シナジーを「効果がある」で終わらせない具体化術
4事例共通 第10回
「新規事業や業務提携を助言する設問で、「効果を書いてください」と言われたら、何て書きます?」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは、与件文のサイン、サインを見つけた後の整理、静的と動的の時間軸、答案に書く型、やってしまいがちな失敗を、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。
「相乗効果が期待できます」で終わらせない
新規事業や業務提携を助言する設問で、「効果を書いてください」と言われたら、何て書きます?
うーん、「相乗効果が期待できます」とは書くんですけど、それで終わっちゃう気がします。
そうなんですよ。相乗効果の意味は分かっているのに、いざ答案に書くとなると、その一言で止まってしまう人がすごく多いんです。
あー、まさにそれです。書いた後に「これで本当に点数がもらえているのかな」って不安になります。
今日は「相乗効果が期待できます」のその先、二次試験の答案でどこまで具体化すればいいのか、という話をしていきます。
お願いします。
どういう設問で出てくるか
そもそもこの論点って、どういう設問で出てくることが多いか、分かります?
なんとなく、新しいことを始める場面という気はしますけど。
そうです。新しい市場に出る、新しい商品を作る、多角化する、他社と組む。成長戦略を助言する設問のほとんどで、「効果」を書く場面に出てくるんです。
ほぼ全部じゃないですか。
そうなんです。だからこそ、一言で片付けるか、中身を具体化できるかで、点差がすごく開くところなんですよ。
逆に言うと、成長戦略系の設問が出たら、まずこの視点を持っておく、ということですね。
その通りです。「効果を答えなさい」と来たら、まずこの論点が使えないか疑ってみる、それくらいの構えでいいと思います。
与件文のサイン
じゃあ、与件文のどんな記述が出たら、これだって気づけばいいんですか?
いくつかサインがあって、まず「投資を節約できる」「共同で使える」という記述が出たら、投資面の相乗効果を疑います。
なるほど、コストというより、投資の負担を分け合えるという話ですね。
そうです。次に「生産設備や人材を共有できる」という記述が出たら、こちらは生産面の相乗効果のサインです。
投資と生産、似ているようで違うんですね。
投資は導入時の負担の話、生産は動かした後の稼働の話、という違いです。さらに「同じ販売網や顧客基盤が使える」という記述が出たら、販売面の相乗効果です。
これは分かりやすいです、既存のお客さんに新しいものを売れる、みたいな話ですよね。
その理解でいいです。そしてもう一つ、「経営層のノウハウが活かせる」「マネジメントの知見を横展開できる」という記述が出たら、マネジメント面の相乗効果です。
現場ではなく、経営の判断力とかノウハウが横に広がる、というイメージですか?
まさにそうです。この4つのサインを頭に入れておくと、与件文を読んでいるときに「あ、ここ使える」と反応しやすくなります。
実際にはどんなふうに書かれているのか
実際にはどんなふうに書かれているのか、まだイメージが湧きにくいです。
たとえば、こんな会社があったとして、既存の工場の一部の設備を新しい商品の生産にもそのまま使える、と書かれていれば生産面のサインですし、既存の営業担当が持っている顧客リストに新商品を案内できる、と書かれていれば販売面のサインです。
なるほど、既存の何かがそのまま使い回せる、という言い回しに反応すればいいんですね。
そうです。設備・人材・顧客・ノウハウのどれかが「そのまま使える」「共有できる」というニュアンスで出てきたら、まずこの論点を疑ってみてください。
サインを見つけた後の整理
サインを見つけた後、頭の中ではどう整理すればいいんですか?
新しい提案、新事業でも新商品でも提携でもいいんですが、それが既存の何と結びつくのかを、投資・生産・販売・マネジメントの4つに仕分けていきます。
全部が当てはまるとは限らないですよね?
もちろんです。与件文に書かれているサインに対応する分だけ拾えばよくて、無理に4つ全部を埋めようとしなくていいです。
時間軸の話:静的と動的
あと、時間軸の話もあるんでしたよね。
そうなんです。相乗効果には、今すぐ効果が出る静的なものと、将来にわたって効果が積み上がっていく動的なものがあります。
与件文がどちらを求めているか、見分ける必要があるんですね。
たとえば、こんな会社があったとして、既存の販売網に新商品を乗せてすぐ売上を作りたい、と書かれていれば、それは今すぐ効果が出る話を求めています。逆に、新しい提携先のノウハウを少しずつ吸収して将来の事業の柱にしたい、と書かれていれば、それは将来にわたって積み上がっていく話を求めています。
同じ相乗効果でも、求められている時間軸が違うと、書き方も変わってきそうですね。
その通りです。与件文が短期の効果を求めているのか、長期の布石を求めているのか、そこも読み取った上で整理する必要があります。
同じ「相乗効果があります」という言葉でも、静的か動的かで、書くべき理由づけが変わってきそうですね。
その通りです。静的な相乗効果なら、既存の資源をすぐ活用できるという即効性を根拠にできますし、動的な相乗効果なら、時間をかけて効果が積み上がっていくという持続性を根拠にできます。
答案への落とし込み:型に沿って書く
整理した後、答案にはどう落とし込めばいいんですか?
