聞き流しラボby kufu-yaWebテキストNEW
中小企業診断士 2次試験

知識ではなく、解き方を聞く。

1次試験の合格者に向けて、与件文の読み方、設問の切り分け方、解答の型を、事例ごとに解説します。

事例別の過去問解説重要論点講義ファイナルペーパー
診断士 聞き流しラボ 2次試験対策

配当割引モデルのゼロ成長

事例Ⅳ 第3回

事例Ⅳ 配当は一生変わらないと言い切る前提を見抜き、使う8分41秒2026年9月19日公開

「配当割引モデル、知識としては知ってますよね。でも、二次の与件文でこれが出てきたとき、実際にどう使えばいいかとなると、ちょっと手が止まりませんか」。動画はこんな問いかけから始まります。このページでは動画の流れにそって、事例Ⅳでの出され方、ゼロ成長のタイプだと気づく与件文の記述、株式の価値の計算、答案への落とし込み、やらかしやすいところ、本番でのチェックポイントをまとめました。まず動画を聞いて、あとからここで復習するのがおすすめです。

知識としては知っていても、手が止まる

配当割引モデル、知識としては知ってますよね。でも、二次の与件文でこれが出てきたとき、実際にどう使えばいいかとなると、ちょっと手が止まりませんか。

止まります。公式は覚えてるんです、株式価値イコール配当割る株主資本コスト、って。でも与件文のどの一文を見て、あ、これはこの式を使う場面だ、って気づけばいいのか、そこが分からなくて。

そうなんですよ。しかも配当割引モデルにはいくつかパターンがあって、その中でもいちばん単純な、配当がこの先ずっと同じ金額のまま変わらないと割り切って考えるタイプがあるんです。今日はそちらに絞って、使い方を一緒に整理しましょう。

配当がずっと変わらないなんて、そんな思い切った仮定、本当に置いていいんですか。

そこも含めて、今日ちゃんと掘り下げていきます。

事例Ⅳの本番だとどういう形で出てくるか

まず、この論点、事例Ⅳの本番だとどういう形で出てくるんですか。

企業価値、あるいは株式の価値を求めさせる問題の中の一つの手法として出てきます。事例Ⅳでは、会社をいくらと評価するか、という論点自体が何通りかのやり方で問われることが多くて、その選択肢の一つが配当割引モデルです。

他にもやり方があるということですよね。

はい。将来のキャッシュフローを割り引くやり方や、純資産をベースにするやり方など、いくつかの物差しが並んで出てくることがあります。その中で配当割引モデルが使われるのは、配当という、株主が実際に受け取るお金に着目して株の価値を測る考え方だからです。

配当そのものを基準にする、というのがこのモデルらしさなんですね。

そうです。出され方としては、設問の指示で配当割引モデルを使うと明示されるケースと、複数の評価方法の違いや前提の妥当性そのものを記述させるケースと、両方あり得ます。

出され方は両方あり得る

  • 設問の指示で配当割引モデルを使うと明示されるケース
  • 複数の評価方法の違いや前提の妥当性そのものを記述させるケース

与件文のどの一文を見たら、ゼロ成長のタイプだと気づくか

では、与件文のどの一文を見たら、これはゼロ成長のタイプだ、と気づけばいいんですか。

いちばん分かりやすいのは、毎期一定額の配当を維持する方針、とか、安定配当を継続している、というような、配当の金額そのものが変わらないと読み取れる記述です。

あ、ここ気をつけたほうがいい気がするんですけど、配当性向を一定に保つ、という書き方だったら、それは同じ意味じゃないですよね。

そこ、まさに引っかかりやすいところです。配当性向というのは利益に対する配当の割合なので、利益そのものが年によって増減すれば、配当性向が一定でも配当の金額は変わってしまいます。ゼロ成長モデルが前提にしているのは、あくまで配当の金額が将来にわたってずっと一定である、という点です。

