聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

サービスの一般的特質と対応(2)

事例Ⅱ 第9回

事例Ⅱ 品質のばらつきと繁閑差、打ち手の仕分け方10分39秒2026年8月21日公開

「サービス業が舞台の事例で、助言の方向性がぼやけたまま書き上げてしまった経験はありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文のサイン、特質ごとの対応の方向性、三段の仕分けと答案の型、取り違えやすい失敗、本番のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

助言の方向性がぼやけるとき

動画は「サービス業が舞台の事例で、助言の方向性がぼやけたまま書き上げてしまった経験はありませんか」という問いから始まります。聞き手の答えは「何かは書けているんですけど、読み返すと当たり障りのないことしか言っていなくて」。講師は、それはサービスの特質を切り分けないまま「顧客満足度を高めましょう」に着地したときの典型だと言います。聞き手も「まさにそこに逃げていました」と認めます。

前回は、聞き手が挙げたとおり「形がない」「貯められない」「生産と消費が同時」の三つを扱いました。今回はその続きで、取引の不可逆性、需要の時期的集中性、異質性、労働集約性の四つを、二次試験でどう使うかに絞ります。聞き手は「四つとも言葉は知っています。でも本番だと、どれをどの記述に当てるのかが分からなくなるんです」と打ち明けます。講師はそこが本題だと答えます。四つはサインも打ち手も、それぞれ違うからです。

このページは、問われ方、与件文のサイン、仕分けの型、特質ごとの対応の方向性、答案への落とし込み、やりがちな失敗、本番のチェックポイントの順に、動画の流れにそってまとめます。

どんな形で問われるか

講師によると、出やすいのは美容室、飲食店、旅館、学習塾、クリーニング店、フィットネスクラブのような、サービス業が題材の事例Ⅱです。設問の言い回しは、代表的には次の三通りです。

  • サービスの質を安定させる施策は何か
  • 繁閑の差にどう対応すべきか
  • 顧客満足度を高めるにはどう改善すべきか

どれも助言問題なんですね。

ええ。品質が均一にならない、繁閑の差が大きい、一度提供したサービスはやり直せない。こうしたサービス業特有の弱みを与件文から読み取らせて、打ち手を助言させる作りが繰り返されています。

つまり、与件文の中から弱みを見つけ、それに合う打ち手を助言する、という作りが繰り返されているわけです。弱みを見つける手がかりが、次のサインです。

与件文のサインは4つ

「その弱みには、与件文のどこを見れば気づけるのか」。聞き手の問いに、講師は「サインを四つ持っておくといい」と答えます。

① 異質性(品質のばらつき)「担当者によって仕上がりが違う」「クレームが特定の従業員に集中」② 需要の時期的集中性「繁忙期は予約が取れない」「週末に予約が集中する」③ 取引の不可逆性「やり直しがきかない」「キャンセルへの対応に苦慮」④ 労働集約性「人手に頼った作業が多い」「増員しても教育に時間がかかる」
与件文の言い回しから、4つの特質のサインを拾います。
  • 異質性のサイン:「担当者によって仕上がりが違う」「スタッフの経験年数にばらつきがある」「クレームが特定の従業員に集中している」。聞き手が「品質のばらつき、異質性のサインですね」と受け、講師が「そうです」と確認しました。
  • 需要の時期的集中性のサイン:「繁忙期は予約が取れない」「閑散期は稼働率が低い」「週末に予約が集中する」「季節によって客数が大きく変動する」。これも聞き手が先に「需要の時期的集中性ですね」と言い当てています。
  • 取引の不可逆性のサイン:「一度提供したサービスはやり直しがきかない」「キャンセルへの対応に苦慮している」。講師は、ここが取引の不可逆性に関わる記述だと説明します。
  • 労働集約性のサイン:「人手に頼った作業が多い」「一人当たりが対応できる顧客数に限界がある」「増員しても教育に時間がかかる」。

私、そこは読み飛ばしていました。人手の話は、ただの現状説明だと思っていて。

そこで差がつくんです。厄介なのは、この四つが同時に与件文へ現れることが多い点です。

混ざって出てきたら、どこから手をつけるか迷いそうです。

人手の話を現状説明として読み流すと、労働集約性のサインを落とします。しかも四つは同時に出てきやすいので、思いついた打ち手からすぐ書き始めると、どの記述に効く打ち手なのかが曖昧なまま答案になってしまいます。そこで、打ち手の前に仕分けをします。

仕分けの型:特質、なぜ問題か、対応の方向性

講師が勧めるのは、打ち手を考える前に、どの記述がどの特質に当たるかを整理することです。型は特質、なぜ問題になるか、対応の方向性の三段です。

① 特質どの特質か② なぜ問題か弱みの中身③ 対応の方向性打ち手の筋与件文の記述を特質ごとに寄せてから打ち手を考える(並べ直しが答案の骨組み)記述の主語を見る従業員の話?時期・曜日の話?取引そのもの?
三段で並べ直す作業が、そのまま答案の骨組みになります。

聞き手が「三段に分けると、与件文とのひも付けがしやすくなるということですか」と確認すると、講師は「そうです。しかも並べ直す作業自体が、そのまま答案の骨組みになります」と答えます。

