製品ミックス(強化と中止)
事例Ⅱ 第14回
「知識としては分かっているのに、いざ本番で『あ、これを使うところだ』と気づけない論点、ありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。今日の論点は、助言問題で使う品揃えの考え方。根拠なく「広げましょう」「絞りましょう」と書いて点が伸びなかった、という人に向けた回です。このページでは、与件文のサイン、幅・深さ・整合性の整理、広げる提案と絞る提案の書き方、混同しやすい点を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
知っているのに、本番で気づけない
動画は、こんな問いかけから始まります。「知識としては分かっているのに、いざ本番で『あ、これを使うところだ』と気づけない論点、ありませんか」。聞き手はすぐに「あります」と応じます。勉強しているときは「なるほど」で終わるのに、与件文の中に出てくると、そこにあると気づけない。講師は、今日扱うのもまさにそのタイプの論点だと言います。テーマは「品揃えをどう組み立てるか」という考え方です。動画の題は「製品ミックス」ですが、講師は主に「品揃え」という言葉で話しています。
聞き手は、考え方そのものは知っています。でも二次試験だと、どこで使えばいいのかが分からない。講師の答えは、助言問題です。たとえば次のような設問が、方向性を決める助言問題にあたります。
- 「今後どのような品揃えにすべきか助言せよ」
- 「新商品の取扱いを始めるべきか助言せよ」
- 「売上を伸ばすための施策を助言せよ」
こうした設問で、広げるのか絞るのかを決める判断軸として使うのが、この論点です。
私、あの手の助言問題、いつも根拠なく「広げましょう」とか「絞りましょう」って書いちゃって、点が伸びなかった記憶があります。
それ、まさに今日の話で解消できます。
出やすいのは、主に小売業や卸売業を営む事例企業です。ただし、メーカー中心の事例企業でも「取扱品目の見直し」という形で問われることがある、と講師は付け加えます。聞き手の言葉でいえば、業種が違っても形を変えて出てくる、ということです。
なぜ小売業でとくに出やすいのか。講師の説明では、小売業はメーカーと違って自社で商品を作る制約がない分、自由に商品を組み合わせて売り場を作れる業態だからです。だからこそ「何を、どう組み合わせるか」という判断そのものが問われやすい。聞き手は「作る自由じゃなくて、組み合わせる自由がある業態だから、この論点が出やすいんですね」とまとめています。
このページは動画の流れにそって、与件文のサイン、整理のフレーム、答案の型、混同しやすい点の順にまとめます。
与件文のサイン:どこを見れば気づけるか
では、与件文のどこを見れば、この論点だと気づけるのか。講師が挙げた着眼点は4種類あります。
- 取扱商品・品目・ラインナップ・取扱いを開始した・取扱いを止めたといった記述。これが出たら、品揃えの話だと直感的に反応します。
- 客層が異なる複数の商品カテゴリーを同時に扱っている記述。ある商品を目当てに来る客と、別の商品を目当てに来る客が混在している、といった書かれ方です。
- 在庫・陳列スペース・仕入・死に筋・売れ筋といった記述。品揃えを広げる・絞るときの制約条件になります。
- 主力商品や強みのカテゴリーへの客足の集中、あるいは主力だけでは客数や客単価が伸び悩んでいるという記述。方向性のヒントです。
2つ目の客層の違いについて、聞き手が「それは何のサインなんですか」と尋ねる場面があります。
それは何のサインなんですか。
カテゴリー同士の関連性、つまり「整合性」を見直す必要があるサインです。客層がバラバラだと、店としての一貫性が崩れている可能性があるので。
あー、それ私、読み飛ばしてました。客層の違いって、単なる背景描写だと思ってたんですけど、あれも判断材料だったんですね。
聞き手の気づきのとおり、背景描写に見える客層の記述も、整合性を見直すサインとして拾えます。
3つ目の制約条件についても、聞き手が「制約条件、というと?」と聞き返しています。講師の答えは、広げたくても在庫や陳列スペースに限りがあれば、その分どこかを削らないといけない、という話につながってくる、というものでした。
制約条件、というと?
