共同開発
事例Ⅱ 第15回
「共同開発って、知識としては知ってるけど、いざ与件文を読んだときに『これ、共同開発を書くところだ』って気づけますか?」。動画は講師のこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、企業間連携との違い、3つのC、与件文の着眼点、整理の手順、答案の型、誤答しやすいポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、与件文でスイッチが入らない
動画は、講師のこんな問いかけから始まります。「共同開発って、知識としては知っているけれど、いざ与件文を読んだときに『これ、共同開発を書くところだ』と気づけますか?」。聞き手の答えは正直です。あまり自信がない。自社と他社が一緒に新しいものを作る、という理解はあるけれど、与件文のどこが出たらそれだと判断すればいいのかが、ふわっとしている、と言います。
講師は「そこなんですよね」と受けます。知識はあるのに、本番の与件文の中でスイッチが入らない。今日のテーマは、共同開発を二次の現場でどう見抜いて、どう答案に落とし込むか。
このページでは、動画の流れにそって次の順にまとめます。
- 共同開発は、前に扱った企業間連携と何が違うのか
- 共同開発のメリット3つと、成否を決める3つのC(補完性・適合性・コミットメント)
- 与件文のどこを見れば共同開発だと気づけるか(着眼点)
- 与件文の情報の整理の手順と、答案の型
- 混同しやすい・誤答しやすい3つのポイント
前に扱った企業間連携と何が違うのか
最初に聞き手が疑問を出します。「前に扱った企業どうしの連携の話と何が違うんですか?似ている気がして混乱しそうです」。講師は「いいところに気づきましたね」と答えます。
前に扱った連携は、売る・仕入れる・運ぶといった機能を分担する連携でした。今日のテーマは、そうではなく、新しい製品や技術そのものを一緒に作る連携です。似ているように見えても、対象が違います。
なるほど、機能を分け合うのか、モノづくりそのものを一緒にやるのか、という違いなんですね。そこ、意識しておきます。
あっちは機能を分担する連携、今日のテーマは新しい製品や技術そのものを一緒に作る連携です。対象が違うんです。
この区別は、あとで出てくる誤答パターンの1つ目にもなります。ここで頭に置いておいてください。
共同開発のメリット3つ
まず、共同開発にはどんなメリットがあるかの整理です。講師が挙げたのは次の3つでした。
- 研究開発の質そのものが上がる
- 開発にかかる時間が短くなる
- 新しい市場に入りやすくなる
あ、それ全部、自社の弱いところを相手に補ってもらえるから起きることですよね。
そうです、その感覚が大事です。
メリットの根っこは、自社の弱いところを相手に補ってもらえることにある。この感覚が、次の3つのCにそのままつながります。また、この3つのメリットは、あとで答案に「効果」を書くときの選択肢にもなります。
共同開発のカギは3つのC
講師は、もう一段深く言うと、共同開発がうまくいくかどうかを決めるカギが3つあると言います。補完性、適合性、コミットメントです。聞き手が「3つも軸があるんですね。それぞれどう違うんですか?」と聞き、講師が一つずつ説明していきます。
| 軸 | 見ること | たとえ |
|---|---|---|
| 補完性 | お互いの穴を埋め合えるか | 食材とレシピ |
| 適合性 | 方向性が合っているか | 和食と洋食 |
| コミット | 長く続けたい意欲があるか | また一緒に作る |
補完性は、自社に無いものを相手が持っていて、逆に相手に無いものを自社が持っている、というお互いの穴を埋め合える関係です。聞き手が「この3つの中で、一番重視すべきなのはどれですか」と聞くと、講師の答えは明快でした。補完性です。お互いに無いものを持ち合っているかが、一番の土台になります。
ここで聞き手が、料理のたとえを出します。
一緒に新しい料理を作ろうってなったとき、私は食材を用意できるけどレシピを知らない、相手はレシピは知ってるけど食材が無い。だったら組もう、っていう感じですか。
