ポイント制度とFSP
事例Ⅱ 第4回
「ポイント制度とFSP、知識としては知っているのに、与件文に出てくると『とりあえずポイント制度を書いておけばいいか』で終わってしまう」。動画はこんな指摘から始まります。このページでは、二次試験での出方と与件文のサイン、ポイント制度とFSPの違い、FSPの三段階、RFM分析とデシル分析、解答の型、やりがちな失敗5つを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
ポイントカードを配って終わり、になっていませんか
「ポイント制度とFSP、知識としては知っているのに、与件文に出てくると『とりあえずポイント制度を書いておけばいいか』で終わってしまう」。動画は、講師のこんな指摘から始まります。聞き手も「ポイントカードを出す、顧客が喜ぶ、終わり、みたいなイメージで止まっていました」と認めます。
今回の動画は、ポイント制度とFSPが何を目的にした施策なのか、どういう順番で進めるものなのか、留意点まで含めて、二次試験でどう使うかを掘り下げます。聞き手は正直なところ、ポイント制度とFSPを「ほぼ同じもの扱い」にしていたそうです。講師は「まずそこから崩しましょう」と言って本題に入ります。このページは、次の順に動画をまとめました。
- 二次試験での出方と、与件文のサイン
- ポイント制度とFSPの違い
- FSPの三段階と、優良顧客の識別(RFM分析・デシル分析)
- 解答の型
- やりがちな失敗5つ
二次試験での出方:単独の設問にもなる
講師によると、この論点は客数を増やす施策の一つとして出るだけではありません。単独の設問になることも多いそうです。動画で挙がった問われ方は、次の2つです。
- 「会員カードを発行すべきか助言せよ」
- 「顧客との関係性を強化するために採用した方策は何か」
単独で聞かれるんですね。それは知らなかったです。
与件文にPOSデータや顧客カードの記述があると、その活用策として問われる流れも多いですね。だから、与件文にどんな記述が出たら反応すべきか、着眼点を押さえておく必要があります。
与件文のサイン:どんな記述に反応するか
聞き手が「どんな記述に反応すればいいんですか」と尋ねると、講師は4つのサインを挙げます。
- 課題の記述:「一見客が多い」「リピーターが少ない」「顧客の顔が見えていない」など、顧客を個別に把握できていないことを示す記述。講師は、これが一番わかりやすいと言います。
- 既にある設備・取り組みの記述:会員カード、ポイントカード、顧客台帳、POSシステムなど。
- 差別化への意欲の記述:「優良顧客を優遇したい」「顧客ごとに対応を変えたい」など。
- 個人情報保護に関する制約や懸念の記述:講師は、見落としがちだが、後で留意点として効いてくる伏線だと言います。
あー、それ、顧客が誰だかわからないまま商売してる、ってことですよね。
そうです。もう一つは、会員カードやポイントカード、顧客台帳、POSシステムといった、既にある設備や取り組みの記述。あとは「優良顧客を優遇したい」「顧客ごとに対応を変えたい」という差別化への意欲の記述も、この論点のサインです。
意欲があるのに、まだ実現できていない、というパターンですね。
その通り。そしてもう一つ見落としがちなのが、個人情報保護に関する制約や懸念の記述。これが出てきたら、後で留意点として効いてくる伏線だと思ってください。
伏線、覚えておきます。
ポイント制度とFSPは何が違うのか
聞き手が「肝心の違いは結局何なんですか」と尋ねると、講師はまずポイント制度から説明します。ポイント制度は、購買額に応じてポイントを付け、貯まったら特典を渡す、その仕組みそのものです。顧客からすると分かりやすい金銭的なお得感で、来店や購買のきっかけを作る、いわば入口の施策だと言います。
対してFSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)は、ポイント制度も含めて、購買実績に応じて優良顧客ほど手厚くプロモーションする、より広い考え方です。一律にポイントを配るのではなく、優良顧客とそれ以外で対応に差をつける点が、ポイント制度単体との一番の違いだと講師は言います。
| 見る点 | ポイント制度 | FSP |
|---|---|---|
| 位置づけ | 入口の施策 | より広い考え方 |
| 中身 | ポイントを付け、特典を渡す | ポイント制度も含め、優良顧客ほど手厚く |
| 対応 | 一律に配る形 | 優良顧客とそれ以外で差をつける |
差をつける、がキーワードなんですね。イメージしやすい例ってありますか?