広げたくても在庫や陳列スペースに限りがあれば、その分どこかを削らないといけない、という話につながってきます。
なるほど、方向性だけじゃなくて、実行できるかどうかまで見るんですね。
方向性のヒント:絞るサインと広げるサイン
さらに一段深く読むと、方向性のヒントも与件文の中にある、と講師は言います。
| 与件文の記述 | 示唆されやすい方向 |
|---|---|
| 主力・強みのカテゴリーに客足が集中 | 特化・集中(幅を狭め深さを増やす) |
| 主力だけでは客数・客単価が伸び悩み | 関連性の高い新カテゴリーを追加して幅を広げる |
聞き手は、これを「伸び悩みの記述が広げるサインで、集中の記述が絞るサイン」と整理しました。講師は「その理解で大丈夫です」と応じています。なお、講師の言い方は「示唆されやすい」です。サインがそろえば方向が決まる、とまでは言っていません。ここで拾った情報を、次のフレームで整理して裏づけていきます。
整理のフレーム:幅・深さ・整合性(と長さ)
拾った情報の整理には、4つの切り口があります。講師の説明は次のとおりです。
| 切り口 | 見ること | 助言での扱い |
|---|---|---|
| 幅 | どんな種類の商品を扱うか | よく使う |
| 深さ | 各カテゴリーの品目数 | よく使う |
| 整合性 | カテゴリー間の関連性 | よく使う |
| 長さ | 企業の総アイテム数 | 頭に置く程度 |
4つもあるんですね。全部を毎回使い分けるんですか。
助言問題の判断軸として実際によく使うのは、幅・深さ・整合性の3つです。長さは、あくまで品揃え全体の規模を捉える切り口として頭に置いておく程度で大丈夫です。
3つも軸があると迷いそうだ、という聞き手に、講師は見る順番を示します。
- 現状の確認:品揃えが「広く浅い」のか「狭く深い」のかを、与件文から確認します。扱っているカテゴリーの数と、それぞれの品目の多さを見ます。
- 整合性の確認:扱っている複数カテゴリーが、店のコンセプトや顧客層、仕入・販売のノウハウの面で関連性を持っているかを確認します。
- 経営資源との照らし合わせ:仕入資金、在庫スペース、店員のノウハウに照らして、まだ広げられる余地があるか、逆に絞るべき余地があるかを見ます。
3つ目の「経営資源との照らし合わせ」は、聞き手が先に言い当てたものです。講師は「その通りです」と確認しています。
お菓子売り場のイメージで確かめる
ここで聞き手が、スーパーのお菓子売り場を例にして確認を入れます。この部分の例は、聞き手が出したものです。講師はそれを受けて「まさにそのイメージです」「いい例です」と答えています。
自分がスーパーでお菓子売り場を見るとして、いろんな種類を少しずつ置く店と、好きなブランドのお菓子だけをずらっと深く置く店、両方ありますよね。あれが「広く浅い」と「狭く深い」ってことですか。
まさにそのイメージです。前者が幅重視、後者が深さ重視です。
じゃあ、狭く深いお店が、関連性の薄い別ジャンルの商品まで置き始めたら、それは整合性が崩れてる、ってことになりますか。
いい例です。それが崩れていると気づけたら、二次の与件文でも同じサインに反応できます。
そのうえで講師は、実際の判断軸を示します。与件文に「強みとなる主力カテゴリーへの支持」と「本業と関連の薄いカテゴリーの不振」が同時に描かれていれば、選択と集中、つまり絞る方向性が取りやすい、というものです。
逆の場合は、聞き手が次のようにまとめました。主力カテゴリーの客に、関連する別カテゴリーへの潜在ニーズがあると描かれていれば、広げる方向性が取りやすい。講師はこれにも「その通りです」と答えています。
| 与件文に描かれること | 取りやすい方向 |
|---|---|
| 主力カテゴリーへの支持と、本業と関連の薄いカテゴリーの不振 | 絞る(選択と集中) |
| 主力カテゴリーの客に、関連する別カテゴリーへの潜在ニーズ | 広げる |
答案の型①:広げる提案は3つの根拠とリスクを添える
方向性が決まったら、解答への落とし込みです。聞き手が「ここが一番知りたいところです」と言う、動画の山場にあたります。
品揃えを広げる提案では、単に「新商品を扱う」で終わらせないことが大事です。講師は、次の3つの根拠をセットで添えるよう勧めます。
広げる提案の3つの根拠
- ストアコンセプト・自店の強みと合致しているか
- 仕入先を安定確保できるか
- 販売するノウハウが自社にあるか
3つとも言わないとダメなんですか?