割合が一定なのか、金額が一定なのか、与件文の書きぶりをちゃんと読み分けないといけないんですね。

配当の金額が一定ゼロ成長モデルの前提将来にわたってずっと一定≠配当性向が一定利益に対する配当の割合利益が年によって増減すれば配当性向が一定でも配当の金額は変わってしまう割合が一定なのか、金額が一定なのか与件文の書きぶりを読み分ける
配当の金額が一定と、配当性向が一定

もう一つの着眼点は、その企業の状況です。成熟した事業で、大きな新規投資や事業拡大の計画が特に書かれていない、という記述があれば、この先も配当が大きく増える見込みが薄いと読めるので、ゼロ成長の前提と相性がいいわけです。

逆に、これから事業を拡大していく、内部留保を成長投資に回す、みたいな記述があったら、配当は今後増えていくはずだから、また別の考え方になりそうですね。

そのとおりです。配当が今後も増え続けると見るモデルは別に存在していて、今日のゼロ成長モデルとは前提そのものが違います。区別の軸だけ押さえておいてください。

毎期一定額の配当を維持する方針安定配当を継続している配当の金額そのものが変わらないと読み取れる成熟した事業で大きな新規投資や事業拡大の計画が特に書かれていない配当が大きく増える見込みが薄いゼロ成長の前提と相性がいい事業を拡大していく内部留保を成長投資に回す配当は今後増えていくゼロ成長とは前提が違う
与件文の記述の読み方

使う数字は二つだけ

着眼点が分かったところで、実際の計算はどう整理すればいいですか。

使う数字は二つだけです。一株当たりの配当の金額と、株主資本コスト。この二つが分かれば、配当の金額を株主資本コストで割るだけで、株式の価値が出ます。

ゼロ成長モデルの計算

株式の価値 = 配当の金額 ÷ 株主資本コスト

  • 一株当たりの配当の金額
  • 株主資本コスト

割り算だけでいいんですか。なんだか拍子抜けするくらいシンプルですね。

そこがこのモデルの特徴です。配当が将来にわたってずっと同じ金額で続くと仮定しているので、これは永久に続く一定額の年金の現在価値を求める計算とまったく同じ形になるんです。永久に続く分だけ、割引計算が驚くほどシンプルな式に収まります。

毎月おこづかいを一定額ずっともらい続けられるとしたら、その今の価値は、もらえる金額を割引率で割ればいい、みたいな感覚ですか。

まさにそのとおりです。数字で確認してみましょう。一株当たりの配当が300円、株主資本コストが6パーセントだとします。この場合、300円を0.06で割ると、5,000円になります。

株式の価値 = 配当 ÷ 株主資本コスト一株当たりの配当300円株主資本コスト6パーセント300円 ÷ 0.06 = 5,000円この株一株の理論上の価値分母の株主資本コストが小さいほど株式の価値は大きく計算される
配当割引モデルのゼロ成長の計算

300割る0.06で5,000……はい、合いますね。この5,000円というのが、この株一株の理論上の価値になる、ということですね。

そうです。分母の株主資本コストが小さいほど、株式の価値は大きく計算される、という感覚も一緒に持っておくといいです。割引率が低いということは、将来のお金を今の価値に目減りさせる度合いが小さいということなので、同じ配当額でも評価額は膨らみます。

計算結果を答案に落とし込む

この計算結果を、実際どう答案に落とし込めばいいですか。

記述問題であれば、まず計算過程を、配当の金額割る株主資本コスト、という式の形で明示して、そのうえで算出した金額を株式の価値として示す、という流れで書きます。単位を円と明記するのも忘れないでください。

式だけ頭の中で計算して、結論の数字だけ書く、というのは避けたほうがいいんですよね。

はい。部分点の観点からも、式の形を書いておくことには意味があります。それと、他の評価方法と比較させる設問では、配当割引モデルが、配当という株主が実際に受け取る現金に着目した評価方法である、という特徴づけまで一言添えられると、記述の厚みが出ます。

