品揃え戦略を幅と深さの2軸で決める
事例Ⅱ 第5回
「品揃えについて『増やすべきか、減らすべきか』を聞かれたとき、与件文のどこを見て判断していますか?」。動画は、講師のこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、幅と深さの2軸、与件文の着眼点、判断の順序と材料、答案の型、誤答パターンをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「増やす?減らす?」で手が止まる
動画は、講師の問いかけから始まります。「品揃えについて『増やすべきか、減らすべきか』を聞かれたとき、与件文のどこを見て判断していますか?」。聞き手の答えは正直です。毎回あやふやで、カテゴリーを広げる話なのか、今ある分野を深掘りする話なのか、与件文からどちらを拾えばいいのか分からなくなる。増やす・減らすの二択で悩んで、結局どっちつかずの答案を書いてしまうことが多い、と打ち明けます。
そこが毎回あやふやで……。カテゴリーを広げる話なのか、今ある分野を深掘りする話なのか、与件文からどっちを拾えばいいのか分からなくなるんです。
そこ、多くの受験生がつまずくところです。今日は品揃え戦略を、二次の現場でどう見抜いて、どう答案に落とし込むかをやっていきます。
講師は、二択で悩むこと自体が「もったいない」と言います。品揃えは「増やすか減らすか」の一本の軸ではなく、カテゴリーの幅と、カテゴリー内の品目の深さ、2つの軸で考えるものだからです。
- 幅:カテゴリー(商品分野)がいくつあるか。広げるとは、カテゴリー自体を増やすことです。
- 深さ:1つのカテゴリーの中に、品目(アイテム)がどれだけそろっているか。深めるとは、アイテム数を充実させることです。
品揃えは「増やすか減らすか」の一本の軸じゃなくて、カテゴリーの幅と、カテゴリー内の品目の深さ、2つの軸で考えるものなので。
あ、幅と深さ、両方見ないといけないんですね。
出方:終盤の助言問題として聞かれる
まず出方です。事例Ⅱの小売業で、「今後どのような品揃えにしていくべきか助言せよ」「取扱商品の見直しについて助言せよ」という形で問われます。
これも終盤の助言問題として出やすいパターンですか?
そうですね。他の設問で拾った強みや課題を踏まえて、じゃあ具体的に何を売るのかという着地点として聞かれることが多いです。
ということは、この設問だけ単体で考えるんじゃなくて、それまでの設問で見えてきた強みや課題とセットで方向性を組み立てる感じですね。
その通りです。だから前の設問の答えと矛盾しない方向性を出すことが大事になります。
つまり品揃えの設問は、それまでの設問で拾った強みや課題の「着地点」です。ここだけ単体で考えると、前の設問の答案と食い違うおそれがあります。講師は、単純な拡大・縮小の二択で終わらせず、幅と深さの2軸を組み合わせて考えるように、とまとめています。
与件文の着眼点:6つのサイン
聞き手が次に聞いたのは、絞るべきか広げるべきかを、実際にどこを見て判断するのか、という点です。講師は着眼点を6つ挙げます。
- 1つ目:特定の商品分野に強いこだわりや専門知識、仕入ルートを持っているという記述。その分野に絞り込んで深掘りするサインです。
- 2つ目:リピーターの多くが特定分野を目的に来店している、その分野の来店頻度や購買単価が高いという記述。強い分野に品揃えを集中させる根拠になります。
- 3つ目:取扱分野の売上が不振、一部で在庫が滞留しているという記述。縮小候補のサインです。
- 4つ目:大手の総合店との価格競争にさらされているという記述。幅で対抗するより、専門化で差別化する方向のヒントになります。
- 5つ目:関連する分野の商品も扱ってほしいという声や、複数分野をまとめて買いたいというニーズがあるという記述。関連購買を狙ったカテゴリー拡大の根拠になります。
- 6つ目:仕入先の確保状況、陳列スペースの広さ、在庫管理体制、POSデータの有無。広げる・深める際に実現できるかどうかの根拠になります。
逆に、取扱分野の売上が不振とか、一部で在庫が滞留しているという記述があったら、それは縮小候補ってことですか?
