製品ミックス(幅と深さ)
事例Ⅱ 第6回
「事例Ⅱで『今後どう商品展開すべきか』と聞かれたとき、なんとなく売れそうな商品を並べる案になっていませんか」。動画は、講師のこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、与件文の五つのサイン、幅・深さ・整合性・長さの四つの物差し、深さ優先と幅と選択と集中の答案の型、混同しやすい誤りをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
なんとなく売れそうな商品を並べていませんか
動画は、講師のこんな問いかけから始まります。「事例Ⅱで『今後どう商品展開すべきか』と聞かれたとき、なんとなく売れそうな商品を並べる案になっていませんか」。聞き手は「まさにそれです」と認めます。品揃えの整理の仕方は知っているのに、本番になると思いつきで書いてしまう、というのです。
知識としては品揃えの整理の仕方を知っているのに、本番だと思いつきで書いてしまいます。
そこ、狙われるところです。今日は品揃え全体の設計、いわゆる製品ミックスを、二次の答案でどう使うかに絞って話します。
聞き手はさらに、定義は分かっているつもりでも、与件文のどこを見てその視点に切り替えればいいのかが分からない、と打ち明けます。つまりこの動画の主題は、定義の暗記ではなく、与件文のサインに気づいて、答案の型に落とし込むことです。流れは次のとおりです。
- この論点が事例Ⅱでどう出るか
- 与件文のどこを見ればこの発想に切り替えられるか(五つのサイン)
- 幅・深さ・整合性・長さの四軸で現状を整理する
- 答案への落とし込み(深さ優先、幅、絞り込み)
- 混同しやすい四つの誤り
- 本番で使うチェックポイント
この論点は助言問題で出る
講師によると、事例Ⅱでこの論点は、次のような助言問題で出ます。
- 今後どんな商品展開をすべきか
- 新たにどの商品カテゴリーに進出すべきか
- 既存の取扱商品をどう見直すべきか
「新商品を考えて」ではなく、品揃え全体を聞かれているんですね。
そうです。単に売れそうな商品を足す発想ではなく、四つの物差しで現状を整理してから、広げるか絞るかを判断する視点が求められます。
聞き手が「四つの物差し、というのは」と尋ねると、講師は幅、深さ、整合性、長さだと答えます。四つの中身は少し後で整理するので、ここでは名前だけ頭に置いてください。先に押さえるのは、与件文のどこを見ればこの発想に切り替えられるか、つまり着眼点です。
与件文の五つのサイン
講師が挙げた着眼点は五つです。
- カテゴリーの複数列挙:取扱商品のカテゴリーが複数並んでいる記述。主力カテゴリーと、それより弱い副次的なカテゴリーが並んで書かれているところです。
- 品揃えの欠落:一部の商品を扱っていない、ラインナップに空白がある、という記述。
- 売上の対比:特定カテゴリーの売上が伸び悩む一方で、別のカテゴリーが好調という記述。
- 仕入先・生産方式・販売チャネルの異同:これらがカテゴリーごとに異なる、あるいは共通している、という記述。
- 陳列スペース・在庫管理の制約への言及。
カテゴリーが並んでいたら、もうこの視点で読んでいいんですか。
読んでいいサインです。二つ目は、一部の商品を扱っていない、ラインナップに空白がある、という品揃えの欠落を示す記述。
「扱っていない」も、むしろヒントになるんですね。
なります。三つ目は、特定カテゴリーの売上が伸び悩む一方で、別のカテゴリーが好調、という対比の記述。
対比が出てきたら、幅を見直せというサインですか。
見直しの入り口になります。もう一段掘り下げると、カテゴリーの中のどの品目が売れていて、どの品目が売れていないかという、売れ筋・死に筋の把握にもつながる記述です。
聞き手は「対比は、カテゴリー同士だけでなく、品目単位でも見るということですね」と確認します。講師の答えは「見ます。あとで出てくる深さを判断する材料にもなります」。対比は、カテゴリー同士でも品目同士でも拾う、と覚えておきましょう。
四つ目の仕入先・生産方式・販売チャネルの記述は、あとで出てくる整合性、つまりカテゴリー同士の関連の強さを測る材料になります。五つ目の制約について、聞き手が「広げる案には歯止めがかかるということですね」と言うと、講師は「その通りです」と答え、こうまとめました。この五つが出たら、頭の中で品揃えの表を作る準備に入ってください。
四つの軸で品揃えを整理する
