聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

サービスの一般的特質と対応(1)

事例Ⅱ 第10回

事例Ⅱ サービスの特質(1)。見えない・貯まらない・同時に起きるへの打ち手9分49秒2026年8月21日公開

「与件文を読んでいて、この会社はモノを売っていないな、と気づいた瞬間に、頭の中の引き出しは切り替わっていますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは、形がないこと、貯めておけないこと、作るのと使うのが同時に起きることの三つの性質について、出題の出方、与件文のサイン、整理の三段階、答案の型、やりがちな間違いを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

モノを売っていない、と気づけるか

動画は講師の問いかけから始まります。「与件文を読んでいて、この会社はモノを売っていないな、と気づいた瞬間に、頭の中の引き出しは切り替わっていますか」。聞き手は少し考えて、「切り替わっていない気がします。飲食店でも美容室でも、同じ読み方をしていました」と正直に答えます。

講師によると、モノを作って売る会社とは、問題の起き方そのものが違います。今日扱うのは、サービス業の性質のうち前半の三つです。

  • 形がないこと(無形性)
  • 貯めておけないこと(非貯蔵性。消滅性とも呼ばれる)
  • 作るのと使うのが同時に起きること(不可分性)

名前だけなら、聞き手も知っています。ただ、答案に「無形性だから」と書いた記憶はないとのこと。そこで講師が示すのが、この動画の出発点です。

名前は知っています。でも、答案に無形性だから、なんて書いた記憶がないんですよね。

実は、名前そのものを書くことは、ほとんど求められていません。求められているのは、その性質があるせいで何が起きているかを踏まえた助言なんです。

用語を覚えているだけでは足りない、ということですね。

つまり、用語を暗記する話ではなく、その性質のせいで何が起きているのかを与件文から読み取り、助言に生かす話です。このページでは、出題の出方、与件文のサイン、整理の三段階、答案の型、やりがちな間違い、本番のチェックポイントの順に、動画の流れにそってまとめます。

どんな形で出るか:舞台は事例Ⅱ

まず、この論点がどんな形で出てくるかです。舞台になりやすいのは事例Ⅱ、マーケティングと流通の事例です。

題材は、やっぱり飲食店みたいなお店が多いんですか。

飲食店、宿泊業、美容業、教育サービス、それに士業。モノを作らずにサービスを提供する業態が、繰り返し題材になります。

業種を見た時点で身構えられそうですね。

出方は大きく二つあります。

① 正面から聞くサービス業特有の課題を踏まえて助言せよ② 一見ふつうの施策新規顧客の獲得のために何をすべきか性質が表に出ている気づきやすい性質を忘れがち裏に隠れた問題品質が事前に分からない需給の調整が難しいサービスだからこそ生じる問題を土台に助言を組み立てる
出方は2つ。問題なのは、性質が裏に隠れている②の方です。
  • 正面から聞くパターン:「サービス業特有の課題を踏まえて助言せよ」というように、性質そのものを聞いてきます。聞き手は「これは気づかない方が難しそうですね」と言っていました。
  • 一見ふつうのマーケティング施策に見えるパターン:「新規顧客の獲得のために何をすべきか」といった聞き方です。

講師が「問題はもう一つの方です」と言うのは、後者です。聞き手も「それだと私、性質を忘れて施策だけ書いてしまいそうです」と認めます。講師は「多くの人がそうなります」と受けたうえで、その裏にはサービスだからこそ起きている問題が隠れている、と指摘します。具体的には、品質が事前に分からない、需給の調整が難しいといった問題です。

そこを踏まえないと、筋の通らない解答になりますね。

そうです。施策の当てずっぽうになってしまう。サービスだからこそ生じる問題を土台に、助言を組み立てられるかどうかが問われています。

土台、ですね。そこを外すと全部ずれるわけか。

着眼点:与件文のサイン三つ

では、その土台に気づくための着眼点です。与件文のどんな一文が出たら反応するのかを、三つに分けて見ていきます。

① 無形性形がない品質が伝わりにくい・口コミ頼み体験してもらう機会が少ないサービス内容が理解されていない② 非貯蔵性貯めておけない予約が偏る・繁閑の差が大きい稼働率が低い時間帯がある席や枠が余る、あるいは足りない③ 不可分性作るのと使うのが同時に起きる提供者(スタッフ)の技量に依存その場でしかサービスを受けられない顧客と接する時間が商品そのもの
与件文のどんな一文が出たら、どの性質に反応するか。

一つ目は、形がないこと(無形性)のサインです。品質が伝わりにくい、口コミに頼っている、体験してもらう機会が少ない、サービス内容が顧客に理解されていない。こうした記述が出たら反応します。聞き手は「並べてみると、どれも伝わっていないという話ですね」とまとめ、講師は「いい要約です」と応じました。買う前に中身を確かめられない、という一点でつながっているのです。

