企業連携
事例Ⅱ 第17回
「企業連携って、垂直的提携と水平的提携、言葉としてはもう知ってますよね」。動画はこんな確認から始まります。知識はあるのに、与件文のどこが出たらこの論点を使えばいいのか分からない。このページでは、与件文での出方と着眼点、垂直か水平かの判断手順、狙えるメリットと具体策、答案の型、誤答しやすい3つのポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知識はあるのに、使うタイミングが分からない
動画は、講師の「企業連携って、垂直的提携と水平的提携、言葉としてはもう知ってますよね」という確認から始まります。聞き手は「知識としては知ってます。でも本番だと、与件文のどこが出たらこれを使えばいいのか、正直あやふやです」と答えます。講師は、知識はあるのに使うタイミングが分からない、これは企業連携ではすごくよく起きることだと受けます。
なぜこの論点だけ、そんなに使うタイミングが分かりにくいのか。聞き手の疑問に対する講師の答えは単純でした。この論点は「自社だけ」の話ではないからです。与件文に、自社の課題だけでなく、連携できそうな相手が出てきて初めて使える論点なのです。
あ、相手がいないと使えないってことですか。
そうです。まずそこから整理しましょう。
このページでは動画の順に、企業連携の発想、与件文での出方、着眼点、垂直か水平かの判断手順、狙えるメリットの違い、具体策、答案の型、誤答しやすい3つのポイント、本番のチェックポイントをまとめます。
企業連携の発想と「同じように困っている同業者」
講師が「企業連携って、そもそもどういう発想か覚えてます?」と尋ねると、聞き手は「自社だけでは解決できない課題を、他社との連携で解決する、でしたよね」と答えます。講師は「正解です」と受けて、連携で解決したい課題を挙げます。多いのは次の3つのどれかです。
- 販売力が弱い
- 仕入コストが高い
- 販売経費が重い
それ、中小企業ならどこでも抱えてそうな課題ですね。
そうなんです。だからこそ、与件文に「同じように困っている同業者」が出てきたら、この論点だと気づく、という使い方をします。
「同じように困っている」がキーワードなんですね。
そうです。そして連携には、垂直的提携と水平的提携の2つの形があって、どっちを選ぶかで狙えるメリットが違うんです。
課題そのものはどの中小企業にもありそうなものなので、課題だけでは論点に気づけません。「同じように困っている同業者」のような、相手の存在を示す記述が出たところが、この論点を使うスイッチになります。
与件文での出方は3パターン
聞き手が「どうやって使い分けるんですか」と聞くと、講師はまず、与件文でこの論点がどう出るかを整理しようと言います。出方は3つです。
- 解決策として提案させる:単独では解決できない課題への解決策として、企業連携を提案させるパターン。
- 同業者・関連業者がにおわされる:「近隣に同じ課題を抱える店がある」のような一文があれば、それが連携相手の候補です。
- 垂直か水平かを判断させる:垂直的にすべきか水平的にすべきか、どちらが適切かを判断させる問題です。
課題がまず書いてあって、それに対する答えとして連携を出す、ということですね。
そうです。もう1つは、与件文に同業者や関連業者の存在がにおわされている場合です。
相手候補が先に出てくるパターンもあるんですね。
あります。そして3つ目が、垂直的にすべきか水平的にすべきか、どちらが適切かを判断させる問題。これが一番差がつきます。
差がつくって、みんな垂直と水平を取り違えちゃうってことですか?
まさにそれです。ここは後でじっくりやりましょう。
講師は、3つ目の判断問題は後でじっくり扱うとして、先に「与件文のどこを見ればこの論点に気づけるか」という着眼点から整理していきます。
着眼点:与件文のどこを見るか
1つ目は、連携の必要性を示す記述です。自社単独では仕入コストや配送コストが高い、販売力が弱い、といった弱みの一文があるかどうかを見ます。聞き手が「弱みが書いてあったら、何かで補う必要があるってことですもんね」と言うとおり、ここは分かりやすい入口です。
2つ目は、垂直的提携の手がかりです。講師は、異なるチャネル段階、つまり生産者と小売、卸と小売のような組み合わせとの協業の可能性を示す記述を挙げます。聞き手が「チャネル段階が違う相手、ということですね」と確認しています。もう1つ大事な手がかりが、プライベートブランド(PB)の開発や、技術・アイデアの持ち寄りに関する記述です。
プライベートブランドって、なんで垂直的提携のサインになるんですか?