では、その表の作り方です。現状整理は四つの軸で行います。
| 軸 | 見ること |
|---|---|
| 幅 | 今扱っているカテゴリー(ライン)の数 |
| 深さ | 主力カテゴリーの中で、品目(アイテム)が充実か手薄か |
| 整合性 | カテゴリー同士が、仕入先・生産設備・販売 |
| 長さ | 会社全体のアイテム総数が、強みや経営資源に見合っているか |
カテゴリーの数、ですね。同じカテゴリーの中の品揃えの厚みが深さ、ということですね。
そうです。整合性は、各カテゴリーが仕入先、生産設備、販売チャネル、ターゲット顧客の観点でどれだけ近いかです。
さっきの四つ目の着眼点が、ここに効いてくるんですね。
つながっています。長さは、会社全体で扱うアイテムの総数が、強みや経営資源に見合っているかです。
聞き手が「四つとも、ただ数えるだけじゃなさそうですね」と言うとおり、数えて終わりではありません。講師は、与件文から拾える強み、つまり技術力やノウハウ、顧客基盤と、この四軸を突き合わせて、伸びしろと無理を見つけると説明します。
カフェで考える整合性
どんな感じで見るのか、という聞き手の問いに、講師は個人経営のカフェを例に出します。コーヒーの品揃えを増やす、つまり深さを足すのは自然です。では、隣に洋服や本を置き始めたら、どう感じますか。
何のお店か分からなくなります。豆や焙煎の仕入先とは全然違う話ですし。
それが整合性の低さです。逆に、コーヒーに合う茶葉や焼き菓子なら、仕入先やターゲット顧客が近く、整合性が保たれます。
与件文で仕入先や顧客層が近いかどうかを見れば、その拡張が無理筋かどうか判断できるんですね。
その視点で読めれば、本番でも迷いません。
動画のたとえ:カフェ
- コーヒーの品目を増やす:深さを足す。自然な拡張。
- 茶葉・焼き菓子:仕入先や顧客が近く、整合性が保たれる。
- 洋服・本:仕入先も顧客も別物で、整合性が低い。
答案の型1:深さから、幅は関連性の高いものだけ
ここから解答への落とし込みです。講師によると、型は大きく二つ、深さを優先するパターンと幅を優先するパターンです。両方使えるなら、基本は深さから考えます。
深さ優先の型は、強みのある特定カテゴリーに絞り込み、その中の品目を充実させる、というものです。それによって、関連購買、いわゆるクロスセルや、上位品への誘導であるアップセルを促します。専門性やこだわりを軸にした差別化に向く型です。それでも足りないと判断したときに、初めて幅を広げます。
いきなり新しいカテゴリーに手を出さない、ということですね。
出しません。幅を広げるときも、既存カテゴリーと関連性の高い新カテゴリーに限定し、客層の拡大や来店頻度の向上を狙います。
関連性が低い新カテゴリーは避けるということですね。
避けます。しかも広げる提案には必ず、仕入や在庫、陳列スペースといった経営資源の制約と、既存の強みとの整合性が保たれているかを併記します。
聞き手は「良さそうに見える提案ほど、制約を書き忘れやすい気がします」と感じます。講師は「そこが差になります」と答えます。さらに、新カテゴリーへの拡張を助言するときは、仕入費や在庫維持費といった財務的な負担、それに陳列スペースなど中小企業ならではの制約にも触れられると、実務感のある解答になる、とのことです。
良さそうな提案ほど、そのブレーキも一緒に書くんですね。
どちらの型でも、なぜその方向が自社の強みや経営資源に合っているかという根拠を、与件文の技術力や顧客層、仕入基盤と結びつけて書くことが得点につながります。
型だけ覚えても、根拠が与件文とつながっていないと弱いということですね。
そこを意識してください。
答案の型2:絞るときは「止める」と「強化する」をセットで
逆に、絞り込む方向、つまり狭める提案のときは、選択と集中という型を使います。聞き手が「選択と集中というと」と尋ねると、講師の答えは明快でした。止める商品と、強化する商品を、必ず二つセットで挙げること。強化する側だけを書いて終わらせない、ということです。
片方だけだと、選択と集中とは呼べないんですね。
呼べません。
ここまでの内容を、書き方のNGと対応させて整理します。
| NGの書き方 | 講師の示した書き方 |
|---|---|
| 強化する商品だけを書く | 止める商品と強化する商品をセットで書く |
| 関連性の低い新カテゴリーを足す | 既存と関連性の高い新カテゴリーに限る |
| 広げる案だけを書く | 資源の制約と強みとの整合性を併記 |