「相乗効果が期待できる」で終わらせず、型に沿って書きます。まず既存の何を使うのか、次に新しい何と結びつくのか、最後にどの種類の相乗効果が生まれるのか、この3つを順番に書くんです。
既存の顧客基盤や設備、ノウハウと、新しい商品や事業が結びつく、という順番ですね。
そうです。「既存の顧客基盤と、新しい商品が結びつき、販売面の相乗効果が生まれる」というふうに、結びつく相手を必ず具体的な言葉で書きます。
「相乗効果」って言葉だけ書いて終わる人と、何が違うんですか?
何と何が結びついているかが書かれているかどうかです。結びつく相手が書かれていれば与件文の根拠に基づいた解答になりますが、結びつく相手がなければ、ただの決まり文句になってしまいます。
特に多角化とか企業連携を助言する設問だと、この具体化が根拠の強さに直結する、ということですね。
その理解で大丈夫です。型を持っておくと、限られた字数の中でも、根拠と効果をセットで書き切れるようになります。
型の順番を守ることに、何か意味があるんですか?
意味の通る文章になるからです。先に結果だけ書くと唐突に見えますが、既存の資源、新しい要素、生まれる相乗効果の順に書くと、根拠から効果までの流れがそのまま読み手に伝わります。
やってしまいがちな失敗
逆に、やってしまいがちな失敗ってどんなものがありますか?
一番多いのは、「相乗効果がある」とだけ書いて、どの経営資源がどう結びつくのかを具体化しないパターンです。
さっきの型で言うと、真ん中の「何と何が結びつくか」が抜けている状態ですね。
その通りです。次に多いのが、与件文に根拠のない相乗効果を、想像で作ってしまうパターンです。
与件文に書いていないのに、結びつきそうだから書いてしまう、みたいなことですか?
そうです。既存事業と新事業の間に共通点があるように見えても、与件文にその記述がなければ、それは想像であって根拠ではありません。
気づいたら勝手にストーリーを作ってしまいそうで怖いです。
だからこそ、必ず与件文の言葉に戻って、結びつきの根拠を確認する癖をつけてほしいんです。そしてもう一つ、コスト削減の話と相乗効果を同じ意味で使ってしまう誤りもよくあります。
コストが下がる話と、相乗効果って、何が違うんですか?
コスト削減は、共有することで無駄が減るという話です。一方、相乗効果は、組み合わさることで新しい価値が生まれるという話なので、意味が違います。この2つを混同して使ってしまうと、論点がぼやけた解答になってしまいます。
似ているようで、狙っている効果の中身が違うんですね。
そうです。コスト削減は既存のやり方の無駄を減らす話、相乗効果は組み合わせによって新しい価値を生み出す話。この違いを意識しておくと、答案の言葉選びも変わってきます。
書いている途中で「これはコストの話をしているのか、相乗効果の話をしているのか」分からなくなりそうです。
迷ったときは、書こうとしている効果が、既存のやり方の延長線上で無駄を減らす話なのか、それとも既存と新しいものが組み合わさって初めて生まれる話なのか、そこに立ち返って確認してみてください。
本番で意識するポイント
最後に、本番でこの論点を使うときに意識しておくポイントをまとめてもらえますか?
まず、成長戦略系の助言問題で「効果」を問われたら、この論点が使えないか疑うこと。次に、与件文の投資・生産・販売・マネジメントのサインを見逃さないこと。
そして、既存の何と、新しい何が結びつくのかを、必ず言葉にして書くことですね。
その通りです。「相乗効果が期待できる」で止めずに、結びつく相手と種類まで書き切る。それができれば、この論点はしっかり得点源になります。
次に成長戦略系の設問を見たら、まずこの4つのサインを探してみます。
ぜひそうしてください。今日の内容を、次に与件文を読むときに実際に試してみてください。
動画で聞く
続けて読む
- 第5回 SWOT分析の内外区分と時制共通編 内外区分と時制、見落としがちな一手
- 第6回 5つの競争要因、同業だけじゃない脅威の見つけ方共通編 同業だけじゃない、脅威の見つけ方
- 第7回 ドメインと事業の軸の定め方共通編 誰に・何を・どう、事業の軸の定め方
- 第8回 VRIO分析でその強みが本当に真似されないかを検証する共通編 その強み、本当に真似されない?
- 第9回 多角化戦略の根拠の作り方共通編 なぜその新事業?根拠の作り方
- 第11回 価格で戦うな、中小企業の勝ち筋共通編 競争戦略
- 第12回 成長戦略の使いどころを見極める共通編 成長戦略、知識はあるのに使えない?その見極め方
- 共通のWebテキスト一覧同じ科目の12本を一覧・検索
- 中小企業診断士 2次の講座トップ科目別プレイリスト・人気の講義・ファイナルペーパー

