SWOT分析の内外区分と時制
4事例共通 第5回
「与件文を読んで、強み・弱み・機会・脅威、意味は分かってるはずなのに、いざ解答欄を埋める段になると手が止まる。そんな経験、ありませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、内部環境と外部環境の区分、時制、二段階の仕分け、強みにも弱みにも読める記述、優先順位のつけ方、与件文の言葉での書き方、落とし穴、最後のチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
いざ解答欄を埋める段になると手が止まる
与件文を読んで、強み・弱み・機会・脅威、意味は分かってるはずなのに、いざ解答欄を埋める段になると手が止まる。そんな経験、ありませんか。
あります、まさにそれです。SWOTの意味は知ってるんです。でも与件文を読んでる最中に、今の一文がどれに当たるのか、判断が一瞬遅れるんですよね。
それ、多くの受験生が抱える悩みです。今日はそこを一緒に詰めていきましょう。SWOTって、実は「強み・弱みを述べよ」という直球の設問だけじゃないんですよ。
え、どういうことですか。
例えば「業績を伸ばした要因は何か」という聞き方。これ、答えの中身を分解すると、内部の強みか、外部の機会か、あるいはその組み合わせなんです。
あ、確かに。設問文に「強み」「機会」という言葉が出てこなくても、頭の中では常にSWOTのフィルターを通して読む癖が必要なんですね。
そうです。だからSWOTは、単独の設問への答えというより、与件文を読むときの基本動作。ほぼ全ての事例で、他の設問の前提にもなっています。
自社の内側の話か、外側の話か
じゃあ具体的に、与件文のどこを見たら、強みか弱みか、機会か脅威か、気づけるんですか。
一番大きい軸は、その記述が自社の内側の話か、外側の話か、です。内部環境、強み・弱みの方は、経営資源や技術、人材、組織文化といった自社が持っているものの記述。
自社の中にあるもの、ですね。
一方、外部環境、機会・脅威の方は、市場や顧客ニーズ、競合の動き、法制度といった、自社の外側で起きている記述です。自社がコントロールできない世界の話。
例えば、こんな会社があったとして「熟練の職人が複数人在籍している」なら、自社の人材の話だから内部環境。プラスなら強み、ですよね。
その通りです。逆に「高齢化に伴い健康志向の需要が高まっている」なら市場の話なので外部環境。プラスに働くなら機会。仕分けさえ間違えなければ、あとは判定するだけです。
| 記述の例 | 仕分け |
|---|---|
| 熟練の職人が | 自社の人材の話 |
| 高齢化に伴い | 市場の話 |
| 業界内で | 評価されている |
でも、内外の仕分けを間違えるパターンって、あるんですか。
あります。よくあるのが、自社の技術力といった内部要因を機会・脅威側に、逆に市場ニーズを強み・弱み側に取り違えるケース。特に「業界内で評価が高い」のような記述だと、業界という言葉に引っ張られて外部環境だと勘違いしやすいんです。
あ、それ危ないですね。評価されてるのは自社ですもんね。
そうです。評価している主体が市場や顧客なら外部の話ですが、評価されている対象が自社なら、まず強みとして拾うべき記述です。内外の仕分けが分かったところで、次に大事なのが時制です。
次に大事なのが時制
時制、ですか。
SWOTは基本的に“今この瞬間”の切り取りなんです。「近年」「これまで」は現在から過去、「今後」「将来的には」はこれから先。この言葉に反応してください。
「今後」「将来的には」と書かれてる記述は、SWOTには使わないんですか。
そこは注意が必要で、将来の話は多くの場合、経営者の意向や狙っていく方向性として書かれています。今のSWOTの構成要素ではなく、別の設問、今後の戦略を問う設問の材料になることが多いんです。
混ぜて使うと、SWOTの純度が下がってしまう。
その通りです。SWOTの設問で聞かれているのは、あくまで今の状態。将来の希望的観測まで混ぜると、設問の趣旨からずれた解答になります。
内部環境か外部環境か、次にプラスかマイナスか
内外の区分と時制、この二軸で読んでいけばいいんですね。実際に整理するとき、どういう順番で考えればいいんですか。
まず、内部環境か外部環境かを仕分ける。次に、内部環境ならプラスかマイナスか、外部環境ならプラスかマイナスかを判定する。この二段階です。
いきなり四択で考えるより、二択、二択、と分けた方が判断が速くなりそうです。
一つの記述が、強みにも弱みにも読めるケース
そうなんです。ただ、この整理をしていると、ときどき厄介な記述に出会います。一つの記述が、強みにも弱みにも読めるケースです。
え、同じ事実なのに、両方に読めるんですか。
あります。例えば、こんな会社があったとして「特定の大口取引先への売上依存度が高い」という記述。安定した基盤と見れば強みですが、その取引先を失うリスクと見れば弱みです。
| 設問の聞き方 | 使い方 |
|---|---|
| 「今後のリスクは」 | 弱みの文脈で |
