モノ作りとサービスの融合
4事例共通 第3回
「二次の与件文で、『製品は作っているが、販売は卸売業者に任せてきた』という一文、さらっと読み飛ばしていませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、二つの方向、与件文の合図、情報の整理、答案の型、やりがちな外し方、本番のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「製品は作っているが、販売は卸売業者に任せてきた」という一文
二次の与件文で、「製品は作っているが、販売は卸売業者に任せてきた」という一文、さらっと読み飛ばしていませんか。
あー、読み飛ばしてます。会社の説明の一部だと思って、線も引かずに次へ行ってました。
そこなんですよ。あの一文は、この会社はまだ顧客と直接つながっていない、という出題側からの合図なんです。
合図なんですか。製造業がサービスの側へ出ていく話は、知識としては知ってるんです。でも本番だと、その引き出しをどこで開ければいいのか分からなくて。
そうそう、知識はあるんですよね。今日は、開ける合図の見つけ方と、開けたあとに何を書くかまで詰めましょう。
この論点には方向が二つある
まず押さえてほしいのは、この論点には方向が二つある、ということです。
二つ、ですか。作る側が売りにいく話しか思い浮かびません。
一つはそれです。製造業がサービスの分野へ出ていく方向。もう一つは逆に、製造業ではない会社がモノ作りの分野へ入っていく方向。
逆向きもあるんですね。小売のお店が自分で商品を作る、みたいなことですか。
それです。卸売業や小売業の会社が、自分たちで商品の企画から手がける。プライベートブランドの開発が典型ですね。
事例Ⅰと事例Ⅱ、出方は大きく四つ
二次だと、どんな事例で顔を出すんでしょうか。
事例Ⅰと事例Ⅱです。与件文が多角化や新事業展開を扱っているときに効いてきます。
出方としては、どんなパターンが多いんですか。
| 出方 | 場面 |
|---|---|
| 一つ目 | 卸売業者や小売業者を通して間接的に売ってきた製品を、自社でエンドユーザーへ直接売る体制へ変える |
| 二つ目 | 作って終わりにせず、製品の保守や修理、使い方の提案といったアフターサービスを強化する(顧客との関係が深まり、リピート受注や付加価値の向上につながる) |
| 三つ目 | プライベートブランドのように、サービス業の側が企画や製造へ踏み出す |
| 四つ目 | モノを売って終わりから、モノとサービスを組み合わせて売ることへの転換そのものが、差別化や高付加価値化の切り口として問われる |
それだと気づく合図は四種類
どれも見た覚えがあります。では、それだと気づく合図はどこにあるんですか。
そこが一番大事です。合図は四種類。一つ目は、製造と販売・サービスが切り離されていることを示す記述。製品を作るだけで販売は卸や小売に任せてきた、エンドユーザーの声が届かない、といった書き方ですね。
まさに私が読み飛ばしていたところです。
二つ目は、製品に付いてくるサービスの話。保守、修理、使い方の提案、顧客への技術指導。この辺りが出たら反応していいです。
技術指導も入るんですね。意外でした。
製品を渡して終わりにしていない点で同じ性質ですからね。三つ目は、会社側の意向。顧客と直接的な関係を築きたい、顧客のニーズを製品開発に活かしたい、という一文です。
社長の思いとして出てくることが多そうですね。
多いです。四つ目は、卸売業や小売業の側の与件文に出る、自社独自の製品を持ちたい、他社と差別化するために企画から手がけたい、という記述。
逆方向の合図がそれ、ということですね。
そうです。この四つは、線を引く場所そのものだと思ってください。
与件文に、顧客の反応が返ってくる道筋があるか
頭では分かるんですが、感覚としてまだつかみきれません。
では身近な話に。友人に手作りのお惣菜を渡すとき、容器に入れて渡して終わりの人と、温め方や合わせる主食までメモに書いて添える人がいますよね。
あー、後の人だと、次もお願いしたくなります。