スマートフォンの連絡先アプリを思い浮かべてください。誰とでも同じように連絡先が並んでいるわけじゃなく、よく電話やメッセージをするお相手は自動的に上位に出てきたり、通知の優先度が上がったりしますよね。
あ、それ分かります。あまり連絡しない相手とは扱いが違います。
それと同じ発想です。まず「誰とどれくらいやり取りしているか」というデータを蓄積して、そのうえでやり取りの多い相手を識別して、対応の濃さを変える。これがFSPの骨組みなんです。
動画のたとえ:連絡先アプリ
- 誰とどれくらいやり取りしているか、というデータを蓄積する
- やり取りの多い相手を識別する
- 相手によって、対応の濃さを変える
聞き手は、ここで「データを取って、識別して、差をつける。この順番自体が大事なんですね」と整理しました。講師は「まさにそこです」と応じます。この順番が、次の三段階です。
FSPの進め方は三段階
講師が示したFSPの進め方は、次の三段階です。
- ① データの蓄積:会員カードなどで、購買データを個人単位で蓄積する。
- ② 優良顧客の識別:蓄積した購買履歴から、優良顧客を識別する。
- ③ 差をつけたプロモーション:優良顧客に対して、個別のDMや特別な特典で差をつけたプロモーションを行う。
顧客カードとPOSを組み合わせると、いつ、誰が、何を、いくつ買ったかが分かります。この情報が、①と②の土台になります。
②の識別:RFM分析とデシル分析
聞き手が「②の『識別する』って、具体的にどうやるんですか」と尋ねます。講師が挙げたのは2つの手法です。
1つ目はRFM分析です。最終購買日、購買頻度、購買額の3つの指標で優良顧客を識別し、重点的に管理します。背景には、上位2割ほどの顧客が売上の8割を生み出す、といった考え方があります。100人のお客様がいたら、20人前後の上位顧客が売上の大半を占めているイメージです。
2つ目はデシル分析です。購入金額の多い順に顧客を並べ、10のグループに等分します。100人いたら10人ずつ10グループに分けて、上位グループほど手厚く対応する、という考え方です。
| 見る点 | RFM分析 | デシル分析 |
|---|---|---|
| 見る軸 | 最終購買日 | 購入金額の1つ |
| やり方 | 3指標で優良顧客を識別し、重点的に管理 | 金額の多い順に並べ、10グループに等分 |
| 講師の整理 | 複数の軸で立体的に見る | 一本の軸で単純に順位づけ |
2割の人が8割を稼いでいる、というのはインパクトありますね。
もう一つ、購入金額の多い順に顧客を並べて、10のグループに等分するデシル分析という手法もあります。RFMは複数の軸で立体的に見る分析、デシルは金額という一本の軸で単純に順位づける分析、という違いも押さえておくといいですね。
RFMとデシル、混同しないように整理しておきます。
与件文は「どの段階まで進んでいるか」で読む
では、POSシステムとの関係はどう考えるか。講師が与件文の読み方として求めるのは、与件文のPOSデータや顧客カードの記述が、三段階のどこまで進んでいる状態なのかを読み取ることです。
- ①データを取る仕組みがある段階
- ②分析して優良顧客を識別する段階
- ③識別した優良顧客に、実際に差をつけたプロモーションをしている段階
その段階によって、書くべき提案が変わるということですか。
そうです。まだ①の段階なら「分析して優良顧客を識別しましょう」と書けますし、①②はできているのに③がないなら「識別した優良顧客に個別の特典で差をつけましょう」と書ける。段階を見極めることが、与件文情報の整理そのものになります。
| 与件文の状態 | 書ける提案 |
|---|---|
| まだ①の段階 | 分析して優良顧客を識別する |
| ①②はできているが③がない | 識別した優良顧客に個別の特典で差をつける |
解答の型:識別・分類と差をつけたプロモーション
聞き手が「実際に解答へ落とし込むときの型を教えてください」と頼むと、講師は基本の型を示します。
動画が示した基本の型
「〜(会員カードやPOSデータ等)により顧客の購買履歴を把握し、購買実績に応じて顧客を識別・分類したうえで、優良顧客に対し〜(個別のDMや特典等)のプロモーションを行うことで、固定客化・客単価向上を図る」
「識別・分類」と「差をつけたプロモーション」、両方入れるのがポイントですね。
そうです。単に「ポイント制度を導入する」だけで終わらせず、データを取る、分析する、差をつけて働きかける、この一連の流れのどこを提案しているかを明確にすること。それから、与件文に既にポイントカードやPOSの記述がある場合は、「新たに導入する」ではなく「既存の仕組みを活用して分析や個別対応の段階に進める」という書き方のほうが、与件文に即した提案になります。