① 計算過程を式の形で明示する配当の金額 ÷ 株主資本コスト② 算出した金額を株式の価値として示す③ 単位を円と明記する他の評価方法と比較させる設問配当という株主が実際に受け取る現金に着目した評価方法、と一言添える
答案の書き方

特にやらかしやすいところ

ここまでの流れの中で、特にやらかしやすいところを教えてください。

一つ目は、さっきの配当性向と配当金額の混同です。比率が一定という記述を見て、金額も一定だと早合点してしまうケースが目立ちます。

はい、さっき整理したところですね。気をつけます。

二つ目は、割る数の取り違えです。ここで使うのは、会社全体の資本コストではなく、あくまで株主に対する資本コスト、つまり株主資本コストです。似た名前の指標と混同して、別の割引率を当てはめてしまう誤りがあります。

分母に何を入れるかで結果がまるごと変わってしまいますもんね。株主から見た価値を求めているんだから、株主から見た資本コストを使う、と覚えておきます。

三つ目は、配当が将来増えていく前提のモデルと取り違えて、増加分を勝手に見込んで計算してしまう誤りです。今日のゼロ成長モデルは、あくまで配当の金額がずっと変わらないという前提で成り立つ式なので、成長を織り込む余地はありません。

一つ目 配当性向と配当金額の混同比率が一定という記述を見て金額も一定だと早合点してしまう二つ目 割る数の取り違え使うのは会社全体の資本コストではなく株主に対する資本コスト三つ目 増加分を勝手に見込む配当が将来増えていく前提のモデルと取り違え増加分を勝手に見込んで計算してしまう
やらかしやすいところ

配当は未来永劫まったく変わらない、という思い切った仮定

式自体がシンプルな分、逆に、本当にこの前提で計算していいのかを疑う癖をつけたほうがよさそうですね。

そこが最後に伝えたいポイントです。ゼロ成長モデルは、配当がこの先も未来永劫まったく変わらない、というかなり思い切った仮定の上に成り立っています。実際には、どんな企業であっても、業績や経営環境の変化で配当額が見直される可能性は常にあります。

便利な式だからといって、どんな企業にも当てはめていいわけじゃないんですね。

はい。与件文が、安定した成熟事業で、当面大きな変化の予定がないと読み取れる企業を描いているからこそ、この単純化した前提を使う根拠になる。その根拠を答案の中で意識できているかどうかが、実は評価の分かれ目になります。

思い切った前提だからこそ、なぜその前提が成り立つのかを、与件文の記述にきちんと結びつけて書く、ということなんですね。

本番でこの論点を使うときのチェックポイント

最後に、本番でこの論点を使うときのチェックポイントをまとめておきましょう。

お願いします。

一つ、与件文で配当の金額が一定に保たれていると読める記述を探すこと。配当性向が一定という記述とは意味が違う点に注意してください。

二つ、成熟した事業で大きな成長投資の予定が見当たらないかどうかも、あわせて確認します。

三つ、計算では一株当たり配当を株主資本コストで割るだけという、シンプルな式を正確に使うこと。分母に会社全体の資本コストを紛れ込ませないこと。

四つ、この前提はかなり思い切った仮定だということを理解したうえで、その根拠を答案の中でも意識すること、ですね。

この四点を押さえておけば、配当割引モデルのゼロ成長タイプは、本番で確実に得点源にできます。

公式は知っていたのに、その前提の意味まではちゃんと考えていなかったな、と今日で腑に落ちました。

過去問を解くときは、配当の記述を見つけたら、まず金額なのか割合なのかを確認する癖をつけて、実際に手を動かしてみてください。

まとめ

チェックポイント四つ

  • 与件文で配当の金額が一定に保たれていると読める記述を探す。配当性向が一定という記述とは意味が違う
  • 成熟した事業で大きな成長投資の予定が見当たらないかどうかも、あわせて確認する
  • 計算では一株当たり配当を株主資本コストで割るだけ。分母に会社全体の資本コストを紛れ込ませない
  • この前提はかなり思い切った仮定。その根拠を答案の中でも意識する
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