たとえ話:買い物メモの書き直し

買い物に行く前に、メモを売り場ごとに書き直す作業に近い、と講師は言います。野菜、鮮魚、日用品と分けておけば、店内を行ったり来たりせずに済みます。聞き手は「与件文の記述も、特質ごとに寄せてから打ち手を考えるということですね」と受けました。

本番で見分けるコツは記述の主語です。従業員の話か、時期や曜日の話か、取引そのものの話か。ここで置く売り場が決まります。聞き手は「主語を見れば、どの棚に置くか判断できるんですね」と確認し、講師は「ええ」と受けました。

特質ごとの対応の方向性

ここからは、四つを一つずつ見ていきます。先に全体像を図にまとめます。

取引の不可逆性事前:説明・合意形成事後:付帯サービスで不満をフォロー需要の時期的集中性需給調整でくくれる価格・サービス内容予約制度・事前公開人員融通・振替など異質性標準化・マニュアル化教育・研修機械化・IT化勤務体制への配慮顧客の意見の収集労働集約性機械化・IT化で省力化多能工化で繁閑を吸収非正規活用で人員調整
特質ごとに、打ち手の筋が違います。

取引の不可逆性は、提供したサービスは返品もやり直しもできない点が問題になります。聞き手が「失敗が取り返せないわけですね」と受けたあと、講師は対応の方向性を事前と事後の二方向で説明します。事前は丁寧な説明と合意形成、事後は不満を解消するための付帯サービスによるフォロー。これで不可逆性のリスクを下げます。聞き手は「先に握っておいて、それでも残った不満には手当てをする、と」と言い換えました。

需要の時期的集中性は、繁閑の差が大きいので需要と供給がミスマッチしやすくなる点が問題です。対応は需給調整という一語でくくれる、と講師は言います。具体的には次のとおりです。

  • 価格を繁閑に応じて変える
  • サービス内容を繁閑に応じて変える
  • 予約制度を導入する
  • 繁閑の状況を事前に公開する
  • 複数店舗間で人員を融通し合う
  • 振替やオンデマンドで対応する

聞き手が「サービス内容を繁閑で変える、というのは」と聞くと、講師は、忙しい時期は基本の定型サービスを中心にして、余裕のある時期はカスタマイズ系も受ける切り替えだと説明します。聞き手の「需要側だけでなく、提供する中身のほうも動かすんですね」に対し、講師は「そこが見落とされがち」だと答えました。

異質性(品質のばらつき)は、提供するのが人である以上、どうしても均一にならない点が問題です。聞き手が「ここは標準化ですよね」と切り出し、講師は次を挙げます。

  • 標準化とマニュアル化
  • 教育・研修:職場の中で教えるOJTと、職場を離れて学ぶOFF-JTを使い分ける
  • 人の手による作業以外は機械化・IT化する(美容室で洗髪を機械に任せるような発想)
  • 接客する従業員の勤務体制への配慮(疲労がたまった状態では品質が落ちる)
  • 顧客の意見を定期的に収集して社内で共有し、品質向上に生かす

機械化について聞き手は「人がやらなくていい部分を減らせば、ばらつきも減るということですね」、勤務体制について「働く側のコンディションまで品質の話なんですね」と受けています。顧客の意見の収集については、講師が異質性への正攻法だと言い切っています。

労働集約性は、機械による大量生産がしにくいので規模の経済が働きにくく、人を増やさないと対応量が伸びない構造になる点が問題です。聞き手が「対応はやはり機械化ですか」と聞くと、講師は三方向を挙げます。

  • 機械化・IT化による省力化
  • 多能工化で繁閑を吸収する
  • 非正規社員の活用で人員を柔軟に調整する
特質なぜ問題か対応の方向性
不可逆性やり直し・返品ができない事前の合意形成
事後のフォロー
時期的集中性需給がミスマッチ需給調整
異質性人が提供し均一にならない標準化・教育・機械化など
労働集約性規模の経済が働きにくい省力化・多能工化・非正規活用

四つは独立ではない

聞き手は、多能工化について「さっきの繁閑の話ともつながりますね」と気づきます。講師は「いいところに気づきました」と受け、四つは独立ではなく関連し合っていると言います。特に、異質性と労働集約性への対応は、標準化と機械化という点で大きく重なります。

重なるなら、答案でもまとめて書いていいんでしょうか。

書けます。ただし、どの記述を根拠にしているかは分けて意識すること。曖昧だと効果の書き方までぼやけます。

まとめて書いてよいが、根拠にした記述は分けて意識する。この二つがセットです。

答案への落とし込み

答案の型も三段です。どの特質に起因する課題か、その与件文の根拠。次に具体的な対応策。最後に期待される効果。

① どの特質に起因する課題か+与件文の根拠② 具体的な対応策③ 期待される効果字数が厳しいときは特質の名指しを省き、対応策と効果を中心に書く
課題の根拠、対応策、効果の順に書きます。