まさにそれです。食材とレシピ、お互いに欠けているものを出し合うから一緒に作る意味が生まれる。もしどっちもレシピだけ持ってたら、それは補完じゃなくて重複ですよね。
あー、それだと一緒にやる理由が弱くなりますね。補完性って、無いものを埋め合ってるか、を見る軸なんですね。
つまり、両方が同じものを持っているだけでは補完ではなく重複で、組む理由が弱くなります。
次に見るのが適合性です。お互いの技術や資源の方向性が一致しているかどうか。講師は同じ料理のたとえで、和食を作りたい人と洋食を作りたい人がレシピと食材を出し合っても、なかなか一つの料理にまとまらないですよね、と言います。聞き手も、無いものを補い合っていても、目指している方向がバラバラだとうまくいかない気がする、と納得していました。
最後のコミットメントは、この関係を長く続けたいという意欲です。一回きりの取引ではなく、この先も一緒にやっていきたいという姿勢が、与件文の記述からうかがえるかどうかを見ます。聞き手は「一緒に料理を作った相手と、また今度も作ろうって思えるかどうか、みたいな感じですね」とまとめ、講師は「いい例えです」と応じました。
3つのCは「セット」で確認
- 補完性:お互いの穴を埋め合えるか
- 適合性:方向性が合っているか
- コミットメント:長く付き合っていけそうか
- この3つを、与件文の記述からセットで確認する
与件文のどこを見れば共同開発と気づけるか
ここからが二次試験の本題、着眼点です。講師は2つ挙げます。
1つ目は、自社の開発力の限界を示す記述です。聞き手が「具体的には、どういう書かれ方をするんですか?」と聞き、講師は、研究開発の人員や設備が少ない、新製品の開発に時間がかかっている、といった弱みの書かれ方だと答えます。ここが出たら、開発力を外から補う手段を考える合図になります。
2つ目は、連携相手の手がかりです。大学や研究機関との接点、たとえば技術指導を受けている、といった記述。あるいは異業種の企業との交流を示す記述。自社に無い技術やノウハウを持つ相手の存在が書かれていたら、これも合図です。
ここで聞き手が「開発力の弱みと、それを補えそうな相手の存在、この2つが両方そろって初めて共同開発を考える、ということですか?」と確認します。講師は「そのとおりです」と答え、片方しか無ければ共同開発を書く根拠としてはまだ弱い、両方そろっているかをまず確認する癖をつけてください、と続けます。
私、正直今までは「大学と付き合いがある」って書いてあったら、それだけで飛びついて共同開発って書いてました。
そこが危ないところです。相手の存在だけで飛びつかず、自社側に開発力の弱みがちゃんと書かれているかも、必ずセットで確認してください。
聞き手の失敗はとても身近です。相手の存在は目につきやすい分、飛びつきやすい。自社側の弱みの記述まで、必ずセットで見る。これが着眼点の使い方です。
与件文の情報を整理する手順
着眼点が拾えたら、次は与件文の情報をどう整理するかです。講師の手順は3段階でした。
- まず、自社に欠けている開発力と、それを補える相手が両方そろっているかを確認する
- 次に、相手との関係が3つのC(補完性・適合性・コミットメント)を満たしているかを、与件文の記述から確認する。特に補完性は最優先で見る
- 最後に、共同開発のメリット(研究開発の質、開発時間の短縮、新市場への参入のしやすさ)のうち、与件文の課題に対応するものを選んで答案に反映する
私、そこを読み飛ばしてました。相手が存在してることだけ確認して、補完関係まで丁寧に見てなかったです。
そこに気づけたのは大きいですよ。
3つのメリット全部を並べるんじゃなくて、その与件文の課題に合うものだけを選ぶ、ということですね。
聞き手が反省したように、相手が存在するだけでは足りません。補完関係まで丁寧に見る。そして最後に、3つのメリットを全部並べるのではなく、課題に合うものだけを選びます。
答案の型:「共同開発する」で終わらせない
では、実際にどう解答へ落とし込むか。講師が示した基本の型はこうです。
共同開発の基本の型
「〜という弱みに対し、〜という相手との共同開発を行う。自社は〜を提供し、相手は〜を提供するという補完関係があるため、〜というメリットが期待できる」