3つ目がまさにそれです。それと4つ目、大手の総合店との価格競争にさらされている、という記述。これは幅で対抗するより、専門化で差別化する方向のヒントになります。
大手と同じ土俵で幅を広げても勝てないから、あえて絞る、という発想ですね。
はい。
| 与件文の記述 | 向かう方向 |
|---|---|
| こだわり・専門知識・仕入ルート | 絞り込んで深掘り |
| リピーターの目当て・高い頻度や単価 | 強い分野に集中 |
| 売上不振・在庫滞留 | 縮小候補 |
| 大手総合店との価格競争 | 専門化で差別化 |
| 関連分野の要望・まとめ買い | 関連購買を狙う拡大 |
| 仕入先・陳列スペース・POS | 実現できるかの根拠 |
6つ目、仕入先の確保状況、陳列スペースの広さ、在庫管理体制、POSデータの有無。これは広げる・深める際に実現できるかどうかの根拠になります。
方向性だけじゃなくて、実現できるかどうかまで拾う必要があるんですね。
狭める根拠も広げる根拠も出てきたら
聞き手は、ここで現実的な疑問を出します。狭める根拠と広げる根拠、両方の記述が出てくることもある。そのときはどちらを優先するのか、という問いです。
狭める根拠と広げる根拠、両方の記述が出てくることもありますよね。どっちを優先するんですか?
そこは与件文全体でどちらの記述が厚いか、強みとどちらが噛み合うかで判断します。
講師の答えは、与件文全体でどちらの記述が厚いか、そして強みとどちらが噛み合うかで判断する、というものです。1つの記述だけで方向を決めず、全体の厚みと、前の設問で拾った強みとの整合で決めます。講師はまとめでも、狭める根拠と広げる根拠の両方を拾うように、と繰り返しています。
方向性を考える順序:立ち位置→深める→最後に広げる
情報を整理するときは、まず今の商品構成が「狭くて浅い」「広くて浅い」「狭くて深い」「広くて深い」のどこに位置するかを、与件文から特定します。
今の立ち位置を決めてから、次にどっちに動くかを考える、という順番ですね。
そうです。方向性を考える順序にもコツがあります。
講師が示した基本の順序はこうです。まず、今ある強い1カテゴリーに特化して、その中のアイテム数を充実させ、関連購買を促す方向を検討する。それでも足りない場合に初めて、カテゴリー自体を増やす提案を慎重に検討する。
いきなりカテゴリーを増やす発想に飛びつくんじゃなくて、まず今ある強みを深める方を先に考えるんですね。
そうです。
判断材料は5つ
そのうえで、方向性を決めるときの判断材料が5つあります。答案の根拠は、ここから選んでいくことになります。
- ストアコンセプトとの整合性:新しく扱う(または止める)商品が、自店の強みやターゲット、提供価値と合っているか。
- 顧客ニーズと売れ筋・死に筋:どの分野・品目の購買頻度や単価が高いか低いか。
- 実現可能性:安定した仕入先を確保できるか、仕入や販売のノウハウがあるか、陳列スペースや在庫管理体制に余力があるか。
- 財務面のリスク:品揃えを広げるほど、仕入費や在庫維持費という負担が増えることを踏まえているか。
- 既存商品とのシナジー:新しく扱う商品が、今の主力商品の購買、いわゆるアップセルやクロスセルを促す関係にあるか。
3つ目の実現可能性は、先ほどの着眼点の6つ目と対応しています。聞き手も「さっきの着眼点で拾った、仕入先や陳列スペースの記述が、ここで効いてくるんですね」と確認し、講師は「そうです」と答えています。
ストアコンセプトとの整合性:店の「らしさ」
聞き手が「たとえるなら、どんな感じですか?」と聞くと、講師は次のたとえを出しました。
たとえ:こだわりの食材専門店
こだわりの食材を扱う専門店が、急に日用雑貨まで並べ始めたら、常連さんは「あれ、この店らしくないな」と感じます。逆に、こだわりの食材を軸にした関連商品を増やすなら、店らしさはむしろ強まります。
あー、それわかりやすいです。新しく扱う商品が、その店の「らしさ」を強めるか壊すか、で見るんですね。
その理解で大丈夫です。
財務リスクとシナジー、そして見直し続ける視点
4つ目の財務面のリスクで、講師が特に注意を促したのが季節性や流行性の強い分野です。そうした分野に手を広げると、シーズンが終わった途端に売れ残りが大量に残る、いわゆるデッドストックのリスクが高まります。
流行りものに手を出すときほど、在庫が残るリスクへの言及が必要ってことですね。
その通りです。
5つ目のシナジーについて、聞き手は「具体的にはどういう記述で見抜けばいいんですか?」と聞きました。講師の答えは、見抜き方の例と、その逆の例です。
メインの商品を買うついでに関連する小物も一緒に買っていく、という記述があれば、その小物を拡充する提案はシナジーが効いていると言えます。逆に、今の客層と全く関係ない商品を追加する提案は、シナジーの根拠が弱いことになります。
なるほど、既存の主力商品とのつながりがあるかどうかで、提案の説得力が変わるんですね。