字数が厳しいときはどうするか。講師は、特質の名指しは省いて構わず、対応策と効果を中心に書くと言います。評価されるのは打ち手と効果だからです。先ほど出てきた「どの記述を根拠にしているかは分けて意識する」という話は、答案に書く書かないにかかわらず、頭の中の仕分けとして残しておく、ということになります。

品質のばらつきへの助言は、標準化、教育・研修、機械化から選ぶか組み合わせます。ただし、必ず与件文に合わせて具体化します。講師の言う具体化とは、誰が、どの工程で、なぜばらつくのかまで拾い、その原因に効く手を書くことです。「標準化する」とだけ書いても中身がありません。

私、まさに「マニュアル化して品質を均一化する」で止まっていました。

惜しいんです。あと一歩、工程名と原因を入れるだけで答案の密度が変わります。

繁閑の差への助言は、予約制度、価格やサービス内容の繁閑対応、店舗間・部門間の人員融通、振替・代替対応から、何が繁閑を生んでいるかに合うものを選びます。聞き手が「与件文が示す原因次第で、選ぶ打ち手が変わるんですね」と確認し、講師は例を挙げました。

与件文が示す原因選ぶ打ち手
週末に集中している予約制度や価格
季節で大きく変動する人員融通や振替

労働集約性への助言は、省力化と、多能工化や非正規活用による柔軟な人員配置の両面から検討します。講師は「片方だけだと薄くなります」と言います。

やりがちな失敗は4つ

聞き手が「やりがちな失敗も知っておきたいです」と求め、講師は4つ挙げます。

前回の3つサービスそのものの性質今回の4つ取引・需給・品質・生産品質のばらつき標準化を書く繁閑の差予約制度などを書く事前の均質化標準化事後の回復サービス・リカバリー従業員側の施策能力開発・標準化など顧客側の施策予約制度・価格など
左右を取り違えると、対応策がずれます。

1つ目は、前回の三つと今回の四つの混同で、対応策を取り違えることです。切り分けのコツは役割分担です。前回はサービスそのものの性質、今回は取引・需給・品質・生産という面での特質。こう押さえておくと混ざりません。

2つ目は、品質のばらつきへの対応と繁閑の差への対応の取り違えです。標準化を書くべき場面で予約制度を書いてしまう、その逆もあります。聞き手は「どちらもそれらしいので、自分では気づけなさそうです」と漏らしますが、講師は、根拠となる記述を特質ごとに寄せておけばこの取り違えは起きないと言います。最初の仕分けが効く場面です。

3つ目は、サービス・リカバリーと標準化の混同です。クレーム対応など事後の回復の仕組みがサービス・リカバリーで、ばらつきを未然に防ぐのが標準化です。聞き手は「どちらもサービスの質の話に見えます」と言いますが、目的が違います。片方は事前の均質化、もう片方は事後の回復。設問がどちらを求めているかで書き分けます。

4つ目は、インターナルマーケティングに寄りすぎることです。インターナルマーケティングとは、会社から従業員への働きかけのことです。聞き手が「モチベーションの向上、能力開発、標準化、という働きかけですね」と挙げ、講師は、能力開発には自己啓発の支援も含み、異質性や労働集約性への対応とは確かに重なると認めます。

それなら書いてよさそうですが、何が問題なんですか。

視点が従業員側に限られる点です。テーマ全体を従業員施策だけに縮めると、顧客に向けた予約制度や価格施策が丸ごと抜け落ちます。

助言の幅が狭くなってしまうんですね。

そうです。設問が顧客満足を問うているなら、顧客側の打ち手も必ず入れてください。

本番でのチェックポイント

聞き手が「本番でのチェックポイントを、最後に整理させてください」と頼み、講師は三点にまとめます。

動画の三点

  • 与件文のサインを、四つの特質に仕分ける
  • 特質、なぜ問題か、対応の方向性の三段で並べる
  • 課題の根拠、対応策、効果の順に書き、従業員側と顧客側で打ち手が偏っていないかを確かめる

講師は「ここまでやれば助言の方向はぶれません」と言います。

まとめ

動画の整理

  • 助言がぼやけるのは、特質を切り分けないまま「顧客満足度を高めましょう」に着地するとき
  • 今回の四つは、取引の不可逆性、需要の時期的集中性、異質性、労働集約性。サインも打ち手もそれぞれ違う
  • 与件文のサインを仕分け、特質、なぜ問題か、対応の方向性の三段で並べる。並べ直しが答案の骨組みになる
  • 答案は、課題の根拠、対応策、効果の順。品質のばらつきへの助言は、誰が、どの工程で、なぜばらつくのかまで具体化する
  • 取り違えやすいのは、前回の三つとの混同、標準化と繁閑対応、サービス・リカバリーと標準化、従業員側への偏り

動画の最後に、聞き手は「四つの特質が、ようやく本番で使える道具になった気がします」と話します。講師は、その感覚のまま与件文を読んでいけば、サービス業の事例は手応えが変わってくると返します。四つの言葉を知っていることと、与件文の記述に結びつけて打ち手を選べることは別です。サインを拾い、三段に並べ、顧客側の打ち手まで入れて書く。この順番を持っておけば、助言の方向性がぼやけたまま書き上げることは減っていくはずです。

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