| 根拠を書かない | 与件文の強みと結びつけて根拠を書く |
混同しやすい四つの誤り
混同しやすいところに進みます。講師が挙げたのは四つです。
一つ目は、新商品を作るという提案との混同です。製品ミックスは品揃え全体の設計の話で、一つの新商品の中身、つまり機能やパッケージ、保証を設計する話ではありません。聞き手は「同じ引き出しに入れていました」と言い、講師は「多くの人がそうです」と応じます。
二つ目は、ブランド戦略との混同です。ブランドは、商品がどう認知され、どう想起されるかというイメージ面の話。製品ミックスは、どの商品をどれだけ揃えるかという構成面の話です。両方に触れる設問ならどちらから書くのかと聞き手が尋ねると、講師は、まず構成、何を揃えるかを固めてから、ブランドの打ち出し方を重ねて書くと整理しやすい、と答えました。
三つ目は、とにかく品揃えを増やせばいいという短絡的な解答です。整合性を欠いた拡大は、経営資源の分散や、お店のコンセプトがぼやけることにつながります。聞き手は先ほどのカフェに本や洋服を置くパターンだと気づきます。必ず、なぜその追加が既存の強みとつながるかを書いてください。
四つ目は、深さと幅の取り違えです。聞き手は「同じカテゴリー内で品目を増やすのが深さ、カテゴリー自体を増やすのが幅、でしたね」と整理し、講師が「そうです」と受けます。与件文の記述がどちらの話をしているかを最初に見極めてください。カテゴリーの話なのか、品目の話なのかで、使う型が変わります。
| 混同 | 違い・対処 |
|---|---|
| 新商品の提案 | 一つの商品の中身ではなく、品揃え全体の設計 |
| ブランド戦略 | イメージ面ではなく構成面。構成を先に固める |
| とにかく増やす | 整合性を欠くと資源が分散。強みとの |
| 深さと幅 | 品目の話かカテゴリーの話かを最初に見極める |
読み間違えると、答案の方向ごとずれてしまいますね。
ずれます。最後に、本番で使うときのチェックポイントをまとめます。
本番で使うチェックポイント
まず、カテゴリーの複数列挙、品揃えの欠落、カテゴリー間の売上の対比、仕入先やチャネルの異同、陳列や在庫の制約という五つの記述を拾います。拾ったら、幅、深さ、整合性、長さの四軸に整理します。強みが生きるなら深さから検討し、足りなければ整合性の高い方向に幅を広げる。狭めるなら、止める商品と強化する商品を必ずセットで書く。どちらの型でも、経営資源の制約と強みとのつながりを書き添えます。
講師は、そこまでできれば、なんとなくの品揃え案から抜け出せると言います。特に陳列スペースが限られる小規模な小売店ほど、この四つの物差しで一度立ち止まる価値がある、とのことです。
スペースが広い会社なら、あまり気にしなくていいということですか。
制約が緩いだけで、判断の手順自体は変わりません。むしろ制約が厳しい与件文ほど、この視点で整理できているかどうかが答案の差になります。
制約の大小に関係なく、いつも四つの物差しから始めるということですね。
そうです。次に事例Ⅱで商品展開を問われたら、まずこの四つの物差しを当ててみてください。
まとめ
動画の整理
- 製品ミックスは、事例Ⅱの「今後の商品展開」「新カテゴリーへの進出」「既存商品の見直し」という助言問題で出る。品揃え全体の設計を聞かれている
- 切り替えのサインは五つ:カテゴリーの複数列挙、品揃えの欠落、売上の対比、仕入先・チャネルなどの異同、陳列・在庫の制約
- 現状は幅・深さ・整合性・長さの四軸で整理し、与件文の強みと突き合わせて伸びしろと無理を見つける
- 基本は深さから。足りないときだけ、関連性の高い新カテゴリーに幅を広げる。狭めるなら止める商品と強化する商品をセットで書く
- どの型でも、仕入・在庫・陳列などの制約と、強みとの整合性を併記し、根拠を与件文に結びつける
- 混同は四つ:新商品の提案、ブランド戦略、とにかく増やす解答、深さと幅の取り違え
動画の最後に、聞き手は「思いつきで並べるんじゃなくて、幅と深さを使い分けて書いてみます」と話します。知識として四つの物差しを知っているだけでは、答案は変わりません。与件文のサインに気づき、四軸で整理し、型に沿って、制約と根拠まで書く。この順番を持っておけば、「なんとなく売れそうな商品」を並べる答案から抜け出せます。
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