でも「デメリットだけ」でもなく、両面を踏まえたうえで対応策まで書く、という骨格は共通しているんです。
混同・誤答しやすい3つのポイント
最後に、講師は混同・誤答しやすいポイントを3つ整理します。
1つ目は、PBとOEMを同じ意味で使ってしまうことです。PBは、流通業者が企画し、自社ブランドで売ることに主眼があります。OEMは、メーカーが委託を受けて製造することに主眼があります。
同じ取引を、流通業者側から見ればPB、メーカー側から見ればOEM生産っていう、表と裏の関係でしたよね。
そのとおりです。設問がどちらの立場を問うているかを取り違えないように、事例企業が売る側なのか作る側なのかを、まず確認する癖をつけてください。
さっき最初に教わった「立場の切り分け」が、ここでも一番大事になるんですね。
2つ目は、PBのメリットだけを書いて、売れ残りや欠品というデメリット、リスクに触れないことです。事例企業がPBを導入・拡大する提案をするときは、需要予測の精度向上や小ロット・多頻度生産といった対応策とセットで書かないと、提案が片手落ちになります。
これ、さっきの解答の型でも「ただし」の後にちゃんと入ってましたね。
3つ目は、PBを導入すればブランドイメージが自動的に上がると短絡してしまうことです。ブランドイメージの向上は、消費者ニーズを捉えた商品づくりができて初めて得られる効果であって、PB化そのものが目的化してはいけません。
さっきのブランド構築の3要素、あれを飛ばして結論だけ書いちゃうと、この誤答パターンにはまるんですね。
| 誤り | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| PBとOEMの混同 | 立場の取り違え | 売る側か作る側かを確認 |
| メリットだけ書く | 提案が片手落ち | 対応策とセットで書く |
| 自動で上がると短絡 | 効果の根拠が弱い | ニーズを捉えた商品づくりを書く |
動画が挙げた確認点
- 事例企業は、PBを企画・販売する側か、受託製造する側か
- メリットとデメリットの両面を踏まえ、対応策や脱却の道筋まで書いているか
- ブランドイメージの向上を、消費者ニーズを捉えた商品づくりと結びつけて書いているか
まとめ
動画の整理
- PBが出たら、まず事例企業が流通業者側かメーカー側かを切り分ける。取り違えると中身が逆になる
- 流通業者側は、メリットとデメリットを両方書き、リスクへの対応策までセットにする
- メーカー側は、経営の安定というメリットと交渉力低下というデメリットの両方を踏まえ、自社ブランドを育てる道筋を示す
- サインは立場ごとに3つずつ。受託製造からの脱却は、主要顧客への依存からの脱却と同じ引き出しが使える
- 落とし穴は、PBとOEMの混同、ブランドイメージ向上の短絡。デメリットに触れない書き方にも注意する
動画の最後に、聞き手は「知識としては知ってたつもりでしたけど、売る側と作る側、両方の立場でここまで整理できたのは今日が初めてです」と話しています。立場を切り分け、両面を踏まえ、対応策まで書く。この流れを持っておけば、本番でPBを見ても、立場を見誤らずに根拠のある答案が組み立てられるはずです。
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