渡しているモノは同じでも、使い方の情報が付くだけで満足が変わる。しかも、今回は少し味が濃かった、みたいな感想が返ってきます。
感想が返ってくれば、次に作るときに直せますね。
それが見分けるポイントです。与件文に、顧客の反応が返ってくる道筋があるかどうか。無いなら、この論点の出番だと考えていい。
情報の整理:最初にやるのは方向の確認
合図に気づいたあとは、何をすればいいですか。
情報の整理です。最初にやるのは、方向の確認。
二方向のどちらなのかを決める、ということですか。
そうです。この会社は製造業からサービスへ向かおうとしているのか、製造業以外からモノ作りへ向かおうとしているのか。取り違えると、その後が全部ずれます。
方向で何が変わるんでしょう。
活かすべき自社の強みが変わります。製造業からサービスへなら技術力が軸、逆向きなら顧客接点や販売のノウハウが軸になる。
同じ論点なのに、答案で持ち出す強みが入れ替わるんですね。
入れ替わります。だから方向の確認が先なんです。
なぜその融合が必要とされているのか
方向が決まったら、次は何を整理しますか。
なぜその融合が必要とされているのか、という背景です。ここは方向ごとに典型がはっきりしています。
製造業からサービスへの場合は、どうなりますか。
三つあります。事業の多角化の一環であること、自ら顧客へ販売する手段を確保すること、ニーズの吸い上げによってマーケティング機能を強化すること。
三つとも、与件文のどこかに対応する記述があるということですか。
そこが実践的で、三つ全部が書かれているとは限りません。どの記述がどの理由に当たるかを確認して、書かれているものだけを拾う。
逆方向、サービス業からモノ作りへの場合は。
こちらはすっきりしていて、顧客への商品やサービスの提供の幅を広げること。これが中心の理由になります。
理由が一つに寄っているぶん、書きやすそうですね。
| 方向 | 背景 |
|---|---|
| 製造業からサービスへ | 事業の多角化の一環 自ら顧客へ販売する手段の確保 ニーズの吸い上げによるマーケティング機能の強化 |
| サービス業からモノ作りへ | 顧客への商品やサービスの提供の幅を広げること |
解答への落とし込み:基本の型は一つ
では解答への落とし込みです。基本の型は一つ覚えておけば足ります。
型があるんですか。
自社が持つ強みを活かし、モノ作りかサービスかへの展開内容を行うことで、顧客ニーズの把握強化や差別化、付加価値の向上を図る。この三点セットです。
強み、展開内容、効果、の順ですね。
そうです。強みの部分が、方向によって技術力なのか顧客接点なのかで入れ替わる。さっきの整理がそのまま効きます。
開発へのフィードバックと字数の配分
製造業がサービスへ出ていく場合、もう一歩踏み込むなら何を足しますか。
開発へのフィードバックです。製品開発力や製造技術という強みに加えて、直接販売やアフターサービスを行うことで、エンドユーザーのニーズを直接つかみ、次の製品開発にも反映できる体制をつくる、と書く。
売る話で終わらせず、開発へ戻すところまで書くんですね。
そこまで届くと評価されやすいです。お惣菜の話でいえば、感想を聞いて次に活かすところまで含めた提案になっている。
つながりました。逆方向のときの型はどうなりますか。
顧客接点で得た情報やノウハウを活かして、自社独自の製品を企画・製造し、他社との差別化を図る。こちらが基本形です。
情報を持っていることが強み、というのが出発点なんですね。
そうです。どちらの方向でも、答案は自社の強みから始まる。ここは共通です。
字数の配分はどう考えますか。
真ん中の展開内容に一番字数を割きます。強みは与件文の言葉を短く引いて、効果は最後に一言で十分です。
効果を長く書きたくなりますが、そこは短くていいんですね。
短くていいです。では、やりがちな外し方を三つ見ておきましょう。
三つもあるんですね。
外し方の一つ目:単なる多角化や新製品開発と同じものとして扱う
一つ目が、この論点を単なる多角化や新製品開発と同じものとして扱ってしまうことです。
