農商工連携で何を得るかの決め方
4事例共通 第1回
「与件文に「地元の農家から野菜を仕入れている」という一文が出てきたとき、そこに線を引いていますか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、問われ方の四つの出方、与件文の四つの系統、二段構えの整理、答案の三つのブロック、やりがちな三つの間違い、本番で使うときのチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
その一文に線を引いていますか
与件文に「地元の農家から野菜を仕入れている」という一文が出てきたとき、そこに線を引いていますか。
あー……正直、読み飛ばしてました。仕入先の紹介かな、くらいの気持ちで。
そこなんです。農林漁業者と手を組むという話は、知識としてはみなさん持っている。なのに与件文の中では、ただの仕入先の説明にしか見えなくなる。
それ、本番でまさにやりました。読み終わってから「使える強み、少なかったな」って思ったんです。
実はその一文が、解答の柱になることがあるんですよ。農林漁業者と、食品加工や飲食、小売といった商業・工業を営む中小企業が連携する。この形が見抜けるかどうかで、答案の厚みが変わります。
知識としては知ってるのに、拾えなかったってことですよね。悔しいです。
今日は、その連携を与件文のどこで見抜いて、どう解答に変えるかだけを扱います。
出方は大きく四つ
お願いします。まず、この論点ってどんな問われ方をするんですか。
中心になるのは事例Ⅱです。農産物、水産物、畜産物を扱う企業が題材のとき、相性がとてもいい。出方は大きく四つあります。
四つですか。
一つ目は、地域の農家や漁業者と連携して、地元産の原材料を使った新商品を開発しなさい、という助言型の設問です。
あ、新商品開発の設問、めちゃくちゃ多いですよね。
二つ目は、地域ブランド化や地域活性化を目的に、農林漁業者と組んで商品のブランドをどう作るかを求めてくる設問。
ブランドの話とつながるんですね。そこは別の論点だと思ってました。
三つ目が、原材料の安定調達や、トレーサビリティの確保を目的にした、農林漁業者との直接的な連携を提案させる設問です。
調達側の話でも出るんですか。売る側の話だとばかり。
そうなんです。四つ目は、六次産業化の一環として、この連携が語られる設問です。生産から加工、販売までを一体で手がける流れの中で、農林漁業者との連携をどう組み込むかが問われます。この四つを頭に入れておくと、設問文を読んだ瞬間に構えができます。
助言型だけじゃなく、調達の話でも来るっていうのが盲点でした。
与件文の記述は四つの系統で見る
では次が本題です。与件文のどんな記述が出たら、この論点だと気づけばいいと思いますか。
「農家」って単語……ですか。
惜しいです。単語一つではなく、四つの系統で見てください。一つ目は、地元の農家、契約農家、漁協、地域の生産者。農林漁業者との関わりを示す記述です。
契約農家、確かに出てきた記憶があります。
二つ目は、地元産の食材、地場産品、産地直送。原材料の産地をわざわざ強調している記述ですね。
産地を書いてあるって、それ自体が出題者のサインなんですね。
三つ目が、食の安全、消費者の信頼、原材料のトレーサビリティ。調達の信頼性に関する記述です。
そこは、なんとなく雰囲気で読んでました。
四つ目は、地域ブランド、地域活性化、地元との協力関係。地域との連携を示す記述です。この四系統のどれかが出たら、いったん立ち止まる。
買い物のとき、値札の産地表示をつい見ちゃうのと似てますね。書いてあるから、意味があるはずだって。
いい感覚です。売り場で産地が書いてあるのは、そこに価値があるから書いている。与件文も同じで、産地や生産者にわざわざ触れているなら、それは使ってほしい情報なんです。
逆に、書いていなければ深追いしなくていい、と。
そのとおりです。本番では、この四系統に印をつけながら読むだけで十分です。
二段構えの一段目:すでに何らかの関係を持っているか
拾えたとして、そこからどう整理すればいいんでしょう。
二段構えでいきます。まず一段目、与件文の企業が農林漁業者とすでに何らかの関係を持っているかを確認してください。
関係があるかないか、ですか。
もう一歩踏み込みます。仕入先としてだけの関係なのか、それとも共同開発のような踏み込んだ関係なのか。ここで解答の中心が変わるんです。
え、変わるんですか。
関係が浅ければ、連携を強めること自体が解答の中心になります。すでに一定の関係があるなら、その関係を活かした新商品開発や販路開拓が中心になる。
同じ「連携しましょう」でも、書く場所が違うんですね。
そこを取り違えると、すでに組んでいる相手に「まず連携しましょう」と提案する答案になってしまう。
うわ、それ書きそうです。与件文に農家が出てきた時点で、飛びついてしまいそう。
二段構えの二段目:連携によって何を得ようとしているのか
だから一段目が大事なんです。そして二段目が、連携によって何を得ようとしているのか、という目的の整理です。ここは五つの観点で見てください。