PBを作るには、メーカー側の技術と、小売側の販売網、両方が必要ですよね。この、違う段階同士が技術やアイデアを持ち寄って噛み合うと、大きな成果が期待できるんです。
段階が違うからこそ、持っているものも違って、組み合わせる意味があるんですね。
その通りです。
3つ目は、水平的提携の手がかりで、垂直とは逆です。同業者や同じチャネル段階の企業の存在を示す記述、たとえば近隣の同業店、同じ課題を抱える企業といった書き方です。さらに、単独では規模が小さくて交渉力が弱い、という記述も水平的提携のサインだと講師は言います。
さっき出てきた「近隣に同じ課題を抱える店」って、まさにこれですね。
そうです。あともう1つ、単独では規模が小さくて交渉力が弱い、という記述も水平的提携のサインです。
規模が小さいから、仲間を増やして規模を大きくする、っていう発想ですか。
まさにそれです。
判断の手順:垂直か水平かの見抜き方
ここまでが着眼点で、次は、見つけた記述を実際にどう整理して垂直か水平かを判断するかです。聞き手は「ここ、私が一番苦手なところです」と身構えますが、講師は「手順はシンプルです」と言います。
手順① 連携できそうな相手が存在するかを確認する。いなければ、この論点は無理に使いません。
え、相手がいないのに無理やり連携を提案しちゃダメなんですか?
ダメです。与件文に根拠がないのに一般論として連携を提案すると、それだけで説得力がない答案になります。ここは後でもう一度触れます。
手順② その相手が、自社と同じチャネル段階か、異なるチャネル段階かを判断する。同じ段階、つまり同業者同士なら水平的提携、異なる段階、たとえばメーカーと小売の組み合わせなら垂直的提携です。
| 相手の段階 | 形 | 例 |
|---|---|---|
| 同じ段階 | 水平的提携 | 同業者同士 |
| 異なる段階 | 垂直的提携 | メーカーと小売 |
手順③ 狙うメリットを決める。これは次の章で見ます。そして手順④ 連携によって解決したい課題、つまり販売力・仕入コスト・販売経費のどれかを明確にして、連携の形と結びつけます。
課題と、相手のタイプと、狙うメリット、この3つをセットで整理するんですね。
その通りです。
水平と垂直で、狙えるメリットはどう違うか
水平的提携で狙うのは、販売力の相互補完と、規模拡大による交渉力の向上です。講師はもう少し具体的に、お互いの製品ラインアップを補完し合えること、規模が拡大すると知名度や、他のチャネル段階に対する交渉力も上がることを挙げます。
知名度まで上がるんですね。1社だと無名でも、まとまれば注目されやすくなる、みたいなイメージですか。
そのイメージで大丈夫です。
一方、垂直的提携で狙うのは、技術・アイデアの持ち寄りと、プライベートブランドによる差別化です。独自のPBで競合と差別化できますし、PBは低価格で仕入れられるので、高い粗利益も期待できます。差別化と収益性、両方に効くのが垂直的提携の強みだと講師は説明します。
差別化とコスト、両方狙えるんでしたっけ。
そうです。独自のPBで競合と差別化できますし、PBは低価格で仕入れられるので、高い粗利益も期待できます。
なるほど、水平は規模と交渉力、垂直は差別化と粗利益、って軸で覚えると分かりやすいです。
いいまとめ方です。
連携で狙える具体策
形とメリットが決まったら、答案に書く具体策です。講師は、解決したい課題ごとに次のような手を挙げます。
| 狙い | 具体策 |
|---|---|
| 販売力を高める | 施設の共有、共同での催事開催、受注窓口を |
| 仕入コストを下げる | 共同仕入で量的な割引を受ける |
| 販売経費を下げる | 共同で配送センターを設置する |
| 新規顧客を獲得する | 異なるセグメントの顧客を持つ企業同士が、お互いの顧客を送り合う |
窓口を1つにまとめるのは、確かに1社ずつバラバラより効率的ですね。
仕入コストを下げるなら、共同仕入で量的な割引を受ける。販売経費を下げるなら、共同で配送センターを設置する。
配送センターを共同で持てば、1社が単独で持つより負担が軽くなりますもんね。
そうです。もう1つ、異なるセグメントの顧客を持つ企業同士が連携して、お互いの顧客を送り合う、新規顧客の獲得という狙い方もあります。
相互送客ですね。これは水平・垂直どちらでもありえそうです。
そうですね、相手のタイプよりも、狙いが顧客獲得なのか、コスト削減なのか、販売力強化なのかで、使う具体策を選ぶイメージです。
つまり具体策は、垂直か水平かよりも「何を狙うか」で選びます。聞き手の言うとおり、具体策まで言えると答案が一気に実戦的になります。
答案の型:パン屋さんの例
では実際に答案にどう落とし込むか。講師が示す基本の型は次のとおりです。
企業連携の答案の基本の型
「〜という課題に対し、〜という相手と、水平的、または垂直的に提携することで、〜というメリットを得て課題を解決する」
聞き手が「課題、相手、提携の形、メリット、この4つが入っていればいいんですか」と確認すると、講師は「はい」と答えたうえで、特に大事なのは「連携する」だけで終わらせないことだと強調します。相手が誰で、どちらの形の提携で、どんなメリットを狙うのかまで書いて、初めて実戦的な答案になります。
