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中小企業診断士 2次試験

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配当割引モデルの一定成長と成長率gの拾い方

事例Ⅳ 第5回

事例Ⅳ 成長率gをどこから拾うかで差がつく株式価値の求め方10分7秒2026年9月19日公開

「配当割引モデルの式、一定成長のパターンも公式としては覚えていますよね」。動画はこの問いかけから始まります。このページでは、gをどこから拾うか、式にどう当てはめるか、与件文の着眼点、整理の順番、混同・誤答しやすいポイント、本番のチェックポイントを、動画の流れにそってまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

「gをどこから拾うか」と「式にどう当てはめるか」

配当割引モデルの式、一定成長のパターンも公式としては覚えていますよね。

はい、D1÷(r-g)ですよね。丸暗記はしてます。でも事例Ⅳの与件文のどこを見たらこの式を使う場面だって気づけるのか、そこがずっと曖昧なんです。

分かります。ゼロ成長モデルと違って、成長率という変数がもう一つ増えるぶん、どこから拾えばいいのか迷いやすいんですよね。

まさにそこです。gってどこかに数字で書いてあるものなんですか、それとも自分で計算するものなんですか。

今日はその「gをどこから拾うか」と「式にどう当てはめるか」を中心に、一緒に整理していきましょう。

この論点がどんな場面で出やすいか

まず、この論点がどんな場面で出やすいかから見ていきます。株式価値・企業価値の算定という大きなテーマの中で使われる式です。

企業価値評価というと、M&Aとか事業承継の場面ですか。

そうです。買収を検討している相手企業の株式価値を見積もる場面や、自社の株式を後継者に引き継ぐ際の評価額を考える場面で、配当の将来予測から株価を逆算する、という使われ方をします。

なるほど、キャッシュフローの割引計算と同じ発想を、配当という形で当てはめている感じですね。

そのとおりです。そして、配当が毎期一定額のまま変わらない前提ならゼロ成長モデル、毎期一定の割合で増え続ける前提なら一定成長モデルを使います。与件文に「増やし続ける」という方針が書かれているかどうかで、どちらを使うかが決まります。

そこの見極めを間違えると、そもそも式の形から違ってしまいますね。

ゼロ成長モデル配当が毎期一定額のまま変わらない前提株価=D÷rE一定成長モデル毎期一定の割合で増え続ける前提株価=D1÷(rE-g)「増やし続ける」という方針の記述の有無で決まる
ゼロ成長モデルと一定成長モデル

もう一つ大事な前提があります。この一定成長モデルは、その成長率で配当が永久に増え続ける、という仮定の上に成り立つ式です。

永久にですか。数年だけ増えて、そのあと横ばいに戻る、というような場合は使えないということですか。

そういう場合は、単純な一段階の一定成長モデルでは表現しきれません。与件文に「今後も同じ方針を維持する見込みである」というような、方針の継続を示す記述があるかどうかも、着眼点の一つとして意識しておいてください。

増配の記述を見つけたら、それが一時的なものか、この先ずっと続く前提として書かれているものかまで、確認する癖をつけます。

与件文のどんな記述が出たら一定成長モデルだと気づけるか

では、与件文のどんな記述が出たらこの一定成長モデルだと気づけるか、着眼点を見ていきましょう。

お願いします。

一つ目は「配当を毎期一定の成長率で増加させる方針である」というような、増配の方針そのものを示す記述です。

これはもう、そのまま「一定成長で考えてください」と言っているようなものですね。

二つ目は、配当性向を一定に維持する方針や、利益の一部を内部留保して再投資に回す、という記述です。

それ、直接「成長率」という言葉が出てこなくても、成長率を計算するための材料になる、ということですか。

そうなんです。ROEと配当性向が分かれば、内部留保する分だけ会社が成長する、という考え方で成長率を自分で組み立てられます。三つ目は、株主資本コストの根拠になる記述です。安全資産の利子率や、株式市場全体の期待収益率、その企業のベータ値が与えられていれば、資本コストを算出する材料になります。

数値がいくつか散らばっている問題は、まずこの三つの材料を拾い集める作業から始める、というイメージですね。

① 増配の方針そのものを示す記述「配当を毎期一定の成長率で増加させる方針である」② 配当性向や内部留保の記述配当性向を一定に維持する方針利益の一部を内部留保して再投資に回す③ 株主資本コストの根拠になる記述安全資産の利子率株式市場全体の期待収益率その企業のベータ値
与件文の3つの着眼点

材料が拾えたら、整理の仕方

材料が拾えたら、整理の仕方です。順番を決めておくと計算ミスを防げます。

お願いします。私、成長率を計算に入れた途端に手順があやふやになるんです。

まず①直近の配当額を確認します。これがD0です。次に②成長率gを確認します。与件文に直接数値が書かれている場合もあれば、ROE×(1-配当性向)、という式で自分で算出する場合もあります。

配当性向をそのまま掛けるんじゃなくて、1から配当性向を引いた分を掛けるんですね。そこ、逆にしてしまいそうです。

そこはよく混同されるポイントなので、後でもう一度触れます。③そのD0とgを使って、来期予想配当D1を、D0×(1+g)で求めます。そして④株主資本コストrEを確認し、⑤rEがgより大きいことを必ず確認したうえで、⑥D1をrE-gで割って株価を出します。

① 直近の配当額を確認する(D0)② 成長率 g を確認する③ 来期予想配当 D1=D0×(1+g)④ 株主資本コスト rE を確認する⑤ rE が g より大きいことを確認する⑥ 株価=D1÷(rE-g)
整理の順番 ①から⑥