できるだけ3点セットで書くと説得力が増します。
私、前に広げる提案を書いたとき、「売れそうだから」しか書けなくて、あとで見返したら根拠が薄すぎて反省しました。
それだと点が伸びにくいです。
加えて、経営資源に制約のある中小企業という前提を踏まえて、仕入費や在庫維持費といった財務面のリスク、陳列スペースの制約に触れられると、さらに加点されやすくなる、と講師は言います。聞き手の言葉では「メリットだけじゃなくて、リスク側にも目配りする」ということです。
答案の型②:絞る提案は「強化」と「中止」を対で書く
逆に、絞る、つまり特化する提案では、単に「商品を減らす」ではダメだと講師は言います。「強化する商品」と「取扱いを中止する商品」を必ずセットで挙げます。そのうえで、経営資源を強みとなるカテゴリーに集中させることで、差別化や競争優位を強化する、という因果まで書き切る。これが絞る提案の型です。動画の題にある「強化と中止、対で書く」は、この部分のことです。
あ、それ私、まさに手が止まったところです。「強化する商品」は書けたんですけど、「中止する商品」まで対で挙げる発想がなくて、片方だけで終わらせちゃってました。
すごく多い抜け方です。経営資源に制約がある中小企業という前提がある以上、選択と集中は必ず対で考えるものだと覚えておいてください。
つまり、中小企業は経営資源に限りがあるので、何かを強くするなら、何かをやめる。「強化」だけを書いても、「中止」だけを書いても、選択と集中の答案としては半分です。
どちらの方向性でも、最後の締め方は共通です。売上拡大、顧客満足度向上、競争優位性の強化といった、事例企業の課題解決に結びつけて締めます。そこまで書くと、助言問題としての完成度が上がる、と講師は言います。聞き手は「根拠を並べて終わりじゃなくて、ちゃんと効果につなげるんですね」と受け止めました。
| 書くこと | 広げる | 絞る |
|---|---|---|
| 柱 | 3つの根拠 | 強化と中止を対で |
| 添える点 | 財務面のリスク・陳列スペース | 集中→差別化・競争優位の因果 |
| 締め | 課題解決へ | 課題解決へ |
混同しやすい点:製品の3層構造との違い
最後に、混同しやすいポイントが2つあります。1つ目は、製品の3層構造との混同です。これは、1つの製品を核・実体・付随機能の3層で掘り下げて捉える視点のことです。
それ、名前が似てて紛らわしいです…。
対象のスケールが全く違います。品揃えの話は複数の製品・製品ラインの組み合わせ全体を捉える視点で、1つの製品を深掘りする視点とは別物です。
| 視点 | 見る対象 |
|---|---|
| 品揃え | 複数の製品・製品ラインの組み合わせ全体 |
| 製品の3層構造 | 1つの製品を核・実体・付随機能で深掘り |
与件文が「1つの商品の中身」の話をしているのか、「品揃え全体」の話をしているのか。まずそれを切り分けます。聞き手の言うとおり、混同すると解答の粒度そのものがずれてしまいます。
混同しやすい点:広げる方向と絞る方向のNG
2つ目は、広げる方向と絞る方向、それぞれのNGパターンです。講師が挙げた誤りを表にまとめます。
| 場面 | よくある誤り |
|---|---|
| 広げる提案 | ストアコンセプトとの整合性を無視して、思いつきで新カテゴリーを追加する |
| 絞る提案 | 「強化する商品」だけを挙げて「中止する商品」を挙げ忘れる |
| もう1つ | 仕入・在庫・陳列スペースの制約に触れず、拡大のメリットだけを列挙する |
補足(動画の言い間違い):動画では、この表の「もう1つ」の誤りを、絞る提案の説明の続きで挙げています。しかし内容は「拡大のメリットだけを列挙する」誤りで、広げる提案で起きるものです。動画のまとめでも、広げるなら財務面のリスクをセットで書く、と言っています。
広げる提案で、自店の強みや顧客層と関連の薄い商品を足すと、かえってブランドイメージを損なうリスクがある、と講師は注意します。聞き手は「それ、私やりがちです。客が増えそうだからで新しいジャンルを足す発想に飛びついちゃうんですよね」と打ち明けます。
そして、これらのNGを聞いた聞き手が、次のようにまとめます。講師はこれに「いい整理です」と応じました。
つまり、広げる方向にも絞る方向にも、それぞれ別のNGパターンがあって、両方とも「都合のいい部分しか見ていない」という共通点があるんですね。
いい整理です。
試験ではここに注目
- 助言問題で、品揃えの方向性(広げる・絞る)を問われているか
- 与件文に、客層の違い・在庫や陳列スペースの制約・主力への集中・伸び悩みの記述があるか
- 広げるなら3つの根拠と財務面のリスク、絞るなら強化と中止のセットが書けているか
- 最後が、売上拡大・顧客満足度向上・競争優位性の強化といった課題解決につながっているか
まとめ
動画の整理
- 品揃えの助言問題が出たら、まず幅・深さ・整合性の3軸で現状を整理する
- 方向性は、集中を示すサインか拡大を示すサインかを、与件文から見分ける
- 広げるなら3つの根拠と財務面のリスクをセットで書く
- 絞るなら強化と中止をセットで書く
- 製品の3層構造と混同しない
動画の終わりで、聞き手は「知識としては知ってたのに、こうやって使いどころを整理してもらうと、本番で気づける自信が持てました」と話しています。講師は、与件文の記述を見た瞬間に、幅・深さ・整合性のどれの話をしているのか、反射的に切り分けられるようにしておいてください、と締めます。
知っていることと、本番で気づけることは別です。取扱品目や客層、在庫・陳列スペース、主力への集中や伸び悩み。こうしたサインに反応して、広げるなら根拠とリスクを、絞るなら強化と中止を、最後は課題解決まで書く。この流れを持っておけば、根拠なく「広げましょう」「絞りましょう」と書いてしまう答案から抜け出せます。
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