講師の例はこうです。小さなパン屋さんが1軒だけで仕入れをしていて、材料費が高くてつらい。この店が近所の同じような規模のパン屋さんと手を組み、材料をまとめて発注する。同じ段階の同業者同士なので、水平的提携です。
はい、同業者同士なので水平的です。
ここで「近所のパン屋さんと連携する」とだけ書くと、何のための連携か分かりません。「まとめて発注することで、仕入コストという課題を、量的な割引によって解決する」まで書いて、初めて答案になります。
課題とメリットをつなげる言葉が要るんですね。よく分かりました。
講師はここから、型が分かっていても多くの受験生がはまる落とし穴の話に移ります。
誤答しやすい3つのポイント
型が分かっても、多くの受験生が落とし穴にはまると講師は言います。誤答しやすいポイントは3つです。
| 誤り | 確認すること |
|---|---|
| 垂直と水平の取り違え | 相手がどの段階の企業かを |
| 根拠のない連携の提案 | 連携相手の手がかりが |
| 相手側のメリットの欠落 | 相手にとっての利点にも触れる |
1つ目は、垂直的提携と水平的提携の取り違えです。同じ段階同士なら水平的、異なる段階同士なら垂直的という区別を、与件文の相手の属性から正確に判断します。
これ、私まさにやりがちです。なんとなく「連携っぽいから垂直」みたいに、雰囲気で選んじゃいそうです。
そこが危険なんです。感覚で選ばず、必ず「相手はどの段階の企業か」を与件文の一文から確認してください。
相手の属性を確認する、これを毎回やります。
2つ目は、与件文に連携できそうな相手の記述が無いのに、一般論として「他社と連携すべきです」と提案してしまうパターンです。企業連携は、与件文に相手の手がかりがある場合にのみ使う論点で、手がかりが無ければ、無理に企業連携で解決しようとしません。聞き手が言うように、使えそうな論点だからといって、無理やり当てはめてはいけないのです。
3つ目は、連携のメリットを自社側だけで考えて、連携相手側のメリットを意識しないパターンで、講師は、これが一番見落とされやすいと言います。
言われてみれば、私、いつも自社が得することしか考えてなかったです。
連携って、双方にメリットがあって初めて成立するものなんです。相手にとっての利点、例えば販路を共有できるとか、規模が拡大するとか、そこにも触れられると答案の説得力が全然違います。
自分だけ得する話だと、そもそも相手が乗ってこない、ってことですよね。
その視点が持てると、採点者から見ても「経営を分かっている答案」に見えます。
講師は、垂直水平の取り違え、根拠のない提案、相手側メリットの欠落、この3つは必ずチェックしてください、と締めくくります。
本番で使うときのチェックポイント
聞き手が最後に、本番でこの論点を使うときのチェックポイントのまとめを頼みます。講師の整理は次のとおりです。
試験ではここに注目
- 与件文に連携相手の手がかりがあるか
- 相手は同じ段階か、異なる段階か(水平的か垂直的か)
- 解決したい課題は、販売力・仕入コスト・販売経費のどれか
- 相手・提携の形・メリットをセットで書いたか。相手側のメリットも忘れていないか
相手の存在確認と、段階の判断、この2ステップですね。
そして、解決したい課題を明確にして、相手・提携の形・メリットをセットで答案に書く。相手側のメリットも忘れずに。
「連携する」で終わらせず、誰と、どちらの形で、何を得るのかまで書く。これを本番で徹底します。
それができれば、企業連携の論点はしっかり得点源にできます。
まとめ
動画の整理
- 企業連携は「自社だけ」の話ではなく、与件文に連携できそうな相手が出てきて初めて使える論点
- 連携で解決したい課題は、販売力が弱い・仕入コストが高い・販売経費が重い、のどれかが多い。「同じように困っている同業者」が出たら気づく
- 出方は3つ:解決策として提案させる、同業者・関連業者がにおわされる、垂直か水平かを判断させる(ここで差がつく)
- 手がかりは、異なる段階・PB・技術やアイデアの持ち寄りなら垂直的、同業者・同じ段階・規模が小さく交渉力が弱いなら水平的
- 水平は販売力の相互補完と規模・交渉力、垂直は技術・アイデアの持ち寄りと差別化・高い粗利益
- 答案は、課題・相手・提携の形・メリットを書く。「連携する」だけで終わらせない
- 誤答は3つ:垂直と水平の取り違え、相手の手がかりがないのに提案する、相手側のメリットを書かない
動画の最後に、聞き手は「『連携する』で終わらせず、誰と、どちらの形で、何を得るのかまで書く。これを本番で徹底します」と話しています。企業連携は、知識があっても使いどころが分からないと点になりません。与件文で相手を探し、段階を見て形を決め、課題と結びつけて、相手側のメリットまで書く。この順番を持っておけば、得点源にできる論点です。
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