五つ、全部言えるようにしたいです。
一つ目、地域ブランドや商品ブランドの形成。二つ目、原材料の直接購買。三つ目、トレーサビリティを実現して、食の安全と消費者の信頼確保に応えること。
三つ目は、信頼を得るための連携ということですね。
そうです。四つ目が、連携による高付加価値な商品開発や販売の実現。五つ目が、地域活性化の観点からの重要性です。
ブランド、直接購買、信頼確保、高付加価値、地域活性化。五つですね。
この五つを並べて、与件文がどれを重視しているかを見る。全部書くのではなく、与件文が推している観点を選ぶのがコツです。
五つ全部詰め込みたくなりますけど、それは違うと。
字数はかぎられていますからね。選ぶために五つを持っておく、という順番です。
答案の基本の型:三つのブロック
では、選んだあと、答案にはどう書けばいいんでしょう。
基本の型があります。地元の農家や漁業者と連携し、何々を図ることで、何々につなげる。この三つのブロックです。
誰と、何を図って、何につながるか。
真ん中に入るのが、さっきの五つのうち選んだ目的です。地域ブランドの形成、直接購買、生産履歴の確保あたりですね。
最後のブロックには何が入りますか。
高付加価値な商品開発、食の安全性の訴求、地域活性化といった、連携の先にある効果です。手段で止めずに効果まで書き切る。
字数配分は、三つ均等でいいんですか。
誰と連携するかは短くていいです。目的と効果に字数を寄せてください。与件文の言葉をそのまま使えば、誰とという部分は一言で足ります。
なるほど、そこは節約できるところなんですね。
そのうえで、課題のタイプで寄せ方を変えます。原材料調達の安定性や信頼性が課題として描かれているなら、農林漁業者と直接的に連携して原材料を直接購買し、トレーサビリティを確保することで、食の安全性を訴求して消費者の信頼を得る、という構成です。
調達の課題なら、信頼の話で締めるんですね。
逆に、新商品開発や地域ブランド化が課題なら、地元の生産者と連携して地域ならではの商品を共同開発し、地域ブランドとして訴求することで差別化を図る、という構成に寄せます。
同じ型なのに、中身の入れ替えで別の答案になりますね。
型が一つで済むので、本番で迷いません。与件文と対応づけやすくなるのが、この寄せ方の利点です。
やりがちな間違いは三つ
この論点で、やりがちな間違いってありますか。
三つあります。一つ目は、この連携を、地域資源の活用一般や地産地消と同じものとして扱ってしまうことです。
あ、それ同じだと思ってました。地元のものを使う話、ですよね。
核心が違うんです。この論点の中心は、農林漁業者の側と商工業者の側が、双方の経営資源を持ち寄って新しい価値を生み出す連携の形にあります。
持ち寄る、というのがポイントなんですね。
だから、単に地元の食材を使っているだけの記述であれば、地域資源の活用という論点で扱うほうが適切な場合もあります。
使うだけなのか、一緒に作るのか。線引きはそこですか。
そこです。料理で言うと、持ち寄りの食事会と、自分ひとりで作った料理を出す会くらい違います。持ち寄りなら、相手が何を持ってくるかで献立自体が変わりますよね。
確かに。材料をもらうだけなら、献立は自分の都合で決められます。
その違いが、答案の書き分けになります。二つ目の誤りが、垂直連携ネットワークと混同することです。発注元と下請という上下の取引関係と、この連携は性質が違います。
発注する側とされる側、という形ではないんですね。
農林漁業者と商工業者が対等な立場で連携して、新しい価値を共に創る取り組みです。一方が他方に一方的に発注する構造とは、はっきり区別してください。
対等かどうか。さっきの持ち寄りの話とつながりますね。
つながります。三つ目が、与件文に根拠のない過大な提案です。六次産業化に全面的に乗り出す、といった提案ですね。
大きく書いたほうが、点が来そうな気がしちゃいます。
気持ちは分かりますが、与件文にある企業の規模や経営資源に見合った、現実的な連携の範囲にとどめてください。根拠のない拡大は、助言としての説得力を落とします。
大きさではなく、根拠なんですね。
本番で使うときのチェックポイント
最後に、本番で使うときのチェックポイントをまとめます。まず、農林漁業者との関わり、産地の強調、食の安全、地域との連携という四系統の記述に反応する。
読みながら印をつける、ですね。
次に、その企業と農林漁業者の関係が、仕入先どまりか、踏み込んだ関係かを見分ける。ここで解答の中心が決まります。
浅ければ連携の強化、深ければその関係の活用。
そのうえで、ブランド形成、直接購買、トレーサビリティによる信頼確保、高付加価値化、地域活性化という五つの観点から、与件文が推している目的を選ぶ。
全部書かずに、選ぶ。
最後に、誰と連携し、何を図り、何につなげるかの三ブロックで書き切る。効果まで必ず書く。これだけで、読み飛ばしていた一文が得点になります。
産地の一行に線を引くところから、変えていきます。
その一行に気づけるかどうかが、この論点の勝負どころです。次の演習から、ぜひ試してみてください。