聞き手が「さっきの3つのCと、開発力の限界の話が、そのまま型になっているんですね」と気づきます。
講師が強調したのは、ここで一番大事なのは「共同開発する」で終わらせないことだ、という点です。自社と相手がそれぞれ何を提供し合う関係なのか、補完性の中身まで書きます。
私、書いたのに点が伸びなかった理由が分かりました。「大学と共同開発して新製品を作る」ってだけ書いて、自社が何を出して相手が何を出すのかまで書いてなかったんです。
それだと、なぜその相手と組むと成果が出るのか、説明できていないんです。自社は何を提供できて、相手は何を提供してくれるのか、そこまで書いて初めて説得力のある答案になります。
効果の書き方も、聞き手が確認したとおり、開発期間の短縮や新市場への参入のしやすさなど、与件文の課題に合わせて選びます。講師は「その通りです」と応じ、もう1つ視点を加えました。実際の連携では、商品化したときに相手にどう報酬を払うか、設備を使わせてもらえるのかどうか、こうした取り決めをはっきりさせておく必要がある。この視点も持っておくと、答案の厚みが出る、という話です。
なるほど、組んで終わりじゃなくて、その後の条件整理まで意識するんですね。
誤答しやすい3つのポイント
最後に、混同しやすい、誤答しやすいポイントの整理です。講師が挙げたのは3つでした。
1つ目は、前に扱った企業間連携との混同です。あちらは販売や仕入れ、物流といった機能面の連携で、今日のテーマは製品開発そのものの連携。対象が「機能」なのか「新製品・新技術の開発」なのかで区別します。聞き手は「最初に聞いてよかったです。ここで混同すると、書いている内容がずれちゃいますもんね」と話していました。
2つ目は、補完関係を示さずに「共同開発すれば新製品ができる」とだけ書いてしまうパターンです。なぜその相手と組むと成果が出るのか、補完性の根拠がないと説得力が出ません。聞き手は「さっき私が実際にやっちゃってた失敗ですね」と振り返ります。
3つ目は、与件文に開発力の弱みも連携相手の手がかりも無いのに、一般論として共同開発を提案してしまうパターンです。この論点は、与件文に根拠がある場合にだけ使ってください、と講師は言います。
根拠がないのに、便利そうだからって共同開発って書くのはダメなんですね。気をつけます。
| 誤り | 足りないもの | 直し方 |
|---|---|---|
| 連携の混同 | 対象の区別 | 機能か、開発か |
| 補完関係なし | 補完性の根拠 | 出し合うものを書く |
| 根拠なしの提案 | 与件文の裏づけ | 弱みと相手を確認 |
答案を書く前のチェック
- 自社の開発力の弱みと、補える相手の存在が両方書かれているか
- 補完性を最優先に、適合性・コミットメントも与件文の記述から確認したか
- メリットは、与件文の課題に合うものだけを選んだか
- 「共同開発する」で終わらず、自社が出すもの・相手が出すものまで書いたか
- 企業間連携(機能の分担)と取り違えていないか
まとめ
動画の整理
- 共同開発は、新しい製品や技術そのものを一緒に作る連携。機能を分担する企業間連携とは対象が違う
- 気づく着眼点は2つ:自社の開発力の弱みと、それを補える相手の存在。両方そろって初めて考える
- 整理は、①両方そろっているか確認 → ②補完性を最優先に3つのCを確認 → ③課題に合うメリットを選ぶ、の順
- 答案は「弱み → 相手との共同開発 → 自社と相手が提供し合う補完関係 → メリット」の型。補完関係の中身まで具体的に書く
- 誤答は3つ:企業間連携との混同、補完関係を示さない、与件文に根拠がないのに一般論で提案する
動画の最後に、聞き手は「知識としては知ってたつもりでしたけど、与件文のどこで気づいて、どう答案に落とし込むか、今日でだいぶクリアになりました」と話しています。知っていることと、与件文で気づいて答案に書けることは別です。弱みと相手の存在をセットで拾い、補完性を土台に3つのCを確かめ、自社と相手が何を提供し合うのかまで書く。この流れを持っておけば、本番でこの論点をしっかり得点につなげられます。
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