違うんですか。新しいことを始める意味では似ている気がします。
似ています。ただ核心が違う。モノとサービスという性質の異なる事業を組み合わせることで、顧客接点や付加価値を強くする、というところに中身があるんです。
組み合わせることが本体、ということですか。
そうです。与件文が、単に新しい製品を作る、新しい市場に出る、ということだけを描いているなら、多角化戦略や新市場開拓の論点として扱うほうが素直な場合もあります。
与件文の描き方で使い分けるんですね。迷いそうです。
迷ったら、顧客との接点が増える話になっているかを見てください。増えていないなら、別の論点で書いたほうがいい。
なるほど。二つ目は何でしょう。
外し方の二つ目:卸売業者や小売業者との関係を一方的に切り捨てる
直接販売を提案するときに、これまでの卸売業者や小売業者との関係を、一方的に切り捨てるように書いてしまうことです。
あ、それやりそうです。直販に変えます、で言い切ってしまいそう。
与件文に既存の販路との関係が描かれているなら、その扱いにも触れておく。そうすると矛盾のない答案になります。
書かれている以上、無かったことにはできないんですね。
そういうことです。三つ目が、逆方向のときの飛躍です。
外し方の三つ目:逆方向のときの飛躍
サービス業がモノ作りへ入っていくときの話ですね。
ええ。製造のノウハウも生産設備も持っていない会社に、いきなり自社の工場を持つような提案をしてしまう。
それは無理があります。では、どう書けばいいんですか。
外部への製造委託を組み合わせる、という現実的な打ち手を持っておくことです。経営資源が乏しい中小企業にとって、外部への委託は経営資源を補う重要な手段ですから。
自分で作らなくても、モノ作りの側には入っていけると。
入っていけます。自社で工場を持たずに外部へ製造を委託する形、いわゆるファブレスは、この方向では有効な手法です。
工場を建てる前提を外していいんですね。気が楽になりました。
お惣菜でいえば、自分でオーブンを買わなくても、焼くのが得意な人に頼んで、味付けと組み合わせだけ自分が決める形ですね。
企画は自分、製造はお願いする。イメージできます。
本番で使うときのチェックポイント
最後に、本番で使うときのチェックポイントを整理します。
一つ目、製造と販売が切り離されている記述、アフターサービスに関わる言葉、顧客と直接つながりたいという意向、独自の製品を持ちたいという意向。この四つに線を引くこと。
線を引く場所を先に決めておく、ですね。
二つ目、方向を先に決めること。決まれば、答案で持ち出す強みも決まります。
技術力か、顧客接点か、でしたね。
三つ目、型は強み・展開内容・効果。製造業からサービスへの場合は、開発へのフィードバックまで書く。
売って終わりにしない、ですね。
そして、既存の販路の扱いに触れること、自前主義に走らないこと。この二つを外さなければ、大きく崩れる答案にはなりません。
次に与件文を読むときは、あの一文で必ず手が止まりそうです。
その一文で止まれれば、この論点はもう使えています。
動画で聞く
続けて読む
- 第1回 農商工連携で何を得るかの決め方4事例共通編 地元の食材を使うだけで終わらせない、連携で何を得るかの決め方
- 第2回 垂直連携ネットワークで下請の強みまで拾う共通編 「依存はリスク」で止めない、下請の強みまで拾う読み方
- 第4回 経営資源の種類共通編 その強み、人頼みか組織の強みか
- 第5回 SWOT分析の内外区分と時制共通編 内外区分と時制、見落としがちな一手
- 第6回 5つの競争要因、同業だけじゃない脅威の見つけ方共通編 同業だけじゃない、脅威の見つけ方
- 第7回 ドメインと事業の軸の定め方共通編 誰に・何を・どう、事業の軸の定め方
- 第8回 VRIO分析でその強みが本当に真似されないかを検証する共通編 その強み、本当に真似されない?
- 共通のWebテキスト一覧同じ科目の12本を一覧・検索
- 中小企業診断士 2次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