最後に、講師は継続的な視点も添えています。品揃えは一度決めたら終わりではありません。POSデータなどで売れ筋・死に筋を定期的に把握して、過大在庫や品切れを避けながらラインアップを見直し続ける。聞き手も「判断して終わりじゃなくて、その後も見続けるんですね」と受け止めていました。
答案の型:方向性・根拠・効果の3点セット
ここから答案の書き方です。講師が示した型は、次の3つをセットで書くことです。
- 方向性:どのカテゴリーに集中する・広げるか、深める・止めるか。
- 根拠:与件文のどの記述に基づくか。
- 期待される効果:差別化の強化、客単価・来店頻度の向上、大手との競争回避など。
方向性だけ書いて終わる答案、よく見かける気がします。
それだと点数が伸びないんです。
広げるなら止める分野も、絞るなら選択と集中として
型にはもう1つ、書き分けの決まりがあります。広げる提案をするときは、広げる分野だけでなく、止める分野・絞る分野もセットで書く、というものです。
増やす話をするときに、あえて減らす話も一緒に書くんですね。
そうです。中小企業は経営資源に限りがあるので、何かを増やすなら何かを削る、という現実的な提案の方が説得力があるんです。
逆に、絞る提案をするときは、単なる「縮小」と書かないことです。講師は、「選択と集中による差別化の強化」として書くと印象が変わる、と言います。
同じ「絞る」でも、後ろ向きな縮小じゃなくて、前向きな選択と集中として書く、ということですね。
逆に絞る提案をするときは、単なる「縮小」ではなく、「選択と集中による差別化の強化」として書くと印象が変わります。
| 提案 | あわせて書くこと |
|---|---|
| 広げる | 止める分野・絞る分野 |
| 絞る | 選択と集中による差別化の強化 |
誤答パターン4つ
最後に、講師が整理した誤答パターンです。
| 誤答パターン | 抜けていること |
|---|---|
| 1. 増やす=良いこと、と決めつける | 絞り込みを示すヒントの確認 |
| 2. 「言うだけ」の提案 | 実現可能性への言及 |
| 3. 幅と深さの混同 | 与件文の根拠 |
| 4. 「なんでもやる」提案 | 止める・縮小する商品 |
1つ目は、「品揃えを増やす=良いこと」と決めつけて、与件文に絞り込みを示すヒントがあるのに拡大提案をしてしまうパターンです。聞き手は、大手との価格競争や在庫滞留といった記述を見落としている場合だと受け止めました。
2つ目は、総合化・専門化どちらを提案するときも、仕入先やノウハウ、陳列スペース、財務リスクといった実現可能性への言及が抜けて、「言うだけ」の提案になってしまうパターンです。
私、まさにこれやりがちです。方向性だけ書いて、それが実際にできるかどうかまで気が回らなくて。
3つ目は、カテゴリーの幅と品目の深さを混同して、「分野を広げる話」と「特定分野を深堀りする話」を与件文の根拠なく取り違えてしまうパターンです。
幅の話をしているのか深さの話をしているのか、与件文の記述を丁寧に見分けないといけないんですね。
4つ目は、品揃えを広げる提案をする際に、止める商品・縮小する商品を挙げず、資源制約を無視した「なんでもやる」提案になってしまうパターンです。
そう考えると、増やす提案をするときほど、削る覚悟も一緒に問われているんですね。
試験ではここに注目
- 設問が幅の話か、深さの話か。与件文の記述で見分けているか
- 絞る根拠と広げる根拠の、どちらの記述が厚いか
- 方向性・根拠・効果がそろい、実現可能性(仕入先・陳列・財務リスク)にも触れているか
- 広げるなら止める分野を、絞るなら選択と集中の姿勢を書いているか
まとめ
動画の整理
- 品揃えは「増やすか減らすか」の一本の軸ではなく、カテゴリーの幅と品目の深さの2軸で考える
- 出方は、終盤の助言問題。前の設問の答えと矛盾しない方向性にする
- 与件文から、狭める根拠と広げる根拠の両方を拾い、記述の厚みと強みとの噛み合いで決める
- 順序は、立ち位置の特定 → 強い1カテゴリーを深める → それでも足りなければ慎重にカテゴリー拡大
- 判断材料は5つ:ストアコンセプト、顧客ニーズ、実現可能性、財務リスク、既存商品とのシナジー
- 答案は、方向性・根拠・効果をセットで。広げるなら止める分野も、絞るなら選択と集中として書く
- 誤答は4つ:拡大ありき、実現可能性の抜け、幅と深さの混同、止める商品を挙げない「なんでもやる」提案
動画の最後に、聞き手は「増やすか減らすかの二択で終わらせずに、幅と深さの2軸で考える、というのが今日一番の収穫でした」と話しています。まず今ある強みを深める方向を優先しつつ、仕入先や陳列スペース、財務リスクといった実現可能性まで確認する。答案では、方向性と根拠と効果をセットで書く。この意識があれば、本番で品揃え戦略の設問に自信を持って向き合えるはずだ、というのが講師の締めくくりです。
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