| 「安定した経営基盤は」 | 強みの文脈で |
こういうとき、どうすればいいんですか。
無理に一方に決め打ちせず、設問の文脈に応じて使い分ける柔軟さを持つことです。「今後のリスクは」と聞かれたら弱みの文脈で、「安定した経営基盤は」と聞かれたら強みの文脈で使えます。
記述に固定のラベルを貼るんじゃなくて、設問ごとに切り取る角度を変える、っていう発想なんですね。
強み・弱みを単純に列挙してしまう
まさにそうです。仕分けの型が分かったところで、次は解答への落とし込み方です。強み・弱みを問う設問で一番やりがちなのが、思いついた要素を単純に列挙してしまうこと。
あ、それやりそうです。強みっぽい記述を見つけたら片っ端から書き出しちゃいそうです。
それだと得点が伸びにくいんです。意識してほしい観点が二つ。外部環境の変化に対応できる要因かどうか、競争優位の源泉になる要因かどうか。この観点で優先順位をつけて選ぶといいです。
なるほど、経営に効いてくるかどうか、で選ぶ。
そうです。字数が短い設問では、さらに、与件文の中で最も強く、具体的に書かれている記述を優先します。字数を割いて具体的に書かれているのは、出題者がその要素を重視しているサインでもあるんです。
与件文の中の「熱量」みたいなものを見る、っていう感覚ですね。
いい表現ですね。まさにそういう感覚です。淡々とした一行の記述より、具体的なエピソードで厚みのある記述を優先する。これで選ぶ判断が速くなります。
与件文に出てきた言葉をそのまま使う
優先順位が決まったあと、実際に文章にするときは、どう書けばいいんですか。凝った表現にしようとして、逆に分かりにくくなりそうな気がします。
そこは逆で、凝った言い回しは不要です。与件文に出てきた言葉をそのまま使って、根拠と、それがもたらす効果を、簡潔に言い切るだけでいいんです。
与件文の言葉をそのまま使う、っていうのがポイントなんですね。自分の言葉に言い換えようとしなくていい。
そうです。言い換えようとすると、かえってニュアンスがずれたり、字数を余計に使ったりします。ここまで整理した仕分けと優先順位を、そのまま端的な言葉に落とし込む。それだけで十分です。
受験生がよく間違える落とし穴
優先順位のつけ方、分かってきました。他に、受験生がよく間違える落とし穴ってありますか。
一つは、さっき話した内外の取り違え。もう一つは、過去の話や将来の希望的観測を現在のSWOTとして混ぜてしまうこと。すでに解決済みの過去の課題を弱みとして拾ってしまったりするパターンです。
それも時制のずれの話ですね。
そうです。そして一番危険なのが、与件文にない一般的な強み・弱みを、根拠なく付け足してしまうことです。例えば「地域密着だから強い」といった決まり文句。
あ、それ書いちゃいそうな気がします。もっともらしい一般論って、つい使いたくなります。
その気持ち、よく分かります。ただ、与件文に根拠となる記述が無ければ、それは想像で書いた解答になってしまいます。二次試験は、与件文の中の根拠を使って答える試験ですから。
与件文に書いてあることだけで戦う、っていう意識が必要なんですね。
そうです。強み・弱みを探すときは、必ず「これはどの記述が根拠か」を自分に問いかける癖をつけてください。根拠となる一文を指させないものは書かない、くらいの意識でいいです。
最後にチェックポイント
根拠を指させるかどうか、っていう基準、分かりやすいです。今日のお話、すごく整理された感覚があります。最後にチェックポイント、まとめてもらえますか。
はい。一つ目、与件文を読むときは常にSWOTのフィルターを通す。直接的な設問だけでなく、業績要因を聞く設問なども含めて、内外・プラスマイナスで捉える意識を持つこと。
直接的な設問じゃなくても、フィルターは常にオンにしておく。
二つ目、記述を見たら、まず内部環境か外部環境かを仕分け、次にプラスかマイナスかを判定する二段階の思考。三つ目、時制を確認すること。SWOTは基本的に今この瞬間の切り取りだと意識すること。
いつの話か、を常に自問する。
四つ目、一つの記述が複数の意味を持つ場合は、無理に一方に決めず、設問の文脈に応じて使い分けること。五つ目、単純な列挙ではなく、経営に効いてくる観点で優先順位をつけて選ぶこと。
優先順位をつけて選ぶ。
そして最後、根拠のない一般論を付け足さないこと。強み・弱みを書くときは、必ず与件文のどの一文が根拠かを指させる状態にしておくこと。これができれば、SWOTの整理は本番でも安定します。
内外の区分、時制の確認、柔軟な使い分け、優先順位、そして根拠。この五つを意識して、与件文を読んでいきたいと思います。
その意識があれば、もう十分戦えます。焦らず、一つずつ丁寧に仕分けていってください。
(補足:講師が挙げたチェックポイントは、「一つ目」から「五つ目」に、「そして最後」の「根拠のない一般論を付け足さない」を加えた六つです。聞き手は最後に「この五つ」とまとめていますが、動画の講師の言い方では六つになります。)
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