動画のたとえ:アプリの無料版

スマホのアプリを課金する前に、まず無料版で試したくなる感覚に近い、と講師は言います。中身を知らないままいきなり有料版は押せない。その押せなさが、そのまま顧客の不安です。

二つ目は、貯めておけないこと(非貯蔵性)のサインです。予約が偏る、繁閑の差が大きい、稼働率が低い時間帯がある、席や枠が余る、あるいは足りない。需給がかみ合っていない記述が目印になります。

美容室の空いた一時間って、明日に取っておけないですもんね。

それです。その一言が出てくれば、この論点はもう自分のものです。

三つ目は、作るのと使うのが同時に起きること(不可分性)のサインです。提供者、つまりスタッフの技量に依存する、その場でしかサービスを受けられない、顧客と接する時間そのものが商品になっている。こうした記述です。

習い事のレッスンみたいに、先生と自分が同じ時間にいないと成立しない、という感じですか。

まさにその構造です。作る側と使う側が切り離せない。だから、試作品も在庫も存在しないんです。

気づいた後の整理:仕分けと三段階

聞き手が次に尋ねたのは、気づいた後にどう整理していけばいいか、です。講師の出発点はシンプルで、課題らしき記述を見つけたら、まずモノの性質に近いのか、サービスの性質に近いのかで仕分けます。そこからが三段階です。

課題らしき記述を見つけるまず仕分けモノの性質か、サービスの性質か一段目 どの性質に当たるか無形性・非貯蔵性・不可分性のどれか二段目 なぜそれが問題を生んでいるか事前に判断できない/需給のずれ/提供者への依存三段目 与件文にある対応策を拾う体験会・予約制度・マニュアルなど
仕分けのあと、三段階で整理します。

整理の三段階

  • 一段目:その記述は、無形性・非貯蔵性・不可分性のどれに当たるか
  • 二段目:なぜそれが問題を生んでいるのか
  • 三段目:与件文に、その会社がすでに打っている対応策が書かれていないかを拾う

二段目では、同じ「困っている」でも原因が三種類あることを区別します。顧客が事前に品質を判断できないのか、需給のミスマッチが起きているのか、提供者の質がそのままサービスの質になっているのか。講師は、ここを区別できるかどうかが分かれ目だと言います。

性質覚え方問題の中身
無形性形がない顧客が事前に品質を判断できない
非貯蔵性貯めておけない需給のミスマッチ
不可分性作るのと使うのが同時提供者の質=サービスの質

三段目の「すでに打っている対応策」とは、体験会をやっている、予約制度がある、マニュアルを作った、といった記述です。聞き手が「何のために拾うのですか」と尋ねると、講師はこう答えます。

すでにやっていることを拾うのは、何のためですか。

設問が課題を聞いているのか、対応策を聞いているのか、効果を聞いているのかで、使う場所が変わるからです。すでに手を打っているなら、それを強化する方向で書けます。

三段階で整理すれば、どの聞かれ方にも対応できますね。

答案の型:問題点、対応策、効果

答案の基本は、性質に起因する問題点、対応策、効果の順に圧縮して書くことです。聞き手が「三点セットを一本につなげるイメージですか」と確かめると、講師は「そうです」と答えます。無形性なら、「品質を事前に把握できないため、体験の機会や情報発信で見えるようにして、購買前の不安を解消し新規顧客の獲得につなげる」という並びです。

例:無形性の場合問題点品質を事前に把握できない対応策体験の機会や情報発信で見えるようにする効果購買前の不安を解消し新規顧客の獲得につなげる字数は「なぜ有効か」の理由づけに寄せる
問題点、対応策、効果を一本につなげます。

対応策の語彙は、性質ごとに事前にストックしておくと速い、と講師は勧めます。動画で挙がったものを整理します。

  • 無形性(見えるようにする施策):無料体験のキャンペーン、顧客紹介の制度、口コミの公開、ホームページやSNSでサービスの風景やイメージ映像を載せる
  • 非貯蔵性(タイミングの調整):予約制、繁閑に応じて価格を変える、稼働率の平準化、オンラインでの予約受付、混んでいる時間と空いている時間を顧客に公開する、店舗間で情報を共有して繁閑を吸収する、振替の制度を用意する、必要なときに補講を出す
  • 不可分性:標準化、マニュアル化、事前の情報提供。加えて、提供する内容を繁閑に合わせて変える、決まった型で回す時間と個別に合わせる時間を使い分ける

空いている時間を教えるのは、こちらから需要をずらしにいく感じですか。

その通りです。ほかにも、店舗の間で情報を共有して繁閑を吸収する、振替の制度を用意する、必要なときに補講を出す、といった手も同じ発想です。

なるほど、全部タイミングの調整なんですね。

もう一つ、字数配分についての大事な指摘があります。性質の名前そのものよりも、なぜその対応策が有効なのかという理由づけに文字数を割く、という点です。

無形性のため、と書いただけで満足しない、ということですね。

はい。名前は数文字で済ませて、残りを因果関係に使う。読み手に効いてくるのは、そのつながりの方です。

答案の書き方(動画の整理)