成長率gと、来期予想配当D1、株価の式

  • g=ROE×(1-配当性向)
  • D1=D0×(1+g)
  • 株価=D1÷(rE-g)

今もらえるお金より、毎年少しずつ増えていく将来のお小遣いの方が、今の価値に直すといくらに相当するか、という感覚に近いですね。

いい例えです。ただの一定額の積み重ねではなく、毎年ちょっとずつ膨らんでいく分まで含めて、今の価値に割り引いているんです。

増えていく分を先に織り込んでおいて、それをまとめて現在の価値に引き戻す、というイメージで捉えるとしっくりきます。

この①から⑥までの順番をメモに書き出しながら進めると、途中で何を求めているか見失いにくくなります。

解答への落とし込み

整理ができたら、解答への落とし込みです。基本の式は、株価=D1÷(rE-g)、この形をそのまま答案に書きます。

数字で確認してみてもいいですか。私、式だけだとまだ実感が湧かなくて。

いいですね。たとえば直近の配当が50円、想定される成長率が2%、株主資本コストが7%だったとします。まずD1は、50×1.02で51円です。

それを、7%-2%の5%で割るということですね。

そうです。51÷0.05で、株価は1,020円と求まります。D0からD1を求める一段階と、D1をrE-gで割る一段階、この二つを分けて答案に書いておくと、途中でどちらかの数値を間違えても部分点を拾いやすくなります。

直近の配当 D0=50円成長率 g=2% 株主資本コスト rE=7%50×1.02D1=51円51÷(7%-2%)=51÷0.05株価=1,020円
直近の配当50円・成長率2%・株主資本コスト7%の場合

いきなり最終的な株価だけ書くのではなく、来期配当の算出過程も答案に残す、ということですね。

そうです。単位と小数点の扱いも、問題の指示に忠実に合わせてください。円未満を切り捨てるのか四捨五入するのか、指示を見落とすと数値がズレます。

混同・誤答しやすいポイント

ここまでを踏まえて、混同・誤答しやすいポイントを整理しておきましょう。

ぜひ聞きたいです。

一つ目は、さっき触れたゼロ成長モデルとの違いです。ゼロ成長モデルは配当が変わらない前提なので、株価はDそのものをrEで割るだけで求まります。一定成長モデルは、そこにgという変数が加わり、割る対象もD1に変わります。

配当が一定なのか増え続けるのか、与件文の方針の書き方をまず見極めないと、そもそも使う式が違ってしまいますね。

二つ目は、D0とD1の取り違えです。与件文に載っている配当額は、多くの場合すでに支払われた直近実績のD0です。それをそのままrE-gの分母に割ってしまう誤りがよくあります。

D0を見つけた時点で満足せず、1+gを掛けてD1に変換する一手間を忘れない、ということですね。

三つ目は、成長率が資本コストを上回ってしまうケースです。rEよりgの方が大きいと、分母がマイナスになってしまい、理論上ありえない結果になります。

計算した結果、株価がマイナスになったり異常に大きくなったりしたら、成長率と資本コストのどちらかを見間違えていないか疑う、ということですね。

たとえば成長率が8%、株主資本コストが7%という数値をそのまま当てはめると、7%-8%でマイナス1%になってしまいます。マイナスで割ると株価もマイナスになり、明らかにおかしな結果です。

成長率 g=8%株主資本コスト rE=7%rE-g=7%-8%=-1%マイナスで割ると株価もマイナス
成長率が資本コストを上回るケース

その時点で、成長率と資本コストのどちらかを取り違えているか、あるいは自分で成長率を計算した式のどこかで間違えているはずだ、と気づける、ということですね。

そのとおりです。四つ目は、割引率と成長率、どちらも%で表記されるので、与件文の数値をどちらに当てはめるか取り違えるミスです。株主資本コストの根拠がどの記述で、成長率の根拠がどの記述か、拾った材料を式に当てはめる前に一度整理しておくと防げます。

混同・誤答防ぐには
ゼロ成長モデルとの違い与件文の方針の書き方を見極める
D0とD1の取り違え1+gを掛けてD1に変換する
成長率が資本コストを上回るgとrEのどちらかを見間違えていないか疑う
割引率と成長率の取り違え拾った材料の根拠を、式に当てはめる前に整理する

本番でこの論点を使うときのチェックポイント

では最後に、本番でこの論点を使うときのチェックポイントをまとめておきましょう。

お願いします。

一つ、配当を増やし続ける方針の記述があれば一定成長モデル、配当が変わらない前提ならゼロ成長モデルと、まず式を見極めること。

二つ、与件文の配当額はD0であることが多いので、1+gを掛けてD1に変換してから分母のrE-gで割ること。

三つ、成長率が分からないときは、ROE×(1-配当性向)で自分で算出できることを覚えておくこと。

四つ、rEがgより大きいことを必ず確認し、成り立たない組み合わせのまま計算を進めないこと。

これができれば、成長率という変数が増えても、落ち着いて式に当てはめられるようになります。

式は覚えていたつもりでしたけど、D0からD1に変換する一手間と、gの出どころを自分で探す視点が抜けていたんだな、と今日で分かりました。

その視点を持って、ぜひ過去問でも実際に数値を当てはめて確認してみてください。

与件文を読むときに、増配方針の記述と配当性向の記述、両方に線を引きながら読んでみます。

それがいちばんの近道です。材料の拾い方、整理の順番、式への当てはめ方、この三つがセットで出てくるようになれば、本番で迷う時間がぐっと減ります。

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