ゼロから作る話じゃなく、今ある仕組みを一歩進める話にする、ということですね。
その通り。あとはDMや試食会、懇親会といった交流イベントなど、顧客関係を強化する他の施策と組み合わせて書くと、提案に厚みが出ます。
やりがちな失敗5つ
聞き手が「逆に、やりがちな失敗パターンも教えてください」と頼み、講師が5つを挙げます。
1つ目:新規顧客の獲得策として提案する
一番多い失敗です。ポイント制度もFSPも、本来は既存顧客の固定客化と来店頻度の向上を目的にした施策です。新規顧客向けに書くと目的がずれます。
私、まさにそこで手が止まったことがあります。新規のお客様を呼ぶ施策と、つい混ぜて書いてしまって。
多いんですよ、そこ。
2つ目:ポイント制度を導入すれば効果が出ると単純化する
実際には、顧客にカードを使い続けてもらえるだけの魅力を、常に見直し続ける必要があります。導入して終わり、ではありません。
導入がゴールじゃなくて、そこからが本番なんですね。
3つ目:ポイント連携を無条件によい施策として書く
複数の企業間でポイントを連携・共通化する場合、自社が付与したポイントが他社で消費されると、必ずしも自社の売上増加につながらないことがあります。講師は、連携そのものを無条件によい施策として書かないよう求めます。
連携すればお得、と単純に書きたくなりますけど、そこは注意なんですね。
4つ目:個人情報保護への配慮を書き忘れる
ポイントカード事業は顧客の個人情報を扱うので、運用面の留意点としてこの点に触れる設問もあります。書き忘れると片手落ちになります。与件文のサインの④で出てきた「個人情報保護の記述」は、ここで効いてくる伏線です。
5つ目:FSPをポイント制度と同じ意味で使う
FSPは、優良顧客ほど優遇するという差別化の考え方を含む、より広い概念です。入口の施策であるポイント制度と、優遇の考え方全体であるFSPは、使い分けます。
動画が勧める確認の順番
- 与件文に顧客カードやPOSの記述、優良顧客を優遇したいという意欲の記述があるか
- ポイント制度とFSPの、どちらの深さで問われているか
- データ蓄積・優良顧客の識別・差をつけたプロモーションの、どこまで進んでいるか
- 解答に、識別・分類とプロモーションの両方が入っているか
まとめ
動画の整理
- ポイント制度は入口の施策。FSPは、優良顧客ほど手厚くする、より広い考え方
- FSPの進め方は三段階:①購買データを個人単位で蓄積、②優良顧客を識別(RFM分析・デシル分析など)、③差をつけたプロモーション
- 与件文のサインは4つ:顧客を個別に把握できていない課題、既にある設備や取り組み、差別化への意欲、個人情報保護の制約や懸念
- 与件文が三段階のどこまで進んでいるかを見極めて、提案を書く
- 解答の型には、識別・分類と、差をつけたプロモーションの両方を入れる
5つのチェックポイント
- 新規顧客獲得策として書かない
- 導入して終わりにしない
- ポイント連携は、リスクにも触れる
- 個人情報保護にも触れる
- FSPをポイント制度と同じ意味で使わない
講師は、この5つのチェックポイントを持っておけば、本番でこの論点に出会っても迷わず書けるはずだと言います。動画の最後に、聞き手はこう振り返っています。「ポイント制度とFSP、ただの割引の話じゃなくて、顧客データをどう使うかという仕組みの話だったんですね。すっきりしました」。サインに気づき、段階を見極め、型に沿って書く。この流れを持っておくと、答案が「ポイント制度を導入する」だけで終わりません。
動画で聞く
続けて読む
- 第1回 カテゴリー診断事例Ⅱ 数字の山から課題を絞る。品揃えの3段階診断
- 第2回 ISP(インストア・プロモーション)事例Ⅱ 店頭施策は価格を動かすか動かさないかで選ぶ
- 第3回 PB(プライベートブランド)戦略で立場が逆転する要注意論点事例Ⅱ PBは売る側と作る側で中身が逆になる
- 第5回 品揃え戦略を幅と深さの2軸で決める事例Ⅱ 増やす・減らすで終わらせない品揃え戦略
- 第6回 製品ミックス(幅と深さ)事例Ⅱ 製品ミックス。幅と深さを使い分ける読み方
- 第7回 インターナルマーケティング事例Ⅱ サービス業だけじゃない、従業員施策を3つの柱で仕分ける
- 第8回 サービス・リカバリー事例Ⅱ サービス・リカバリー。クレーム後の助言の組み立て方
- 第9回 サービスの一般的特質と対応(2)事例Ⅱ 品質のばらつきと繁閑差、打ち手の仕分け方
- 事例ⅡのWebテキスト一覧同じ科目の35本を一覧・検索
- 中小企業診断士 2次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