  • 性質の名前は数文字で済ませる
  • 問題点、対応策、効果を一本につなげる
  • 残りの字数は、なぜその対応策が有効かという因果関係に使う

やりがちな間違い三つ

聞き手の希望で、やりがちな間違いも挙がります。講師は三つ挙げました。

一つ目は、形がないことと、提供者によって品質がばらつくことの混同です。聞き手は「どちらも品質が読めない、という話に見えます」と戸惑います。講師は、困っている中身が違うと説明します。前者は、見えない、事前に把握できないことが問題。後者は、人によって品質がばらついてしまうことが問題です。

どちらも「品質が読めない」ように見えるが…形がない(無形性)困りごと見えない事前に把握できない打つ手可視化と体験品質のばらつき(提供者による)困りごと人によって品質がばらつく打つ手標準化とマニュアル化取り違えると助言が的外れになる
困っている中身が違うので、打つ手も違います。

原因が違えば、打つ手も変わります。見えないことへの対応は可視化と体験、ばらつきへの対応は標準化とマニュアル化です。ここを取り違えると、助言が的外れになります。

二つ目は、貯めておけないことを、ふつうのモノの在庫管理の話にしてしまう誤りです。聞き手も「在庫の話、つい書いてしまいそうです」と言っていました。講師によると、モノなら倉庫に置いておけますが、サービスは物理的に貯蔵できません。本質はそこなので、対応は在庫の持ち方ではなく、需給のタイミングを調整することが中心になります。予約制と、価格を変えること、が代表です。

三つ目は、作るのと使うのが同時だという話を、「対面でないと売れない」程度に小さくしてしまうことです。聞き手は「まさにその理解で止まっていました」と打ち明けます。

同時に起きるからこそ、品質の確認が事後にしかできない。そして提供者への依存度が高くなる。この構造まで理解しておくと、書ける助言の幅が変わります。

事後にしか確認できないというのは、なかなか怖いですね。

誤りどこがずれるか正しくは
無形性とばらつきの混同困りごとが別可視化・体験/標準化・マニュアル化
非貯蔵性を在庫管理に物理的に貯蔵できない需給のタイミング調整
不可分性を対面販売の話に理解が小さい事後確認・提供者依存まで

本番のチェックポイント

最後に、講師は本番で使うチェックポイントを三手順にまとめます。サービス業の事例だと分かったら、次の順で進めます。

本番での三手順

  • 課題らしき記述を見つけるたびに、三つのどれに当たるかを決める(形がない/貯めておけない/同時に起きる)
  • なぜそれが問題なのかを一言で言えるようにする(事前に判断できない/需給がずれている/提供者に依存している)
  • 答案は問題点、対応策、効果の順に並べ、理由づけへ字数を寄せる

聞き手はこれを「用語を思い出す作業ではなくて、原因を特定する作業なんですね」と受け止めました。講師は、そこが今日いちばん持ち帰ってほしいところだと言います。この三手順を持っていけば、初見の事例でも手が止まりません。

試験ではここに注目(動画の整理)

  • 与件文が「モノを売っていない」会社かどうか(事例Ⅱの飲食・宿泊・美容・教育・士業など)
  • 課題の記述が、三つの性質のどれのサインか
  • 答案が、問題点・対応策・効果の順で、理由づけに字数を使っているか

まとめ

動画の整理

  • サービス業の性質のうち、今回は前半の三つ:形がない(無形性)、貯めておけない(非貯蔵性)、作るのと使うのが同時(不可分性)
  • 名前を書くことは、ほとんど求められていない。求められるのは、その性質のせいで何が起きているかを踏まえた助言
  • 出方は二つ。性質を正面から聞く形と、新規顧客の獲得など一見ふつうの施策を聞く形。後者の裏には、品質が事前に分からない、需給の調整が難しいといった問題が隠れている
  • 整理は、モノかサービスかの仕分けのあと、どの性質か、なぜ問題か、すでにある対応策、の三段階
  • 答案は、問題点、対応策、効果の順に圧縮し、理由づけに字数を寄せる
  • 間違いは三つ:無形性とばらつきの混同、非貯蔵性を在庫管理にすること、不可分性を対面販売の話に小さくすること

動画の終わりで、講師は「サービスの性質はこの三つだけではありません」と予告します。次回は、取引が元に戻せないこと、需要が特定の時期に集中すること、品質にばらつきが出ること、人手に頼る度合いが高いこと、の四つです。今日の三つと合わせて七つ。そろえば、サービス業の事例で読み落とす場所はかなり減る、と講師は言います。聞き手も「楽しみにしています」と応えていました。

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